ウマ娘プリティーダービー 短編集   作:ピーナ

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アニメが一段落で、やや喪失感でした。やっぱりスペシャルウィークにはドラマがあったと感じます。


3冠ウマ娘が二人 それと世界のカツラギエース

あの日の誓いから1年。結局私はその誓いを完全には守り切れなかった。無敗で3冠ウマ娘にはなれたけど、ジャパンカップに勝てなかったのだ。……エース先輩に。

3冠ウマ娘になった後も去年のジャパンカップ、有馬記念は疲労から回避したものの、(シービー先輩の回避を受けてURAは翌年から菊花賞を天皇賞・秋の翌週から前週に変えた)今年に入って大阪杯、天皇賞・春、宝塚記念、天皇賞・秋と大レースを総なめにしてきたシービー先輩はジャパンカップを10着惨敗という結果で終えた。世間では疲労からの調整不足と言われていたけど、「脚の限界が近くて無意識に抑えたのだと思うわ。あの脚でも無理をすればそれなりの勝負は出来ていたはずよ」とウイナー先輩が言っていた。

エース先輩には完全にしてやられた。ずっと好位追走で戦っていた先輩が大逃げを打ったのだ。結局最後まで後ろの私達は先輩を捕まえきれなかった。エース先輩曰く「私の見た絶好調の時のシービーの末脚を想像してレースを組み立てたんだ。それでも先着できるような走り方を考えて実行しただけさ。ルドルフや他の皆を抑えて勝てたのは意外だったけどな」らしい。

 

 

 

1年の最後のG1、有馬記念。そのレース前に私はシービー先輩に話しかけられた。

 

「ルドルフ、一年間フル参戦してみて疲れてない?」

 

何気なく、私の体調の事を聞く先輩。この辺はシービー先輩だけでなくエース先輩もウイナー先輩も後輩の事をちゃんと気にかけてくれている。その辺は私も見習っていきたいなと思う。

 

「やっぱり疲れはあると思います。でも、今年もこのレースで終わりですし、全力で走るだけです。先輩は……その……」

「私の脚の事?」

 

サラっと聞きにくい事を口にするシービー先輩。というか……

 

「私が気付いている事知ってたんですか!?」

「声は小さくね。あの時も声が大きかったし」

 

何の事は無く、一年前の私が知った時から先輩には知られていたのだ。

 

「……ルドルフには、心配かけたね。ウイナーやエースにはもう話したけど、有馬を最後に長い休養に入るよ。もう、私一人で背負う必要もなくなったと思うし」

 

間違いなく、この2年の盛り上がりはシービー先輩がいたからだ。けど、ここ数か月の盛り上がりはそれに合わせて私を含めた何人ものウマ娘達の存在があってこそだと思う。私達はようやく先輩が一人で背負っていた重荷を一緒に持てるようになった。

 

「おっシービー、こんな所で盤外戦か?」

 

話している所にエース先輩が現れた。

 

「いや、このレースが終わったらぶっ倒れる予定だから、早いうちにルドルフに言っておこうと思ってね。後、ルドルフは盤外戦を仕掛けても揺れるような奴じゃない」

 

サラっと褒められた。シービー先輩ってあんまり誰かをほめる印象が無いから結構嬉しい。

 

「寝る前にちゃんと風呂入って、歯磨いて、勝負服クリーニングに出さないとウイナーに怒られるぞ」

「ウイナーお母さんに怒られるのは嫌だな。気をつけよ」

「ウイナーお母さんを怒らせると怖いからな~」

 

このお二人はたまにウイナー先輩をお母さん呼びしている。あの、面倒見の良さから分からなくはないのだが、目の前の先輩たちはそれを言って怒らせるのを楽しんでいる節がある。

 

「ルドルフも気をつけなよ。お母さん、細かい所うるさいから」

「私らが適当ってのもあるんだろうけどな」

「その辺は大丈夫です」

 

私はプライベートの方もかなりキッチリしているから、エース先輩に褒められたことはあっても怒られた事が無い。……最近はそれが理由からか、ウイナー先輩の後釜の生徒会長にならないかと言われている。まだ早いと思うのだけど。

 

「さて、そろそろレースの時間だな」

「エース、ルドルフ、2500メートル向こうでまた」

 

そう言って、私より先にレース場に向かうお二人。その背中は入学した時から憧れ続けたカッコよさがあった。いつか私もああなれるのだろうか?

 

 

 

『さて、いよいよやってまいりました年末の大一番、有馬記念! 人気投票で選ばれたウマ娘達が暮れの中山を走ります! 今年最後の栄光を掴むのはどのウマ娘か? 間もなく発走です!』

 

 

スタートゲートが開く。最初のポジション取りは大切だ。私は先頭を走るエース先輩の少し後ろの二番手に付けた。エース先輩を中山レース場の短い直線で捉えられるようにあまり離され過ぎず、かといって最後の二の脚を使えるような余力を残さないといけない。ただ、JCより100メートルの延長は私有利に働くはず。

シービー先輩は……後ろから3番手といったところか。

このレース、私はどうやって走るかをずっと迷ってきた。そんな時、私はウイナー先輩に相談した。

 

 

 

 

「強い相手との戦い方?」

 

JCが終って少しした頃の事、ジュニアクラスのチャンピオン決定戦が行われた辺りだったと思う。私は直接生徒会室に出向いた。ウイナー先輩が気を利かせてくれたのか、部屋には先輩が一人でいた。

 

「正直な所同世代でライバルが不在だったので、一番勝ちやすい戦い方をしていただけなんです」

「まあ、クラシック路線で大本命のみでライバル不在はあり得ない事ではないからね。一年前の誓いもあるし、流れを見極めてのレースをしていたと」

「はい。JCもそれで行って、エース先輩に負けました。それで私には本当に強い相手との戦い方が無いんだと感じたのと、若干の後悔がありまして。マルゼンスキー先輩と激しいライバル対決を繰り広げているウイナー先輩に会いに来たんです」

 

短距離路線の盛り上がりはこのお二人のレベルの高い一騎打ちが大きな理由だと思う。

 

「なるほど……なまじ頭が良くて何でも出来るから、煮詰まってるのね。そんな事は簡単よ、それはね……」

 

 

 

今回、私は何もしない。何も考えない。前のエース先輩をいつでも捉えられる所に置いておいて、最後まで脚が持つ所でスパートをかける。小細工なしの私の一番強い戦い方。それで、全力を出すことがウイナー先輩直伝の「ケンカの作法」。……まさか、ウイナー先輩からケンカなんて単語が出てくるとは思わなかったけど。

 

『さて、レースもいよいよ終盤! 先頭は依然としてカツラギエース、10メートルほど後ろにシンボリルドルフ、ミスターシービーは後方待機のまま第三コーナーに入っていきます! ああっと、シービー動いた! どんどんと加速して前との差を詰めていきます! 続けて後続の各ウマ娘が仕掛けていく!』

 

気持ち、後ろの足音が大きくなったように感じる。私も少し加速して、徐々に前のエース先輩を捕まえに行く。水色の下地にピンクの蓮の花をあしらった改造和装のような勝負服の背中を目の前において、三コーナーを駆け抜けていく。

 

『第四コーナーを抜けて最後の直線! シンボリルドルフ、カツラギエースを捉えた! 内にカツラギエース、外はシンボリルドルフ!』

 

加速している後続の仲で中で一つ凄い勢いで伸びてくる足音が聞こえる。

 

『後ろからインを突いてミスターシービー! 凄い脚で突っ込んで来た!』

 

日本中を魅了する切れ味抜群の末脚は一緒にレースに出る身としては最後の一瞬まで気が抜けない恐ろしい武器だ。けど!

 

『先頭変わってシンボリルドルフ! 粘るカツラギエース! 追うミスターシービー! 三人の争い!』

 

先頭に出て後少しなのに、凄く苦しい。走り切っていないのに体は悲鳴を上げている。それだけ消耗するくらいミスターシービーとカツラギエースという存在は抜きんでている。今も後ろからのプレッシャーが凄い。けど、今日は、今日だけは負けたくない!

 

『まだ伸びるシンボリルドルフ! 強い! 強い! 今年最後のG1も彼女の勝利! まさに、皇帝! シンボリルドルフ!』

 

 

 

「お疲れ、ルドルフ」

 

早くも呼吸を整えて私の元に来てくれたシービー先輩。そういえば、「人前では弱い姿は見せられない」って教えてくれたのは先輩たちだったなあ。

 

「お疲れさまでした、先輩」

「今度は私達がルドルフに挑む番だね」

「……待ってます。それまでトップで居続けます」

 

先輩が帰ってくるまで勝ち続ける。それが私の『皇帝』としてのプライドだ。




もう一話続きます。

キャラ紹介

カツラギエース

「世界のカツラギエースに私はなる!」

シービーの同期にして最大のライバル。レースの戦法は正反対だが、馬が合うのでプライベートではよく一緒に行動している。
意外と周りが見えているタイプで、後輩にさりげなくアドバイスを送る事も多い。(実はシービーの異変を最初に気付いたのもエース)
レースでは抜群のスタート技術と持ち前の快足を活かした逃げ戦法を得意としている。


なんか、書く事が短かったなあ。もうちょっと掘り下げたいような気もします。


アニメ12話はスぺちゃん強いって話でしたね。現実でも99年JCは歴代屈指メンバーで非常に強いレースをしていたと思います。
エルグラスぺ最強論争という不毛な争いもありますけど、僕個人は皆素晴らしい馬だったで良いと思っています。アニメの流れ的にグラスぺの伝説の有馬記念は無しなんですよね~。少し残念です。

本作の次回は……未定としておきます。期待せずにお願いします。
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