シリーズではとりあえずの最終回です。
『クラシック戦線も終わり、秋深まる東京レース場。この舞台で行われるのはシニアクラス最高の栄誉を賭けての天皇賞・秋。様々な路線のトップ達が集う中、最も早くゴールを駆け抜けるのは誰なのでしょうか!? やはり大本命はシンボリルドルフ! 昨年のジャパンカップから負けなし、堂々としたレースはまさに『皇帝』の名に相応しいでしょう! 対抗は『マイルの絶対王者』ニホンピロウイナー! 今年は『スーパーカー』マルゼンスキーを抑えて春の短距離G1を完全制覇! 秋初戦の毎日王冠も快勝で2000メートルへの挑戦を発表し、シンボリルドルフとの夢の対決が実現しました! しかし、今日の主役はこの人! 『魅惑の末脚』ミスターシービー! 昨年の有馬記念後に故障による長期欠場を発表してから10か月、いよいよファンが待ち望んだ復活となりました! 私達を魅了するあの末脚は再び爆発するのでしょうか? 天皇賞・秋、間もなくスタートです!』
「シービー、流石の貴女も久し振りのレースで緊張しているのかしら?」
「……そう見える?」
東京レース場の地下道にて勝負服のウイナーとシービーが並んで話している。久し振りのレースなのだが、シービーの顔には笑みが浮かんでいる。
いつも一番人気で最後の入場が当たり前の二人だが、今回は後輩のルドルフにその座を譲っている。
「一応、聞いてみただけよ。貴女はどんな大舞台でもいつもと変わらないわよね」
「どんなレースだろうと、誰が相手だろうと、私は私の走りをして、見に来てくれた人を楽しませる。それだけだよ」
「私達が最高のパフォーマンスをしてトゥインクルシリーズを輝かせ、その中で私達が最も輝く。それが私達『チーム・シリウス』よね」
ミスターシービー、ニホンピロウイナー、カツラギエース、そして、アメリカに遠征中の留学生で構成された少数精鋭の現在最強チーム、シリウス。
何物でもなかった彼女達が自分達のパフォーマンスをする場を自分で選ぶために作り上げた場所であるから、他の選手よりチームという物に愛着がある。だからこそ、層の厚い東京2000メートルの栄光が欲しいのだ。
「エースを始めとした海外遠征組に胸張って結果を言えるように頑張らないとね」
「そうね。……たとえ貴女でも勝利は譲らないわよ」
「当然。勝利は自分で勝ち取ってこそでしょ」
『3人のチャンピオンが集った東京レース場、2000メートル先の栄光を掴むのはルドルフかウイナーかシービーか!
はたまた世紀の下克上が起こるのか! 天皇賞・秋スタートです!』
レースはウイナーが引っ張る展開になった。2000メートルになった天皇賞・秋には、マイラーから中距離、ステイヤーまで幅広い距離のトップレベルが顔をそろえる。求められる資質と得意な戦法の関係でウイナーが先頭に立つのは必然だったと言える。
『ニホンピロウイナーが先頭で第三コーナーに突入します! しかし、ルドルフを始めとした後続の各選手が虎視眈々と狙っているぞ! シービーは未だ最後方、10か月ぶりは厳しいのか!?』
沢山のスパイクが地面を蹴る音とG1の大歓声。鮮やかな芝の緑と色とりどりの勝負服。芝と土の香り。私は大好きなこの舞台に帰ってきた。後は結果を残すだけ。
脚に痛みはない。
大きく息を吐き、大きく息を吸い込む。さあ、後は最後の直線、誰のものでもない。私が魅せる舞台だ。
『最後の直線に入り、ミスターシービーが一気に来た! 前を走る選手たちを抜き去り、先頭争いをしているウイナーとルドルフに襲い掛かった!』
あー、私の脚もここまで素直に伸びてくれてる。こんな事なら、去年の天皇賞・春と宝塚をスキップしておけばよかったかな?
でも、去年の私がいたから体の調子を崩したルドルフが宝塚をスキップしても特に批判が起こらなかったんだと思うし、これで良かったのだと思う。
『坂を登り切り、先頭が変わってシンボリルドルフ! ニホンピロウイナーも粘る! しかし、ミスターシービーが捉えた! そして、まだ伸びる! 差し切った! ミスターシービー、主役は自分だと主張するような激走で復活の勝利です!』
ゴール板を超えて少しずつ減速し立ち止まる。そして、私は10万人以上のお客さんがいるスタンドを見た。
ああそうだ、私がテレビで初めて見たトゥインクルシリーズもゴール後こんな感じだった。小さかった私にはそれが輝いて見えた。
……なんて、少し大袈裟かな? とにかく今は久し振りのウイニングライブを楽しみましょうか!
いかがだったでしょうか? ルドルフの国内敗北の二つをルドルフの上世代と絡めた3話でした。
ニホンピロウイナー
「私達には私達のプライドがあるのよ」
ルドルフ入学時の生徒会長でシービー、エースとはクラスメイトでチームメイト。エースとはさらにルームメイトでもある。
持ち前のスピードを活かすためにあまり注目されていない短距離路線に自ら進み、その実力で短距離専門のウマ娘の注目度を上げた立役者。永遠のライバルマルゼンスキーとの名勝負数え唄は、マルゼンスキーの距離変更まで続いたG1の注目カードとなった。
生徒会長を務めるほどのしっかり者だが、案外短気。エースはよく餌食になっている。
チームシリウス
シービー、エース、ウイナーと留学生を中心とした少数精鋭のチーム。トウィンクルシリーズブームの火付け役になった功績でチーム名が阪神レース場での重賞のレース名になった。
ぶっちゃけると拙作『日曜日は騒がしく』での主人公所属チームで日本3人海外3人の予定。