ウマ娘プリティーダービー 短編集   作:ピーナ

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ネタです。wiki見ながら書きました。


海外ウマ娘シリーズ
ウマ娘昔話


むかしむかし、イギリスの片田舎に一人のウマ娘がいました。生まれた日が日食だった事から、その現象を意味する「エクリプス」と名付けられた彼女は成長すると沢山の人の目を引き付ける美貌と圧倒的なレース能力を持つウマ娘に成長しました。

その当時、ウマ娘は草レースや貴族が開くレースに出る事で見初められ、貴族のスポンサーが付く事が目標であり、どれだけ地位の高い人に見初められるかが彼女達の中でのステータスでした。

ウマ娘という存在も今のようなレースや歌は副業で、パーティーに共に出席したりと社交の華としての役割がメインであり、貴族を着飾るステータスの一つでありました。

そんな中、彼女は生まれ育った街の酒場の看板娘として、楽しい時間と歌を提供していました。時が経つにつれ類稀なる美貌と、人を引き付ける歌声が噂となり、遠くからも彼女に会いに来る人が現れるようになりました。

 

 

 

他のウマ娘とは違い、レースに出ず、着飾る事も無く、日々を生まれた時から知っている人達と過ごしていた彼女にある一人の貴族がやってきます。

社交界で『変人』と呼ばれる彼は貴族の嗜みであるレースは結果を楽しみ、ウマ娘には目もくれない。美しい歌も興味を示さず曲の良さを褒める。パーティーで食事を楽しみ、所領内の店に入り浸る。おおよそ、貴族の常識から外れたその男は何故かエクリプスに興味を持ち、供を連れず彼女のいる街にやってきます。

 

「あら、こんな田舎の酒場に貴族様がいらしゃるなんて。明日は雨かしら?」

「俺も社交場とレース場以外でウマ娘を、しかも働いているウマ娘なんて初めて見たぜ?」

 

すこしピリピリした空気が酒場に広がっていきます。野次馬に来た街の人々も息をのんで見守っていました。

 

「なんで貴族様の為に走らなければならないのかしら? 走る事なんて自分のやりたい時にすればいい事よ。私からすれば、飼われる方がどういう神経しているのか分からないわ。私は自分で立って歩けるもの」

「……ま、そうだな。爺がウマ娘の地位向上の為に始めた事が、いつの間にか生産性の無い所になっちまったからな」

 

この貴族の祖父がウマ娘の働き口と所得の上がった庶民の娯楽をという考えでレースとそれに付随したステージ(今のトゥインクルシリーズの原型)を作り上げ、一大産業にした人物でした。しかし、それも今は貴族が食い物にするだけのものになってしまった。

 

「ああ、ダービー伯爵家ってどこかで聞いたって思ってたら、レースの胴元の家でしたか。私をスカウトにでも?」

「ちょっと違う。俺は爺の目指したレースを作りたい。そのためには既存のレースをぶっ壊せる能力と人を惹きつけるカリスマ性が欲しい。で、噂のウマ娘に会いに来たって訳だ」

「噂? ……ああ、ウチの店が忙しい理由ね。まあ、見た目と歌にはそれなりに自信はあるけど、レースはどうか知らないわよ?」

「そのへんは臨機応変にやるさ」

「ふーん……まあ、面白そうだから、今のレース界を食べちゃおうか」

 

 

 

彼女の走りを見た彼は「俺を含め、貴族たちは見る目が無かった」と言いました。それほどエクリプスの走りは凄い物だったのです。

 

 

 

初めてのレースの日。当時のレース形態はヒートレースと呼ばれ、1回の競争を1ヒートと呼び、同じ組み合わせで何度か勝つ事で決着が付くというルールでした。(現在ほど判定がしっかりしていなく、僅差の場合は同着とされ無効になっていた。これを『デッドヒート』言ったのだが、今使われている死闘、接戦では誤訳で、正しい意味は『無意味な争い』である)

 

「おや、ダービー伯ではないですか。あのような田舎娘を連れてきてどのようになさるつもりですか?」

 

「アンタみたいな田舎娘が出るようなレースじゃないんだよ!」

 

二人は違う場所で馬鹿にされる的でしたが、そんな言葉など耳に届いていません。

 

 

 

レースが始まると見ていた人間は言葉を失いました。最初から先頭に立ち、そのまま圧倒的な差を見せて逃げ切ったのです。

 

「皆さんに奪われたレースを私達の手に取り戻す為ですよ。あの娘はその為に見つけた私のパートナーです」

 

「走るのに誰だとか関係ないでしょ。そんな物でしか見れない人には負けないし、たかが4マイルでそんなに疲れているなんて、なまり過ぎじゃない?」

 

この時代は1ヒートの距離が数マイルでそれを何度も、一日に10000メートルを超える事もざらにありました。しかし、エクリプスにそんな事は関係ありません。息を整えなおした彼女の様子を見て、彼は観覧席を立ちました。

 

「レースは見るまでもないですね。順位は決まってる。Eclipse first, the rest nowhere.(エクリプスの勝ちだ、2着以下は居ない)」

 

と言い残しました。ヒートレースは2着以下に240ヤード(約220メートル)以上離してゴールをすると他のウマ娘は失格となるのです。つまり、彼はエクリプスの第1ヒート以上の圧勝を予想したのです。

そして、その言葉通り彼女は勝ちました。これが二人の伝説の幕開けとなったのです。

 

 

 

この後、彼女は圧倒的な競争能力と美貌、カリスマ性をもってイギリスの国民的アイドルとして、貴族の物だったレースをたくさんの人の物にしていきました。

レース体系も今のような短い距離から長い距離までを走れるようにし、今までスポットの浴びなかったウマ娘たちや少女たちも戦えるようにしていきました。(ヒートレースの頃は超長距離を戦うために完成した肉体が必要なので、成人したウマ娘しか走る事が無かったのです)

 

 

 

 

『Eclipse first, the rest nowhere.』

 

彼女の代名詞となったこの言葉は後に「唯一抜きんでて並ぶものなし」という意味で使われるようになります。

それは彼女の実力を指すのかもしれません。あるいは、彼女が今に続くウマ娘文化を作り上げた事に対する最大限の敬意なのかもしれません。




アニメ再放送の生徒会室でのシーンをみて「エクリプスで書くかあ」となぜか思ったので書きました。

エクリプス

「世界は私が染めるわ!」

今や伝説のウマ娘。彼女が世界に与えた影響は計り知れない。
田舎生まれ田舎育ちで地元の酒場で働きながら、生計を立てるという、この時代のウマ娘としては異端児だった。
後に「ダービー」のレース名に名を遺す十二代ダービー伯爵に見出され、貴族のレースにでて、圧倒的な強さで当時のレース界を侵食していった。その強さは無敗の戦績、対戦相手が逃げていったなどという逸話からも窺い知れる。
引退後はダービー伯と共に現在に続くレース体系の整備、一般化などのウマ娘文化の浸透をしていき、象徴として、国中の人気を集めた。
今もなお尊敬を集め、彼女のお墓の前には花が絶えない。



アプリが始まって実装……あるんですかねえ。エクリプスもそうですけど、海外ウマ娘。海外ウマ娘で書いてみたいのはやっぱりSS×イージーゴアですかねえ。

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