ウマ娘プリティーダービー 短編集   作:ピーナ

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こういうのはいかがでしょう?


幼馴染襲来!

「おハナさん、明日お休み貰ってもよろしいかしら?」

 

ある日の練習終わり、皆の前でマルゼンスキーがそう言った。

 

「うん? 病院の日はまだだったはずだが……」

 

マルゼンスキーはその競争能力と引き換えに慢性的な脚の故障を抱えており、定期的に病院で検査をしてしっかりとケアをしている。この知識を故障をした後輩や、ケアに疎い新入生に教えているから後輩にも慕われている。

 

「脚は大丈夫ですよ。幼馴染がアメリカから来るので」

「まあ、多すぎる練習量はお前にとっては毒だからな。一日と言わず、何日間か休んでも構わないぞ」

 

普段から練習熱心であるが、爆弾も抱えているため、マルゼンスキーには他のウマ娘達よりも休みが多くなっている。そういう日もサボらず練習の手伝いに来る辺り、彼女らしいのだが。

 

「まあ、あの子も時間が出来たとはいえ、まだ現役ですからね」

「なら、練習に「マルちゃ~ん!」」

 

そう言って練習コースのスタンドを凄い勢いで駆け下って来る影が一つあった。その影はマルゼンスキーに向かって飛び込む。マルゼンスキーはそれを……

 

「「「「「避けたぁ!?」」」」」

「ぶへっ」

 

変なうめき声と共に地面に突っ込む黒い影。周囲はあの速度で突っ込んで怪我がないのかと内心心配に思っているのだが、突っ込んだ本人は

 

「もう~、受け止めてよ~」

 

とすぐに起き上がりマルゼンスキーに文句を言った。

 

「だって、危ないじゃない。それに、シア? 貴女来るの明日じゃ無かったかしら?」

「ハリケーンが起こったから明日だと飛行機が飛ばないかもしれないって思って、一日前倒しにしたんだ。ここに来たのはサプライズ!」

「まあ、私はともかく他の娘達は驚くでしょうね」

 

エルコンドルパサー、グラスワンダー、タイキシャトル、ヒシアマゾン、それにシンボリルドルフはこのマルゼンスキーの幼馴染が誰か気付けているらしく、開いた口が塞がっていない。(流石にグラスとルドルフは手で隠してはいるが)

 

「あの、マルゼンスキー先輩?」

「どうしたの、グラス?」

「あの人、シアトルスルーさんですよね?」

「ええ」

「『あの』シアトルスルーさんデスカ?」

「エルの言う『あの』が何かは知らないけど、現役のウマ娘でシアトルスルーはあの娘だけだと思うわよ」

「『The American dream』のシアトルスルーさんデスカ?」

「アメリカではそう呼ばれているらしいわね、シャトル」

「タ、タイマンだ!」

「ダートメインのシアと芝のアマゾンが戦っても仕方ないと思うんだけど。それよりもシア、挨拶」

「はいよ~、日本の皆さんこんにちは! アメリカでウマ娘やってる、シアトルスルーです! 日本にはマルちゃんと一緒に観光するために来ました! よろしくね!」

 

黒髪ショートのマルゼンスキーに負けず劣らずの美少女、シアトルスルーは長いアメリカウマ娘史史上唯一の無敗の3冠ウマ娘である。あまり裕福ではない家庭から、地元のトレセンに通い、そこから栄光を掴んだ事から『The American dream』と呼ばれ、今やアメリカ中のウマ娘の憧れとなっている、正真正銘のスーパースターである。

 

「あのー、シアトルスルーさん?」

「呼び捨てで良いよ、シンボリルドルフ。あの時の脚の怪我は大丈夫?」

 

ルドルフはかつてアメリカ遠征をしたのだが、芝コースを横切るダートコースに足を取られ怪我をして遠征を中止したという過去がある。

 

「え? ええ。もう完治しています。でも、どうして……」

「そりゃ、マルちゃんが行った国だからね。注目はしてたんだ。それに私と同じ無敗のクラシック3冠ウマ娘だったし」

「なるほど。マルゼンスキー先輩とは長いんですか?」

「そうだね~。お互いが話せるようになる前からの付き合いだよ。アメリカのマルちゃん家のお屋敷でお母さんが料理人として働いていて、お互いのお母さんが仲良いから、自然とね」

 

マルゼンスキーの実家はアメリカでも有数の名門であり、彼女自身かなり期待されている。しかし、ガラスの脚故にある程度力を加減してでも勝てるレベル(世界水準になった現在からは考えられないかもしれないが、マルゼンスキーの留学当初の日本と世界の差はかなり大きかった。アメリカのジュニアクラスでもトップレベルと目されていたマルゼンスキーはまさに黒船だったのだ)だった日本に留学を決めた。

 

「あ、そうだマルちゃん」

「どうしたの?」

「マルちゃんってダート走れるよね?」

「あっちはそれがメインだから、それなりにはね。今すぐ勝負は流石に無理よ。脚の事もあるし、今日のメニューも消化したし」

 

実はマルゼンスキー、WDTに出走しているので芝の活躍の印象が大きいが、ダートも走れる二刀流なのだ。むしろ、日本は芝中心というのを知って途中から練習し始めたという経緯もあり、以前はダートが本業だった時期もある。

 

「そんな、私が有利な事言わないよ~。実はね12月にも日本に来ようかなって思ってるんだ」

 

今までのフレンドリーな雰囲気から一変、流石は3冠ウマ娘と言った引き締まった表情を見せるシアトルスルー。

 

「……なるほど、アメリカ3冠ウマ娘が日本に襲来って訳ね」

 

そう、年末には中京レース場で日本の中央レースの中で2つしかないダートG1の1つチャンピオンズカップが行われるのだ。

 

「そういう事。私としてはさ、現役の間にマルちゃんと戦いたいんだよね。時間はかかったけど、ようやくわがままを言える位の実力を手に入れられたから、直接日本に乗り込もうかなって思ってさ。今回は宣戦布告ついでに観光しに来たんだ」

「そう……分かったわ。しっかりその日に向けて準備しておくわ」

 

 

 

数日後、アメリカから世界に『シアトルスルー、日本へ参戦決定!』の報が発信された。日本独特のダートの前に本場のウマ娘達も負けていたから、世間では『アメリカの威信を賭けた遠征』なんて言われているが、真実は当の本人達とリゲルしか知らない。




という訳で同い年の名馬で書いてみました。両者ともウイポで結構お世話になっています。

シアトルスルー

「夢を掴むためにはさ、努力と根性しかないでしょ!」

マルゼンスキーの同い年の幼馴染であり、アメリカ3冠ウマ娘。
州立の小さなトレセンという恵まれない環境から栄光を掴んだ事から『The American Dream』と称されるほどの国民的アイドル。
マルゼンスキーとは幼い頃からのライバルであり、お互いがリスペクトしあう関係。
年に何度か会いに日本に来ていたためか、かなりの親日家でもある。
一つの事に集中するタイプで集中している時は他の物が目に入らない。日本語もこれであっという間に覚えた。
レースでは驚異的な集中力から来る、抜群のスタートと持ち前のスピードで逃げの戦法を得意としているが、彼女の最大の武器は最後の最後まで抜かせず全力で走りきる精神力である。


意外と古い馬のレース映像って残ってるものですね。
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