英雄王の友人   作:晴月

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第二話 メリス、王になる!?

メリスが休暇から戻ってきたその日、

 

「お早う御座います。シドゥリさん。」

 

「お早う御座いますメリス殿。」

 

王都に入ると同僚のシドゥリに出会い、玉座の間へと向かうとそこには...

 

いなかった。誰一人としていなかった。

 

「.......」

 

「.......」

 

二人は唖然としたが、メリスは直ぐに持ち直し、

 

「ギルの野郎、逃げやがったー!」

 

「ま、待っててください。直ぐに市内に兵士を手配します。」

 

シドゥリがそう言って兵を呼び寄せようとするが、

 

「いや、その必要は無い。」

 

メリスはシドゥリを静止した。

 

「あいつの行きそうな場所なら既に分かってる。」

 

メリスはそう言って兵を手配してある場所に向かわせる。

 

─────────

 

ウルク市郊外、メリスの家

 

ラヌスが昨日生まれたばかりの赤子の世話をしていると、コンコン。と、家の扉を叩く音が聞こえる。

 

「はい、今開けます。」

 

ラヌスはメリスが作ったベッドに赤子をそっと寝かせると直ぐに扉を開けた。そしてそこに立っていたのはなんと、

 

「お、王!」

 

ウルク市を納める王 ギルガメッシュであった。

 

「騒ぐなラヌス。(オレ)が仕事をサボった事がメリス達にバレてしまうではないか。」

 

「な!?またサボったんですか!?....はぁ。」

 

ラヌスはギルの発言に頭を抱えた。まぁ、今頃メリス達はギルがサボった事に気付いて既にギルを捜索しているのだが、

 

「ところで、なんのようでしょうか?王よ。」

 

「いや、メリスは普段どんな生活をしているのかと思ってな。こうして生活をチェックしに来たまでよ。」

 

(成る程。チェックという名のサボりだな。)

 

と、ラヌスは思った。

 

「別に普通ですよ。結婚する前と何も変わらずのどかに暮らしてます。」

 

「そうか。」

 

ギルは目の前にあった椅子に腰掛け、まるで家主のようにくつろぎ始めた。

 

「......なぁ、ラヌスよ。」

 

「はい?」

 

「お前は.........メリスと結婚して幸せか?」

 

ギルが聞くとラヌスは笑顔で答えた。

 

「はい!私は何時も幸せです!」

 

溢れんばかりの笑顔で。

 

「.........フッ、そうか。」

 

ギルは納得したのか答えを聞いたあと、口元が綻んでいた。

 

すると、ドンドンと扉を叩く音が聞こえた。

 

「王よ、迎えに来ました。」

 

(ゲッ、シドゥリ!?.....馬鹿な!この場所に来ることは誰にも伝えていないのに。.......何故バレた!?)

 

すると、次はギルが聞き慣れた声が聞こえた。

 

「ギルー、諦めろ。この家周辺に王都の兵の一部を待機させてある。.......もう逃げ場は無いぞ。」

 

(王都の兵士の一部だと!?....その人数ならこの家など囲むことは可能。.......ど、どうする?.....どうする(オレ)?)

 

ギルがどうやってこの状況を抜け出すか考えているとラヌスはスタスタと扉の前まで歩いた。

 

「お、おい。何しているラヌス!....まさかお前!」

 

ラヌスは一度だけギルを見ると微笑み、そして思い切り扉を開けた。

 

そこにはメリスを先頭に王都の兵士が集まっていた。

 

メリスは扉が開いたと同時にニヤリ、と悪い顔をすると、

 

「確保ー!!!」

 

兵士達にギルを捕縛するように支持し、ギルはまるで下手人のようにロープで身体を縛られた。

 

「さてと。」

 

メリスはラヌスの方に顔を向ける。

 

「あなた。」

 

「....兵士の前でその呼び方は止めて欲しいんだけどな。」

 

メリスは照れて頭を掻く。

 

するとラヌスがメリスに近づき、

 

「....ん。」

 

目を閉じて口付けを待つような仕草をした。

 

「........はぁ、またか。勘弁してくれよ、全く。」

 

メリスはイヤイヤながらもラヌスに口付けする。

 

「......今日は覚悟してもらうぞ。」

 

メリスがそう言うとラヌスは嬉しそうに

 

「はい!」

 

とだけ答えた。

 

────────────

 

「はぁ、今日もか。」

 

「どうしたメリス。.......浮かない顔をしおって。」ニヤニヤ

 

メリスがため息を吐くとギルが茶化すようにメリスに言う。

 

「いやな。前にお前から休暇貰ったことあったろ?.....あの日ラヌスに朝まで求められてな。」ハハハ

 

メリスはハイライトの消えた眼で遠くを見ながら答えた。

 

「...た、大変.....なんだな。」

 

これには親友のギルも何も言えなかった。

 

「そうなんだよ。.......あいつがまさか、あんなに絶倫だとは....結婚するまで思わなかった。」

 

この様子だと新婚初夜も同じだったのだろうとギルは同情するしかなかった。

 

「ところでメリス。何故我の居場所が分かった。」

 

「あぁ。動物達が教えてくれた。」

 

「は?」

 

ギルも最初はメリスが何を言っているのか分からなかった。

 

あのメリスが冗談など言わないのだから。と思っていたからだ。

 

「いや、俺さ。子供の頃からあまり友達が居なかったんだよ。.......ある時一匹の子猫を見つけてな。家に連れて帰って面倒を見てたらいつの間にか猫の言ってる事が分かってな。そこから他の動物の言葉も分かるようになった。.......今回はそれを利用しただけだ。」

 

「はぁ。」

 

ギルはメリスが本当の事を言っているのだと理解し、これ以上メリスに負担をかけまいと思った。

 

因みにこの日からギルはサボり癖が極端に減り、メリスの負担も減ったのだとか。

 

─────────

 

数年後、メリスとラヌスの子供達はスクスクと育ち。手がつけられないくらいのやんちゃに育っていた。

 

「あぁもう。レイ、ランダいい加減に落ち着け!!」

 

この日からメリスもラヌスの負担を減らそうと子育てに協力し始めた。.......のだが、前世でメリスは子育てなどしたことが無いために日に日に子供達に手を焼かされていた。

 

そんなメリスは子供の数が増えてきたこともあり、執務官の仕事だけでは家族を養えないと思い、数日前から昼は執務官。夜は傭兵として稼ぎを増やしていた。

 

そんなある日。

 

「盗賊団を壊滅させてくれと?」

 

メリスはフードが付いた黒い外套を羽織り、顔にはまるで相手に恐怖を与える為に獣の骨を加工した、いわゆるペストマスク(黒)と呼ばれるものを着けていた。

 

「はい。ここ最近、奴らが村に押し寄せて食料だけでなく村の女達までも連れ去られてしまったのです。...お願いです!お金はなんとかしますから....どうか。」

 

依頼人の男はメリスに土下座して頼んだ。

 

「.....分かった。.......なら早速用意して欲しい物がある。」

 

「え?」

 

──────────

 

メリスが依頼人に提示した物品は空き瓶数本と何かの植物。

 

「これでいいでしょうか?」

 

「あぁ、十分だ。......それじゃあ準備が整ったら呼びに行く。それまではここから離れていてくれ。.......強力な劇薬を作る。」

 

メリスは昼の執務官の時とは違い、険しい表情をした。

 

──────────

 

「さてと、まずはこれだな。」

 

メリスが手にした植物。実はこれ、ベラドンナと呼ばれる麻薬なのだ。

 

メリスは盗賊団相手に麻薬を使い、錯乱したところを一気に叩くつもりである。

 

「これをこうして.........よし。」

 

メリスは前世では医療だけでなく薬にも毒にもなる麻薬にも詳しかった。そのためどう扱えば薬となり、毒となるかなど把握済みであった。

 

「次は...これをこうしてっと。」

 

メリスはヒヨス、マオウ、トリカブトと次々に毒物を作りそれを液体にして空き瓶に入れて腰のポーチに仕舞う。

 

鈴蘭、スイセン、彼岸花、バイケイソウ、紫陽花も使い、遂に毒物は全て完成した。

 

────────────

 

「では、私はこれから盗賊団のアジトへ向かいます。」

 

「はい。お願いします。」

 

メリスは踵を返すとそのまま盗賊団のアジトとなっている洞窟へと向かった。

 

─────────────

 

「さて、先ずは。」

 

メリスは捕らえられている女性に被害が及ばない様にするため。先ずは、

 

「.......」

 

「.......」

 

近くにいた蛇に話しかけ、洞窟内の様子を出来る限り見てくる様に頼んだ。

 

蛇はそれを了承したのかメリスの方を向いて頷き、そのまま洞窟内へと姿を消した。

 

そして数分後、蛇はメリスの元まで戻ってきて内部構造、女性が捕らわれている場所まで教えてくれた。

 

「.........」ニコッ

 

メリスは蛇語で蛇に例を言うと木の実を与えてこの場を放れる様に近くの動物達に伝える様に言った。

 

「......」

 

蛇は木の実を丸呑みにすると急いで自分の住家があるだろう森へと戻った。

 

「さて、やりますか。」

 

メリスは仮面を付けるとそのまま洞窟の中へと消えた。

 

───────────

 

(.......暗いな。灯りが欲しいところだ。)

 

洞窟内は暗く、灯りが無いと周りが見渡せない程だった。

 

だが、蛇から内部構造の情報は教えて貰った為、壁伝いに歩いていけば目的地へと向かうことは可能だった。

 

そして、

 

(着いた。)

 

メリスは先ず、捕らえられた女性が居る牢屋に向かった。

 

「誰、誰か居るの?」

 

メリスの気配に気付いたのか女性の一人が声を掛けてきた。

 

(静かに!....あんたの村の男から依頼を受けてきた傭兵だ。.......あんた達を助けに来た。ここの鍵は誰が持っている?)

 

メリスは女性に近づき、助けに来たことと静かにするように伝える。

 

(ここの鍵は牢番が持ってるわ。.......そろそろ来る筈よ。.......来た!)

 

メリスは背後から誰かが来る気配を感じ、即座に扉を開けた時に死角になる場所に身体を着けた。

 

すると扉が開き、酔っ払った牢番の男が千鳥足で牢屋に入ってくる。

 

「う~い。ヒック、....異常無~し。」

 

メリスは自分の近くの灯りとなっている松明の日を全て消した。

 

「な、なんだ!....誰が灯りを消した!?」

 

メリスは牢番の背後に付くと腰に携えていた牢屋の鍵を奪うと、

 

「異常有り。」

 

と言って牢番の男の首をダガーで()ねた。

 

メリスは松明を拾い上げ、火を灯すと牢屋の鍵を全て開けた。

 

「この松明を持って右側の壁伝いに歩いていけ、そうすれば誰にも遭遇することなくこの洞窟から出られる。」

 

メリスは一人の女性に松明を手渡すとそう言った。

 

女性は頷くと捕らえられていた全員を先導して洞窟を出ていった。

 

「......さて、もう居ないよな。」

 

メリスは確認の為、松明を持って洞窟内を散策した。

 

するとある一室から女の物と思われる絶叫が聞こえた。

 

「マズイ、まだ残ってたのか!」

 

メリスは声のした部屋にまるで蛇のようにスルリと入った。

 

「や、止めて下さい!....私なら何をしても構いません。.......ですが妹だけは!」

 

中には女性が三人居り、一人が二人の姉だろうか。盗賊に許しを懇うていた。

 

「へ、そう言われると益々やりたくなるのが人のサガってもんだ!......安心しな、二人を犯したら次はお前だ。」

 

「そ、そんな.......」

 

女性の顔には最早絶望しかなかった。

 

それを暗がりから見ていたメリスは静かに怒りを蓄え、

 

盗賊の近くの灯りを足元に落ちていた小石を投げて消した。

 

「おい誰だ!灯りを消しやがったのは!」

 

メリスは再度盗賊の背後を取り、

 

「俺だよ。」

 

盗賊にそう一言だけ告げるとまた首を刎ねた。

 

最早身体だけとなった盗賊は前のめりに倒れ、女性の顔に血を飛ばした。

 

「き、きゃああああ!!!」

 

血が顔に飛んできたことと突然目の前にいた盗賊が死んでいることの相乗効果で女性はパニックを起こしてしまった。

 

「落ち着け!」パァン

 

メリスは女性に張り手をして正気に戻した。

 

「あれ、貴方は...?」

 

「俺はあんた達を助けに来たものだ。.......他の女性達は全員助けたと思ったが、あんた達三人で全員か?」

 

メリスが女性に聞くと、頷いた。

 

「ええ。今日は私達が当番だったから。」

 

(当番......だと!)

 

メリスは女性のこの言葉を聞き、激怒した。

 

盗賊のしたこともだが、直ぐに助けに行こうとしなかった村人達の勇気の無さにだ。

 

「.....取り敢えず、ここで待っていてくれ。」

 

メリスは女性をその場で待機するように伝えると残りの盗賊達を始末するためにある場所に向かった。

 

────────

 

洞窟内の大広間

 

そこでは盗賊達が円を描くように座り、酒盛りをしていた。

 

そこに盗賊達の死神となったメリスが近付く。

 

メリスは盗賊の周りの灯りを全て消すと盗賊達に一言も発させず全員の首を刎ねたのだった。

 

────────

 

「さて、あんた達はこれからどうするんだ?.....あの村に戻るのか?」

 

「......」

 

メリスは三人の女性を背負って洞窟から出て来たあと、洞窟前で待機していた女性達に訪ねた。

 

「....行くところなんて有りませんよ。」

 

ふと、一人の女性が答えた。彼女はメリスが松明を渡し、皆を先導した女性だ。

 

「.....ならウルクに来い。.......そこならどんな人でも受け入れる。」

 

「ほ、本当に!?」

 

女性の何人かは立ち上がり、喜んだ。

 

「ああ、約束しよう。......でもその前に。」

 

メリスは女性達に洞窟から離れるように伝えると作った毒を洞窟内に散布し、直ぐに立ち去る様に伝えてから村に戻った。

 

───────────

 

「あ、有難う御座います。.......この度はなんとお礼を言っていいか....」

 

依頼人の男はメリスに媚びへつらう様に感謝した。

 

だが、メリスには分かっていた。.......こんな寂れた村がメリスに報酬を払うことなど出来ない事を。

 

「おい。」

 

「は、はい。何でしょうか?」

 

メリスは依頼人を立ち上がらせる。

 

「歯ぁ食いしばれ!」

 

「え?......グハッ」

 

メリスは怒りを依頼人の男に向けて拳をぶつけた。

 

「....何故誰も直ぐに助けに行こうとしなかった!たとえ怖くても後をこっそり追いかけることぐらいは出来ただろ!」

 

メリスは集まっていた村の男達に向かって叫んだ。

 

「そ、それは....」

 

「あーはいはい。言っておくがな、今の俺に言い訳が通用すると思うなよ。」

 

メリスは最早村人達に対して怒りしかなかった。

 

「....言いたいことは色々あるが、....もういい。時間の無駄だ。どうせ報酬も払えないんだろう?ならその代わりとしてこの女達は俺が貰っていく。」

 

「そ、それは困る!....この村が滅んでしまう!」

 

すると村長であろう老人がメリスに向かって叫んだ。

 

だが、メリスは。

 

「だから?.....お前らの事情なんて知ったことじゃない。.......彼女達はもうここには戻りたくないと言っているんだ。こんな臆病者の村なんざ滅びればいいんだ!」

 

メリスはその後も村の男達に何かを言われ続けたが素知らぬ顔で村を出た。

 

───────────

 

そしてメリスが先導してウルクに来ると女性達は喜び、中には泣き出す者もいた。

 

「さて、着いた訳だが。.......そうだな、使ってない家が東側に沢山あったからそこを使ってくれ。.......食料はまた今度手配するように上に伝えておく。.......それでは。」

 

メリスが後腐れなくその場を立ち去ろうとした時、

 

「待って!」

 

一人の女性がメリスの腕にしがみついた。

 

「あの、動きにくいんだけど。」

 

すると女性はメリスの顔を見て答える。

 

「.....お礼をさせて下さい。」

 

だが、メリスは。

 

「別にお礼をされる程のことはしていない。私は人として当然の事をしたまでだ。」

 

と、答える。すると女性は更に強くメリスの腕にしがみつく。

 

「いえ、遠慮しないで下さい。.......私からの気持ちです。.....貴方になら私の.....ハジメテを、」

 

(マズイ!)

 

メリスは本能で危険を察知し、自分の腕を引き抜いてそのまま全力疾走してその場を離れた。

 

「あっ、」

 

女性はその場で立ち尽くしたまま暫く動かなかったという。

 

この事もあり、何度もこのような女性達を助けた事からメリスは女性達からは"英雄"と、称えられた。

 

そして誰が付けたかこうも呼ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"暗殺王"と

 

 

 

 

 

──────────

 

メリスが暗殺王となってから数年後。

 

ギルは木材を手に入れるべく友のエルキとメリスを連れてレバノン杉の森へと向かう。

 

何故そうなったのか?

 

事のいきさつはほんの数分前。

 

「.......」

 

「........」

 

「...これは.....不味いですね。」

 

ギルドとメリス。そしてシドゥリが報告を聞いていたところある兵士が木材が不足している為、レバノン杉の森に部隊が向かったが消息を絶っているとのこと。

 

これを聞いたギル達はどうすべきか考えていた。

 

すると誰かが立ち上がって言葉を発した。

 

「.....なら、俺が行こう。戦闘経験なら王都の兵士よりもあるから、もしもの時は森の主と戦って木材を手に入れてくる。」

 

声の主はメリスだった。確かに最近のメリスなら盗賊などの賊退治や魔物の討伐などを引き受けていたため、戦闘慣れしているだろう。.......だが、それに異を唱える者がいた。

 

「待て。.......我が行こう。...我が行けば民草達は我への敬意を評し、我への忠誠心が更に強くなるであろう。」

 

ギルだった。....だが確かにギルの言うことも尤もである。ギルはこのウルク市を治める王なのだ。その王が民衆の為に必要な木材を集めれば更に国民からのギルに対する評価が上がるのは先ず間違いなかった。

 

メリスもそれは理解していた。だが、不安もあった。

 

それでもしギルが怪物に倒されてしまったらその後はどうなる?.....そんな風に最悪の未来を予想してしまい、ギルを行かせる訳には行かないと思った。だからメリスは、

 

「いや。ギル、お前は王だ。...王なら玉座に座ってふんぞり返って、俺が木材を持って帰って来るのを待ってろ。」

 

と、ギルの提案を否定してしまった。だが、それで引き下がるギルではなかった。

 

「おいおいメリスよ。まさかとは思うが、 (オレ)が森の怪物にでも倒される未来を想像したか?....つくづくお前らしいな。....だが、これは王として(オレ)がすべき役目だ。....お前は引っ込んでおれ。」

 

と、ギルなりにメリスに対して気を使いってメリスを諭した。だが、メリスはギルガメッシの言い分が気に食わないのかムスッとした表情をしていた。

 

「いやいやギル。ここはお前が出るところじゃない筈だ。....なら俺が、」

 

「い~や!ここは我が行くべきだ!」

 

「いや俺が、」

 

「我が。」

 

「俺が。」

 

と、二人は言い争い始め、ついに喧嘩の一歩手前まで二人は言い争っていた。

 

「このままじゃ何時まで経っても終わらないな。....なら、」

 

「ああ。そうだな。」

 

と、二人は急に王都から郊外へと飛び出すと、それぞれ武器を構えた。

 

「お、王!?メリス殿!?.....一体何を....?」

 

後を追いかけてきていたシドゥリは、何が何だか分からないでいた。

 

「止めるなシドゥリ。....これは友であるメリスを納得させるために、我が力を示す。それだけだ。」

 

と、ギルは何時になく真剣な表情でメリスと睨み合いながらシドゥリに答えた。

 

「メリス殿もメリス殿です!...何を王と張り合っているのですか!」

 

シドゥリは事の元凶であろうメリスを叱責する。だが、メリスもギルと同じように真剣な表情でシドゥリに答えた。

 

「悪い、シドゥリ。こればかりは譲れない。」

 

シドゥリはメリスの言葉につい、後ずさりしてしまった。

 

その時のメリスの姿。シドゥリにはメリスがまるで人間の皮を被った怪物のように見えたからだ。

 

「行くぞ...メリス!」

 

「来い!....ギル!」

 

そして二人が戦おうとしたその時、二人の間に突如として鎖が割り込んできた。

 

それはまるで二人を止めるかのようだった。

 

「やぁやぁ二人とも何をしてるんだい?」

 

メリスとギルは声のした方向に顔を向けるとそこにはエルキがニコニコした表情で手を振っていた。

 

「エルキドゥ....。」

 

だが、メリスはそんなエルキに対して一言。

 

「.....止めるなエルキ。これは俺とギルの問題だ。」

 

と、言い放つ。そして、

 

「ああそうだ。こればかりはお前でも止めることは許さんぞエルキドゥ。」

 

ギルも同様にエルキに言い放つのだった。だが、エルキは笑いながらこう言った。

 

「なら、僕も行こう。これで三人だ。....なら文句はないよね、メリス。」

 

エルキはメリスの心配を知ってかそう提案し、メリスに聞く。

 

「あ、ああ。それなら構わない。....俺は兵士と装備の準備をしてくる。二人は待機しててくれ。」

 

メリスはエルキの提案を受け入れ、その場を後にするのだった。

 

─────────────

 

そしてメリスの準備が整い、いざ杉の森へ向かおうと兵士達を引き連れて向かった。その道中、太陽神シャマシュと名乗る人物が現れ、メリス達は彼女に助力を求め、彼女はそれを快く了承してくれた。

 

そして今現在、三人は兵士達の先陣を務め、遂に森にたどり着いたのだった。

 

「よし!それじゃあA班の兵士達は西を、B班は東、後に残った兵士達は丸太を運ぶための用意をしておいてくれ。以上だ。早速取りかかれ!」

 

『はっ!』

 

兵士達はメリスの指示通りに動き、黙々と杉の木を持ってきていた斧で斬り倒し、それを兵士達がウルク市へと運んでいく。

 

「凄いなメリス。...何よりも手際が良い。」

 

その光景を見ていたギルがメリスの指示内容に驚いていた。

 

「ああ。そりゃあ何処かの誰かさんが毎日のように俺に仕事を押し付けてたからじゃないですかねぇ?」

 

と、ギルに対して嫌みたらしく言うメリスであった。

 

「ぐっ。」

 

流石に図星だったからかギルはそれ以上何も言わなかった。

 

「アハハハ!....ギル。メリスに言い負かされてるじゃないか。」

 

「う、五月蝿いぞエルキドゥ!」

 

すると今度はエルキがギルと言い争いを始めてしまった。

 

(やれやれ、この二人は相変わらずだな。)

 

なんて事をメリスが考えていると突然ズシン、ズシンと地響きが近づいてきた。

 

『な、なんだ!?』

 

兵士達が突然発生した地響きに驚き戸惑う兵士達。

 

「怯むな!直ぐに陣形を作って固まれ!」

 

メリスの的確な指示に従い、陣形を作る兵士達。

 

そして地響きがした方向に向かって構えを取るギルとエルキ。

 

するとメリス達三人の目の前に巨大化怪物が現れた。

 

『我が名はフンババ。この森の主である。人間達よ何用でこの森に足を踏み入れた?....返答次第では生きては返さぬ!』

 

怪物は自らをこの森の主と言った。すると今度はギルがフンババに答えた。

 

「フッ、知れたこと。...この森の木を木材としてウルクへ運ぶのだ。」

 

すると突然、フンババは怒り出した。

 

『成る程。ならば貴様らを生かして返すことは出来ない!ここは我が森、我が領地。我の土地での蛮行....死を持って償うがいい!』

 

そう言うとフンババは拳をメリス達に向けて放つ。

 

「くっ。」

 

「ふっ、と。」

 

「おっと。」

 

三人は四方に散り、フンババの拳を避けた。

 

そして三人は直ぐ様臨戦態勢に移ると、フンババに向かって攻撃する。エルキは鎖を出してフンババの動きを封じ、ギルとメリスは剣を抜いて足を切りつけようとする。

 

だが、フンババは巨体には似つかわしくないほどの素早さで三人の攻撃を避ける。

 

「思ったよりも素早いな。」

 

「どうする、メリス。作戦はあるのか?」

 

「ギル.....幾らなんでもメリスにそこまで頼るのは...。」

 

そんな状況にも関わらず、三人は相変わらずの様子で余裕を見せていた。

 

『愚かなる人の子よ。...この森での行い、万死に値する。...大人しく我の裁きを受けるがよい!』

 

フンババはメリス達に大人しく自分に殺されろと言い放つ。だが、そんな簡単に殺されるつもりはないと思う三人。

 

「生憎だったな森の主よ。(オレ)は半人半神の王だ。」

 

「僕も神の兵器だからね。...人間はこのメリスしか居ないよ。」

 

「っておい、エルキ!この貼り積めた空気を一瞬にして壊すようなことを言うんじゃない!」

 

エルキは事実を言ったまでだよ、とメリスに補足した。

 

するとフンババはメリスに質問を投げ掛けた。

 

『ならばお前に問おう人の子よ。...お前は大人しく我の裁きを受けるのか?』

 

するとメリスはエルキとギル、互いの目を見て頷くとフンババを睨んでこう答えた。

 

「愚問だな森の主よ。...俺が人間代表だと言うのならば、ここで大人しく殺される訳には行かないんだ!」

 

するとメリスは指を鳴らして誰かに合図する。

 

すると突然フンババの背後から鎖が現れ、フンババの身体に巻き付いた。

 

「こ、これは!?」

 

フンババは背後から鎖に縛られ、戸惑った。

 

「エルキの鎖だ。もうお前は動くことは出来ない。」

 

「なんだと!?」

 

フンババはもう動くことは出来ない。エルキの鎖は神の鎖。つまりは神性を持っている相手に対して、絶対に切れる事の無い鎖となっている。フンババは謂わばこの神代においては神が作り出した怪物。よってフンババは神性の塊のようなものなのでもう動くことは出来ない。

 

「さて、後は今回の目的を達成するだけだな。」

 

と、メリスは森の奥深くへと向かう。するとそこには一本だけ他の杉の木とは違うものを発見した。

 

「なんだ。この木は?」

 

『止めろ!その木に近付くな!』

 

背後からフンババの悲痛な叫びが聞こえた。

 

(そうか。フンババはこの木を奪われたくなかったのか。)

 

「よし、撤退だ!....もう充分取り尽くしただろう。撤退だ!急げ!」

 

『はっ!』

 

兵士達はメリスの指示に従い、森を一人、また一人と出ていく。

 

「よし、帰るぞギル、エルキ。」

 

「......いいのか?」

 

「ああ。これでいいんだ。」

 

すると今度はフンババがメリスに聞いてきた。

 

『我を....殺さないのか?』

 

「お前を殺して何になる?.....俺は自然から与えられてるものには常に感謝してるんだ。...それに、お前を殺したところで何も得るものが無いだろうよ。...ほらエルキ、鎖を解いてやれ。」

 

だが、エルキは鎖を緩めるどころか更にキツくフンババを締め上げた。

 

『ぐぅおおおおおお!』

 

「おい何してるエルキ!フンババには戦意は感じられない!....もう充分だ!」

 

「いいや、メリス。...僕は君みたいに優しくないからね。」

 

そして次の瞬間、エルキはフンババの首を刎ね、メリスが近付いた『特別』な杉の木を斬り倒した。そしてそれを兵士に運ばせるのだった。

 

「だから殺すんだ。...ギルの為に。」

 

その光景を目の当たりにしたメリスは少しフリーズしたが、直ぐに動いてエルキに近付いた。

 

「おや?どうしたんだメリス、そんな怖い顔をして。」

 

「ふざけるな!」

 

メリスは次の瞬間、エルキを殴り飛ばしていた。。

 

「落ち着け、メリス!」

 

ギルが慌ててメリスを止めに入る。

 

「これが落ち着いて要られるか!!...何故だエルキ!何故もう戦意の無いフンババを殺し、あまつさえ奴が守っていた木を斬り倒した!....答えろ!」

 

メリスのエルキに対する怒りは収まるどころか更に勢いを増し、最早行き場を失っていた。

 

すると吹っ飛ばされたエルキが起き上がり、メリスを睨み付ける。

 

「何故だって?.....決まっている。フンババはいずれ、ギルに対して牙を向けると僕自身が考えたからだ。木を斬り倒したのもそれと似たような理由さ。」

 

「なら、そうなった時、俺がギルを守る。...それなら文句は無いだろ!」

 

「いいや、ある。....メリス、君は人間(・・)なんだ。ただの人間だ。僕みたいに神の兵器でもなければギルみたいに半人半神でもない。...そんな君が不足の事態に何が出来る?.....ただ、無惨に殺されるだけだ。」

 

そしてエルキはメリスの目の前を通り過ぎると同時に彼にしか聞こえないようにこう告げた。

 

「これは君の為でもある。」

 

と、だがメリスはエルキの在り方に何処か自分達とは一線を引いて接しているのを感じ取った。

 

「お前は....まだ兵器であるつもりなのか、エルキ。」

 

その問いかけに答えるものは誰も居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二章はどの物語に参加させたい?(どの話でもクラスは確定)

  • 蒼銀のフラグメンツ
  • Fate/apocrypha
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