基本的にマスクドライダー・ストラトスは平均5000文字以内でまとめているのですが、今回は5000字を僅かに突破してしまいました。これも自分の構成力のなさが故です。
一夏Side.
(これは……想像以上にやべぇ……)
一限目であるIS基礎理論の授業が終わり今は休み時間に入っていたが、この異様な雰囲気はどうにもしがたかった。
それもそのはず、クラスメイトが全員女子なのだ。
知っての通り、IS学園は女性しか扱えないISについて学ぶ実業学校である為、相対的に女子校となる。
つまり俺は、ISを動かしてしまったがためにこの女子校に放り込まれたのだ。
(動物園のパンダってこんな感じなんだろうな)
改めて、動物園のパンダの気持ちが分かる気がする。パンダ達は毎日こんな感じで見られていると思うと、少し同情してしまった。
(こんな時に限って竜馬さんはいないし……誰でも良いからこの状況をどうにかしてくれ……)
ふと、今この場にはいない竜馬さんの事を思い出してしまった。
3年振りに再会したらなんと
「……少し良いか?」
「ん?」
俺が竜馬さんの事を考えていたら、背後から声をかけられた。この状況で俺に声を掛けてくるとは、かなり度胸の座った奴だろう。
「……箒か?」
「ああ」
振り向くとそこには、去年の全国大会で再会した幼馴染の篠ノ之箒がいた。
「廊下でいいか?」
「お、おう。いいぜ」
俺は箒と一緒に廊下に出た。その際、モーゼの十戒の如く周囲の女生徒達が道を空けてくれた。
そんなこんなで廊下に出たものの、周囲4m先では他の教室から来た生徒達が聞き耳を立てていた。これなら教室内でも変わらないと思うのだが。
「大会以来だな。一夏」
「ああ、久し振りだな。箒」
「剣道はまだ続けているのか?」
「まぁ、腕が落ちない程度にはやってるよ。そういうお前は?」
「私も似たようなものだな」
俺と箒の会話は、剣道の話からだった。さっきも言った通り、俺と箒は去年の全国大会の会場で再会している。もっとも、種目が違っていたため、打ち合うことはなかったが。
「それより……まさか竜馬さんが
すると、箒は竜馬さんの事を話した。そういえば、箒は3年前に起きた事を知らないのか?
「俺だってびっくりだよ。あそこで俺が止めなかったら今頃大惨事だったぜ」
「よくあの間に入ってこれたな……」
「まぁ、束さんがいない時は俺が引き止め役をやってたから……」
「まぁ、その……心中察する」
「その言葉だけでも嬉しいよ……」
俺は溜め息をついた。実際、あの痴話喧嘩のせいで俺が何回死にかけた事か……
「やれやれ。それは心外だな」
突然、箒や俺とは異なる第三者の声が聞こえた。声がした方を向くと、そこには竜馬さんが立っていた。
「りょ、竜馬さん!?いつからそこに!?」
「いやなに、次の授業は僕が担当するから5分前に教室につこうと思ってね。箒ちゃん。6年振りだね」
「は、はい!お久し振りです竜馬さん!」
箒は竜馬さんに対し最敬礼でお辞儀した。
「ははっ。相変わらずお堅いなぁ箒ちゃんは。もう少し肩の力を抜いたらどうだい?」
「い、いえ!?そ、それにしても、よく私とわかりましたね」
「だって、髪型が6年前と変わってないし」
竜馬さんが頭を指差すと、箒は長いポニーテールをいじりだした。
「あ、あと……」
「「……?」」
「二人共、剣道全国大会、優勝おめでとう」
「「な、なんで知ってるんですか!?」」
見事に俺と箒の声がハモった。
「いや、インターネットで見たから」
「「なんで見てるんですか!?」」
そこは新聞で見たでしょ竜馬さん!?いや間違っては無いけど!?
と、ここでチャイムが鳴ってしまった。
「おっと、時間切れのようだね。続きは僕の授業が終わってからにしようか」
竜馬さんはそういうと、教室に入っていった。
「俺達も戻るか」
「あ、ああ。そうだな」
俺と箒も、席に戻る事にした。
一夏Side out.
*
二時間目は、IS運用に関する法定規則で、これを竜馬が担当した。
「——————であるからして、ISの基本的な運用に際しては、国家の認証が必要であり、この枠内を逸した運用は、刑法で——————」
竜馬はスラスラと教科書に記載された事を朗読しながら、重要な点を黒板に記載していた。
しかし、一夏は全くついていけなかった。
(やべぇ、超難しい……)
正直なところ、一夏はバリバリの体育会系で、頭を使うような問題はサッパリなのだ。
本来の志望校であった藍越学園に合格するため、一夏は剣道の修練をしながら猛勉強をした程であった。
一夏は隣の女子をチラ見した。隣の女子は竜馬の話に頷きながらスラスラとノートに書き込んでいた。
(ぐ……このIS学園に入学する子は事前学習してるってのか……俺も一応やってはいたけど、ここまでとは流石に思わなかったぞ)
「織斑君。何か分からないことがあるのかな?」
その時、一夏が隣の女子をチラ見しているのに気付いた竜馬が話しかけてきた。
「あ、えっと……」
「分からない事があるなら遠慮なくどんどん聞いてくれ。教師を利用してドンドン教養を深めるのは、学生の特権だからね」
笑顔で語る竜馬に、一夏はああ、教師でも竜馬さんは竜馬さんなんだなと感じ、決心した。
「先生!」
「はい織斑君!」
「ほとんどすべてわかりません!」
一夏は素直に自分の本心を明かした。
「ああ、まぁ、そうだろうなとは思ってたよ」
「……へ?」
「ああ、みなまで言わなくて結構。恐らく君の家の事だ。入学前に届いた必読の参考書を頭だけ読んだけどいつの間にか“どこぞの誰かさん”が間違えて捨ててしまったんだろうね」
(流石です竜馬さん。まるでエルキュール・ポワロみたいな推理力です)
竜馬の推理は、あながち間違いではない。実は一夏は入学前に学園が送った必読の参考書を頭のみ読んでいたのだが、その翌日に古い電話帳と間違えて捨ててしまったのだ。
「はぁ~…仕方ない。新しいのを発行してあげるから、一週間以内に要点のみ抑えてくれ」
「いや、一週間であの分厚さは……」
「何も全部覚えろとは言っていない。要点だけ抑えればいい。君ならできるだろう?」
笑顔でサムズアップ。それを見た一夏は納得せざるを得なかった。そして、そこへ千冬が現れた。
「ISはその機動性、攻撃力、制圧力は既存の兵器を遥かに凌ぐ。しかし、そういった“兵器”を深く知らずに扱えば必ず事故が起きる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解できなくても覚えろ。そして守れ。それが規則だ」
全く持って正論である。しかし、竜馬は千冬が何気なく発言した“単語”が、残念に思えた。
「……だが、本来ISは兵器としてではなく、宇宙開発のために使われるべきではないのだろうか?」
「……なに?」
「織斑先生。僕はこう思うんだ。ISは兵器としてではなく、平和の為に使われるべき技術なんだと。それを兵器としか使えない人類には、まだISは早すぎたのではないかとね」
「……確かに、立花先生の言にも一理ある。だが、一度定まった価値観を変えられないのもまた人間だ。」
「……それもそうだな」
「それに望む望まざるにも関わらず、人は集団の中で生きなくてはならない。それができなければ、人間をやめなければならない」
「…………」
竜馬は黙っていた。恐らく一夏の為に、あえてあの発言をしたのだろう。だがその発言は、
「いや、織斑先生の言う通りだ。確かに人は何かの集団の中でしか生きてはいけない。もしそれが出来ない時、人は“化け物”になってしまうからね……」
竜馬は笑顔で答えたが、千冬にはその笑顔が痛々しく思えた。
(あんな事言われたにも関わらず、お前は笑顔を絶やさないのか……)
「さて、なんか重苦しい空気になっちゃったけど、授業を再開しようか!」
竜馬が手を叩くと、千冬は教室の奥に行き、一夏は自分の席に座った。
*
「先程はすまなかった」
「ん?」
二限目終了後、千冬は職員室で三限目の授業の準備をしながら、隣の席にいる竜馬に頭を下げた。先程の件で、千冬は罪悪感を覚えていたのだ。
「お前の身体の事を考えれば、あの時の発言はするべきではなかった」
「いや、僕の方こそあんな事を言ってしまったからね。そう言っちゃうのも当然だよ」
「竜馬……」
千冬は改めて、自身の発言の重さを実感した。
「それより、一夏君の参考書の件だけど、まぁ、君の事だからね」
すると、竜馬は話を参考書に切り替えてきた。
「うっ!?そ、それはだな……」
「ま、深くは聞かないけど、全く君は変わらないな。未だに黴と埃を友にして生活しているのかい?」
「う、うるさい!誰が生活無能力者だ!///こ、これでも少しは片づけられるよう進歩はしているんだぞ…///」
「??」
「と、兎に角!早く準備しないと授業に間に合わないぞ!教師が遅刻しては生徒に示しがつかんぞ!」
「はいはい。わかったよ」
そう言うと、二人は教室へ向かった。
*
三限目は、実戦で使用する各種装備の特性についての授業で、千冬が担当する事になった。
僕も真耶も、メモ帳を手に取って書き取る準備を整えていた。
「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出場する代表者を決めないとな」
ふと、思い出したかのように千冬が言った。例によって事前知識が皆無な一夏は首を傾げていた。
「クラス代表とはそのままの意味で、対抗戦の他に、生徒会会議や委員会への出席……まあ、既存の学校で言うクラス委員みたいなものだね。クラス代表になった者は一年間余程の事がない限りは変更しないと思ってほしい。ちなみにクラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力推移を見極めるものだ。現時点はそれほどではないけど、競争によって向上心が増すからね」
僕は生徒達にわかりやすく補足説明した。一夏君は何となく意味を理解したようで、面倒くさそうな顔をしていた。
「自薦他薦は問わないが、選ばれたものは拒否権は無しだ」
これには流石の僕も顔をひきつらせたが、ここの担任は千冬なので、あえて何も言わなかった。
「はい!織斑君が良いと思います!」
「私もそれが良いと思います!」
案の定、票は一夏君に集中した。まぁ、そうなるだろうね。当の本人は嫌がっているけど。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
一夏君は思わず立ち上がり、千冬に抗議しようとするが……
「拒否権は無しと言った筈だ。さて、他にはいないのか?いないのならこのまm……」
「待ってください!納得がいきませんわ!」
千冬の言葉を遮るかのように、窓際真ん中の席にいる金髪縦ロールにカチューシャをつけた女生徒が大声を上げて立ち上がった。確か彼女は、今期の入試主席だったイギリス代表候補生のセシリア・オルコットだったかな?
「このような選出など認められません!クラス代表にはこのセシリア・オルコットが立候補いたしますわ!」
なんと、この状況下でクラス代表に立候補してきたのだ。僕は一夏の方に目を向けると、彼は何故か安堵する表情をしていた。そんなにクラス代表が嫌なのかな?僕は高校時代クラスメイトが誰もやらないからクラス委員長や生徒会長やってたけど、面倒くさいとは思わなかったな。
「大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!実力からいけば私がクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからと言って極東の、しかも雄猿にされては困ります!私はこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをしに来た覚えは毛頭ございませんわ!そもそも、文化も科学技術も後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、私には耐えがたい苦痛で……」
この子は自分が何を言っているのかわかっているのか!?仮にも“国”を代表する国家代表候補生が、他国の暴言を大声で高らかに言うとは。もしこれが国内世論に知られれば日本に反英世論が吹き荒れかねない事を知らないのか!?
僕は彼女を止めようと動いたが、先に動いたのは一夏君だった。
「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一不味い料理何年連続覇者だよ?」
しまった——————一夏君はこういう暴言にはつい反応してしまう性格だった。それを聞いたセシリアは怒りを露わにして一夏君の方へ向かっていった。
「あ、あなたねぇ!私の祖国を侮辱しますの!?」
こうなってしまっては覆水盆に返らず。一夏君とセシリアは口論に発展してしまった。
僕は千冬の方をチラ見すると、そこには修羅が覇気を溜め込んでいた。
このままでは不味い!僕はそう思うと、直様行動に走った。
「はいそこまで!」
僕は手を大きく叩いて二人の口論を遮った。そして、生徒たちの視線が僕の方に集中した。それは、真耶ちゃんと千冬、そして先程まで口論を繰り広げていた一夏君とセシリアも例外ではなかった。
「りょ、竜馬さん……?」
「織斑君、立花先生ね。それよりオルコットさんはクラス代表に立候補するという事でいいんだね?」
「え、あ、はい。そうですわ」
「よし、そういう事ならこの続きは来週の放課後にアリーナでやろうか!」
「へ?」
「は?」
僕のこの一言で、一週間後に1年1組クラス代表決定戦が行われる事が半ば強引に決定したのである……
次回予告
「やぁ!暑い日は熱中症に気を付けて、こまめな水分と塩分の補給を心掛けるんだぞ。次回はこれだ!」
楯無からの情報を受け、オリンポスの要塞島に突入する仮面ライダー!
次回「初公開!ライダーメーデンの超パワー」