今回は記念すべき初代第1話「怪奇蜘蛛男」と「スーパーヒーロー作戦~ダイダルの野望~」版の蜘蛛男パートをベースに、ストロンガー第2話「ストロンガーとタックルの秘密」の要素を加えた話になっております。
仮面ライダーメーデンがカメレオンキメラを倒して数時間後、竜馬と千冬は束に案内され、彼女が用意したセーフハウスに来ていた。
「へぇ、束にしてはかなりお洒落なセーフハウスだね」
「ちょっとりょーくん!束さんを美意識の欠片もないような人間みたいに言うのやめて!」
「いや、事実だろ」
「ちーちゃんにだけは言われたくないよ!?流石に泣いちゃうよ!本気と書いてマジで泣いちゃうよ!?」
玄関前でそんな茶番をする三人だが、竜馬はそそくさとガレージの方へ向かった。
「おい竜馬!どこへ行くんだ!」
「新しいマシンの試運転に出かけてくる。束、
「ほーい。後は任せてちょ♡」
束から投げ渡された鍵を受け取った竜馬は、そのままガレージに向かった。
千冬は止めようとしなかった束に問い詰めた。
「束!なぜ止めなかった!?」
束は冷淡な表情をした。
「今のりょーくんは、まだちーちゃんに本当の事を話せる程心の準備ができていないんだ。だから、今は一人でそっとしておこうよ。訳は中で私が話すからさ」
束にそう言われた千冬は、ガレージに向かう竜馬の背中が、とても悲しそうに見えた。その背中を、千冬は見覚えがあった。
(あいつのあの背中……あの時と同じだ……13年前、親代わりだった博士が忽然と失踪した時に神社の境内で見せたあの時と)
その時の事を思い出した千冬は、竜馬の心情を理解し、束と共にセーフハウスの中に入った。
その頃、ガレージについた竜馬は、兼ねてより束に頼んでいた専用マシンを眺めていた。
そこには、メガスポーツタイプのオートバイの形状をしたオートバイがあった。
「遂に完成したか……
このマシンこそ、仮面ライダーメーデンの専用マシン、Mチャリオットである!
竜馬は早速乗り込むと、ガレージの扉を開いて、試運転に向かった。
その様子を、束と千冬はセーフハウスにあるリビングで眺めていた。
「いやはや、りょーくんのバイク好きにも困ったものだね」
束はやや呆れ気味に言うと、窓のカーテンを閉めて、テーブルの椅子に腰掛けた。
テーブルには、千冬が対面するように座っていた。
「さて束、そろそろ話してもらうぞ。竜馬のあの姿と、“オリンポス”とやらについてを」
千冬の問いに、束は少し悲しい表情で話し始めた。
「ちーちゃん。心して聞いて……りょーくんは、りょーくんはもう、人間じゃないんだ」
「何……?」
束はある書類を千冬に手渡した。それは、竜馬の身体検査カルテであった。
「それは私がりょーくんの身体をナノマシンを使って検査した際にわかった事だよ」
それを手に取った千冬は、書類に目を通した。
そこには、信じられないような情報が記載されていた。書類には、竜馬のゲノム情報が編集された事と、その編集された遺伝子配列に飛蝗の遺伝子配列が意図的に組み込まれ生命の根源から改造されている事が記されていた。
驚愕の表情を浮かべる千冬に、束は再び話し始めた。
「りょーくんの肉体はもう、人間を遥かに越える身体能力を持った、改造人間なんだよ……」
*
人気のない無人島。ここに、世界征服を企む悪の秘密結社「オリンポス」の秘密基地がある。
その基地内のコンピュータールームでは、とある人物の情報について調べていた。
そしてそこには、先程の紳士がいた。
「どうだ?」
紳士が白い防護服とガスマスクを身に着けた科学グループの研究員に問うと、研究員の一人が返事をした。
「はい、閣下。例の男に関する情報について組織内のデータベースにアクセスしたところ、一人の人物が該当しました」
研究員はそう言うと、コンピューターの言語再生装置を作動させた。
『立花竜馬。年齢24歳。城南大学生物学部主席卒業。極真空手八段所有。公式戦ニオイテハ、全国高校空手道選抜大会男子個人組手3年連続優勝。オートバイノアマチュアロードレース大会ニ個人エントリーデ優勝。3年前ニキメラボーグ素体トシテ連行、作戦指揮、スパイダーキメラ……』
*
その頃、とある広大な空き地では、立花竜馬がMチャリオットの試運転を行っていた。
(3年前のあの時、あの時からすべては始まった……僕は大学の卒業式を終えた帰り、奴らに誘拐された。それこそが、すべての始まりだった……)
竜馬は空白の3年間に起きた事を回想した……
*
立花竜馬。城南大学生物学部を首席で卒業した稀代の秀才で、極真空手八段の腕前を持ち、オートバイロードレースのアマチュア大会に個人エントリーで優勝、プロ顔負けの腕前を発揮し、その将来は約束されたかのように見えた……
だが、彼の未来は、恐るべき悪魔の集団によって踏みにじられてしまった……
*
竜馬side.
三年前、某所———
『目覚めよ……立花竜馬……栄光ある“オリンポス”の一員に選ばれし者よ……』
誰だ?誰が俺を呼んでいるんだ……
『目覚めるのだ……』
今度ははっきりと聞こえた。その声に従い、僕は瞼を開いた。
まだ意識は朦朧としているのか、ライトが回転しているように見えた。
『立花竜馬……』
またあの声だ。聞き覚えのない声でどんどん意識がハッキリとし、遂に目が覚めた。
「はっ!」
目を覚ました時、防護服にガスマスクを身に着けた得体の知れない集団が僕の顔を覗き込んでいた。
僕は手足を動かそうとしたが、四肢は手首と足首の部分から止め金で繋がれて、手術台に拘束されていた。
さらに、僕は下着こそ身に着けていたが、何も着ていない状態である事に気付いた。
「ここは一体どこだ!?君達は一体何者なんだ!?」
僕の質問に対し、手術台が点滅しながら、先程の声が響いた。
『ようこそ立花竜馬、栄光ある“オリンポス”の戦士よ……』
「オリンポス?一体何なんだそれは!?」
立花竜馬が耳にした、オリンポス。それは、世界各地に網を張る。悪の秘密結社だ。
立花竜馬はなぜか、某国の人里離れたオリンポスの秘密基地に運ばれていた。
オリンポスの目的は、世界各地にいる優秀な人間を改造して意のままに操り世界征服を計画する、恐るべき組織なのである!
『我々が求めている人材は、人より並外れた知性を持ち、尚且つ鋼の如き強靭な肉体を持つ人間だ。立花竜馬、君はその中から選ばれた栄誉ある存在なのだ』
僕は声の主が何を言っているのかさっぱり理解できなかった。だが、彼等の考えがあまりにも狂信的だというのは理解できた。
「馬鹿な!僕はオリンポスに入った覚えはない!」
僕は即座に否定した。そうだ、僕はそんな狂信的な組織に入った覚えはないし、推薦された記憶もない。だが、声の主は僕に驚愕の事実を告げた。
『ふっふっふっ……もう遅い。遅いのだよ立花君。君の肉体はほぼ既にオリンポスの一員なっているのだよ。君が意識を失って既に五日、その間にオリンポスが誇る科学グループが、君の遺伝子情報に改造手術を施した。君は最早“キメラボーグ”なのだ。キメラボーグが世界を支配し、そのキメラボーグを支配するのがこの私だ。いずれ世界はこの私によって家畜のように支配される運命にあるのだ』
僕が奴らの一員?それにキメラボーグだって?馬鹿な。未だ遺伝子工学は倫理学的問題から生体工学同様未だ発展途上にある分野だ。そんな短期間で人間の遺伝子情報を改造するなど常識的にあり得ない。
「キメラボーグだって……ふっ、馬鹿な!僕の身体はこの通り人間じゃないか!」
『なれば信じざるを得ないよう身を以て知るがいい』
声の主に従い、防護服の人間たちが僕を拘束している止め金に電極らしき機器を取り付けていった。
「これから、お前に5万
黄色のラインが入ったガスマスクを装着した主任らしき男はそう言うと、電源スイッチを押した。
その瞬間、僕の肉体を強力な電流が襲った。
「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!」
僕の全身を強烈な痛みが襲い、僕はもだえ苦しんだが、表面の皮膚には火傷の一つも出来ていなかった。
主任らしき男はその光景を横目で見ながら、高説を始めた。
「火傷ひとつ、お前の身体には残らない。苦痛を感じるのは記憶消去手術と洗脳プログラムを終えていないためだ。人間であった頃の記憶を無くし、洗脳プログラムで指令のまま動くようになれば、君は完全なる!オリンポスのキメラボーグの一員になれる!」
主任らしき男が高説を終えると、電源のスイッチがオフになり、止め金に繋がれていた電極が外された。
全身から汗が噴き出していたが、僕はまだ意識を保っていた。
「た、例え死んでも、僕はお前達の思い通りにはならないぞ!」
僕は疲弊した身体で否定するが、主任らしき男は狂信的に怒鳴った。
「誰しも始めはそう思う!しかしそう思っていられるのも今だけだ!これより立花竜馬の記憶消去手術を開始する!」
主任らしき男の指示の下、防護服の男達が手術の準備を始めようとした、その時だった。
突如、大きな爆発音が轟いたのだ。
爆発音と同時に、室内の照明や、機材が次々と火花を散らし、部屋は闇に包まれた。
「どうした!何が起こったのだ!」
主任らしき男が報告を要請すると、部屋にフルフェイスマスクとタクティカルヘルメットを着けた黒い全身タイツの男が入ってきた。
「何者かが発電室にある主電源と補助電源を破壊しました!」
「なんだと!こんな時に!直ちに修理に向かうぞ!」
主任らしき男がそう言うと、部下達を従え全身タイツの男と共に僕を置き去りにして出ていった。
「お、おい待て!くそっ、どうにかしなきゃ……」
僕は止め金を引き千切ろうと軽く力を入れたその時だ。
「あっ!」
突如、四肢を繋いでいた止め金の鎖が引き千切られたのだ。僕の感覚では、軽く力を入れただけで、流石に千切れるとは思っていなかった。
「く、鎖が……まさか、本当に僕は……っ!?」
僕は引き千切られた止め金の鎖を見て本当に改造された事にショックを受けたが、ふと、部屋の中で僕以外の人が入った気配を感じ取り、身構えた。
しかし、気配には殺気を感じなかった。
気配は近づいてくると同時に、僕の目が暗闇に慣れてきたその時、その正体がわかった。
その人は、僕が最もよく知る人間だった。
「貴方は!?滝博士じゃないですか!?」
気配の正体は、生まれて間もない頃の僕を引き取り、育ててくれた
「でも、博士は10年前に僕を残して……」
「竜馬君。事情は後で話す。兎に角今はここから逃げねば」
「しかし、逃げると言ってもどこから……」
「あの天井の窓を破れば出口はすぐだ」
博士が指さしたのは、9m近い高さの天井にある円形の窓だった。とてもじゃないがあそこまでは届きはしない。
「無理です。この高さでは届きません」
「竜馬君。君はチタン合金の止め金を苦も無く切れた。人間には不可能なことだが、君は改造人間なんだ。皮肉にもオリンポスが、実験用に使用された5万アンペアの電流が、君の改造された肉体組織を活性化させたんだ」
「そんな事が……」
「出来る。今の君なら。ぐずぐずしてはいられん。既にこの基地の動力室の最深部に仕掛けた爆弾がそろそろ爆発する。やってみるんだ」
滝博士の言葉の数々に僕は驚いていたが、博士の話を聞く限り確かに時間はない。ここは一か八かかけて見るしかない!
「わかりました。博士、しっかり捕まってください!」
「うむ!」
僕は滝博士を抱えると、天井の窓めがけてジャンプした!
その後、僕と滝博士は出口に到着すると、出口に駐車されていたオートバイに乗って基地を脱出した。
僕が囚われていた基地は、脱出してすぐに大爆発を起こし、消滅した……
side end.
*
滝博士の協力によって記憶消去手術寸前に脱出した立花竜馬。しかし、その先に待っていたのは、更なる悲劇だというのを、この時点ではまだ知る由もなかった……
次回予告(イメージCV:政宗一成、推奨BGM:襲撃 M-47
+チャンス M-72b(超人機メタルダーより))
無事に基地を脱出した竜馬だが、脱走の果てに待っていたのは恩師との辛い別れであった。
迫りくる刺客スパイダーキメラの猛攻!
恩師を殺したオリンポスへの怒りが、竜馬を異形の戦士へと変えた!
次回「空白の3年間:中篇」
こいつは凄いぜ!