マスクドライダー・ストラトス   作:ピカリーノ1234

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お待たせしました。空白の3年間3部作、これにて完結です。


第5話「空白の3年間:後編」

現在——————とある空き地にて

 

 竜馬は、Mチャリオットの試運転をあらかた終えて、セーフハウスへの帰路につこうとしていた。

 

(あの時、滝博士を失った僕は、怒りの感情と共にキメラボーグとして覚醒し、本能のままオリンポスの刺客を殺した……今でもハッキリ覚えている……始めて人を殺めたというあの感触を……)

 

 竜馬は一瞬だけ、ハンドルを握っている自身の右手を見た。

 

(そして、僕がその場を離れようとした時、束に再会した……)

 

 竜馬は、再び3年前の事を回想した——————

 

 

 

 

 

 

 

 

3年前——————某国廃倉庫外にて

 

 竜馬は目の前に写る人物との再会に驚いていた。そこにいたのは、僕がオリンポスに拉致される一週間前に行方を眩ました幼馴染にしてISの生みの親である“天災”こと、篠ノ之束だった。

 竜馬は驚きのあまり止まってしまったが、自分の手にこびりついた返り血が滴る音で我に返り、ある事を思い出した。

 

(どうして束がここに?彼女は確か政府によって国際手配を受けていた筈だ)

 

 そう、束は失踪したその日のうちに、日本政府を経由してICPO(国際刑事警察機構)が国際指名手配に指定していたのだ。その彼女が何故この国に?しかも、どうしてこの場所にいるんだ?

竜馬はそれを聞こうとしたら、束は竜馬の心を読み取るように話を切り出した。

 

「なんでここにいるかって?いや〜、探すの本当に手間取っちゃったよ。最初にりょーくんがいなくなったのをニュースで見て取り組んでる研究ほっぽって各国捜査機関のデータベースを虱潰しにハックしながら調べてやっと居場所を突き止めたってわけ」

 

 今サラッととんでもない事を自白したような気がするが、竜馬は気のせいという事にした。だが、このタイミングで束が僕の前に現れたということは……

 

「ま、それでここに来たら……」

 

「……見たんだね。僕のあの姿を」

 

「うん。それに、あの怪物と戦うところもね」

 

「そっか…………」

 

 竜馬は少し諦めがついた表情で夜空を見上げた。見られた。あの姿を。“キメラボーグとしての姿”を。よりにもよって束に見られたのだ。

 だが、竜馬は逆に安堵していた。あの姿を最初に見たのが、束だという事に。

 

「りょーくん。一体何があったの?それにあの姿は一体……」

 

 束の問いかけに、竜馬は答えようとしたが、彼の改造された聴覚が、遠くから複数の足音が近づいてくるのを察知した。

 

「束、事情は別の場所で話す。兎に角……今はここを離れたい……」

 

 竜馬は顔を俯かせてそう言った。近づいてくる足音がオリンポスの追手の可能性があるからだ。もしそうなら、束の命が危ないからだ。

 

「……わかった。りょーくんがそう言うのなら、話せる場所に連れてけば良いんだね!」

 

 だが、束はとても斜め上な返事を返した。連れてく?どこに?竜馬はそう思案していると、束は返り血がこびりついた彼の腕を引っ張った。

 

「ちょ、ちょっと!?どこに連れて行くんだ!?」

 

「いいからこっち来て!」

 

 束に引っ張られながら、竜馬はその場所を後にした……

 

 

 

 

 

 

 

 

現在——————束のセーフハウス

 

「……で、お前は竜馬を自分のラボに連れていって、その国を後にしたと」

 

「そゆこと。りょーくんの肉体組織を調べたいっていう束さんの知的好奇心もあるけど、それ以前に近づいてくる足音が組織の奴らの可能性があるからね」

 

「確かに、妥当だな」

 

 束の話を聞きながら、千冬は竜馬の目の前で滝博士が殺された事に、少なからず衝撃を受けていると同時に、竜馬の悲しみを察していた。

 

「ラボに連れてった後、まずりょーくんの身体中に染み付いた返り血を洗い流してから、これまでの事を説明してもらったっけなぁ……」

 

 束は再び、3年前の事を話し始めた——————

 

 

 

 

 

 

 

 

再び3年前——————移動式ラボ「吾輩は猫である(名前はまだ無い)」にて

 

「そんな……滝博士が……」

 

「ああ……」

 

 束は竜馬からこれまでの経緯をラボの研究室で聞いていた。それは最初こそ信じられないものだったが、先程の戦闘をその目で見ていた束は、それが現実である事が理解できた。

 

「まぁ、直ぐに信じられる話じゃないよね。それg「信じるよ」……えっ?」

 

「信じるよ。だってりょーくん、束さんやちーちゃんの前では絶対に嘘をつかないもん。それに、りょーくんは隠し事を絶対にしないから……」

 

「……」

 

 束のその言葉を聞き、竜馬の心は少なからずの安らぎを得ると同時に、素晴らしい親友(とも)に恵まれた事に、感謝した。

 

「それで、これからりょーくんはどうするの?」

 

「束、僕は戦う!オリンポスという悪を知った今、僕はそれと戦う力を得た。僕はこの力で、人間の自由のために戦う!それに……オリンポスの被害者は、僕を最後にしたいんだ……」

 

 竜馬のその決意に、束の心に強く響いた。

 

(そうだね。りょーくんならそう言うと思ったよ。束さんはそれを見守る事しか出来ない。けど……)

 

 束は、ある事を考え、口を開いた。

 

「りょーくん。折り入って頼みがあるんだけど……暫く、このラボに居てくれないかな?」

 

「えっ?どうしてだい?」

 

「いや、深い理由はないんだけど、りょーくんの力になれる者を作るには、りょーくんの助けが必要なんだ……だめ、かな?」

 

 束の頼みに、竜馬は少し考えた。

 

(確かに、束の協力が得られれば、オリンポスの情報を得やすくなるし、今後の戦いの手助けになるかもしれない。でも、束をオリンポスとの戦いに巻き込むわけには……)

 

 竜馬は、親しい人を自分の厄介ごとに巻き込みたくなかった。しかし、そこへ先程あの廃倉庫で束が言った言葉を思い出した。

 

『そうやってまた一人でなんでも抱え込むの?』

 

(そうか……そうだよね。僕も、誰かを頼ってもいいんだよね)

 

 束のあの言葉を思い出し、そう決意した竜馬は、口を開いた。

 

「わかった。暫くはここにいるよ」

 

 こうして、竜馬は束と行動を共にする事にしたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

現在——————とある公道にて

 

 竜馬はMチャリオットを駆り、セーフハウスに向かっていた。

 

(その後、僕は束と行動を共にしながら、彼女の研究に付き合った。そして……)

 

 竜馬は左手を腰に巻いているケイモーンにやった。

 

(このケイモーンが出来た……)

 

 

 

 

 

 

 

 

三度3年前——————吾輩は猫である(名前はまだ無い)にて

 

「出来た!遂に出来たよぉ!“ケイモーン”が!」

 

 束は、研究室の机に置いてあるケイモーンを手に取って喜びを表していた。

 

「遂に完成したのかい!」

 

 そこへ、何故かエプロンを着けていた竜馬と、銀髪と白と青のゴスロリドレスを着た少女が入ってきた。

 その少女は、束と行動を共にしている少女「クロエ・クロニクル」である。

 

「うん!ってりょーくんは何故にエプロン姿なの!?」

 

「いや、クロエちゃんにオムライスの作り方教えてて……」

 

「はい。竜馬様の料理はどれも素晴らしいものばかりなので、私も竜馬様のように素晴らしい料理を作れたらと思いまして……」

 

「ほほ~。つまりりょーくんはくーちゃんの家事スキルを上げていたと!これ以上くーちゃんの家事スキルが上がっちゃったら束さんがもっとダメ人間になっちゃうよ!」

 

「いや、元から束は生活無能力者じゃないか」

 

「いきなり辛辣な事言うねりょーくんは!もうやめて!束さんのメンタルライフはもう0よ!」

 

 竜馬と束がそんな茶番をしていると、クロエが本題を聞いてきた。

 

「ところで、完成したというのは?」

 

「そうそう!りょーくん!遂に完成したよ!“ケイモーン”が!」

 

 束はそう言うと、竜馬にケイモーンを見せた。

 

「これが……ケイモーン」

 

 竜馬はケイモーンを手に取ると、バックル部分に描かれたあるものに目を囚われた。

 それは、竜馬、束、そして千冬を結ぶ「友情の証」であった。

 

「このマーク、まだ覚えていたんだね」

 

「うん。だって、忘れられないもん。それが私達を繋いでくれた、“魂の紋章”だもん」

 

 バックルには、かつて中学生の頃に束と千冬と一緒に立ち上げた「未来科学同好会」のエンブレムが刻まれていた。

 竜馬はそれを見て、かつての思い出が込み上げてきた。

 かつて、宇宙(そら)に想いを乗せ、語り合ったあの日々を……もう戻ることはない、あの日々を……

 

(思えば、遠くまできてしまったな……)

 

 竜馬は、自分達が遠くまできてしまった事を思いながら、エプロンを取りケイモ―ンを腰に巻いた。

 

「とてもお似合いです竜馬様」

 

 クロエは、装着されたケイモ―ンを見ながら、少し微笑んで頷いた。

 

「おいおい、まだ腰に巻いただけじゃないか。このベルトの真価はこれからだよ」

 

「そうそう!さぁ、やっちゃって!」

 

「わかった!」

 

 竜馬はそう言うと、一旦目を閉じて、深く息を吸うと、竜馬の顔に変化が起きた。

 額に真紅の「第三の目(サードアイ)」が開眼し、目元に改造手術の傷跡を思わせるような「キメラライン」が伸びていた。

 これこそ、立花竜馬がキメラボーグとしての身体能力を発揮させる〈中間形態〉だ。

 中間形態に変身した竜馬は、両腕を大きく動かしながら、スイッチを押すように叫んだ。

 

「変っ……身!」

 

 すると、未来科学同好会のエンブレムが施された防御シャッターが展開し、風車ダイナモが姿を現すと、ダイナモが高速で回転しながら大気を取り込み、竜馬の姿を〈戦士〉に変えた。

 

「これが……竜馬様の新たな力」

 

 クロエはそう言うと、脇に置いてあった姿見を竜馬の前に出した。

 竜馬は姿見に目をやった。

 そこに映っていたのは黒を基調とするスーツに緑色の胸部プロテクター、四肢にはダークグリーンのグローブとブーツを身に纏い、、首には真紅のマフラーを巻き、顔は飛蝗を模した朱色の複眼に黒のラインが入ったダークグリーンのマスクを身に着けた異形の戦士だった。

 

「これが、僕の新たな姿か……」

 

「そうだよりょーくん。君こそ……君こそ仮面ライダーなんだよ!」

 

「仮面ライダー?」

 

「うん!」

 

 束は頷くと、研究室のモニターにある画像を映した。そこには、今の竜馬の姿によく似た。異形の戦士たちが映っていた。

 

「私達のおじいちゃんの代から、この世界の裏で戦っている仮面の戦士たちの事だよ。束さんはね、りょーくんの話を聞いて、この人達の事を思い出して、このケイモーンを作ろうって思ったんだ」

 

 束は、どこか懐かしげな顔で説明した。竜馬はその説明を聞きながら、画面に映るライダー達に心奪われていた。

 

「仮面……ライダー……」

 

「りょーくんもその一人だよ」

 

「えっ?」

 

「りょーくんも、その仮面ライダーの一人なんだよ」

 

 束の言葉に、竜馬は再び姿見に映る自分を見た。

 そして、決意を固めるように拳を握り、宣言した。

 

「僕は……俺の名は、仮面ライダーだ!」

 

 今ここに、仮面ライダーメーデンは誕生したのである——————

 

 

 

 

 

 

 

 

現在——————束のセーフハウス

「—————その後、りょーくんは束さんにMチャリオットの開発を任せて私と別れて、オリンポスとたった一人で世界各地で戦っていたんだけど、組織がちーちゃんを狙っている事を知って一月前に帰国して、今に至るってわけ。以上が、ここまでのあらましかな」

 

「…………」

 

 千冬は無言で聞いていた。そして、顔を俯かせて先程の行いを恥じていた。彼の気持ちを考えずに、突っかかってしまったあの時の自分を。

 

(すまない竜馬。お前がこれまで、たった一人のあの巨大な組織と戦っていたと知らずに、私はあの時、自分の事ばかり考えて怒鳴ってしまって……)

 

「…………」

 

 そんな千冬を、束は黙って見ていた。それは、何かを見定めるような顔をしていた。

 そうとは知らず、千冬は心の中である決意を固めた。

 

(……私では、恐らくISを使わなければ組織のキメラボーグには太刀打ちはできないだろう。だが、それでも私は竜馬の役に立ちたい!後ろに隠れて守られるなど、私が許さない!)

 

「束!少し頼みたいことがある!」

 

 千冬は顔を上げて束にそう言うと、束はニヤッとした表情でその提案を伺う事にした……

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




次回予告

≪推奨BGM:幕間 M-32a(仮面ライダークウガより)≫

「3年前のあの日以来、私はお前の事を片時も忘れた事はなかった。それはな……」

「それは……」

 決意
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