ただここからは少し早くなるかもしれませんので、宜しかったら読んでいってください。
雅からエトさんが連れていかれたという報せを聞いてから僕が動くまでにそう時間は要らなかった。
僕の中では"何故あの場所がバレたのか。"ではなく、"何故エトさんが高槻泉だと判明したのか"という疑問がずっと浮かんでいた。
僕がCCGにいた頃は、まだ【隻眼の梟】の正体の尻尾すら掴めていなかったはずだった。つまり、この数ヶ月で何か変わったことがあったと考えるのが普通だろう。
(……くそっ。完全に油断してた…)
僕がエトさんの住むマンションに到着した頃には既に、CCGによって封鎖されていた。
マンションに目立った外傷もないことから、エトさんは特に反抗することもなく捕まったのだろう。
(…………あれは、旧多と琲世……?いや、違う?)
丁度マンションから出てきた2人組の捜査官。
片方は僕がボコボコにした旧多。そしてその旧多の横に並んで歩いている捜査官は匂いや見た目は琲世で間違いないのだが、目の前にいる彼は僕の知る彼からは程遠い存在だった。
(仕方ない、1度戻ろう)
彼に何があったのか気になったが、優先すべきことでは無いと判断し僕は1度隠れ家の方に戻ることにした。
◇◇◇
「あ、刀夜。どう…だった…?」
隠れ家へと戻ってきた僕を迎えたのは董香だった。
「もうCCGの方が調べ始めちゃってたから、近づけもしなかった。それに…………」
『エトさんを捕まえたのは佐々木琲世じゃなくて金木くんだ』
僕は口から思わず出そうになった言葉を懸命に堪え、口篭った。
「……それに?」
「いや、なんでもない。兎に角、ここもいつバレるかわからない。1度みんなを集めて貰える?」
「あぁ、わかった。」
董香は少し僕の顔を怪しんだ目で見たあと、そのまま振り返りみんなの元へ行った。
(………何か考えがあるのか。それともただ単に、エトさんを捕まえただけなのか……。返答次第じゃただじゃおかないよ、金木くん)
◇◇◇
僕がアジトの方に顔を出す頃には既にみんな集まっていた。
「今回、みんなに集まってもらった理由はただ一つ。あの隻眼の梟がCCGに捕まったということ。彼女はある意味喰種たちにとっては希望でもあったし、象徴的な存在でもあった。そんな彼女を捕まえたとなれば、CCGとすればこれを逃す手はない。多分、これからCCGはアオギリを殲滅しにかかる。つまり、より一層喰種にとって世の中は過ごしにくくなる。」
ある意味ずっと伝説の存在だった【隻眼の梟】。
その彼女を手の内にしたCCGは、さぞご満悦のことだろう。
世間一般では死んだとされている【木葉梟】に続いての最強の喰種の敗北。
これは喰種たちにとって絶望と言う他ないだろう。
「そこでです。世間一般では死んだとされる【木葉梟】である僕が生きていることを世間に知らしめます。それに伴って少しの間僕はここを空けることになるので、ハイル、錦さん、四方さん、リョーコさん、董香、あと月山グループの人たちにはここの護衛をお願いしたいんです。今よりもずっと強固に。」
「……そんなことは言われなくてもわかってるつーの。それよりも刀夜、世間に知らしめるって何をするつもりなの?」
「…………コクリアからエトさんと雛実ちゃんを助け出す」
これはずっと考えていたことだが、雛実ちゃんのことは琲世がいる限りまだ時間はあると思ってた。ただ琲世のあの様子からして、雛実ちゃんが処分されるまでそう時間はない。
そしてエトさんも。
僕の言葉によって、周りが静寂に包まれる。
それはそうだろう。1度は破られたとはいえ、コクリアはCCGの中で最も警備体制の厳しい場所。
それに単騎で突っ込んでいくなんて、ただ自殺願望があるようにしか思えない。
「………バカ?」
そんな静寂を破ったのは董香だった。
「って言いたいけど、どうせ止めても行くんだろうし私は刀夜が2人を連れて帰ってくることを信じてるよ」
董香のその言葉に、周りのみんなも頷いてくれる。
「ですね~。碧、ちゃんと連れて帰って来なかったら知りませんよぉ?」
「…………ありがとう。それじゃあ、あとはよろしくね」
僕は目一杯頭を下げ、振り返ってそのままアジトを出た。
(…………取り敢えず、アレの回収に行かなきゃ)
僕は大切なものを取りに行くため、ある場所へと足を向けた。
短い……。
すみません、短くて。