先に謝ります、今回大分短いです。
お待ちしてくださっている方々には申し訳ないのですが、キリが良かったのでごめんなさい。
ただしっかり話は進んでいるのでお楽しみに!!
それではレッツラゴー
(……彼の管轄はこの区だったと思うんだけどなぁ)
高槻泉の最新作【王のビレイグ】により、以前にましてデモや演説が多く行われていたこの街も大分落ち着いてきたように見える。一時的に盛り上がっていた喰種擁護派も、その熱さえ冷めてしまえば「結局喰種は人間とは違う。」そう言った心理になってしまうのも仕方が無いことだ。
この街も以前と比べれば大分血の匂いが減り、喰種の存在もほとんど見ることがなくなった。それも最近よく耳にするようになった【黒い死神】のお陰?なのだろう。
「……さて、彼のことを探し出さないとね」
街の喧騒を掻き分けながら、僕は馴染み深い匂いを辿って歩き始めた。
◇◇◇
彼の匂いを辿って歩くこと数十分。彼と出会うのにそこまでの時間は必要なかったが、彼が1人になるタイミングが中々掴めず時間がかかってしまった。
「……やぁ、琲世。いや、金木研と呼んだ方がいいかな?」
「………遅かったですね、刀夜さん」
彼はまるで僕が彼の元を訪れるのを待っていたかのように、驚くこともせずただ普通に返答した。
「………なるほどね。君に手駒として動かされるとは思いもしなかったよ」
彼は僕が動く事をわかっていた。そして、僕が彼が既に喰種側の人間であることを理解していることも。
「まさか、エトさんを餌にするとはね」
彼は僕を動かすためにエトさんを拘束した。彼女がコクリアに幽閉されれば、僕がコクリア破りをすることを見越して。
彼が、コクリアから雛実ちゃんを助けるために。
「……えぇ。本当は橘碧特等に協力を仰ぐ予定だったんですけど、彼伊丙上等と失踪してしまったので仕方がなく最強の喰種【木葉梟】に手を貸してもらうことにしたんです」
「……なるほど、それじゃあ、僕は君一杯食わされた感じだ」
彼の手の平で踊ってしまった感は否めないが、それはそれでいいのかもしれない、そう僕は思った。
彼は僕らの王になる。そして、僕はその王を守るための盾。少し先のことだが、本来の役割になったと思えば嬉しいことなのだろう。
「……今日から丁度一週間後、CCGは大規模なアオギリの樹の殲滅作戦に出ます。」
「………わかった。それじゃあ、君にはこれを渡しておくよ。使い道を誤らないでくれよ」
僕はポケットの中から、2本の試験管を取り出し彼に渡した。
「それじゃあ、琲世。僕らは玉座を温めてまっているよ。あと、僕を動かすためとはいえエトさんを拘留したことへの罰は後で受けてもらうからね。」
去り際に少しの冗談を混ぜて、僕は彼から離れた。
僕の言葉の意味を理解するには、まだ彼には自覚が足りないだろう。それでも、僕は彼にこの言葉を送った。
(………彼はどんな選択をするのかな?)
僕のように役目を人に押し付けるのか、それとも有馬さんやエトさんのように自分を超える力を持つ者をその玉座の前で待つのか。
「………どちらにせよ、その答えが出るまであと少しか。」
彼の選択が喰種にとっても、人間にとっても大きく世界が変わることには間違いはない。
質問なんですが、皆さんは雛実と絢都のカップリングを見たいでしょうか?
アンケートをとるのもあれなので、感想ついでに気楽に教えて貰えると嬉しいです。
ちなみに、この作品は原作後も描く予定です。