今回は、エトさん視点のお話になります。
あまり上手くかけていないかと思いますが、暖かい目で見て貰えると嬉しいです。
私は、1人虚しく面会相手が来るまでの時間を待たされている。
コクリアに収容されてからというもの、私の元へと来る人物はたった2人しか居ない。もし彼が、まだ捜査官だったのならば来てくれたかもしれないが。
1人は白鳩とは言えないほど、真っ黒なコートに身を包んだ准特等捜査官。彼は有馬貴将が目を付け、最強の彼が認めた私たちの希望。もう1人は、その准特等の胡散臭さ満載のパートナーである和修一族の旧多二福。
コクリアに収容された時点で私は既に役目を終えた。暖め続けていた空の玉座も既に予約済。あとは、王が自ら座るのみという所まできた。そうなってしまえば、私の役目はなく後はその王に任せるだけとなっている。
役目を終えたならば、その後の彼との平穏な生活というものには少なからず興味があったし、望んで良いものならば私は迷いなくそれを欲しただろう。だが、彼には私とは違い最後の最後まで見届けるという役目がある。それは有馬貴将が王によって倒されることと同様に私たちが決めたことである。
私も有馬貴将のように殺される役目があったならば、暇を得ずに済んだというものだろうに。
そこまで思考を巡らせているといたところで、私の面会相手である真っ黒なコートに身を包んだ捜査官が到着した。
「………やぁ、金木研くん」
「どうも……」
彼は初めて見た時、そしてついこの間見た時とも雰囲気が全く違う。初めて見た時は少し面白そうな青年と言った程度の感想だった。だが彼は世の中の理不尽という理不尽を経験し、他の喰種同様力を求めるようになった。
「今日は貴女には報告に来ました」
「……報告?」
「……えぇ。今日から三日後、木葉梟がこのコクリアに攻め入るそうです。もちろん、貴女を助けにでしょうけど……」
彼の口から発せられた言葉に、私は一瞬自分の耳を疑った。
「…………は?」
久しぶりに出した相手を威圧するだけの低い声。それほど、私にはコイツが言ったことに対して憤りを感じた。
今、コイツは木葉梟がコクリアを攻めると言った。それはつまり、彼がまた危険を冒すということ。誰よりも優しい彼が、わざわざ私を助けるためだけに危険を冒すのは私が望むところではない。彼には私とは違いこれからやらなければいけないことも、守らなければいけない人達もいる。
あの時のように、私なんかのために危険を冒して周りの人たちを悲しませてはいけない。
「………お前……何を吹き込んだ」
コイツ…金木研自身、私の父を助けるためだけに大量の捜査官に挑み、そして有馬貴将に負けた。
その時にどれだけ周りを、董香ちゃんや雛実ちゃんを悲しませたかなんてコイツ自身痛いほど分かっているはずなのに。何故、彼に再びその役目を負わせようとするのか、私には理由がわからなかった。
「…いえ、僕は何も。ただここの防衛が手薄になるであろう日時を教えただけですよ。それでは、僕はこれを伝えに来ただけですので、これで。」
それだけ言うと彼は何も言わずにそのまま立ち去って行った。
(………まさかとは思うけど、本当に来ないよね?刀夜くん……)
誰よりも私自身を見てくれ、そして私に正しい道を示してくれた彼。私と同じような境遇にありながら、決して道を間違えることなく自己犠牲という言葉を知らないかと思うほど自分のことを顧みない。そんな彼だからこそ周りの人に慕われているし、私自身も彼に惹かれた。
力を誇示するようなことをせずとも、みんなを統率していける彼はきっと誰よりも王に向いているのかもしれないと思うこともあった。だが彼は、面倒だから嫌だと言い、明らかに大変な役割に自ら就いた。
だから、私は彼にこれ以上迷惑をかけないために彼以外で最もCCGやVに狙われる可能性高い自分を彼から遠ざけるためにわざと捕まりコクリアと入った。
彼には、ハイルちゃんや雅ちゃんのように特別慕ってくれている娘がいるのだから私がいなくても大丈夫だろう。そう思ったから、、
私自身がどれだけ寂しく感じようと、彼が少しでも幸せになれるのならばその方がずっといい。そんな風にすらも思わせてくれる。
(……お願いだから、こんな所に来てくれないでくれよ。刀夜くん)
彼がこれから少しでも幸せに過ごせること。ただそれだけを祈り、私は彼がこんな所に来ないようにとただ願った。
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