投稿遅くなって、申し訳ございません。
突然のことに驚いた僕だったが、エトさんの行為をそのまま受け入れた。
一瞬のことだったが、僕にとってはとても長く愛おしい時間だった。
そして、僕らはこの場の雰囲気に後押しされるように部屋へと移動し、今までお互いの心の隠していたものをぶつけた。
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(もう朝か……)
昨日、金木くんたちの結婚披露宴を抜け出し僕は初めてエトさんに想いを告げた。その後は、お互いにただ欲望に従い交わりあった。
隣で寝ているエトさんの姿を見る限り、夢などではないようだ。
「……ん……ん?」
エトさんの顔を眺めていると、夢から覚めたエトさんと目があった。
僕と目があったという事実にまだ困惑しているのか、エトさんの頭にはわかりやすく疑問符が浮かんでいる。
「おはようございます」
先に起きた者の余裕を見せつけるように、僕は冷静に返した。
未だに困惑しているエトさんを見れていることを考えても、先に起きた役得はかなりある。
「……はぁ。墓場まで持っていくつもりだったのに」
一通り悶え切った後、エトさんは大きくため息を吐いた。
空気に後押しされてしまったとはいえ、お互いに秘密にしておくと決めていたことを曝け出してしまったという後悔はある。
お互いに顔を逸らすこともなく見つめあい、沈黙を続けた。
「……あの」
沈黙に堪えかね、言葉を発しようとしたが僕の口は思うように動いてくれなかった。
昨日、今まで気づいてはいたがお互いに知らない振りをしていた想いを伝えあってしまったことで、今までのように知らない振りを続けるというのは難しかった。
しかし、自分たちの役割を理解しているからこそ、お互いを大切な存在にしてはいけないということも頭では理解している。
それでも、僕は「昨日のことは忘れましょう」とは言えなかった。
「エトさん……僕はあなたのことが好きです」
反発する心と頭を振り払い、僕は素直な気持ちを伝えることにした。
この判断が正しいはずがないが、僕はこれ以上無視し続けられる自信がなかった。
「……馬鹿だなぁ、君は。改めて言わなければ今まで通り過ごせたのにさ」
そう言ったエトさんの目には涙が見えた気がしたが、そのまま振り返られてしまった。
「私たちには必要のないものだと思ってたのに、どうしてだろうね。今じゃ、君がいない世界なんて考えられない」
「……僕もです」
目的のために生き、孤独であることを当たり前だと受け入れてきた僕らには不要のものであった存在。
「…こりゃ、刀夜くんより先に死ぬわけにはいかなそうだね」
そう言ったエトさんを僕はその存在を確かめるように抱きしめた。、
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それではまた次回