転生した俺はなるべく戦わず傍観に徹したい   作:ゼルトナー

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 英霊召喚。
 今宵招きに答える英霊は何者か?
 それを知るものはいない。
 故に、すべては運次第である。

 ※投稿の際にこちらの手違いで誤ってプロローグを削除してしまいました。本当に申し訳ありません。


プロローグ

 住宅街の明かりが消え始めた頃、闇夜の星空に人々の安らぎを見守るかの様に満月が神々しく煌めいていた。

 

 煌めく月明かりの下で眠りについて夢を見ている人々もいれば、夜遅くまで活動を続けている人々もいる。

 

 その動きは人それぞれと言うべきものだ。

 

 そんな夜の中、住宅街に並ぶ家のひとつで他と違い変わった動きが起きていた。

 

 家の形状は至るところで確認できる二階建ての一軒家と普通の家だ。

 

 だがこの家が他と違うところがいくつかある。

 

 そのひとつが地下室の存在である。

 

 地下に繋がっている筈の階段は見当たらず、どのようにして地下に移動するのか普通に考えては理解できない。

 

 そう、普通に考えてはであるが。

 

 この世界では魔術、魔法等と呼ばれる否科学的存在が影ながらに確認されている。

 

 この家の地下への移動方法はそれらで言う二つの魔方陣を経由して転移を可能とする転移魔法と呼ばれるものである。それならば階段が無いことにも納得が出来る。

 

 その転移の魔法陣に魔力を注げると蝋燭で辺りを照らす地下室に問題なく転移することができる。

 

 無造作に放置され埃をかぶっている分厚い本、机の上に散らばる怪しげな薬品、ホルマリン漬けにされた生き物の死体などがその部屋の不気味さを一層際立てていた。

 

 この部屋は地下室ではあるが、より正確に呼ぶのならば、魔術工房と呼んだほうが良いだろう。

 

 そんな狂気に満ち溢れ、正気を疑う場所に一人の青年がそこに佇んでいる。

 

 黒のシャツに白衣を着た男の見た目は黒目に黒髪と十人中七人は二度見してしまいそうな顔立ちをした男は地下室に置かれている古時計を確認していた。

 

(夜中の二時まで後少しか……)

 

 時間を確認した男は何かを待っているかの様だった。

 

 何を待ってないるのか定かではないが、それを予想させるものが男の足下に七つ描かれていた。

 

 それは魔方陣だ。魔法陣にはどのようにして入手、あるいは生成したのか不明な虹色に輝く星を連想させるような石が魔法陣に三つずつ置かれていた。

 

その石が気になるところではあるが、複雑な魔法陣を見れば分かるが、誰が見ても高度で大規模な魔術を行使しようとしているのは理解できる。

 

(ようやくだ。ようやく、この日がきた)

 

 男は待ち続けた。この日を、この日のために、この日のためだけに、男は多くのものを棄ててきた。

 

 それだけの理由が、それだけの価値と意味がこの儀式にはある。

 

 そして古時計がボーン、ボーンと二時になったことを報せた。

 

(時間か。……さあ、始めよう)

 

 己の体に高純度の魔力が最高潮にまで満ちたのを感じ取り、男は包帯で包まれた手を胸に置いて深呼吸をする。目を閉じた男はこれまでの経緯を振り返っていた。

 

(辛い、辛い日々だった。だが、それも今日で終わりだ)

 

 目を開いた男は魔方陣に向けて己の利き腕たる右手を差し出して呪文を唱え始めた。

 

 ―-素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 

 ―-降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

 ――閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

 ――繰り返すつどに五度。

 

 ――ただ、満たされる刻を破却する

 

 ――告げる

 

 ――汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 

 ――聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

 ――誓いを此処に。

 

 ――我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

 

 ――汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!

 

 詠唱を唱え終わると同時に魔方陣とその上を三つの光の輪の輝きが今まで以上の輝きを放ち、強風が吹き溢れた。

 

 その輝きは地下室全体を覆い尽くし、魔力を伴った風は地下室の固定されていない物品を吹き飛ばし、部屋を照らしていた蝋燭の火を消し飛ばした。

 

 視界を真っ白に潰した光がどれ程の間覆ったのか不明だが、それらが止むと辺りは埃と塵、砂塵に霧などで視界が遮られているが、男が方膝を付いて肩で息をしているのは霧などの合間で確認できていた。

 

 包帯に巻かれた腕に刻まれた赤い痣、令呪が二十一画あるのを感じた男が息を整えて立ち上がると魔法陣には人影が七つあった。だが...

 

(………ハハッ、やった、やったぞ。成功した、成功したぞごふおあ!?」

 

 男が歓喜で満ち溢れそうになったのと同時におびただしい血を吐いた。

 

 ここで突然だが一つこの男について語ろう。彼はこの世界、歴史上に存在する魔術師達の中でもとある理由から規格外を通り越している質と量の魔力を保有している。それほどの魔力を保有した人間だと知られれば、悪魔や堕天使などによって無理やり自陣営に連れ込まれて実験動物確定間違い無しの人生を送ることになるだろう。

 

 そんな男にも欠点がある。致命的な欠点が。

 

 それは彼の体が魔術を使役するのに適していないのだ。

 

 過去、彼が手のひらに炎を創り出した時は魔術回路がズタズタに引き裂かれ、炎の制御が取れず腕が燃え上がっただけでなく、周囲の物を焼き尽くした程だ。

 

 幸いなことに炎を出した場所が魔術工房だったおかげで隣や向かいの家に火が移ることはなく、一般市民に死傷者が出ることはなかった。

 

 代わりに貴重な魔術本や聖遺物、量産中だったホムンクルスベビー達が焼失したが致し方のない犠牲と思うしかない。

 

 それはさておき、大きな欠点を持つ彼が世界の枠を飛び越えて過去の英雄、英霊を七騎も同時召喚すれば何が起きる?

 

 答えは極めて簡単にして単純だ。

 

 魔術回路が今まだかつてない程に引き裂かれ、その影響は身体全体に響き渡り、脳にすらダメージを与えた。

 

 男は声にすらならない悲鳴をあげる。自身の体はかつてない痛みが走り、神経に留まらず細胞の一つ一つ至る所すべてががピシピシと音を起てて壊れていく。

 

 (痛い痛い痛い痛い痛いっ!!)

 

 それだけが男の頭の中を支配し掻き乱していた。

 

 口から血を吐き出すだけでなく、目からは血涙を流し、耳や鼻、果てにはあらゆる血管からも血を吹き出していた。突如起きた体の異常に男は体を掻き毟る。この痛みを止めたいと。この苦しみから解放されたいと。いたずらに男は体を余計に痛めつける。

 

 そして体から痛みが無くなった刹那、立つことすら出来なくなった体はマリオネットの糸が切れた様に力無く両膝を床に着き、前のめりに倒れようとしていた。

 

 (ああ、やっとこの痛みから解放されるのか…...)

 

 ある物が原因で簡単に死ぬ事を許されない男は意識を手放す時に安堵しながらゆっくりと深い眠りに着いた。

 

 だが、男が床に倒れ伏せることは無かった。

 

 男の体を受け止める者がいたからだ。

 

 受け止めた者はたった今召喚された英霊が一人、剣士、セイバーのサーヴァントである。

 

 セイバーは視界の晴れた先に血だらけの男が倒れそうになっていたのを目撃すると、反射的に血だらけの体を受け止めていた。

 

 安否を確認する為に声を掛けようとするが、剣士は男の顔を見ると喉まで出かけた言葉を止めた。

 

 実に、実に気持ち良さそうに寝ているのだ。

 

 英霊の召喚、それも一騎だけでなく七騎の同時召喚だ。一騎だけでも多大な魔力を消費するのに七騎も召喚すればどうなるのか瞬時に理解できた。

 

 今このときだけは安らかに眠らせておくべきだと判断したセイバーは手頃なところに置かれていたソファーに男を寝かした。

 

 安らかな眠りについた男を見守る英霊達は己がマスターであろう人物に歩み寄る。

 

 竜殺しの剣士が。

 数多の大英雄を教育し大成させた弓兵が。

 光の御子たる槍兵が。

 歴代最高のファラオである太陽王たる騎兵が。

 おとぎ話の概念が英雄になった魔術師が。

 ロンドンを震撼させた連続殺人鬼の暗殺者が。

 十二の試練を乗り越えた大英雄の狂戦士が。

 

 眠りについている男が膨大な時を捧げて築いた世界の枠を超える橋は、それに見合う最高の英雄を招くことができた。

 

 そしてこの日、この場所で有り得ざる奇跡が起き、彼らの今後の活動により本来の物語がねじ曲げられることが今ここで確定した。

 

 

 

 




 誰が召喚されたのか、わかりましたか?自分で書いてて色々とヤバイと思っていますが、これに加えてまだ七騎は出すんですから笑えないですよ。

 久しぶりの投稿ですが、仕事の関係で投稿が不定期かもしれません。次回はなるべく早めに投稿していきます。
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