比企谷八幡バイト始めました   作:猫と果実

18 / 18
かなりお久しぶりです皆様!
やっはろーでございます!

本当に更新せずにすみませんでした。
嫌だと思わず読んでいただけたら幸いです。



ボッチバイト始めました⑱

人間は欲求というものがあり、食欲、性欲、睡眠欲と呼ばれる三大欲求がある。

人は面倒くさいもので、欲求が満たされてないと考えなしに行動してしまう、大人でも子供でもだ。

いつもは冷静な判断が下せる筈なのに、脳が働かない事態に陥ってしまう。

だから欲を満たすのは大切な事だ、そうして人は人でいられる。

冷静な俺が一日を平和に過ごすために必要な事。故に俺は本能に従っているのだ。

「……小町後五分」

「もう起きないと遅刻しちゃうよ!!ほら起きる!!」

「……わかったよ」

「高校生3年生になっても妹に起こしてもらわないといけないなんて……ほんとごみぃちゃん♪」

なぜ嬉しそうにしているの小町ちゃん?お兄ちゃん不安になるよ……

「千葉の兄妹だから良いんだよ」

「はいはいそうだね、朝ご飯出来てるからね急いでね~」ガチャバタン

「……はぁ起きるか」

 

 

今日も妹に起こされ一日が始まった。

妹に起こしてもらうのは、千葉の兄妹として嬉しいことなのだが……今日はきつい。

なぜなら俺は寝不足だからだ……えっ?なぜって?

……昨日の出来事が頭から抜けず、気付いたら朝になってました。

またも黒歴史が増えていく……もし一色に『セクハラ先輩』など言われたら社会的に死ぬ。

もう嫌だ!!なんでこんな不運な事ばかりが続くんだ!?

元祖不運主人公はなんたらブレイカーがあるのに……俺にも特殊能力をくれ!!

「お兄ちゃんいつも以上に目が濁ってるね?」

自転車から降りた小町が、俺の顔を見て変化に気付く。

でも小町ちゃんや、もう少しオブラートに言ってくれるとお兄ちゃんのメンタルも削られなくて嬉しいんですけど……

「少し寝不足でな」

「眠いからって授業中寝ちゃダメだからね!先生達からの印象がより悪くなちゃうから!」

「はいはい」

受験生だから心配してくれるのはわかるが、より悪くなるって…もう印象悪いって言ってるようなもんですよ小町??

「寝てたら雪乃さん達に報告してもらうからね!」

「えっ」

「それじゃまたねお兄ちゃん~」

俺に安息の地はない……昼休みに寝るしかない……はぁ行くか……

 

 

「や、やっと昼休みだ」

小町の言いつけを守り、授業中は寝ずに前半を終えた。

正直いつ落ちてもおかしくなかったぜ……だが隣の雪ノ下が目を光らせていたので、寝たくても寝れなかったです。

まさか監視の目が厳しいとは思っていなかった…そんな事でやる気出すなよ雪ノ下先輩…

「ふぅ…腹減ってないし昼寝しよう」

今は食事より睡眠を優先してベストプレイスでの昼寝をする。

教室で寝るのもありだが雪ノ下の目線が辛いので今日はベストプレイスだ。

寝るために事前に用意したタオルを頭の下に敷き目を瞑る。

「やべぇ…これ…す…ぐ…寝…zzzz」

春の陽気と、蓄積された眠気によってすぐさま眠りに落ちた俺。

端から見たら『こいつ一人でなにやっての』状態になっているだろう。

いつもならその事態にらならいよう昼寝などはしないのだが、今日の俺は眠気に負けた。

「zzzz」

俺は深く深く眠りに入ってしまった。よっぽどの事がない限り人が来ないベストプレイス。

だからこそ安心して夢の中に簡単に入ってしまった。

しかし人間不思議な事に、普段しない事をすると神の悪戯の如く何かが起こる。

本人が気付くか気付かないは別にして。

 

 

「居た…」スタスタ

「…zzzz」

「…寝てるしこいつ」

「zzzz」

「……こいつの顔しっかり見るの初めて…目閉じてると結構格好いいかも…」じー

「うーん…」

「っ!!」

「…ぐーzzzz」

「……ウチなにしてるんだろ、とりあえずこれ置いておこうかな」スッ コト

「うぅん」

「やばっ!」タタタッ

 

 

「………んぁ?」

今誰か居たような?気のせいか?

「うーーん、めちゃ寝た感じするな」

やっぱり睡眠って大事だな、しかし寝るところは選ばないとダメだな…体痛てぇ……

「んっ?」

体をほぐすために座りながら腰を回していると、なぜか俺の視界にマッ缶さんが現れた。

「…えっ?なんでマッ缶置いてあんの??」

総武高校ってMAX缶コーヒーの妖精でもいるのか?なにそれ会ってみたい。

「…やっぱり誰か来たのか?しかし知り合いなら起こしそうだし…でも俺がマッ缶を愛してるのを把握してるやつなんて限られる……」

名探偵八幡の推理の始まりだ。

「……由比ヶ浜は休みだし、雪ノ下は性格的にありえない、川崎もこんな遠回しな事するとは思えん、一色は…ありそうでないな…でも昨日の事を考えると……」

色々と考えたが正直に言おう、全然分かりません……

俺の知り合いでこんな慈悲深いやつ居ないんですけど……

「うーん」

普通に考えたら、こんな怪しい状況でこれを手にする事はない。

いつもなら気にせずに教室に戻る所なんだが……今の俺はマッ缶を求めている!!!

何故なら現在俺は寝起きな上に昼飯を抜いている、しかも昨日の一色とのデー……で、出掛けたせいで財布が寂しいことになっている。

心身ともに俺はこのMAX缶コーヒーを欲してしまっているのだ。

「……」キョロキョロ

少し周りを警戒し、誰も居ないことを確認してマッ缶を手に取る。

「誰か知らんがここに置いていったのが悪い…ってことにしておこう」

キーンコーンカーン

MAX缶コーヒーを飲もうとプルタブに指をかけたが、至福の時間を遮る様に昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴る。

「えっ!?もうそんな時間だったのか!?」

次の授業は確か……平塚先生じゃん…

「はぁ…説教でバイト遅れないようにしないと…」タタタッ

 

一応急ぎ足で授業に向かったが、まぁ普通に考えて間に合う筈もなく…

「私の授業と知りながら遅れてくるとは良い度胸だな比企谷…」

「せ、先生これにはとても深い訳がありまして」

「ほう…何をしていたんだ?」

「……寝てました」

「衝撃のファーストブリットォォォォ!!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!?!?」

結果、廊下で俺を待ち構えていた平塚先生に鉄拳制裁を喰らうハメになった。

俺はラストブリットまで生き残れるのだろうか……

 

 

「やっと放課後か……」

昼寝と平塚先生の一撃により睡魔は完全になくなり、後半も寝ることなく授業を受けられた。

まぁマッ缶の件に関しては考えるのを諦めた、正直考えても答えは見つからないとだろうと思ったからだ。

とりあえず無事に放課後を迎えることが出来たんだが……

俺は重大なミスをしてしまっていた事に気付いてしまったのだ……それは…

「一色のやつ他に言いふらしてないよね?」

我が高の生徒会長様の件でございます…

睡魔に負けてしまい全然対策を考えていなかった…何してんだよ俺…

しかし蓋を開けてみれば、いろはすからのアクションはなく放課後になり駐輪場まで来てしまった。

別に何も無ければそれで良いんだよ?だ、だがもし昨日の出来事を知り合いに話してたりでもしていたら……

「……はぁ」

今日は寝不足のせいでそこまで頭が回らなかった、今更気にしてもしょうがないのはわかっているんだけどな。

「やぁ」

そんな事を考えていると後ろから声がした。

いつもなら振り返りもしないのだが、周りに俺以外の人はおらず、尚且つその声の相手が知り合いだったからだ。

面倒だなと思いながら振り返りそいつを見た。

「……葉山か」

「少しいいかい比企谷?」

葉山隼人、総武高のアイドル的存在。

容姿端麗であり、勉学もスポーツとこなすイケメン高校生だ。

俺とは正反対なリア充代表と言える。

そんなリア充王の葉山さんが、ボッチ王な俺になんの様かな?

俺は鎖国していたんだから話しかけるなよ…

「忙しいから無理だ」

「この後バイトがあるからかい?」

なんで俺がバイトしてんの知ってるんだよ…

由比ヶ浜辺りから聞いたのか?個人情報流失し過ぎだろ…

「バイトしているっていう話を聞いたのは優美子からだ、結衣からは何も聞いていないよ」

俺の心の内を察してか、質問をする前に答えを言ってきた。

なに?最近は心を読むとかポピュラーな能力なの??

…てか三浦から聞いたのか

「…平気なのか」

なぜこの様な質問を葉山に投げ掛けているのかというと、最近三浦は葉山に告白して振られている。

その事実を知っている俺としては、葉山と三浦が普通に話していることに少し驚いている。

俺の予想だと二人はギクシャクして疎遠になっていると思っていたんだが…

「そうだね…まだ少しぎこちない感じではあるけど、前より信頼をおける仲になれると思うよ」

「…そうか」

前よりか……完全な友達としてって言いたい感じなのか?……まぁどう転んでも俺には関係ないな。

「だけど優美子がこんなにも早く立ち直ってくれると思ってなかった……優美子曰く誰かさん(・・・・)のおかげで吹っ切れたと言っていたよ」

含みのある言い方をする葉山、あたかも誰かさんの正体をわかっている様に言う。

誰かさんね……誰のことやら

「…それで用件はそれだけか」

これ以上こいつと居ると海老名さん辺りに良からぬ噂をたてられそうだ…八幡怖いっ!

「比企谷」

葉山は俺を呼ぶとスッと頭を俺に下げてきた。

「はっ?な、何してんだお前?」

「ありがとう」

俺は葉山の行動にも驚いたが、その体勢から発せられた感謝の言葉を聞いてより驚いた。

正直なところ俺は葉山が嫌いだ。

そして恐らく葉山も俺の事が嫌いだ。

俺らはリア充とボッチ…対極な存在に近い、立場だけではなく考え方も真逆だ。

水と油の様な関係だからこそ、この葉山が素直に感謝を示す事に驚きを隠せなかった。

「俺が比企谷にお礼を言うのは意外かい?」

葉山は顔をあげて少し笑みを浮かべながら俺を見る。

「まず俺に礼を言う意味がわからん」

「君は何を言ってもそう答えそうだね」

俺は別になんもしていないから当然だ。

てか分かってんなら言うなよ…

「あっそ」

「ああ」

無駄にいい笑顔でこっち見るのやめてくれます?

あれか?そのイケメンスマイルで洗剤のCMとか狙ってんのか?

「話は変わるが今度バイト先に遊びに行っていいかい?」

「何言ってんだ嫌に決まってんだろ」

「それは残念だ」

なにさりげなく許可得ようとしてんだよ…

てか絶対残念だと思ってねえだろこいつ。

「用件が済んだなら俺は行くぞ」

「後一ついいか?」

またかよっ!めんどくせぇなこいつ…

「…なんだよ」

「今日いろはが機嫌が良かったんだが何か知っているかい?」

「なんで俺が知ってると思ったんだよ…知るわけないだろ」

「そうか…ペンギンの刺繍が入ったタオルを褒めると凄く喜んでいたから、機嫌が良いと思ったんだが気のせいかな?」

「…そ、そうか」

こ、こいつわざとか?俺の事をからかってんのか!?絶対分かって言ってんだろ!!

「戸部がタオルを触ろうとした時のいろはの顔……なかなかの迫力だったよ…」

戸部……なんかあいつ無駄に可哀想だな

「…もう満足したか」

「ああ満足したよ」

はぁ…こいつの考える事は分かる様で分からねぇ。

俺にどんなリアクションを求めてんだか

「そんじゃ」

「時間を取らせて悪かったね、それじゃまた」

葉山は俺に声を掛けグランドに駆け足で向かっていった。

俺も急いで行かないとバイト遅れちまうな。

「…行くか」

チャリに跨がりバイト先に向かうため少し強めにペダルを漕ぎ校門を出た。

 

「……君は色んな人を変えてしまうんだな」

俺には出来ない方法で皆を幸せにしていく不思議なやつ。

決して褒めらたやり方ではないが、俺自身も救われた事もあった。

今回は優美子の立ち直りにも関わっていたし、いろはが以前より素直になってきたのも彼のおかげだろう。

自己犠牲か……彼の行動は本当に捻くれた愛情表現だと俺は思う。

……だがそんな彼だからこそ

「…雪乃ちゃんは彼に惹かれるのか」ぼそっ

らしくない事を考えてしまった……切り替えないとな、こんな俺は皆の知っている葉山隼人じゃない

「やっとみつけたべー!!」

俺を探しに来た戸部が手を振りながらこっちに向かってくる。

気付いたらそろそろ部活が始まる時間になっていた、部長が遅れるのはさすがにまずいな。

「さて部活するか」

遅れを取り戻す様にグランドへと走りだした。

 

 

「ふぅ間に合った」

自転車をチャリ置き場に置いて、鞄から従業員用の鍵を出す。

「やべぇ疲れた…少しペース上げただけでこれかよ」

息切れが半端ねぇ…こりゃ少し運動しないとやばいな…

いや八幡考えるんだ…これを口実に戸塚とテニスすればよくね?

自然な流れで戸塚成分を補給出来るぜ!!

「…さすがにこれはキモいな」ガチャ

そう戸塚の事を考えながらドアを開ける。

「お疲れ様です…んっ?」

最近見慣れてきた従業員休憩室なんだか…

なぜか机の上には見慣れない物が置いてある。

「…数学?これは中学生の教材か?」

教材なんて見るのは学校だけで充分だってのに…

しかも数学…これは排除すべきか

教材を持ちこいつ(数学の教材)の今後考えていると

「誰?」

「んっ?」

後ろから俺の名前を呼ぶ声、そして聞いたことある声だ。

振り替えるとそこには

「…鶴見留美か?」

「八幡??」

中学生の制服を身にまとった鶴見留美が居た。

鶴見留美ことルミルミ。

俺が二年の時に奉仕部関連で知り合った小学生の女の子だ。

まぁ今は中学生一年になったのか

ってそんなことよりなんでここに留美が??

「えっと…ルミルミでいいんだよな?」

「うん、てかルミルミって言うな」

このセリフ本物のルミルミだ

「なんで留美がここにいるんだ?」

「それはこっちのセリフなんだけど」

全然状況が掴めないんだが…ここ関係者以外立ち入り禁止だしな

「おーい留美ちゃーん!」

そう疑問に思っていると裏に店長が留美コールをしながら出てきた。

「あっ!ハチくん!来てたんだ!」

「お疲れ様です店長」

「どうしたの?」

「留美ちゃんもハチくんもお疲れ様!」

相変わらずテンション高いな…てかまずはこの状況を説明してくれ店長さんや

「今日ハチくんが来るよって留美ちゃんに説明するの忘れてたの思い出してね!」

相変わらずの伝え忘れ…もう会ってますよ

「てか店長は留美と知り合いだったんすね」

「うん!ということはハチくんも留美ちゃんと知り合いなの?」

「はい」

「なんだぁ!留美ちゃんも言ってくれればいいのに!」

「私八幡来るの知らなかったんだけど…」

「まぁまぁ!二人が仲良しなら安心したよ!!」

この人の脳は知り合い=仲良しの方程式が出来上がってるよ…

「べ、別に仲良しって訳じゃ///」

中学生にも否定されちゃう俺……べ、別に悲しくないもん!!

「知り合いなのは分かったんですが、なぜここに留美が?」

「説明は留美ちゃんから聞いてくれるかな!僕お客さん対応してるからさ!」

「は、はい」

あの人ほんと何しに来たのよ…てかお客さんをほったらかしにするなよ!?

「はぁ…それで何故ここに?」

「私の親がおじさんと昔からの知り合いなの」

店長コミュニティーの幅が広すぎて怖い……変な事噂されたらあっという間に地域に殺される…

「それで私の親が出張で家に居ないから、子ども一人じゃ危ないからおじさんの家に泊まる事になったの」

「なるほどな」

確かに女子中学生が一人で生活するのは危ないから納得だ。

「それで勉強してたのか」

「やることないしね」

「とりあえず俺は仕事あるから」

そろそろ着替え始めないとまずいからな

お客さんも居ることだし急ぐか

「頑張って八幡」

そう言うとルミルミは勉強を再開する。

「ルミルミもな」

「ルミルミ言うな」

さて俺も着替えて真摯に勤めますか。

 

 

(…びっくりした)カキカキカキ

(だっておじさんの店で八幡がいるんだもん!)カキカキ

(他の人達と違って私は八幡に気軽に会えないし…だから嬉しいな)カキ

「…///」

おっ?真剣に勉強して…る?

なんかにやけてるように見えるんたが…そんなに勉強好きだったのか?

「はかどってるか?」

「ひゃ!?」

「うぉ!?」

そんな驚くとは…こっちがびっくりしたわ

「大丈夫か留美?」

「……」

「お、おい大丈夫か?」

「……」 ぽけー

反応がないただの屍のようだ。

いやそれはまずいって、驚いてショック死とかコミカル過ぎたろ!?

「ルミルミ?」

「は、はい!」

珍しく『ルミルミって言うな』が無かったな

あれだな言われないと少し寂しいやつだ。

どこぞかのアラャラャギさん的なあれだ。

「…は、八幡…さん?」

「…数学のし過ぎておかしくなったか?」

「…やっぱり八幡だ」

なんなの?眼鏡初見はこれがテンプレなの?

絶句とかやめてくれない?唯一けーちゃんだけだよ褒めてくれたの…

「そんな仕事姿が意外か?」

「う、うん」

「そうか」

まぁ専業主夫志望の俺がこの姿は確かに驚く。

数ヶ月前の俺に会ったら『そろそろ死ぬのか?』とか言われそうだ。

ハチくーん!!!!!

「んっ?店長が呼んでんな、そんじゃ無理しない程度にやれよ」

「…うん」

何があったらあんな大声で呼ぶんだよ…

とりあえず行くか。

 

 

ガチャバタン

「………八幡格好いい///」

「はっ!だ、誰もいないよね!?」キョロキョロ

凄い勢いで周りを見渡す鶴見留実。

(よ、良かった誰もいなかった…)

「でも本当にかっこ良かったなぁ…」

ぽけーとしながら遠目で扉を見る留美はまさに恋する中学生だ。

「そ、そうえば私驚いて変な態度取っちゃった…」ズーン

(素直に格好いいって言えば良かった…で、でもあれは反則だと思う!)

(普通の時でも八幡は格好いいお兄さんって思ってたのに、急に眼鏡かけてウェイターの格好されたら……)

「…もっと格好いいお兄さんになっちゃうよ///」

「留美ちゃーん!勉強中ごめんね!ちょっといいかな?」ガチャ

「ひゃあ!?」

「うん?大丈夫??なんでそんな驚いて…ちょっと留美ちゃん顔がこ、怖いよ??」

「おじさん…ちゃんとドア開けるときはノックして」

「は、はい…って頼み事があるんだけどいいかな?」

「なに?」

「お手伝い頼めるかな??」

 

 

ハチちゃーん!注文お願い!

ハチ君コーヒーのおかわり頂けるかな?

すみません!子供用の小皿もらっていですか??

「今参りますので少々お待ち下さい!」

店長に呼ばれて来てみれば、ご覧の通りの忙しさでございます。

待て待てどこが安らぎだ…店の名前変えないと…

現在なんのピークか分からないが、満席になりしかも待ちのお客さんもいる状態。

正直な話二人ではカバー仕切れない。

「ご注文お伺いします」

お冷やとおしぼりをお持ちして注文を聞く、慣れてきた動きではあるのだが

今日は限って新規のお客さんも居てメニューの説明をしなきゃいけないので思ってるより時間を喰う。

「ハチ君!一旦厨房手伝って!」

バタバタと仕事をこなしていると、厨房から顔を出した店長が俺にヘルプを寄越している。

いやいや表に店員いなくなるのは今の状況はきついだろ!?

「いやさすがにそれは」

「貸して」

「はっ?」

店長に意見を述べようとした瞬間後ろから声をかけられた、そして手に持っていた道具を取られてしまう。

「ちょっとなら私も手伝えるから」

そして後ろを向くとルミルミ(仕事着)が現れた。

少し見ない間に伸びた髪をポニーテールにして颯爽と注文を取りに行く。

その姿はなぜか様になっており、滞りなく仕事をこなす。

いやいやなんで普通に出来るんだよ…

「中学生に仕事手伝わせてるんですか…」

「忙しいからしょうがないよハチ君!留実ちゃんには前にも手伝ってもらったことあるから!」

「はぁ」

「ほらハチ君行くよ!」

「ちょ!?襟をつかまないでください!」

気付いたら横に来た店長は言い訳を述べ、俺を厨房に引きずり込んでいった。

 

 

「ありがとうございました」

最後のお客さんを見送る。

「終わったね」

「おう」

ルミルミの手助けによりなんとかピークを乗り切った。

「二人とも忙しい中お疲れ様!!留実ちゃんは急遽頼んじゃってごめんね!」

「ううん、泊まらせてもらうから手伝うのは当たり前」

こいつしっかりしてんな…一年前までボッチの部類だったんだか

「ありがとうね!とりあえず留実ちゃんそのまま着替えて休んでていいからね!ハチ君は片付けしちゃおうか!」

「はい」

「私も手伝う?」

なぜ店長ではなく俺に聞くんだよ…

まぁこのぐらいの歳は何かと役割をこなしたがるからな

「ルミルミは休んどけ、俺も後で休憩入るから机の上片しておいてくれ」

「わかった、後ルミルミって言うな」

いつのもやりとりをして留実は休憩室に入っていった。

うん、そのセリフあってこその鶴見留実だな。

こうやって頼み事を+して言うとすんなり言うことを聞いてくれたりする。

これは小町が小さい頃に説得するときよく使った手だ。

『小町もお手伝いする!!』

『小町がやるとお菓子バラバラにしちゃうだろ』

『むぅ~!!』

『だから小町にはテーブルを拭いてもらう大事な仕事をしてもらう!』

『大事な仕事!!』

ふっ懐かしいぜ…あの頃は素直で天使だった

『そこでグータラしてるごみぃちゃんゴミ出してきて、出してこないとご飯抜き』

『…はい』

今は毒舌な天使になっちまったぜ…

えっ?堕天使の間違い?なに言ってたんだ小町は悪態ついたとしても天使だ

でもお兄ちゃん少し辛い…

「さてと片付けするか」

手馴れたように片付けからセッティングまでこなしていく

ふっまだまだ中学生には負けないぜ!

「…バイト先に中学生いるって現状がまずおかしいな」

忙しさにかまけて手助けとして受け入れていたが

まぁ普通に考えたらあり得ないじょうきょうだな

どこぞかのラノベ設定じゃあるまいし…

事実ラノベなら好かれる所をルミルミはあまり俺の事好いてないしな

まぁ毛嫌いされてないってのはさすがにわかるけどな

「ハチ君!今のうちまとめて食器洗っちゃおうか!!」

「はい」

キッチンからお声がかかってしまった…

正直手が荒れるから洗いは嫌いだ。

「ハチ君のためにいいゴム手袋新調したよ!」

「…ありがとうございます」

これで手が荒れるから皿洗いはちょっと…という逃げ道は使えなくなりました…

 

 

「ふぅ…やっと休憩だ」

片付けを終えて休憩に入る。

基本的にうちの店はツーマンセルで働いている事が多いので、休憩室を一人で使うことが出来る

まぁ今日はルミルミが休憩室の主になっているがな

「お疲れ……寝てるのか?」ガチャ

休憩室に入ると椅子に座ってテーブルに腕枕をして寝ている留実が居た。

まぁ普通は疲れるよな、大人に混じって仕事してんだもん。

俺だったら即帰ってるわ…

起こすのも悪いしソファの方で本でも読むかな。

「…は…ま」

「んっ?寝言か?」

何を言っているのか気にはなるが、こうゆうことは聞かない方が身のためだ。

もし女子中学生の寝言に聞き耳たてていたのがバレたりしたら完全なロリコン扱いされてしまう!

「とりあえず本読むか」

テーブルの上に読もうと思い置いておいた本を取る。

「はち…まん」

「…えっ?」

テーブルに近づいた拍子に寝言を聞いてしまった。

これは完全な不可抗力だ!俺はわ、悪くないぞ!?

ってそれよりも…こいつ俺の名前呼んだよな?

いやもしかしたら俺と同じ名前のやつか?

それとも八万円とか言おうとしたのか?

くっ!中途半端が一番気になるわ!

いやこれは聞き間違い…そうゆうことにしておこう。

「はちまん…おにい…ちゃん」

「なっ!?」

ルミルミの『会心の一撃』

ハチマンは352のダメージを受けた。

な、なんという破壊力だ…HPごっそり持ってかれたわ…

今度の寝言はしっかりと俺の名前を言っていた、しかもお兄ちゃん付きだ。

生粋のお兄ちゃんとしては妹は何人いても最高!!と全国のお兄ちゃんズも納得の共通認識がある。

「……」ジー

あまり留実の事をしっかり見たことなかったが

顔立ちも整っておりわりと頭もいい、将来は雪ノ下バリのハイスペック美女になりそうだ。

だが間違えないで欲しい俺はロリコンではない!

妹としてカテゴリーでルミルミを見るなら最強の部類に入るであろうと考察はしている。

比企谷家のアイドル小町と戸塚に迫る勢いもあるだろう。

「…はっ!」

お兄ちゃん発言に釣られてルミルミをガン見してしまった…

そろそろ自重しないと…さて起きないうちにソファに移動を…

「あっ」ガタン

動いた拍子にテーブルの角にぶつけてしまった!

なんというテンプレ行動をしてるんだ俺!?

「…ふにゅzzz」

「…ほっ」

よ、良かった…わりと近くにいたから起きてたらアウトだったわ…

バン!

「えっ?」

下を見ると読もうと置いておいた本が見事に地面とご対面。

そして俺は

「…んっ…おにい…ちゃん?」ぽけー

寝ぼけたルミルミとご対面…

「……お、おはよう」

「……ふぇ?」ぽけー

「……」

「……は」

あっめちゃ顔真っ赤になって来てるんですけど

ヤバイ気がするんだか…

「ま、待て!落ち着けルミルミ!」

「八幡の変態!!!」

ばっちーん!!!

「ぐわっぁぁ!?」

見事なビンタを喰らう俺は二度と安易に女性の寝顔を見ないように誓ったのだ。




久しぶりに書いたので不明な点が多そう…

最後まで読んで頂きありがとうございます!
少し人生において色々ありまして
更新は前のようにはいかなくなります。
それでも楽しみにしてくださってる方ありがとうございます。
気長に待って頂けたら嬉しいです!
またまたよろしくお願いいたします!
ではご機嫌よう!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。