なにも知らない転生者がカードキャプターさくらの世界で活躍させる物語(仮) 作:極麗霊夢
クロウ・リードのアフターケアのお陰か、三日で退院出来た。
そもそも傷は既に完治していて、入院も検査入院のような様子を見るためのものだから、そんな大袈裟なモノじゃない。
そして退院した日は土曜日で、医師からは大事をとって今日まで学校を休みなさいといわれた。
オレにとっては四連休ということになるのか。
会計を済ませて病院から出ると、黒塗りのリムジンがドンッと待機してあり、眺めながらも家に向かおうとしたら、リムジンの方から聞き覚えのある声が聞こえた。
「ちょっと待ってくれるかしら、桐生祐介……くん」
振り向けば、リムジンの後ろの窓を開けて、こちらを見てる女性。
そう、確か……
「とも……大道寺さんのお母さん」
大道寺園美。
さくらの母である木之本撫子さんの親戚であり、友達であり、そしてさくらの父である木之本藤隆さんとは教師と生徒の関係。
さらにオレの母さん、桐生巴の先輩となかなかに世界は狭いとしか言いようがない。
「ちょっと……良いかしら? 巴のことで」
「…………ええ、はい」
聞かれる事は母さんのこと……はてさて答えれることなら良いけど。
○
場所は変わり、高級料理店の個室。
懐石料理のような用意するのに時間が掛かるモノを園美さんが、注文して話を切り出した。
「どこから話そうかしらね……んー、、、そう、まずわ、よ」
「はい」
「あの子……巴よ。 学生時代の付き合いだけだけど、部活は同じ陸上部だったからある程度知ってるんだけどね。 あの子、他人……いえ、男……かしら……に興味がなかったのよ」
同性愛者。
別段、母さんは元々そういう気があったらしい。
それは園美さんや撫子さんにいろいろと懐いていたと、園美さんが苦虫を噛み締めたかのような顔で言った。
「そんなあの子がまさか子を作るとは思わなくてね。 確かに卒業してからの付き合いは無かったけど、、、あ、別に貴方があの子の子じゃないとか疑って―――」
あの子の子じゃない……。
違う……。
母さんの子じゃない……。
違う……。
晴明様の再来と呼ばれた子が、あんな出来損ない。
違う……。
出来損ない。
オレは……。
龍が産んだは、ただの鯉か……。
俺、は……。
もしや拾い子では?
おれ、は……。
おかしいのよ……。
違うんだ。
男を好きになるような子じゃない。
僕は確かに……。
そんなあの子が男と子を成すわけがない。
ぼくは……。
次期当主があの方の子と言われた方がしっくりきますなぁ。
…………。
目の前が暗くなり、そこにポツリと赤と黒の着物を着た女性が此方を見てる。
「ふ…の……」
私の方が、、、
「……っけるな!! オレは桐生巴の子だ!! 誰も否定させない! オレを!! 高々学生時代の先輩後輩の仲ってだけで、決めつけんな!! 一代で会社を興した財閥グループだろ!! 調べれる……調べたんだろうが!! その結果にオレとあの人は親と子じゃないとか出てたのかよ!?」
「え、ちょ……」
「母のお願いを聞いて病院手配して、その他諸々の事を処分してくれたのは助かるが、踏み込んで良いことと悪いことがあんだろ!!」
そう言ってオレは立上がり、静止する声を振り切って店を出た。
●
学生時代の後輩である巴の子供である祐介くんが退院すると、会社から報告を受けて彼に会いに病院へ行って、彼と話したいからと私の乗る車を見ながら帰ろうとする彼を引き止めた。
長話になると思い、いつも接待などで使ってる店の一番時間の掛かるモノを頼んで、彼に切り出した。
そう、それは彼が、本当に彼女の巴の子であるかどうか。
何故なら桐生巴という人間は、外の人間に興味を持たない。
興味を持つのは常に自分の中に入ってもいいと認めた人間だけだ。
それが私だったり、撫子だったり……。
その基準がなんなのか今でもよく知らない。
何故なら撫子が家に上げてお父さんを紹介しても、ただただ無表情での対応。
木之本先生ですら、最初は相手にされなかったくらいだ。
そんな彼女が子供を作ったなんて、信じられない。
養子にしたって言われた方が納得する。
だから密かに血液のDNA判定をした。
巴の血の入手が困難だったけど、コネとかお金とかフルに使って漸く……漸く、、、とある研究施設から研究中の巴の血を一滴だけ入手出来た。
勿論、それだけで判定が確定するなんて思ってもない。
何せ一滴だ。
それだけでわかるわけがない。
とりあえず、今は結果待ちだけど、私は祐介くんにそれとなく、あの子の学生時代を思い返すように質問した。
でも、それがいけなかったのだろう。
「子を作るとは思わなくてね」
この一言で、彼は豹変した。
「……っけるな!! オレは桐生巴の子だ!! 誰も否定させない! オレを!! 高々学生時代の先輩後輩の仲ってだけで、決めつけんな!! 一代で会社を興した財閥グループだろ!! 調べれる……調べたんだろうが!! その結果にオレとあの人は親と子じゃないとか出てたのかよ!?」
「え、ちょ……」
立上がり帰ろうとする祐介くんを止めようとするが、そう、私は一児の母として他人とはいえ子供に言ってはいけないことを言ったのだと今更ながらに理解した。
謝ろうとした言葉は、謝罪の言葉を受け止める子は既に居らず、私はその場からストンと腰を下ろして追いかけることすらせずに、これからどうしようかと悩んだ。
ピリリリ……。
と、そんな時、携帯から着信音が流れ通話ボタンを押して耳に当てる。
「はい……」
『あ、社長。 DNA判定出ましたよ。 医師からは本当に親子の血かと聞かれましたよ!』
「そう……じゃあ、やっぱり」
『
「…………………………え?」
『だから同じなんですよ! まったく! 遺伝子の配列とか!! こう、なんでしょう……そう同じ遺伝子を足したそんな感じ!』
「嘘よ、そんなあり得るわけ」
『ないと思いですか?』
私の小さな言葉を返したのは、先程まで声高に説明していた部下でなく、聞き覚えのありすぎる声。
まさかと思い、「誰?」と聞き返す。
『誰、とは私悲しいです。 でも、ダメですよ。 あの子のことは詮索無用。 あらゆる事柄に目を瞑って下さいって言ったじゃないですか、せ・ん・ぱ・い』
「とも、え……」
『許すのは今回だけですよ? それではまた何処かで……』
プツッと電話が切れて、私は携帯を持つ手を下ろして天井を仰ぎ見た。
「……………………ホラー映画の悪霊より質悪いわ」
心臓に悪いなんてモノじゃない。
だけど、祐介くんを怒らせたのも、一方的で押し付けてきた約束とは言え破ったのは私だ。
謝った方が良いだろう。
そう思い、私は娘に電話をした。
明日、さくらちゃんの他に祐介くんも招待するように、と。
○
家に帰り着いた頃には、怒りも収まり後悔した。
「死にたい……」
「まぁ、元気だせって主ぃ。 今日は主ぃの好きな焼き肉にするからさぁ~」
「焼き肉……」
「コーラもあるぜぇ! しかもジョッキで注いじゃおうかなぁ~」
ジョッキ! ジョッキでコーラ!!
善鬼の言葉にゴクリと唾を飲む。
善鬼はさらにオレを励ます為か、肉を焼く音の再現をし、さらにオレの想像を掻き立てて……
ピリリリという音が鳴った。
だいど……知世さんから貰った携帯電話っぽいトランシーバーだ。
持ち直した気が一気に下がる。
それはもうパラシュートのないスカイダイビングのような、デパートの屋上から飛び降り自殺したかのような、そんな気分。
いや、飛び降り自殺とかしたことないけど。
「んだよ、せっかく主ぃの機嫌とってたのに~」
『申し訳ありません、善鬼さん。 どうしても母が祐介くんに謝りたいと……私からも謝ります。 母が祐介くんに酷いことを言ったようで……あの、明日家で遊びに来ませんか? 勿論迎えもします』
スピーカーにして、オレにも聞こえるようにした善鬼は、「どーする?」と聞いてきた。
「謝罪は要らないけど、まぁ、たまには貴史以外の友達と遊ぶのも良いか……」
「良いってよ~良かったな」
『はい! ありがとうございます、祐介くん』
本当に嬉しそうな声で感謝してくる知世さんに、落ち込んでた気持ちもどこか申し訳なさへと移ろい、気がつけばオレは……
「知世さんのお母さんにももう怒ってない。 怒鳴ってごめんなさいって言っといて」
『祐介くんが怒鳴る? お母様ったら……これは私からも言っておきますね!』
電話越しからも伝わる知世さんの怒気に、ちょっとびっくりする。
だが、仲の良い親子を高々オレごときの事で喧嘩されても困るので、知世さんが怒る必要はないと言うが……
『いいえ、優しい祐介くんが怒鳴る程です。 これはきつく言わないとダメです! 明日謝ると言ってましたが、言葉だけでは足りません!! 最高のおもてなしをしますね!』
ああ、話が大事になってきたかも……。
『あ、それとさくらちゃんにも相談したいことがあって、祐介くんにも相談良いですか?』
「……クロウカードか?」
『おそらくは……祐介くんから貰ったビデオで確認したら盾のようなモノが映って……』
「ふむ、クロウカードならばケルベロスに聞けば良いだろうが、まぁ、オレも対策みたいなのを考えておくよ」
『ありがとうございます。 それではまた明日』
「ああ、ありがとう」
『いいえ、こちらこそ母がすみません』
ピッと電話を切って、オレはクロウカードの事よりも夜ご飯の焼き肉を想像して夜を待った。
まずはご飯だよな、うん。
巴ママンこわひ
書いてて怖くなって小さな物音でもびくつきました小心者な秋代です
次話について祐介の婚約者が襲来する話かさくらカード編にすぐ繋げるか
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次話は祐介の婚約者襲来
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次話はさくらカード編