なにも知らない転生者がカードキャプターさくらの世界で活躍させる物語(仮)   作:極麗霊夢

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新年おめでとうございます。
今年も祐介共々よろしくお願いします。


第十一話 大事な大事な大切なもの

 昨日、知世さんとの電話で大道寺家へと招待されたわけだが、オレの目の前にはすんごく見覚えのある高級車。

 その後部座席には勿論、大道寺園美さんが笑顔で手を振ってる。

 昨日、人のトラウマに触れておいて笑顔か……

 

「案外、あの人いい性格してんもがっ」

 

「黙ってろぬいぐるみ。 バレると玩具にされるぞ」

 

 出掛け用の鞄からチラリと顔を出して、不用心にも喋り出した善鬼を鞄に押込みつつ、心の中では同意する。

 知世さんの話では謝罪するとは言っていたけど、相手は金持ちだ。

 本来、金持ちは貧しい人の誇りや心なんて考えず、平気でずかずかと心の平穏を乱す人種だ。

 知世さんの親である園美さんが、もうそんな事はしないと思うがやはりどこか警戒してしまう。

 

「こんにちは、この間はごめんなさいねって……あー、すっごい警戒ね……気持ちはわかるけど」

 

「ええ、まぁ……正直こう……何かしらの段階を踏んでから来るものと思ってました」

 

「あら失態をそのまま後へ後へ回すなんて私が嫌よ。 それに娘にも散々怒られたもの。 後回しとかしてたらいよいよ嫌われるわ。 とりあえず乗って」

 

 園美さんに促される形で高級車に乗る。

 この間乗って思ったが座席がタクシー以上に座り心地というか、下手な布団よりも此処で寝た方が疲れも吹っ飛びそうな程だ。

 こんなの車に取り付けるモノじゃない。

 

「…………この前も思ってましたけどふかふかですね」

 

「娘やお客様用なの。 快適な空間で大事な取引とか、知世とは家族の団欒を過ごしたいでしょ?」

 

「わかります」

 

 荒波立つことない安心して過ごせる場所でしか、家族として接してもらえないというか、それ以外だとあの人厳しいしなぁ。

 

鞄越しから伝わるこのふわっふわかゴフッ!?

 

だから黙ってろ

 

「!? ま、また私何かしちゃった?」

 

「いえ、何も、すみません」

 

「そ、そう……いえ、いいのよ」

 

 突然、鞄を殴り付けたせいで、また何か気にさわることを言ったのか不安になったのか、これ以上は知世さんに嫌われるという恐怖におどおどとしながらオレに聞いてくる園美さんに謝罪した。

 

 ブロロー……と大道寺邸へと向かっていく間が、なんとも気まずくついつい窓から流れる景色を見てしまう。

 

「……………………」

 

「……………………ねぇ、巴のことなんだけど」

 

 気まずい雰囲気に耐えきれなかったのか、園美さんが話題を出すが、何故母さんの事を出すのか。

 それで地雷を踏んだことを忘れたのか? いや、でもオレと園美さんで共通の話題なんて母さんか知世さんくらいか?

 

「はい」

 

「貴方から見たあの子はどんな子なの?」

 

「………………とても自慢の素晴らしい母ですよ。 ええ、偉大すぎて恐れ多いくらいには……」

 

 そう、運動会でも披露したが、うちの母さんは着物という走りにくい姿をしていながらも、着物の着崩れが一切見られない程の走力で、しかも一般の人なら四、五周遅れでも一位を優雅に取る程の馬鹿げた身体能力の持ち主だ。

 魔力で強化してるなら納得なんだけど、困ったことに魔力強化せずにだから頭が下がる。

 その上、陰陽の術師としても優秀どころではなく、日本呪術組合や親戚の老人達からは安倍晴明の再来だとか言われてる。

 

「やっぱりそうよね……」

 

「でも……」

 

「でも?」

 

「子供のオレから見たら……」

 

 母と子、親子としての母さんは、スキンシップが多く、甘やかす程にトロトロだが、それ以上に子供であるオレに甘えてドロドロな親だ。

 愛情表現が過激というか、極端というか……。

 生活費込みだとしても振り込まれる金額は、前世を思い出せなくても見たことない額だ。

 一月百万とか絶対ないし、運動会後のお小遣いも……と、脱線した。

 

「ちょっとスキンシップが……」

 

「そうよね!!」

 

「え?」

 

「あ、いや……」

 

「まさか、母さん……」

 

「ええ、そうよ。 あの子との出会いは高校なんだけどもね。 陸上部であの子が入ってきた時、一瞬で懐かれちゃってね。 凄かったわよ、おっぱい……今でも凄かったけど当時もそれはもう……いっつも、何かがある度に抱きしめて、豊満な胸を押し付けてきたわ」

 

 母さんのスキンシップを話した時の園美さんの瞳に光が一切無かった。

 

 

 ○

 

 

 そのあと、有名なケーキ屋さんでワンホールのケーキを買って、大道寺家へ到着した。

 メイドさんからさくらが既に来てることを知らされ、メイドさんにオレの案内を任せて走り去っていった。

 恐らくは知世さんとさくらに会いに来たのだろう。

 

「こちらです」

 

「はい」

 

 そしてオレは、ケーキを受け取ったメイドさんの後を追いながら庭へ向かった。

 しばらくメイドさんが容れた紅茶を飲んでると、園美さんとさくら、知世さんがやって来た。

 

「祐介くん!」

 

「こんにちは、祐介くん」

 

「こんにちは、さくら、知世さん」

 

「…………んー、なんか知世だけ堅いわね。 なんでかしら?」

 

「わたくしもさくらちゃんみたいに呼んでもいいと言ったのですが……」

 

「なんで?」

 

 親として自分の子と娘の友人との距離感が違う呼び方に、疑問を持つのはわかるのだが、正直男が娘を呼び捨てで呼ぶ方が変な虫が着いたとかで騒がないのだろうか? まぁ、それを言ったら桃矢さんがなんか言ってくるんだろうが、何故か許されてるし、さくらは本当になんというか……。

 

「前に知世ちゃんはさん付けで、わたしが呼び捨てだったとき聞いたらわたしは呼びやすいって言ってたよね」

 

「ああ、自分でも不思議でなんでだろうな?」

 

「知世はどうなの?」

 

「どうなんでしょ?」

 

「…………………………」

 

「あ、目を逸らしたわね」

 

「言いにくい、ですか?」

 

 言いにくい……いや、なんというか……というかなんだ、この状況は!! どうしてこうなった!? いや、こうなったのは不用意に名前を呼んだからだが、普通は呼ぶだろうし、なら呼び捨てで言えば良かったのか? だがそれだと少し馴れ馴れしくないか? いや、待て、なんだ? 馴れ馴れしいって……………………。

 

「……知世さんは……なんというか、、、こう、、、、、」

 

 ろくろを回しながら、ふと知世さんを見ると、母さんと重なった。

 

「……」

 

「? ゆう、すけ……くん?」

 

「母さんに似てるから、たぶん呼び捨てに抵抗ある」

 

「祐介くんのお母さん?」

 

「そうなんですか?」

 

「んー、私が知ってる巴は高校時代と運動会の時だけだからねー。 あ、でも怒った所は似てるわね」

 

 ああ、凄くよくわかる。

 昨日の電話越しでの知世さんの怒気は、母さんのそれに似たものがあった。

 

「社長、本社の秘書室からお電話です」

 

 と、ここで電話を持ってきたメイドさんが、園美さんに電話を渡し、仕事の話になると踏んだ知世さんは、園美さんに部屋に行ってると2つに切り分けたケーキを皿に乗せて立ち上がり、オレたちも続いて立ち上がった。

 

「ごめんなさいね……あまりおもてなしできなくって」

 

「いえ、ごちそうさまでした」

 

「ごちそうさま……です」

 

「夕飯! 一緒に食べましょうねー! 絶対だからー! 祐介くんもー!!」

 

 

 ○

 

 

「オレもいいのか?」

 

「ええ、問題ありませんわ」

 

「知世ちゃんのお母さん、素敵な人だね」

 

「パワフルな印象だ……オレからしてみたら」

 

「ありがとうございます。 母も喜びますわ」

 

 カチャリと知世さんが扉を開けた瞬間、小さい影がさくらの前に突撃してきた。

 

「わあああ!?」

 

「ケーキ、うまそうに喰うとったなぁ。 わい、この部屋からずぅっと、ずぅ~っと見とったんやでーーー」

 

 おどろおどろと陽属性のケルベロスが恨みがましく、、、

 

「オレっちにもケーキ!! 鞄から! ケーキ屋、車の中、庭へこの部屋に着くまで延々延々延々とお預けされてて、オレっち、もう限界だぜ、主ぃ~~~~!!」

 

「うるさい。 大声を出すな。 メイドさんがやって来るだろ」

 

「そらあかん! ケーキ喰えんくなるかもしれへん。 おぉい、青玉ぁ! ちょっとはだぁーっとれ!!」

 

「うっせぇ! お前はたかだか二、三十分だろうが! オレっちは……」

 

「『善鬼』」

 

「っ!! あ、あるじぃ~?」

 

「お、おい、安倍の小僧……」

 

 いまだがたがたと声を荒げる善鬼に、(しゅ)で編んだ言葉で黙らせる。

 ふるふると震える善鬼と式と主の関係、先程のオレがしたことを察したケルベロスはおろおろとしだす中、知世さんが二匹の目の前に2つのケーキが乗った皿を見せる。

 

「ケロちゃんと善鬼ちゃんの分は此処にありますわ」

 

「「!!」」

 

「そういう事だから騒ぐな」

 

「わーーーい」

 

「あ、主ぃ~」

 

 ケルベロスはパタパタと飛び回り、善鬼が涙を流してひしっとしがみついてくる。

 知世さんが2つのケーキを皿に乗せて持ってきた時点で、誰かのくらいわかった。

 もし、ケーキが1つならオレが善鬼の分を貰おうと思ったしな。

 ただ、あそこまで騒ぐとは思わなかった。

 

「ったくーーー。 この部屋、なんかクロウカードの気配するし、一人で寂しかってんで」

 

「ほえ?」

 

「む……」

 

「さすがクロウカードの専門家のケロちゃんですわ!」

 

 ケルベロスの言葉にオレとさくらが反応する。

 オレは事前に知世さんからクロウカードかもしれないと相談を受けていたが、さくらはそうでも無かったようだ。

 まぁ、知世さんからしてみれば、さくらとの遊びが優先なのだろうけど……。

 

「困ったのはこの箱なんです」

 

 そう言ってオレ達の前に持ってきたのは小物を入れる小箱。

 

「実はこの箱、開かなくなってしまったんです」

 

「鍵、なくしたの?」

 

「鍵はあるんです」

 

 さくらの質問に知世さんが「こちらに」と鍵を見せる。

 ならばとケルベロスとさくらが箱を注視する。

 

「箱からかすかやけどクロウカードの気配やな」

 

「…ほんとだ」

 

「どういう具合に開かないんだ? いや、この場合はクロウカードはどういう風に開ける妨害をしてるか……か?」

 

「実際にお見せします」

 

 そうして知世さんが鍵穴に鍵を差し込もうとした瞬間、パンッという軽い音を鳴らして鍵を弾き飛ばした。

 無くなるかもしれないので、飛んだ鍵を確保する。

 

「久しぶりに母が、この箱を開けようとしたらこの調子で……」

 

「確かにこれはクロウカードのせいやな」

 

「でもよ、箱を開けなくさせるカードなんてあったか?」

 

「何も安倍晴明との勝負に使ったんが全部やないで」

 

「いや、オレっち悪戯に使ってたってのも知ってっから」

 

「ああ、せやったな。 でもそれだけやないのも事実や」

 

 昔の事を思い出してるのか、善鬼がケルベロスに今回のクロウカードについて議論を交わしてるのを聞きながら、さくらと知世さんのやり取りを見る。

 どうやら箱の中に知世さんの大切なものも入ってるらしい。

 それを解決してみると、さくらが宣言して知世さんが今回の衣装と言ってさくらに見せ、さくらはいつも通りの知世さんにたまらずずっこけた。

 

「しかし、箱が開かへんなるカードなぁ」

 

「祐介くんからもらったビデオで調べたんですが、盾のようなものが映ってるんです」

 

 さくらが着替えて、気を取り直して箱の調査に移ろうとしたが、知世さんの言葉でケルベロスがポンッと手を叩いた。

 

「わかった! 『(シールド)』のカードや!」

 

「ああ、あの出鱈目な盾か」

 

「『盾』は大事なもんを守るためのカードやからな。 鬼の攻撃を何発でも耐えられるのは当然や。 特に青玉の方はな」

 

「どうすれば『盾』をカードに戻せるの?」

 

「簡単やな。 さくらは「なんでも切れる剣」を持っとるやろ?」

 

 ビデオカメラの前で今回の解決口をペラペラと助言するケルベロス。

 当然ながらカメラの向こうに居るのは知世さんで、さくらではない。

 目立ちたがりもここまで来ると天晴れだな。

 

「『(ソード)』で『盾』を切ればいいんだね!」

 

「『盾』は切られたら本体を現すさかい、そこをすかさず封印や!」

 

 ふむ、どうやら今回はオレの出番はないな。

 

 と、ソファーに座り直して、今回の元凶たる『盾』の様子を見る。

 ただただその人の大切なものを外敵から守ろうと……。

 封印から解放されて、大切にしてると、この広い町の中で見つけたソレ……。

 

「確かに大切なものを守るのは良いことだ。 でも、その大切なもの

の持ち主からも守るのは本末転倒というものだろ」

 

「汝のあるべき姿に戻れ!! クロウカード!!」

 

 『盾』を切り裂いたさくらは現れた『盾』の本体に杖を向けて、お決まりの呪文を唱えて『盾』を無事カードへと戻した。

 『盾』を封印し、元の、鍵を差し込んでも弾かれる事が無くなった箱を開けることに成功した知世さんは、さくらに礼を言い、箱を開けると……。

 

「わぁ……!」

 

 箱の中から出てきたのは一つのブーケ。

 『盾』の効果なのか、その花の持ち主の想い故か、まったく色褪せることのない、枯れ一つ見当たらないブーケは美しかった。

 

「さくらちゃん、祐介くん、さっきはごめんなさい。 あ! 開いたの!?」

 

 と、ちょうどよく園美さんがやって来た。

 そして箱が開いてるのを見て、顔を輝かせながら中に入ってたブーケを手に取った。

 

「綺麗なブーケですね」

 

「これはね、貴女のお母さん……撫子の結婚式の時のブーケにして、祐介くん」

 

「ん?」

 

「貴方のお母さんに勝利した証でもあるのよ」

 

 そう言って教えてくれたオレの母さんは、とてもあの完全無欠の完璧超人から逸脱した話だった。

 花嫁のブーケを手にした者は、次に結婚すると言われる。

 その言葉を信じ、母さんは必死に、我武者羅に、園美さんと競い、そしてその果てに園美さんが勝ち取ったと……。

 

「まぁ、その日からぱったりと会わなくなったんだけどね……」

 

「そう、ですか……」

 

「もしかしたら、このブーケ……」

 

「いえ、それは園美さんが勝ち取った花です。 その言葉の先はどうか言わないでください」

 

 出来ればオレに、そして母さんに……。

 

 

 ●

 

 

 花嫁のブーケ。

 それは受け取った者が、次の花嫁になれると言われる宝具。

 迷信と言うものも居るだろう。

 だけど諦めきれない。

 私は、あの人に再会する為にここまで頑張って来たのだ。

 でも、いつまで経っても、どこを探しても再会できなかった。

 だから賭けた。

 花嫁の伝承。

 花嫁のブーケに……。

 だけど、ああ、だけど……。

 

 届かない。

 

 届かなかった。

 

 学生時代、誰にも負けたことがない。

 

「やった!」

 

 目の前の人にだって、負けたことなかった。

 

「初めて貴女に勝って、そしてそのトロフィーは撫子のブーケ!」

 

 ああ、遠ざかっていく。

 

「これほど嬉しいものはないわ!」

 

 ああ、、、わたくしからあの人を……彼を遠ざけるこの世界が――――――憎いです。 ()()()()

次話について祐介の婚約者が襲来する話かさくらカード編にすぐ繋げるか

  • 次話は祐介の婚約者襲来
  • 次話はさくらカード編
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