なにも知らない転生者がカードキャプターさくらの世界で活躍させる物語(仮) 作:極麗霊夢
夜。
友枝町にある公園、ペンギン大王の公園で剣と拳、拳と拳がぶつかり合ってた。
片方は青白く、格闘家の衣装を着た女性。
もう片方は緑の式服を着て剣を構える男の子と、白の陰陽衣装を纏った拳に札を張り付けた男の子だ。
言わずもがな女性は、クロウカードの『
そしてペンギン大王の滑り台の影で見守ってるのが、善鬼、ケルベロス、さくら、知世さんだ。
「とっ!」
「大丈夫か?」
「なんとか!」
「流石は闘を司るクロウカードだ。 生半可な攻撃じゃ通じない」
「小狼は術、オレ物理行くぞ!」
「あ、待て! くっどうして陰陽師なのに前衛なんだ!!」
小狼の静止を振り払い、オレは再び『闘』に勝負を挑む。
こういう物理系のクロウカードは、挑戦者が頑張れば勝てるレベルに調整してくれると、善鬼もケルベロスも言っていた。
現に、『力』の時と比べて、明らかに『闘』の攻撃や防御、速度もオレ達が認識できるレベルだ。
「雷帝招来!! 祐介!」
「よっと!」
後ろから迫りくる雷を呪符を張り付けた拳でまとめあげて、さらに強力な術にして『闘』に叩きつけるが、そんなことわかってると言わんばかりに『闘』は横に回避するが、そこは小狼が事前にセットした符がある。
「火神招来!!」
『っ!!』
瞬間、『闘』が炎に包まれる。
その隙がさくらに封印させるに至る隙だ。
「よし!」
「いまだ!」
「行ったれぇー! さくらーー!!」
「う、うん! 汝のあるべき姿に戻れ! クロウカード!!」
『闘』のカードは封印され、そのカードの行方はさくらでもオレでもなく、今回捕獲するにあたって貢献した小狼だった。
「今回は俺がもらう」
「うん、ありがとう、李くん。 祐介くんも」
「二人ともとてもかっこ良かったですわ」
「まっいっちゃんかっこええのは、わいやがな!」
「なにもしてねぇのに、なんでそんな自信家なのかねぇ」
わいわいと騒ぐケルベロスに、オレは近所の人達が来るかもと言って、この場から離れ家に帰ることにした。
「今回は李くんが手に入れたのね」
「…………」
保護者同伴で……。
☆
友枝町にある図書館。
最近の日曜日はもっぱらここで学校の授業の復習、予習、宿題をやる。
別に転生者だからといって、勉強しないわけじゃない。
所々覚えてないとこもあるし、学んだとこと違うとこもある。
とくに算数なんかはオレの鬼門だ。
苦手ってレベルじゃない。
足し算、引き算、掛け算はなんとかわかるが、割り算、、、こいつが難点だ。
なんだ? あまりって、ひっ算する時の最初の数字はどっから来る? 中の数式にくりあがりがついたり、わけわかんね…………こほんっ、この話は精神上よろしくない、やめよう。
んで、オレがやってるのは国語の宿題で、本を読んで感想文なんだが、、、
「ふっ…………動物園の時の戦法は使えないぜ……」
まさか先生が動物の立て札の説明文を写真に納めてたとは、この桐生祐介不覚っ!!
「…………バカやってないで真面目にやろ」
しかし、何年ぶりなのだろうか? こんなまともな読書感想文は。
ただ、見方によっては随分と夢がない話に……いや、これはあれだ。
大人になった悲しい成長ということで……。
「あら、祐介くん」
声を掛けられ振り向くと、そこには小学生どころかどこぞの研究者しか読まないであろう分厚い本を抱えた知世さんが居た。
「読書感想文ですか?」
「ああ、知世さんは?」
「私も読書感想文です」
「へぇ、どんな?」
「これですわ」
と言って見せてきたのは、まさかの手に持ってる分厚い本。
オレの目はおかしくなったかな?
「到底、読みきれる量じゃないと思うんだが……」
「そうですか? とても面白く、本の世界にのめり込むようないい本でしたわ」
「あ、そう……」
何度も言うようだが、小学生が読むような本じゃない!! というかそれは小説としてなりたってる!? なんか図鑑とか数式とかずらっと並んでそうな本なんだが!? いや、ほんと!!
「しかし、クラブのコンクールとかさくらの撮影、編集、コスチューム製作もあるのに、そんな分厚いのよく読めるな」
「ふふっ、寝るときに眠気が来るまで読んでたら」
「夜更かししたってやつ? 女の子なんだからあまり夜更かしすると肌に悪いぞ」
「あら、ありがとうございます、祐介くん」
ぽや~と笑う知世さん。
と、あまり喋っているようだとまともに利用してる人に悪いな。
話もそこそこにオレは知世さんと別れて、気晴らしに別の本に手を掛けた。
「ん」
『ワタシを読んで~?』
手にした本に変な気配がした為、よく眼を凝らしてみると、その本は付喪神と呼ばれる妖怪に変妖していた。
「へぇ、珍しいな」
付喪神とは長い年月を経た器物が精霊が宿る妖怪……といっても精霊の類いだから大切に扱えば悪さも悪戯もしない、可愛い子達だ。
消費文化のこの現代で付喪神を見られるのは本当に稀だ。
パラリとページを捲るも、痛んだとこはどこもないことから、どうやらこの本はよほど大切に扱われてきたんだろう。
これは付喪神が自身の妖気で状態保存、維持をしてきたからだ。
『読まないの~?』
「お前の前の持ち主はお前を見たらきっと喜ぶだろうな」
自分の大切な本を図書館に寄付されて尚、手に取った読者が大切にするのは本当に稀なことだ。
『読んで~?』
「わかったよ。 これも何かの縁だ。 読んでやる」
『ありがとー!』
☆
それはとある異能を持った少年の悲恋の物語だった。
ジャンルで言えば異世界転移というモノだろう。
失恋した少年が、町で起こる事件に巻き込まれそうになったヒロイン……ヒロイン? 少年をフッた女性を助けてる為に庇い世界転移する。
そこで遭遇したのは、少年をフッた女性に似た子が鬼に襲われてる場面。
少年は咄嗟の判断で異能を使い、鬼を討ち取り、その女性を見事助けたのだ。
物語は進み、その女性は大国の姫様であることがわかり、少年は姫様を助けた功績として多大な報酬金を得るもそれを断り、代わりに姫様の護衛を希望した。
護衛の先輩達との指導、そして惹かれ合う少年と少女。
しかし、如何に功績を上げようと姫と出生がわからない得体のしれない少年との恋を快く思わないものも居る。
その者達の計略によって少年は命を落とし、姫は彼の後を追うように嘆き、自らの命を……。
★
夕方。
読んだ本を返そうと本を抱えて本棚に向かう途中、祐介くんを見かけ、声を掛けようとして止めた。
「…………」
夕日に照らされて、熟読してる祐介くんの姿はどこか幻想的で、その瞳は夕日のせいかうっすらと『黄金』が混ざって綺麗だった。
ビデオを、写真で今の彼を撮りたい衝動に駆られるも、今ビデオ処かカメラすら持ってない己に怒りがわく。
祐介くん……ただその一言を掛ければ霧散して消えていくだろう今の祐介くんを失うのは憚れた。
ずっと眺めていたい。
見ていたい。
『……のご利用誠にありがとうございました』
「っ!」
図書館の閉館アナウンスに我に返り、同じくアナウンスに読書の集中が切れたのか、祐介くんも本から眼を離して辺りを見渡した時、私と祐介くんの『黄金』の瞳が合った。
夕日の光じゃない、優しくも美しい『黄金』の瞳。
でもまたじっくりと見る間もなく、祐介くんの瞳は元の黒色になった。
「知世さん?」
「あ、へ、閉館ですよ」
「ああ、それは知ってる。 良かったらそっちの本、片しておくぞ」
「え、えっと、あの、で、では、一緒に行きましょう?」
「わかった」
あの『黄金』の瞳を見てから、私は彼との会話を失礼と思いながらも適当な相槌で聞き流した。
祐介くんのあの瞳は、なんなんでしょうか?
No.7 付喪神 (本)
容姿 普通の本で背表紙も裏表紙にもタイトルが書かれてない不思議な本
誕生日 不明
好きなもの 本を大切に扱う人
噂 この本を見つけ、読んだ人はこの先の人生が幸せになるという。
居場所 友枝町の図書館や古本屋を転々としてる。
次話について祐介の婚約者が襲来する話かさくらカード編にすぐ繋げるか
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次話は祐介の婚約者襲来
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次話はさくらカード編