なにも知らない転生者がカードキャプターさくらの世界で活躍させる物語(仮) 作:極麗霊夢
毎年十二月、友枝小学校では学芸会がある。
クラス、クラブ別でいろんなことをやる……ようは文化祭のようなものだ。
去年は合奏で、今年は劇をするらしい。
「じゃあ、劇の演目を発表する」
そういって寺田先生は黒板に、やる劇の演目を書いていく。
『眠れる森の美女』と……。
「配役は観月先生が用意したあみだくじで決めようと思う」
「出席番号順に前へ来てくださいね」
歌帆姉さんの声に皆が立ち上がり列をなす。
俺も席を立ってあみだに名前を書いていく。
どんな配役になろうとも全力を尽くすが、出来れば大道具係りとかがいいなぁ。
「じゃあ、席に着いて、配役を発表するぞ……ナレーターは佐々木梨佳、妃さまは大道寺知世、王様は桐生祐介」
「………………は?」
王様? ま、まぁ、メインではないからいいか。
いや、でもなんだ? なんというか、王様……王様かぁ……嫌だなぁ。
「次はオーロラ姫と王子だな」
寺田先生が配役の隠してる部分を捲り、線を辿るとそこには木之本桜と李小狼の文字が。
配役は姫がさくら………………ではなく小狼で、王子がさくらだった。
翌日、学芸会の練習での出来事。
昨日の放課後から寝る間を惜しんで作ってくれた王様衣装を身に纏うと、クラスから驚きの声が上がった。
「すっごーい、本物の王様みたい」
「やっべー、とても物語の王様じゃねーよ」
「魔王か何かだよな」
「どうですか?」
「重苦しい……」
「なぁ、なぁ、桐生! それっぽいこと言ってみてよ!」
「ん? それっぽいこと? いや、無理……パッと思い出せん」
「任せて!」
知世さんと衣装チェックしてると、クラスメイトの一人がそう言ってきたが、オレに演技力はないし、即興のセリフを思い付く頭もないし、断ろうとしたら、奈緒美がメガネを光らせて、セリフを作ってくれた。 ありがた迷惑。
しかし周りを見てみると、それをどことなく期待した眼差しを向けてくるクラスメイトにオレは負けて、教室の前へと向かい、マントを翻すように振り向き、大袈裟に左手を上げる。
「跪け、愚民共…………」
『………………………………………………』
場が固まった。
「ん、これはダメか……なら……」
ちらりとセリフメモを見て、ツカツカと知世さんの元へ行き、またマントを上手く扱って知世さんを包み抱きしめる。
「オレに付き従え、知世姫……」
くいっと顎を上げて顔を直視させる。
「っ!!」
不意を突かれたのか知世さんの顔は赤く染まり、ないなとオレ自身がキャラじゃないと知世さんを離すと、教室は黄色い悲鳴に包まれた。
なんぞ?
「キャーーーー!! 魔王さま、魔王さまよ!!」
「
「今度は有無を言わさぬオレ様系王子!!」
「似合ってる!」
「ヤバい!」
「ありがとうね! 祐介くん!!」
何故、こんなにもクラスが沸き上がるのかわからない。
☆
そして学芸会当日。
みんなの衣装は出来上がり、互い互い見せ合ったりしてる。
そしてオレの衣装は、なぜか前よりもボリュームアップした魔王衣装……なぜぇ?
そんなオレの反応を他所に、絶対に嫌だと騒ぐお姫様役の李小狼。
みんなもオレも小狼の方を向けば、そこにはクルクルロールのカツラを着け、ドレスを着た小狼の姿。
線も細く、小学生だからか女の子としての丸みも帯びていて、まぁ、お姫様していた。
「よく似合ってらっしゃいますわ」
「似合って……」
「あ、桃矢さんと『雪兎さん』だ」
ボソリとオレが呟くと、約二人の耳が大きくなる。
「ふふ、きっとこの『眠れる森の美女』を見にいらしたんですわ」
「ああ、劇が中止になったら、雪兎さん、悲しくなるだろうなぁ」
「でも仕方ありませんわ。 先生にお話ししましょうか、祐介くん」
「そう……」
「やる!」
「「「オォーーーッ」」」
☆
ブーーー。
『あるお城に王さまと王妃さまがいらっしゃいました。 王さまと王妃さまには長い間、子どもがなく、そしてついに王女さまが誕生したのです。 王女さまの名前はオーロラ姫』
利佳ちゃんのナレーションがスラスラと進む。
そしていよいよ、オレの台詞……しかもなんかアレンジ入ってるし……
「今日はよくぞ、我が娘の誕生会に来てくれた!! 今日は存分に楽しみ、我が娘の誕生を祝すがよい」
漆黒のマントをはためかし、言う。
完全に魔王です、ありがとうございます。
「オーロラ姫の誕生を心からお祝いいたします」
「私たちからお祝いをさしあげたいと思います」
そして眠れる森の美女のメインイベントのシーンの一つ、妖精達の祝福が始まる。
「オーロラ姫、私はその名にふさわしい北の国にきらめくオーロラのような美しさを」
「私は、どんな鳥にも負けない素晴らしい歌声を」
「私は……」
「おーーーーほほほ! 今日は盛大なパーティですこと」
と、妖精3の奈緒美の言葉を被せるように、魔女役の貴史が乱入。
「申し訳ございません。 にぎやかな席はお嫌いだと聞いて……」
「ええ、ええ、にぎやかな席は嫌い! でも、無視されるのはもっと嫌いなのよ!!」
王妃役の知世、そして貴史の魔女役の掛け合い。
魔女はオーロラ姫にお祝いを、呪いを掛ける。
「オーロラ姫……姫は、その美しさと気高さと優しさで国民から愛され幸せな毎日を送るでしょう」
魔女も認める美貌。
約束された勝ち組人生。
しかし、魔女がそれで終わることはない。
「十六歳までは! オーロラ姫は十六歳の誕生日! 糸車の針に指を刺して死ぬのだ! おーほほほほ、おーーほほほほほ!!」
呪いを掛けた貴史は、高笑いして去っていった。
「な、なんてひどい!!」
「オーロラ姫が死んでしまうなんて……」
「おのれっ魔女め!!」
「王さま、まだ私の贈り物が残っています。 オーロラ姫は十六歳の誕生日に糸車の針で指を確かに刺してしまいます。 でも死にはしません、眠るだけです。 オーロラ姫は、姫を真に愛し、魔女の邪悪な力を打ち砕く者の口づけで目を覚ますでしょう」
此処で、劇の前半が終了する。
そして舞台は十六年後。
「我が娘、オーロラよ!」
「は、はい……なんでしょうか、お父さ、ま……お母様」
雪兎さんを見て、やる気を十分すぎる程に高めて大声で演じようとする小狼に、視線で落ち着かせる。
「我が娘、オーロラよ。 今日は貴様の16の誕生日だ。 なにか欲しいものはないかね?」
「いいえ、お父様とお母様が元気でこの国が平和ならなにも欲しいものはありません」
「わたしの可愛いオーロラ姫、夜にはあなたのお誕生日パーティがあります。 さ、着替えてらっしゃい」
「はい、お母さま」
落ち着きを取り戻させたが、やはり恥ずかしいのだろう。
早々に小狼(オーロラ姫)は退場し、物語は佳境へ……。
「もうすぐ、、、ね」
「?」
ポツリと歌帆姉さんが呟くと、同時にさくらと小狼がキスのシーンに入る瞬間だった。
オレは何も出来ず、闇に覆われた。
そして、、、
「よかったーーー!!!」
と、大喜びで小狼に抱きつくさくら、観客達もクライマックスシーン直前だったのか、闇に飲まれる前の記憶があやふやなのか、その場で劇は大団円と判断され体育館は拍手喝采に包まれた。
次話について祐介の婚約者が襲来する話かさくらカード編にすぐ繋げるか
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次話は祐介の婚約者襲来
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次話はさくらカード編