なにも知らない転生者がカードキャプターさくらの世界で活躍させる物語(仮)   作:極麗霊夢

6 / 27
前回感想で頂きました「ヒロインは誰ですか?」

答えは言いませんが、絶対にこの人はヒロインじゃないと明言しておきます。

木之本さくらは、ヒロインじゃありません!


第六話 運動会

 ドドドドッ。

 

 心臓の音が高鳴る。

 今日は友枝小学校で運動会だ。

 運動会。

 そう、運動会だ。

 大事なことなので三回も言った。

 ちなみに何故此処まで緊張してるのかと言うと、それにはオレの家族構成というか友枝町に住んでるオレのお家事情を説明しないといけない。

 オレの家族構成は母さんとオレの二人で、父親は浮気相手と蒸発した。

 そしてオレの母さんは友枝町に居らず、京都の本家で次期当主の指導をしている。

 つまり友枝町では、善鬼の本来の姿から角を隠した姿を保護者として、オレと善鬼の二人暮らしをしているのだが、授業参観はともかく文化祭や運動会などの行事は必ずと言って良いほどでしゃばってくる。

 いや、別にでしゃばっても良いのだが、母さんの親子としてのスキンシップが激しいし、分家当主としてのギャップもまた凄いのだ。

 竦むほどに……。

 

「どうする? どうしよ? 逃げるのは悪手」

 

「主ぃ~逃げらんないってあの人には」

 

「だよな~」

 

 善鬼の言葉に、今まで回避できた試しはない事を思い出す。

 「はぁ……」とため息を一つ。

 

「主ぃ~」

 

「…………なんだよ」

 

「ため息のし過ぎは幸せを逃がすってテレビで言ってたぞ」

 

「オレ、結構不幸だと思うよ?」

 

 と、本日二度目のため息を吐いた。

 

「あ、桐生くん」

 

「よぉ……」

 

 ため息を吐いてたところで、チア部のコスチュームに身を包んだ木之本が話しかけてきた。

 そう言えば次の項目はチアリーディング部の演目だっけ?

 

「元気ないね。 運動会嫌いなの?」

 

「んー………………」

 

「主は運動会が嫌いなわけじゃないぜ」

 

「あ、善鬼ちゃん。 じゃあ、どうして?」

 

 ちゃん? ま、まぁ、封印の獣ケルベロスにケロちゃんと付けて呼んでるから、この姿の善鬼もちゃん付けなのかねぇ。

 と、木之本の疑問は家庭の事情になるから、善鬼を蹴っ飛ばす。

 

「あ~~~~~~~」

 

 ちょっと酷いことしたという自覚はある。

 が、家庭の事情を知られるよりマシだろ。

 

「………………ほえ?」

 

「チアの演目行かなくていいのか?」

 

「あ、そうだった!! 行ってくる!」

 

「頑張れー」

 

「うん! あ、そうだ。 桐生くんもお昼一緒に食べようね!」

 

「あー、まぁ、おう」

 

 木之本の誘いを曖昧な返事で誤魔化して、手を振って見送り、放送部の方へ目をやると、大道寺が笑顔で手を振ってる。

 辺りを見渡しても木之本は居ないから、オレに向けてると判断して手を振り返して応援席へと向かった。

 そう言えばいつの間にか、変な緊張がなくなってるな。

 

「ただちょっと話してただけなのにな」

 

 

 ○

 

 

 チアリーディング部の演目は、木之本の頭にバトンが落ちたこと以外、問題らしい問題は起きず、オレは木之本に呼ばれて昼を一緒にすることになった。

 桃矢さんと雪兎さんが作った弁当は大きかったが、オレや他に来ると言う木之本のお父さんと大道寺のお母さんを合わせるとなると少なく感じる。

 オレの弁当は母さんがきっと持ってくるから、足りないようだったら少し待ってもらうかもしれない。

 

「ごめん、遅れて!」

 

 弁当を食べてると、スーツ姿の男性がやって来た。

 話を聞く限り木之本のお父さんなのだろう。

 娘のチアリーディング部の演目に間に合わず、落ち込んでるが大道寺のビデオや雪兎さんが撮った写真でなんとか持ちこたえたのか、木之本に謝罪して、木之本がそれを許すというアットホームな雰囲気だ。

 

「はい、昨日作っといたゼリーだよ」

 

 木之本のお父さんがクーラーボックスを開けて、中のゼリーを全員に配る。

 そしてオレの所へやってきて、、、

 

「君がさくらさんと桃矢くんが言ってた桐生くんかな?」

 

「たぶん、そうかと……あ、桐生祐介です」

 

「ご丁寧にどうも。 木之本藤隆です。 いつもさくらさんがお世話になってます」

 

「いえ、気にかけて貰ってるのはこちらですし……」

 

 お昼休み直前に誘われたオレにも、ゼリーを渡してきて挨拶をする。

 物腰の優しそうな……というか優しい人だ。

 そのあとは、藤隆さんと桃矢さん、雪兎さんはゴミを捨ててくると言って席を外し、入れ替わるように今度は大道寺の名前を呼ぶ女性が来た。

 キリッとした目に、短髪のキャリア・ウーマン。

 その後ろには、いつも大道寺が夜出回るときに現れる女性のボディーガード。

 

「さくらちゃん、桐生くん、ご紹介しますわ。 母です」

 

 大道寺のお母さんは、木之本を見て懐かしい人を見るようなそんな目で見て固まったが、それも一瞬で挨拶をして、オレの方を見た瞬間また固まった。

 

 なんだ? と首を傾げるが、木之本と違い一歩引いた。

 や、ホントになんだ?

 

「お母様?」

 

 大道寺の声にハッとして、大道寺のお母さんはオレにも挨拶をする。

 

「大道寺園美です。 知世と仲良くしてくれてありがとうね」

 

「いえ、こちらこそ」

 

 と、藤隆さんと同じようなやり取りをし、そろそろ午後の部だなと思い、そう言えば母さんは? と考えた時だった。

 オレを背後から抱き締めてきた存在……いや、まぁ、わかるけど、女性がいたわけで……頭から感じる着物越しの胸、ふわりと風に乗って漂うくらっと目眩がするほどの心地よい香り。

 間違いなく……

 

「母さん……」

 

「はい、なんですか? ゆーちゃん」

 

 突然現れたかのような人物に面を食らう木之本、大道寺、大道寺のお母さん。

 いや、若干、大道寺のお母さんが二、三歩ほど引いてる。

 まぁ、それは置いとくとして、、、

 

「いい加減離れてくんない? 恥ずかしいんだけど」

 

「まぁ! ゆーちゃんがゆーちゃんが不良に……」

 

「え、なんで?」

 

「母は、母は、こんなにもゆーちゃんを愛してると言うのにっ!! 母の愛の抱擁を恥ずかしいだなんて……これは、まさに反 抗 期ッ!!」

 

「………………えっと母です」

 

 取り合えず母の奇行、戯言は無視してオレは、固まってる人達に母を紹介した。

 

「え、あら?」

 

「っ!!」

 

 あれだけ騒いでおいて、オレが紹介するとビシッとして頭を下げてくれるから、素直に凄いと感心する。

 そして何故か大道寺のお母さんを見て、首を傾げ、徐々に旧友に会ったかのような表情をする母さんだけど、大道寺のお母さんは顔を背けて、汗をだらだらと流してる。

 まるで会いたくない存在に出会ったかのような。

 

「あらあらまぁまぁ! もしかして天宮先輩ですか? ですよね?」

 

「ひ、人違いじゃないかしら、私は大道寺園……」

 

「天宮園美先輩ですよね?」

 

「……………………………………………………………………」

 

「天宮撫子先輩を新米教師に取られたあの、、、あ ま み や そ の み せ ん ぱ いですよね?」

 

「ええ、ええ、そうよ! 撫子を新米教師に取られた天宮園美よ!!」

 

「やっぱりそうでしたか! 全然変わってませんでしたから、すぐにわかりました」

 

「貴女も全然変わって、、、いるわね。 いえ、そのくすんだ『黄金』の目は変わらないけど、貴女が夫を持って子を愛すなんてね~」

 

 あ、やばい。

 

「…………天宮先輩。 先ぱ」

 

「母さんと大道寺のお母さんは知り合いだったの?」

 

 『夫』という禁句に反応して、母さんの周囲が冷えてくるのを実感して、母さんの意識を別の方へ向ける。

 

「ええ、高校時代からの陸上部の先輩です」

 

「ほんと……変わってないわね、可愛い気がないとことか」

 

 ほんとにもう……と、大道寺のお母さんがため息を吐くけど、頬の冷や汗を見ると地雷を踏んだ自覚はあるのだろう。

 そして母さんと大道寺のお母さんの話が終わった頃、藤隆さん達が帰ってきた。

 

「知世さんのお母さんと祐介くんのお母さん、いらっしゃったかい?」

 

「お父さん」

 

「あああああああっ!!」

 

「あらあらまぁまぁ」

 

 大道寺のお母さんが藤隆さんを見て叫び、母さんがこれはこれは面白くなりました的な雰囲気で笑ってる。

 

「木之本先生!」

 

「園美くんに巴くん」

 

 そのあと大道寺のお母さんと藤隆さんは校舎裏へ向かい、オレと母さんは木之本というか雪兎さんに弁当を渡して木之本から離れた。

 と、言うもの、母さんの雰囲気が陰陽師として、オレの師としての面を醸し出したからだ。

 

「木之本桜さん……彼女がクロウ・リードに選ばれたクロウの後継者ですか」

 

「はい。 封印したカードは『(ウィンディ)』、『(ウッド)』、『(ジャンプ)』、『(フライ)』、『(ウォーティ)』。 そしてオレの手に渡った『(イリュージョン)』です」

 

「六枚、、、流石は我が息子です。 一枚とは言え特殊カードを手に入れるとは、早々あることではありません」

 

「ありがとうございます」

 

 ただジッとその場に居て、クロウカードを実体化させてただけなんだけどな。

 何もしないで評価されるより、何かをして評価をされたいものだ。

 

「何はともあれ、これで本家の者にとやかく言われることはないのでしょう……あとはそうね、、、、早く気付いて欲しいものね」

 

「え? それはどういう」

 

「なんでもありません。 …………さて、折角来たんですもの。 記念に父兄参加リレーに参加してきますね」

 

「あ、はい」

 

 オレの問いに答えず、母さんはにっこりといつもの母としての雰囲気で入場門へと向かった。

 

「なんだったんだ? 気付く? ……………………わぷっ!」

 

 母さんの言葉を思い出そうと思考してると、顔に花びらが纏わり付いてきたのを振り払う。

 

 まったく、何処から降ってきてるのやら……。

 

 父兄参加リレー出場者を見ると、最前列には藤隆さんと大道寺のお母さんが居て、一番最後部には母さんが居た。

 なんだろう、ハンデとでも言いたいのかな?

 

「お前の御袋さん、なんであんなに後ろなんだ?」

 

「…………たぶん、ハンデなんじゃないかと」

 

「ハンデって……そんなに速いの?」

 

 速いというか、なんというか桐生家最強の陰陽師にして、他を一切寄せ付けない身体能力者。

 術と武を極めた強者です。

 なんて言えるわけがないので、まぁ、それなりにと言っておく。

 

 

 ○

 

 

「よーーーーい」

 

 パーンという寺田先生の合図で、走り出すリレー参加者の父兄さん達。

 やはり学生とは違って、あまり体が思うようにいかないのか、少し遅い走りだしだが、大道寺のお母さ……園美さんがぶっちぎりで先頭に出た。

 だがすぐに藤隆さんが追い抜く。

 

「速いね」

 

「よくスーツ姿であんなに……」

 

「うちで一番運動神経いいの父さんだかんな」

 

 桃矢さんが自慢気に言う。

 やはり家族だからか、トップを走ってると嬉しいのだろう。

 だけど、すみません。

 

「え」

 

「な、着物であのスピードって凄くないか!?」

 

 最後尾を走っていたうちの母さんが、園美さんを抜かして藤隆さんに迫る。

 本来なら100メートルなんて一瞬で終わらせれるのに、藤隆さんのペースで母さんは走っていた。

 そしてついに追い抜こうとした時、空から降ってくる花の量が増えだした。

 そこでふと、というよりも、ようやくと言ったところで、母さんの言葉を思い出す。

 

 早く気付いて欲しい。

 

 まさかクロウカードか、これ!!

 

 

 

 

 既に競技所じゃなくなってきたにも関わらず、母さんと藤隆さん、園美さんは走っており、他の参加者は競技を中断してる。

 大量の花を掻き分けて走る三人、お花に埋もれてる人、降り積もる花に息が出来なくなるクラスメイト。

 そしてオレと同じように気づいた木之本が、杖を解放させて『(フライ)』で空へ上がった。

 

 さて、オレはオレでどうするかなっと、目に入ったのは大道寺のカメラ。

 ジッとカメラを見ながら、オレがカメラを片手に木之本の勇姿とやらを撮る。

 いやいやいや、何を考えてるのか。

 それに許可も取ってないのに勝手に撮るなんて盗撮だし犯罪だ。

 バレなきゃ良いって問題じゃない。

 

 オレは大道寺のカメラを手に、その場から離れた。

 や、別に撮るためじゃない。

 花に埋もれて誰かに踏まれることのないように確保しただけだ。

 

「電池はあるな」

 

 あと電池の確認は大切だ。

 そう大切。

 

「結構性能いいな」

 

 ………………………………。

 

「ふぅ~ん、こう撮るのか」

 

 いや~、一回はビデオ撮ってみたいなーって……

 

「ん、屋上に行ったな…………あそこにクロウカードがあるのか。 あそこから見える場所は……時計塔だな」

 

 こうしてはいられないと、オレは急いで時計塔へと走り、跳躍強化の術で時計塔の天辺まで駆け抜けて、屋上へカメラを回した。

 

 ふむ、なんか知らんがクロウカードと思われる女性と木之本が踊ってる。

 暫く踊ってた木之本が、慌ててクロウカードを封印して事態は収まった。

 が、既に母さんはゴール直前。

 藤隆さんも園美さんも頑張ってるが、二人の勝負に水を差すのもあれなのでそろそろ母さんを回収するとしよう。

 

「母さん、そのままゴールしたら子供として一生口を利かない」

 

「っ!!」

 

 オレの声をその鋭い聴覚で聞こえたのか、ギシッという音と共に母さんの動きが完全に止まった。

 ゴールとの距離は僅か一歩。

 急に止まった母を見て、いつの間にか変わっていた桃矢さんと雪兎さんが首を傾げ、藤隆さんも首を傾げながらもゴール。

 園美さんはというと母の後ろに立って、さっさとゴールしろと言わんばかりに足蹴にして無理矢理ゴールさせた。

 どうやら園美さんはフェアというかスポーツマンとしてお情けは受けたくないようだ。

 

 

 

「だから、そんなに落ち込まなくていいよ。 口利いてあげるから」

 

「本当ですか?」

 

「ええ」

 

「そうですか。 それはそれとして、随分と暢気にカメラを回してましたが……」

 

 と、先程まで泣いていた御仁とは思えない程の底冷えた声に固まる。

 当然だ。

 覚悟してたらまだしも、こんな不意打ちじみで出されると怖い。

 

「………………まぁ、攻撃カードでも特殊カードでもない。 ただ花を出すだけのクロウカードですので、たいした問題にはならないでしょう」

 

「ありがとうございます」

 

「では、母は貴方の報告を本家へと伝えます。 日々鍛練を忘れぬように……では」

 

 そう言って母は帰り、オレは降りてきた木之本達の方へと歩いていく。

 そして近付いたオレの耳に大道寺の悲鳴に似た叫びが耳に届いた。

 

「ビデオを撮り忘れてしまいましたわ。 せっかくの『(フラワー)』のカードさんとさくらちゃんのダンスがーーーー……」

 

「ああ、それなら大丈夫だぞ」

 

「あら、桐生くん」

 

「はい、カメラ」

 

 大道寺にカメラを渡して、クロウカードと踊ってるシーンからの封印のシーンを見せると、大道寺はオレの手を握って今まで見たことがない笑顔で口を開いた。

 

「ありがとうございます! 祐介くん」

 

 不覚にも、そう不覚にもその笑顔が可愛いと、心臓がドクンッと跳ね、顔を真っ赤になるほどの可愛さだった。

 

 

 ○

 

 

 さて、カードも封印して、騒ぎの元である花の掃除をして、オレはとある場所へと向かった。

 そこはアパートで、アパートの前には引っ越し業者のトラック。

 その付近にオレの目的の人物を見つけて、その人物を横切る瞬間……

 

「いよいよ、李家がご登場か? 遅かったな」

 

「なに!?」

 

 振り返る少年にクロウカードを見せる。

 

「残念だがあいつ以外にもクロウカードの所持者はいる」

 

 まぁ、オレだけなんだがなと言って、オレは『(イリュージョン)』で、李家の者の目を逸らして立ち去った。




No.3 桐生巴
容姿 Fateの源頼光
誕生日 6月21日
職業 陰陽師・巫女
好きな食べ物 和食
嫌いな食べ物 ジャンクフード
好きなもの 桐生祐介
好きな色 黒・白
好きな花 アスター・カトレア
得意な料理 和食全般
特技 これといってなにも……なんでもできますので
趣味 息子とのスキンシップ
今欲しいもの 息子の素直さがほしい
備考 本来は秋桜という名前でしたけど、巴の方がしつくり来たのでこちらに変更。

次話について祐介の婚約者が襲来する話かさくらカード編にすぐ繋げるか

  • 次話は祐介の婚約者襲来
  • 次話はさくらカード編
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。