ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

100 / 198
μ's短編一人目はンミチャにお願いしました。案の定長くなったので前後編に。

園田海未さん、お誕生日おめでとうございます。





短編【μ's+α】
逃がしませんよ ①【園田海未】


「……ええ、大丈夫ですよ。私は平気ですから」

 

 

それが、ここしばらくの私の口癖。幼い頃に親が勝手に決めた許嫁なる関係の、彼に対する……自分の気持ちを押し殺した言葉。

 

許嫁と言うと、大げさだったかもしれませんね。真姫ならまだしも、園田家に家柄で押し付けられる政略結婚のようなものはありえません。ただ単に……親同士が昔から仲が良く、自然と自分たちの子供を結婚させないか……といった、たわいもない話が変に進んでいってしまっただけのことです。

 

だとしたら、『婚約者』とか『将来を約束した相手』、と表現した方が正しいでしょうか?

 

私も、大人になってから決められたなら、反発しかなかったでしょう。ですが、子供の頃でしたから、そういった関係にある種の憧れがありました。

 

純粋に、絵本の中で幸せになる、お姫様と王子様のような関係に……

 

つまり、初めて会う男の子への純粋な不安よりは、恋愛関係というものに対する、不思議な期待の方が強かったのです。

 

 

「きみが、そのださん?」

 

「は、はい……わ、わたしがそのだ、うみです……」

 

「そっか! おとうさんとおかあさんはいろいろへんなこといってるけど、とりあえず『ともだち』からよろしくね!」

 

 

『男の子は育って男になるが、女の子は生まれた時から女だ』と、昔なにかの小説で読んだ気がします。それが正しいのかどうか、誰にでも当てはまることなのかはさておき……

 

最初の気持ちは、すぐに関係なくなりました。私は彼と出会って、『女』として好意を持ってしまったのですから。

 

 

「うみちゃん、ほらこれ見てー!」

 

「なんです? ……あっ、アネモネの花がさいてるんですね」

 

「花のなまえ、しってるんだ? おれはただ、キレイな花があったから見せようって思って。この青いアネモネ?なんて、うみちゃんのかみの色によくにてて、にあうはずだよ」

 

「わ、わたしに、この花かんむりを作ってくれてたのですか……?」

 

「このまえ、たんじょう日だったでしょ! 学校でわたすの、恥ずかしかったし」

 

 

……これでは、『単純だ』とか『恋愛じゃなく幼馴染的な感情だ』とか言われても、仕方ないかもしれませんね。

 

年頃の子ですし、実際に勘違いだったのかもしれません。穂乃果達に隠れて時折読んでいる恋愛小説でも、幼馴染の恋愛感情が『友情だった』というシーンは見かけますから。

 

ですが、最初の気持ちがどうあれ……今の私が、明確に彼を男性として好きなのは間違いありません。

 

彼以外の男性との接触がほとんどないまま、高校生になってしまった私ですが……そんな理由ではなく、彼自身が本当に好きなのです。

 

 

……いえ、好きなどというものではなく。一人の男性として、心の底から愛しています。

 

貴方でなければダメなんです。貴方がいなければ、おかしくなってしまいそうなんです。他の女としゃべっているだけで、その女をどうしてしまうか分からないほどに憎んでしまいます。

 

 

それが例え、μ'sの仲間や……

 

 

もっと昔からの幼馴染である、穂乃果とことりであっても。

 

 

 

 

……それなのに、それほどまでに愛しているのに。

 

私たちは素晴らしい結婚式を挙げ、何人もの子宝に恵まれ、幸せな家庭を築くはずだというのに。

 

なぜこんなにも苦しみながら、『平気』などと自分に言い聞かせているのでしょうか。

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

「わーっ、もしかしてそれ新作のパン!? 見せて見せて〜っ♪」

 

「長いパンは最近コンビニでも見るけど、キリンさんの柄は初めてかな? 目つぶってるところが可愛い〜♡」

 

「静岡のお土産で買ってきたんだよ。いくつか味があって、向こうではメジャーなんだって」

 

 

彼は優しいので、いつもこの2人にも分け隔てなく接しています。しかし、それこそが私の胸を苦しめていることに、いつ気がついてくれるのでしょうか……?

 

 

「ねえねえ、一口ちょうだ~い? こういう限定パンなんてなかなか食べられないし!」

 

「ちょ、ちょっと穂乃果ちゃん。その、海未ちゃんが……」

 

「別にいいよ。そこそこ買ってあるんだけど、どうせ1人じゃ食べきれないからさ」

 

 

今だって……家族旅行でしたから、私がついていけなかったのはまだわかりますが。お土産や帰ってきたときの一言で私を優先することなく、あまつさえ穂乃果とイチャイチャと……。

 

ことりは一瞬だけこちらを怯える目で見てきましたが、私はそんなに恐ろしい顔をしていたのでしょうか。

 

 

……普段の私なら、申し訳ないことをしていると思うかもしれません。ですが今の私は、むしろ穂乃果に手を出していないことを褒めてもらいたいほどです。

 

 

「わーいっ! やっぱり気前がいいね、このこの〜……ていっ隙あり!そのパンももーらいっ!」

 

「よせー! くそ、くすぐってパンを強奪するなんてずるいぞ、犯罪だ犯罪! ていうかそれ食べかけ!」

 

「へへー、私は気にしないよ♪ ……ん~美味しい!」

 

「あ、あの。2人ともそろそろ……」

 

 

同じ場所に口をつけるなど、私ですらまださせてもらっていないのに、どういう了見なのですか?

 

だいたい、私という婚約者が隣にいるというのに……その目の前で他の女にうつつを抜かすのは、いかがなものでしょうか。

 

 

いえ……彼を、愛する人を疑うべきではありませんね。彼だって私の気持ちはわかってくれているはず。そうです、私たちほどの関係が、誰かに断ち切られるなどあり得ません。そうに決まっています。私たちは約束された関係で……。

 

 

 

では、何故。彼は今、穂乃果と……?

 

 

 

……そう、自分で考えていてふと、大きな不安が脳裏をよぎりました。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

まさか、そんなはずは。

 

いえ、あり得るかもしれません……。

 

よくよく思い出してみれば、彼はここ4、5年……私と距離があるように思えます。彼の口から結婚について出てきたことも、殆ど無かったような……。

 

これまでは思春期というものや、私自身もまだまだ恥ずかしがり屋なのが影響しているのかとも思いましたが……今思えば、不自然では無いでしょうか?

 

特にスクールアイドルを始めてからは、周りの目もあって会える時間も減っていますし。こうして穂乃果の家でたまに集まって話をするくらいで……。

 

 

……彼はもう、私のことを好きでは無いのでは?

 

 

 

捨てられてる? 私が、彼に……。

 

もう二度と会えないどころか、私を抱いてくれるはずの彼の腕が、私以外の女を……!?

 

 

それを考えてしまうと、急激に気分が悪くなってしまい、平気なフリをしてお手洗いに走ります。

 

呼吸を整え、なんとか気分を落ち着けましたが。今こうしている間も彼と穂乃果達が楽しそうにしているのだと思うと、決して良くはなりません……。

 

 

「海未ちゃん、大丈夫なの!? 顔、真っ青だよ……」

 

 

部屋を出た私を心配したのか、ことりが来てくれていました。さっきまで私は怖い顔をしていたというのに、今は青い顔……ですか。

 

そうなる理由に『当然だ』と自分で納得しながらも、『異常なのかもしれない』という自覚もあります。彼のことを愛しているが故に、これほどの怒りも悲しみもあるのでしょうが、世間一般の男女がこれほどの感情を抱くものではないのでしょう。

 

……これほどまでに嫉妬深い私だからこそ、彼は離れていこうとしている?

 

 

いけませんね、こんな事では……疑うべきではないのです、愛する人の心を。

 

笑顔です、彼の前では綺麗な私で無いと……それこそ嫌われてしまいます。

 

 

「……ええ、大丈夫ですよ。私は平気ですから」

 

 

だから私は、ことりにそう言って誤魔化しました。

 

この時はまだ、そう自分に言い聞かせていれば抑えられると、彼とだって悪い結果になるわけがないと……そう思っていたのです。

 

まだ、この時は……

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

「な~にこんなところで油売ってるのよ。 スーパーの卵特売1人1パックなんだから手伝いなさいよね。ほら、アンタの分も作ってあげるから急ぐ!」

 

「キミって、ロシア料理に興味はあるかしら? いえ、亜里沙がね。張り切って練習してるうちに作りすぎちゃって……もしよかったら、ウチに来て食べてみない? 味は私のお墨付きよ♪」

 

「ウチ、一人暮らしだから食費がかさむんよ。でももし一緒に材料買って食べてくれる人がいたら、少しは浮きそうやね〜……ん?今晩はカレーにするけど、来るよねっ?」

 

 

……彼が『料理に興味がある』と言った途端に、これです。

 

料理なら、私が作ってあげられるのに……何故、誰もかれもが私達だけの空間に割り込んでくるのでしょうか? まだ親のように上手ではありませんが、外食でもない限り夫の食事を管理するのは妻である私の役目のはずでしょう。

 

 

しかも、スクールアイドルを見て『何かスポーツを始めようかな』と言った時も……

 

 

「私もあんまりスポーツしたことないのよね、ピアノばっかりで。せっかくだし、私も一緒にやってあげるわ。パパの知り合いも色々いるから、どんなスポーツでもいい場所が使えるはずよ?」

 

「凛だったら、走るフォームとか教えてあげられるにゃ! 最近は運動するのがブームなんだよね。おうちも近いし、ちょっと早起きすぎるけど、これからμ'sの朝練の前に凛と一緒に走ろうよ!」

 

「私、スクールアイドルしてるのに最近食べ過ぎちゃってて……その、お腹が。も、もう!言わせないでください! 私のダイエットに付き合ってほしいんですっ! 私じゃ、だ、ダメですか……?」

 

 

そもそも、彼を紹介したことが間違いだったのでしょうね……。μ'sの面々は、少しずつではありますが、彼に惹かれていきました。彼ほどの異性に惹かれるのは、同じ女性として理解できますが、まさかまだ婚姻関係にないのをいいことに、奪おうなど……許せません。

 

ですが、彼も彼です。スポーツなら、弓道と言っていただければいくらでも教えられたのに、そんなに私と一緒が嫌なんでしょうか? それとも、私に教えてもらうのは大変だと気を遣った? そんな心配は無用だというのに……私はただ、貴方と同じ時間を過ごしていたいだけなのですよ?

 

 

それに、そういう誘いを断らないのはやはり……などと邪推してしまいます。

 

 

「海未ちゃん、本当にいいの? このままで……」

 

 

私たちの関係を知ることりには、当然心配をかけてしまって。ですが、その度に……私はこう言って自分を抑えようとしていました。

 

 

「ええ、平気です。私は彼を信じていますので……」

 

 

————……しかし、それは独り善がりで、一方的な考えだったのでしょう。

 

彼が好きなのは、間違いなく私の本心。ですが、彼の心はどうだったのか。おそらく、それを考えないようにしてきた罰として……私の想いは、ついに裏切られることとなったのです。

 

 

 

 

「婚約者って……海未、もしかして『まだ』俺のことを?」

 

 

 




海未ちゃんに束縛されたい人生だった。後編は近日中に。


ところで、同じく近日中にμ's長編にプロローグを追加する予定です。その方がUIが向上し、話自体も引き締まると思ったので……シナリオとしては、4章と繋げるためのものですので、そんなに目新しくはないです。シレっと増えてても、驚かないでいただけるとありがたいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。