ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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海未ちゃんみたいなヤンデレの奥さんが欲しいです(唐突)

……と言い続けて、8年くらい経ってることに気がつきました。







逃がしませんよ ④【園田海未】

「料理やお仕置きの前に、先に『片付け』ないといけないのは、その女のようですからね……?」

 

 

机の上に突き刺さった包丁は、彼にそれが本気だと思い知らせるには、十分すぎるものだったのでしょう。顔を青ざめさせて震えています。

 

私以外の女の物になるくらいなら、いっそ……そんな考えすら一瞬、脳裏をよぎったのは、事実でした。ですが、この状況でもそれだけはいけないと、僅かに残された理性が訴え掛けてくれていたのです。

 

だから『この程度』で済んでいましたし、これ以降は彼次第です。

 

 

今の私は、自分でもどうなるかわかりません……出来れば彼自身に、それを抑えて欲しいのですが……

 

 

「それで……その泥棒猫コソコソとμ'sのメンバーに吹き込んでいたようですが、あなたは何故私より彼女の言う事を聞くのですか」

 

「そ、それはっ……海未が、こんな風にこわ、怖いから……!」

 

「…………そうさせたのは貴方の不誠実では? 私はこんなにも貴方を愛していると言うのに……」

 

 

……期待した答えは帰ってきませんでしたね。むしろ最悪の部類。ちょっとカマをかけただけなのに、すぐにボロを出しました。

 

ただの勘違いだと思いたい気持ちも、まだあったのに……こうなってはますます私の怒りも収まらなくなるというもの。

 

 

(これがただ他の女というだけなら、違ったかもしれませんが……)

 

なにせその女というのは……私と彼の間を引き裂こうとしているようですから。

 

そんな存在を生かしておいていいわけがありません。こうも悪い予想が当たっていると、私が考えているよりずっと前から『相談』などと言って、彼に悪影響を及ぼしていたのではないかとすら思えます。

 

私の、10年以上のこの想いを、その女はぁ……!!

 

 

———……いけません。

 

前回もこうなりかけて、彼に拒絶されてしまったというのに……!

 

 

堪えるのです。なんとか、握りこぶしから血が流れ落ちるのも気にしてはいけないのです。奥歯をかみ砕きそうになるのも我慢しなければならないのです。そう、平気ですから……10年以上も待てたのです、一度裏切られてもこうして一緒につきあえているのです。だから……

 

だから、『この程度』の事は平気です……!

 

 

「とにかく、その女の事を吐いてください! さもなければ……」

 

「さもなければってなんだよ!? 包丁を持ち出すような今の海未に……い、言えるわけないだろ!」

 

「そうまでその女に入れ込むのですか!」

 

 

 

この程度の……

 

 

 

「もうやめてくれ!その縛り方が、俺はもう嫌だって言ってるんじゃないか!! 俺たちはそんな関係じゃ……」

 

「やめません、やめるものですか。私は貴方を愛しているんです……貴方なしでは、もう生きていけないのです。貴方も、私のことを愛して———……」

 

「今の海未を好きになるなんて無理だよ!どうしてこんなふうに変わっちゃったんだ!?」

 

 

ことは——————……

 

 

「変わってなどいません……変わったのは貴方です!」

 

「もう何を言っても、俺は海未が嫌いだよ……!自分の思い通りにいかないからって、こんな風に暴力に訴えて!」

 

「暴力? 私が、どれだけ、自分を、抑えている、と……!?」

 

「……いいよ、俺は帰る!二度と海未の顔なんて見たくな————……」

 

 

プチッ

 

 

 

 

 

—————……平気に、してしまいましょうか。

 

 

「ッ…… う、m……!?」

 

 

背を向けられた瞬間。

 

私は彼の身体に組みついて、首を締め上げていました。

 

 

「~~~~~……!!」

 

 

武道を嗜む中で、幼い頃から教えられていた護身術。その中の一つに、絞め技……所謂『チョーク』があります。本来は私のような女子高生が使うような技ではないのかもしれません。が、いつか彼に抱かれるであろうこの身体を『綺麗』に保つために、一生懸命練習した過去がありました。

 

あまり得意げに話して、お淑やかでないと思われては嫌だったので、黙って密かに練習していましたが……最初に使う相手が、まさか貴方になるとは思いませんでしたよ?

 

 

……まあ、身につけた目的のとおりに使われるのですし、大した問題ではないでしょう。

 

 

気道を塞がず、頸動脈流を絞め上げる。きちんとした対処法を知らなければ、10秒もたたずに気を失ってしまいます。

 

 

それは彼も例外ではありません。後ろから不意を打たれ、素人であればなおさら……。

 

 

「う、ぁっ……」

 

 

「……眠りましたか」

 

技を解いて、そっとソファに寝かせてあげました。

 

とりあえず状況は落ち着きましたが、まだ事態が解決したわけではありません。

 

 

(彼は泥棒猫に毒されてしまってる、それを綺麗にしてあげなくては……)

 

そうしなければ、彼がまた私を見てくれることはないでしょう。敵ながらよくもここまでやってくれたものです。私と彼は絶対的な運命で結ばれているというのに、そこに割り込んでこられたのですから。

 

ただ……それも今日で終わりにしてあげなければ。

 

 

(そのためのいい方法はあるのでしょうか、私たち夫婦が、上手くいかなくなった原因は……)

 

 

勿論邪魔者にあるのは明白ですが、もっと視点を変えなければ。

 

要は、私がその女に付け入るスキを与えてしまったり、私がその女より魅力がない、と思われてしまったのが問題なのです。

 

彼ほどの素敵な男性ですから、私以外が遅かれ早かれ寝取ろうと考えても、おかしくありませんし……もっと早く気づくべきでした。

 

夫婦円満の秘訣、家庭、私の両親、私、彼との思い出……

 

 

 

 

 

 

……そうですね。

 

 

そうなのですね?

 

 

 

「……子供がいてくれれば良いのです。子は鎹(かすがい)、ともいいますし……♡」

 

 

 

ふふ……辛く悲しい日々でしたが、こんな形で結ばれるだなんて。

 

もうちょっとロマンチックなものを夢に見ていましたが、大人や夫婦生活は綺麗な事ばかりでは立ち行きませんし、これも必要なことなのでしょう。

 

 

幸い、彼は気を失っていますから、とても抵抗などできない状態です。両親もいませんし、私の方は……身も心も、あまり準備はできていませんが、貴方のためと思えば頑張れます。スクールアイドルと同じように、初めての事でもチャレンジあるのみ、ですよね……♪

 

 

「それでは、失礼しますね……♡」

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

『……あれ? アンタ達、仲直りしたのね』

 

『にこちゃん、何よ。ちょっと残念そうじゃない』

 

『そ、そんなことないわよ!』

 

 

——————あれから、一週間が経ちました。

 

μ'sの面々は、私たちの仲直りを祝福してくれました。彼は私との『行為』から目が覚めて以来、すっかり反抗することは無くなりました。

 

私との生活への抵抗感も薄れてきたようで、思った通り、恋人同士にはそういったスキンシップが大事なのだと身にしみてわかります。

 

 

『心配したんよ? 一時期は特に2人とも辛そうだったもん』

 

『海未も、男の人の事はちゃんと分かってあげないとダメよ? カップルはお互いの理解が大切なんだから』

 

『絵里ち、恋愛経験ないやん……』

 

 

一度は彼に近づこうとしていたことは、この際水に流してあげましょう。

 

後から聞いた話で、やはり彼から私と距離を取れるよう、お願いしていたようですし。それに、私にも非があったのですから。夫のことを分かってあげられていなかった、私にも……。

 

 

『とにかく、これからはあんま喧嘩しちゃダメだよ!?』

 

『そうです! 友達も恋人も、仲が良いのが一番ですっ!』

 

『はあ……凛も海未ちゃんみたいな運命の相手が欲しいにゃ~……』

 

 

『検査キット』では当然まだ、今のところ『陰性』ですが。なんにしても彼の心と身体は大きく私に傾きました。結果が出るまでは、彼は私と疑似的でも夫婦でいてくれることでしょう。夜に誘う時も、隣を歩く時も、電話で話すときもどこか怯えていますからね。

 

本当は怯えよりは、愛を向けてほしいところですが……子供ができていてくれれば、きっと彼も父親としての自覚が目覚めてくれるでしょうから。少なくとも『私たち』を見捨てることはもうしないはずです。間女が入ってくる余地など、なくなるわけです。

 

 

『海未ちゃん達、これでいよいよ恋人なんだ! すごいねぇことりちゃん!』

 

『……うんっ、凄いです!さすが海未ちゃん、彼氏のハートをがっつりつかんだんだね♪』

 

『結婚式には絶対呼んでね~っ!あ、お母さん達や雪穂にも知らせなきゃ!』

 

 

ふふっ……こんなことなら、もっと早くこうすればよかったですね。

 

今回のことのきっかけを作ってくれたことりには、感謝してもしきれません。まあ、彼女にも私がここまでするとは予想外だったかもしれませんが、終わり良ければ総て良しというものです。今度、改めて御礼をするつもりでいます。

 

 

 

—————ただ。

 

まだ一つだけ、解けていない謎もあります。

 

 

それは、例の泥棒猫が『誰』なのかということです。

 

 

私の勝利が完全に確定した今となっては、あまり意味のないことと思われるかもしれませんが……先の浮気の芽を潰しておくことも大事なことでしょう。

 

もう2度と油断はしない、と決めたことですし……。

 

 

「あ、すいません穂乃果。考え事をしていたら、ちょっと忘れ物をしてしまったようです。すぐに戻りますね?」

 

「海未ちゃんが忘れ物なんて珍しいね〜? じゃあ待ってるね!」

 

 

穂乃果の言う通りです。彼に父親としての自覚を促すなら、私も母としてしっかりしなければいけませんね。

 

彼のことばかり考えていて、学業や日々の生活が疎かになっていては、本末転倒です。

 

μ'sもまだまだ続くでしょうから、そちらも頑張りませんと————……おや?

 

この声は、ことり?

 

こんな昼間に、誰かと電話でしょうか……?

 

 

 

「ごめんね、海未ちゃんはむしろムキになっちゃったみたいで……完全に予想外だったよ」

 

『ことりのせいじゃないよ、俺も君の言ったとおり、海未を遠ざければ大人しくなってくれるって思ってたんだから……』

 

「暴力に任せて襲うなんて……ことり、海未ちゃんのこと見損なっちゃいました。せっかくμ'sのみんなにも協力してもらったのに」

 

『うん、ありがとう……その、これからも相談に乗ってくれると嬉しいよ。それじゃ、公衆電話待ってるから……履歴に残らないようにするのも大変だね』

 

「大丈夫ですっ!この先何があっても、海未ちゃんに何されても、ことりだけは味方だからね? なんたって『彼女』だもん♪」

 

 

ことりの鞄の普段とは違う携帯についたいたのは、黄色いアカシアの花の、アクセサリー……

 

私の中で、全てがつながりました。

 

この前の、笑顔の訳も……。

 

 

「逃がしませんよ……絶対に」

 

 

『はかない恋』は、アネモネの花言葉。

 

 

アカシアの花言葉は……『秘密の恋』。

 

 

 

 

 

 




黒幕発覚でンミチャは完結です。この後はヤンデレことりちゃんと血で血を洗うバトルが始まる……かもしれません。

①を投稿したの、今見たら3月だったんですね。コロナやら仕事やらで色々難産でしたが、なんとか一区切りです。

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