ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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今回は、大半の方々の予想を裏切って、真姫ちゃんヤンデレ短編です。案の定長くなったので前後編に(ry



巻き戻しましょう? ①【西木野真姫】

コツコツと音を立てながら、地下室への階段を下りていく。

 

その行き止まりにあったのは、一つの扉。どう暴れたって叫んだって、上には声が届かない密室。

 

私だけが知っていることだけど、ここにはある男の人がいる。中学の頃に知り合って、愛しあう関係になった人。この西木野真姫が、この世で男性として愛する唯一の人……。

 

会えない時は、彼のことが心配で心配でたまらなかったんだけど……いざ会うとなると、いつも緊張しちゃうのよね。そんなにお化粧なんてしてないけど、今日はお肌のノリが悪くないかなとか、髪の毛に癖ツイてないかしら、とかね。

 

今だってそう。扉を開ける前に、彼がどんな表情をしてくれるのかって想像すると、胸が高鳴る……。

 

 

 

でも、きっと今日も。

 

そんな私の気持ちは()()()()()のかもしれない……。

 

 

 

 

——————そう思うと、熱くなった心も少し冷めてしまうのがわかった。

 

階段の音くらいは少しは響いてるでしょうし、私が来たことは彼にもわかっているはず。お腹すいてるのに、あんまり待たせるのもかわいそうだし……早く入ってあげましょう。一応、ノックして……

 

 

「こんばんは。夕食、持ってきたわよ?」

 

 

部屋に入っていくと、いつも通りの彼がいてくれる。鎖につながれて、十分に動けないままの彼が、私が来るのを待っていてくれて……

 

 

「ま、真姫……ここから、出してくれ」

 

 

……そう、()()()()()。今日もまたこの反応、私の期待は、今日もまた裏切られてしまう。でも仕方ないの、彼は病気にかかっておかしくなっているだけなんだから。

 

 

それにしても……この『病室』に移してあげて、1週間が経つっていうのに。なかなかしつこい病気ね。

 

今更いちいち怒ったりはしないけど、私と彼がこんな会話をしなくちゃいけないっていうのは、いい気分はしないわね。まぁ、今日はそのために、わざわざ秘密で『特効薬』を準備してきたのだけれど……。

 

とにかく、『患者』であり『彼氏』である人には、何度だって説明してあげなきゃ。貴方は今危ない状態で、私が治してあげようとしてるってことを。

 

 

「またそれ?やっぱりマズい症状ね……言ってるでしょう? これは貴方の中に混じってしまった花陽の成分を、きちんと私で『消毒』してあげるためなのよ。そんな言葉が出てくるってことは、まだ時間がかかりそう……」

 

「おかしいよそんなの。毒だなんだって、いくら真姫がお医者さんの家だからって……!」

 

「『だから』よ。私だからこうしてあげられてるんじゃない。医者の卵で、こんな専用の()()()を用意してあげれて……毎日消毒してあげられるのは、私しかいないの。 貴方を愛している、私だけが……」

 

 

そう、貴方の彼女はこの西木野真姫だけなの。食事だって持って来てあげられるし、身体も拭いてあげる。『下』のことだって、来るたびにシてあげてる……すべては、貴方を愛しているからできること。他の女なんて要らない。必要なのは私だけでいいし、私に必要なのも貴方だけでいい……。

 

 

「こんな事、間違ってるよ……。μ'sのみんなや花陽だって、心配してるだろうし」

 

「そこで愛する私じゃなくて、μ'sや花陽の名前を出すのが、まだ毒されてる証拠なのよ!!」

 

 

不機嫌になって、思わず近くの机を叩くと、彼は小さく怯えた声を発する。

 

ごめんなさい……私も、貴方を苦しめたいわけじゃない。何もかも、貴方のためにやっているの。

 

それでも、彼は怯えている。そして、私も誤解を受けている……。

 

 

 

どうして私たちがこうして辛い関係にならなくちゃいけないのか、それは病気のせい。

 

そして、彼がそうなったのは、花陽のせいよ……!!

 

 

「最初に会った時は、こんなのじゃなかったのに……」

 

 

彼への愛と、花陽への静かな怒りを燃やす私に、そんなつぶやきが聞こえた。

 

 

……最初に会った時は、確かに楽しいだけだったわね。そこに、途中から『邪魔』が入り始めた。よりにもよって私たちだけの間に、入ってくる女が現れ始めて……!!

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

 

人生で何度告白を受けてきたか、回数は全然覚えてない。いつも下心見え見えの……私からすれば、ちっとも興味のない男子ばっかりで、ウンザリしてたからね。

 

でも、彼からの告白だけは嬉しかったし、日付や時間まで今も正確に覚えてる。結婚しても、子供が生まれても、ずーっと大事に覚えていようって思うくらいに。

 

飾り気はないけど、まっすぐな告白……。本当に嬉しかった。

 

 

『西木野さん、改めて言うのもなんだけど……中学2年の時からずっと好きでした!俺と、付き合ってください!』

 

 

ひょんなことから出会って、仲が深まっていった私たち。それが中学3年生になったとき、突然告白された。……いえ、数少ない私の交友関係のみんなには、全然突然じゃなかったみたいなんだけどね。お互い意識してるのは、バレバレだったらしいから。

 

最初は、どう返すべきか悩んだけど……激しい鼓動音をたてる心臓のおかげで、すぐに自分の気持ちを理解できた。

 

 

こんなの、本当に好きな相手じゃなきゃ……こんな風になるわけ、ないじゃない。

 

 

 

『す、すごくうれしい! ……けど、知ってるでしょう? 私は来年から、親に言われて音ノ木坂に行かなきゃいけないって。そこは女子高で、会える時間も少なくなるでしょうし……それでも、いいのなら』

 

『それで十分すぎるよ。時々でもいいから、どうかこれからも俺と————……』

 

 

結局、この告白を私は喜んで受け入れた。家や学校の都合で、明確な恋人関係は保留……っていう『条件付き』で。

 

曖昧で、微妙な関係。でも、確かに愛し合っていた。楽しいことがあれば携帯で通話したし、悩みごとだって共有したわ。気は早いんだけど、将来どの大学に行くか話したりもした。

 

μ'sを始めてからは、ちょっと忙しくなったけど。あんまり頑張ってるのをみんなに見せるのも恥ずかしかったから、こっそり自主練を見てもらったりもしたわね。

 

 

恥ずかしかったから、あんまりボディタッチとかはなかったんだけど。こんな日々はこんな日々で、好きだったし……μ'sがいつか終わってしまうまではそれでもいいと思ってた。彼もスクールアイドルのことは応援してくれてたし、浮気なんてする性分じゃないのは、お互いよくわかってたし。

 

 

 

 

——————それが変わり始めてしまったのが、忌々しい3ヵ月ほど前の事。

 

 

μ'sは順調だったし、勉強で行き詰まるとこなんてなかった。家族だっていつも通りだったし、特別体調が悪いところもない。

 

 

なら、何が悪く変わったのか……

 

それは彼がμ'sのメンバーと、本格的に仲良くなり始めたことよ。

 

 

 

特に、あの花陽とね……。

 

 

 

「エヘヘ、ほっぺたにご飯粒ついてますよ? えいっ♪」

 

「ちょ、ちょっと花陽。くっつきすぎ! っていうか今、そのご飯粒たべt……」

 

「ん~? どうしたんですか、顔を赤くしちゃって。まだまだ作ってありますから、『昔みたいに』遠慮しないで食べてくださいねっ」

 

 

———————なんで貴方が、私の許可もなしに彼にベタベタとくっついてるのよ……!

 

頬についたものを食べるだなんて、私だってしたことないのに……なんで。なんで私じゃなくて花陽が。

 

思わず奥歯をかみしめすぎて、その音が頭の奥まで響いた感覚がする。うちは歯科じゃないのに、余計なストレスをかけさせないで欲しいわね……!

 

 

 

「今日も随分仲が良いのね、貴方達……」

 

「あ、真姫ちゃんにもそう見える? 聞いた聞いた?私達、やっぱりお似合いなんだね!」

 

「花陽!? 違うんだ真姫、俺達はただの幼馴染で……」

 

 

……何が『お似合い』よ。わざわざ私の方を見ながら、仲のよさアピールだなんて、ふざけているのかしら?

 

なんでも、彼は花陽と幼馴染だったらしいわね。元々花陽が片思いしてたのが、最近は疎遠になって……でも、私を通じて再会した。だからこれを機に、縒りを戻そうってワケね。

 

せっかく練習が終われば、たまに会うことができていたのに。こんな形で邪魔が入るなんて完全に予想外だった。それは、μ'sに入る前の花陽がおとなしかったからっていう油断も、心のどこかにあったんでしょう。

 

思わず舌打ちしてしまう。我ながら迂闊だったわ……。私が好きになるくらいなんだから、他の女だって寄ってきて当たり前じゃない。同じμ'sでも、それは変わらなかったはずなのに……。

 

 

「違う、って何がですか? 昔はよく言われてたよね~?」

 

「は、花陽。ちょっと離れようよ。俺達はそんな関係じゃ……」

 

「いいじゃないですか、将来『そんな関係』にしちゃいましょうよ♪ きっとみんな祝福してくれますよ!」

 

 

そんなの、するわけないでしょうが……! 本当にそうなるって言うのなら、どんな手を使ってでも私が止めて見せるわ。

 

凛なんて刺激が強いのか後ろでアタフタしてるけど、私の心には怒りの感情しかない……。

 

幼馴染がそんなに偉いの? 今の私と彼に、何か関係ある? そこは私の居場所よね!?

 

 

「は、花陽! 私たちはアイドルなんだから、そこまでにしておきなさい!」

 

「は~い……あ、にこちゃん顔真っ赤だよ?」

 

「アンタがこっぱずかしいもの見せるからでしょー!?」

 

 

にこちゃん、ナイスよ。彼も花陽から離れてどこかホッとした表情を浮かべてる。私に睨まれるのが怖いなんてわけじゃないはず。本当は私以外の女にくっつかれるなんてイヤなはずなのに、愛想笑いを浮かべてくれている……。

 

おそらく、彼は『真姫と同じμ'sの仲間だから』って、気を遣ってくれてるんでしょう。ごめんなさい、私のために迷惑をかけてしまったわ。

 

 

……そう、私と彼は相思相愛なのよ。まだ明確な恋人じゃないってだけで。

 

 

ただ、私も彼とそういう関係であることまでは、まだ言ってなかった。これを知ってるのはせいぜい、お互いの両親くらい。さっきにこちゃんが言ったことは、あくまでも後付けの理由だし。

 

 

……でも、そんなことだったから、他の女が勘違いして寄ってくるのよね。

 

いえ、私にも責任はある。中途半端に怖がって、曖昧な関係に逃げて……さっさと既成事実の一つも作ってないんだから。いくらスクールアイドル活動に全力だからって、これじゃ彼も安心できないかもしれない。しっかりと私が寄り添ってあげないと、花陽がつきまとってきてもハッキリ断りづらいでしょう。

 

 

だからこれは彼じゃなくて、私からやらないと。私が花陽に、しっかりと理解させてあげないとね……私たちの間に入る隙間なんて、1ミリもないんだってことを。

 

 

 

そのために、呼び出してまで『お話』させてもらったんだけど……私は甘かった。

 

 

「……花陽。聞こえなかったのなら、もう1度言ってあげるわ。μ'sのみんなにはまだ言ってないけど、私は彼と付き合ってるの。私の男に、余計な色目を使わないでもらえないかしら」

 

 

花陽は、全部わかっていて割り込んできていたんだから……!

 

 




本作はだいたい幼馴染が逆転勝利する展開が多かったので、逆に幼馴染にNTRれそうになる展開もたまには。後編はほぼほぼできているので、早ければ今週中にでも。

また、本日をもってこのSSは2周年を迎えました!これも皆さんの応援のおかげです。月並みな言葉ではありますが、これからもよろしくお願いします。

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