ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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お待たせしました。後編です。


巻き戻しましょう? ②【西木野真姫】

私の男に、例えμ'sの仲間だろうと、間に女を近づけさせるわけがない。

 

だから、呼び出してまで『お話』させてもらったんだけど……私は甘かった。

 

 

「……花陽。聞こえなかったのなら、もう1度言ってあげるわ。μ'sのみんなにはまだ言ってないけど、私は彼と付き合ってるの。私の男に、余計な色目を使わないでもらえないかしら」

 

 

なにせ花陽は、確信犯で横恋慕してきていたんだから。

 

今も私が呼び出した理由なんて、初めから分かっていたとでもいうように余裕の表情を見せてきてる。

 

 

「ふふ……真姫ちゃん、それさっきも聞いたよ? だったら私も、もう1度言ってあげようかな。あの人はね、真姫ちゃんに放っておかれてるんじゃないか……って悩んでるんだよ?」

 

「私を動揺させるつもり? あいにくだけど、そんな手は通じないわよ」

 

 

……咄嗟に嘘をついて誤魔化すしかなかった。

 

花陽の言うことが真実なのか、それとも今私が言ったのと同じく嘘なのか。それはわからないけど、もし真実なのだとしたら、イヤな予感が当たったということ……彼は、私が関係が曖昧だって気にしている……。

 

ただ、私は顔や態度に出やすいタイプだっていう自覚はあった。実際、そんな私の内心のショックなんて簡単に見透かされてしまってる。

 

 

「ふふ……声、震えてるよ。本当は自覚してたんじゃないかな? 相変わらず意地っ張りなんだね。その性格で恋人関係も保留されて、スクールアイドルでも大人気になっちゃったから……彼、壁を感じてるんだよ」

 

「なにを根拠に、そんなこと言ってるの……!!」

 

 

ああ、イライラする……そんなこと、貴女に言われなくったって十分にわかってるのよ。意地を張って怯えているままの、煮え切らない自分がいけないんだってことはね……。

 

この勝ち誇った顔を歪ませてやりたい。目の前で彼とキスでもして、私たちの愛は本物だって教えてやりたい。こんなことなら、にこちゃんに制止された時に勇気を出して、唇の一つでも奪っていればよかった。

 

 

「根拠も何も、本人から聞いたんだから。私が相談に乗ってあげてるの……。女の子の幼馴染なら、相談しやすいでしょうし♪」

 

「……『相談』って言えば聞こえはいいけど。彼の悩みと私の奥手さにつけこんで、彼を寝取ろうって考えてるだけじゃないの……!」

 

「そう思えるなら、思ってていいんじゃないかな? どっちにしても私はあの人を譲る気なんてありません。真姫ちゃんみたいに一瞬の気持ちじゃない……私にとって、ずっとずっと昔から大切な人だったんですから!」 

 

 

——————そろそろ、許せなくなってきたわね。

 

そんなに出会ってからの『時間』が大切なの?

 

それなら……そんな『時間』を無駄に過ごしていた貴女のほうが、よほど彼に相応しくなんてないわ。

 

 

 

「一瞬、ですって? 貴方こそ何が『幼馴染』よ。一度疎遠になったっていうのなら、そこまでだった……ってことじゃない?」

 

「……!」

 

「少なくとも、私と彼はまだ一度もそうなったことはないわね?」

 

 

フッ……悔しそうな顔、いい気味よ。

 

でもまだよ。まだまだ思い知ってもらわなくちゃ。

 

 

「そんなの、真姫ちゃんに何がわかるっていうの? 私とあの人だけの思い出に……!!」

 

「さあね?貴女の過去なんて私は知ったことじゃないし、わからないわ。でもね……花陽がどういおうと、今のあの人の彼氏は私、西木野真姫なのよ」

 

 

昔のことなんてどうでもいいわ。

 

違うとは知ってるけど、最悪……彼が昔に花陽と恋仲であっても構わないとさえ思っている。今の私と彼が幸せなら、これから一緒に歩んでいけると信じているから。最後に私のところにいてくれればいい。私を選んでくれさえすれば……

 

それがきっと、本当の愛だものね? 花陽と違って。

 

 

「……さっきは『自覚してないのか』とか言ってたけど、そのまま返させてもらうわ。自分でも無理だってわからない? たかが『幼馴染』ってだけで甘いのよ」

 

 

「——————『たかが』って言ったんですか、真姫ちゃん。私達の絆を」

 

「ええ、言ったわ。なんなら彼に聞いておくわよ? 私と貴女、どちらを選ぶのか……」

 

 

まあ? 少なくとも今の状態では私の圧勝でしょうけどね。

 

確かに彼は揺れているのかもしれないし、厄介だけど、そこにつけこむこともできているんでしょう。

 

だけど、『それだけ』……あくまでも『西木野真姫のための相談』。つまり、まだまだ花陽は彼の心を奪うことはできていない……。

 

なら、あとは私が彼を安心させてあげればいいだけ。無理に張り合おうとして、私に情報を渡したのが貴女の運の尽きよ。シラを切ればよかったのに、それができなかったのは、花陽もまた私のことを許せなかったから……でしょうね。

 

向こうからすれば、私が奪ったのでしょうけど、それならお互い様よ。……そして私ももう、逃げるのはやめにしないと。私は早く戻って、彼にきちんと謝らないといけない。『心配させてごめんなさい』『これからはちゃんとした恋人になるから』って。

 

花陽みたいに、『誰かに奪われた』って後悔する前に……。

 

 

 

「……まだ、『これから』だよ。私はあの人と、ずっと長い時間を過ごしてるんだから。どれだけ離れていても、心が繋がってるの。真姫ちゃんが何をしようと、絶対に取り戻すよ……!!」

 

 

……花陽がどれだけ戯言を言おうと、ただの負け惜しみ。

 

 

勝った。

 

少なくともこの時、完全にそう思っていた。

 

 

「……まあ、せいぜい頑張る事ね」

 

 

踵を返したときには、もう花陽のことは頭から離れていたくらい。これから彼に会って謝って、私たちは幸せな日々を取り戻すだけだもの。

 

今度こそ誰にも邪魔させない、恋人としての2人の生活に……

 

 

 

 

 

 

 

 

——————戻れると、思っていたのに。

 

 

 

「わからないの!? もう花陽と会うのはやめて! あの娘は私からあなたを盗ろうと—————」

 

「さっき話してくれたことは分かったけど、それでも花陽は大切な幼馴染なんだ。ほっとけないよ……」

 

 

……花陽ったら、自分が相談に乗ってるとかいいながら、自分の相談に乗ってもらってもいたのね。また油断してたわ、本当にしつこい……! どこまで彼を毒すれば気が済むのよ!?

 

何があったかだって話した。私の気持ちも改めて伝えた。

 

でも。彼と花陽を絶縁させるには至っていない。私との関係には納得してもらえても、むしろ不安定になった花陽のことを心配してしまっている。

 

 

「花陽も、色々悩んでるみたいなんだ。学校やスクールアイドル活動のこともそうだし、昔の俺との別れ方だって……」

 

「そんなの口実に決まってるじゃない! 同じ学校で同じ部活にいる私にはわかるわよ、全部貴方に会うための嘘よ!」

 

「そ、そこまで言わなくても。真姫だって、花陽と俺の昔のことは知らないのに」

 

 

この期に及んで、まだそんなことを言うの!?

 

忘れていたはずなのに、さっきの花陽の言葉が思い出されてしまう。何が貴方をそう思わせるの……そんなに、花陽が大事なの?

 

そんなに幼馴染が大事なの!? 私よりも……。

 

 

おかしい。こんなの変よ。

 

私がこんなにも愛しく思ってるのと同じくらい、貴方も私を愛してくれてるはず。まるで、普段の貴方じゃないみたいな……

 

 

 

「………………ああ、そうなんだ」

 

 

 

そうよ。そうに決まってる。私って頭良いものね、わかったわ。

 

貴方は毒されちゃってる。病気になってるのよ。原因の花陽とあんなにくっついてたんだもの、当然よね。もっと早く気づくべきだったわ。だからこんな事言うのよ。これは症状なのよ……。

 

本来の彼がそんなこと言うわけがない。私のことをいつだって愛してくれるし、目を閉じてる時だって私のことを思い浮かべれくれているはず。病気のせいで、変わっちゃった……。

 

 

 

……なら、私が消毒してあげなきゃ。

 

 

「ま、真姫……?」

 

「……ごめんなさい。つい言い過ぎちゃったわ。お茶か何か淹れてくるわね……」

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

後は簡単。幸い、親の仕事の都合で、睡眠薬には事欠かなかったし。こうして、彼をここに閉じ込めることも出来ている。……彼が一人暮らしじゃなかったら、多少は誤魔化すのに手こずってたかもしれないけどね。

 

逆にμ'sのみんなには、親のところに一度帰ったと伝えてある。彼と花陽が別れたのって、引越が原因だったのね?おかげで私と縁ができたわけだし、今もこうして隠し通せるのだから、感謝しなきゃ。

 

ま、花陽は流石に怪しんでるみたいだけど……確かめる方法なんて何もないし。

 

ただ、治療も一週間が経つ。症状は多少は改善に向かってると思いたいけど、この分だと時間がかかりすぎる。そうなれば、いくらなんでも厳しいかもしれない。

 

だから、一気に病気を治すために……夕食と一緒に、特別な薬を持ってきたの。こんなことまで仕上げられるなんて、やっぱり私って最高の彼女ね♪

 

 

「ねぇ……貴方が花陽のことを気にするのは、()()()()()()……よね?」

 

「? そ、それはそうだけど……」

 

「……なら。()()()()()()()()()()()()()、どうなるのかしら?」

 

 

研究室の一角からコッソリ持ち出してきた、特別な薬……。

 

ちゃんとデータも揃ってるし、効果は保証されている。自分では、性格はあまりママに似てないと思ってたけど、そっくりだったみたい。パパとのために、こんな研究まで用意してたなんて……。

 

フフッ……今日ほど、パパとママ……そして、医者の娘に産まれたことを喜んだ日はないわね。

 

ゆっくりと注射器を用意していると、彼が繋がれたまま、抗議の声を上げ始めた。

 

 

「……だ、だめだ真姫! そんなの使ったら、後戻りなんて……!!」

 

 

あら? 今の会話だけで、どんな薬か気がつき始めたみたいね。やっぱり貴方って頭はいいし、成績もいいし。将来はこの真姫ちゃんと同じ大学に進めそうね、安心したわ♪

 

 

「後戻り? ああ、いい得て妙だけど……何が起きても、私と貴方が愛しあえていれば、それで十分すぎるくらい幸せじゃない♡」

 

「そんな、そういうこと言ってるんじゃなくて! こんな事しなくても真姫と俺は十分好きあってるじゃないか!」

 

あ、私を心配してくれてたの? まったく……さっきは褒めたけど、こういうところはバカね。私にそんな心配、必要ないのに。でも嬉しいわね、好きって言ってもらえるのは。

 

……一刻も早く今みたいな彼を取り戻すためには、ますますこの薬が必要だわ。

 

「さぁ、時間を巻き戻しましょう。大丈夫、目が覚めた時には余計なことは記憶からなくなってるわ」

 

「真姫、やめ……」

 

 

「起きても私がつきっきりよ。安心して巻き戻しましょう♡ 幼馴染の、もっと前に……」

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

あれから、一月。

 

私は幸せな日々を存分に楽しんでる。今度こそ邪魔が入る余地を残さないように、しっかりと距離を詰めて、一緒にね……。

 

「ありがとう真姫、ヘマして記憶があいまいになっちゃった俺のことも、面倒見てくれて……」

 

「いいのよ、彼女の私が好きでやってるの。まさか登山中におっこちて頭を打っちゃうなんて、マンガじゃないんだから……。だから気をつけてって言ってるのに」

 

「ごめんごめん。いや、誰かと約束してた気がしてさ。山の上でおにぎりとか弁当とか、食べようとかなんとか。いいとこ見せようと練習で登ってたと思うんだよ」

 

 

あの薬で、彼は周りの人物に関する記憶がかなり曖昧になった。実際の記憶喪失でもたまにあるみたいね、人間関係に関する記憶だけが抜け落ちること。

 

だから行方不明者が見つかっても、記憶喪失で知人が見つからない……なんて事もあるのよね。

 

多少効果が不安定なのは気になるけど、上手くいってよかった。そんな症状が都合良く引き出せるってだけでも、すごいものではあるけど。

 

 

「うーん……昔、どこかの女の子とその山で、よく遊んでた気もするけど」

 

「実はね……それ、私なの。久々に再会したのが、中学生の時でね? あ、でもこれは2人だけの秘密よ。記憶が無くなったって、私はまだμ'sで……私たちは恋人なんだから」

 

「えっ!? ああうん……わかったよ」

 

 

適当な理由をつけて、一週間の間の出来事も色々手を加えさせてもらったわ。ママには、いくら感謝してもし足りない。花陽も最初は騒いでたけど、『ケガの状態』と『後遺症』が重なると、手出しはできなかったみたいね?

 

あれから、彼は治療や記憶のことにかこつけて、μ'sから徹底的に遠ざけている。

 

つまり、花陽には反撃の糸口すらつかめないということ。何が起きたか確かめる方法と証拠が無いのは勿論のこと、あちらの親御さんとのつながりはもうないんだから。

 

そういえば、彼の親御さんに心配をかけてしまったのは申し訳ないけど……これも私たちが幸せになるためだから、仕方ないこと。何か埋め合わせはしないといけないわね。気は早いかもしれないけど、例えば結婚報告とか指輪とか、どうかしら……?

 

 

「とにかく! これまで付き合ってきたことは忘れられちゃったけど、これからはいくらでも時間があるんだから、しっかり捕まえておきなさいよ?私のこと!」

 

「ああ。真姫みたいに美人で、今もつきあってくれてる女の子の事、離すわけないよ」

 

「ふふ……そうそう、この真姫ちゃんの彼氏なんだから、そのくらいの意気込みじゃないと困るわ。だいぶ調子が戻ってきたわね♪」

 

 

 

花陽……貴方はもうこの人の幼馴染じゃないの。

 

私が全部消してあげた。巻き戻して、無かったことにしてあげた……。

 

彼に幼馴染はいない。残っていたとしても、それは私がもらってあげるわ。

 

 

 

だから安心して……諦めなさい?

 

 

 

「何だか真姫、すごく嬉しそうだね?」

 

 

「当然でしょ?……これからもずっとずっと、私と一緒よ♡」

 

 

 

これでやっと……『元通り』ね♪

 

 

 




久々に、それなりに王道のヤンデレを書いたつもりです。やっぱり真姫ちゃんはエンジェルじゃないか!(錯乱)

最近リクエストが溜まってきました……ふぇぇ、終わらないよう……

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