ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

125 / 198
第8.5話 もっと深い繋がりを【綺羅ツバサ】

「なんか俺って、昔からツバサに助けられてばかりだな……」

 

 

二人で秋葉を離れて歩いていると、ふいに修也はそんなことを言った。

 

………………………こういう少し気弱な修也も『アリ』ね。

 

ヤバいわ。キスしちゃいそう……。ダメよ、ムードのない女だと思われるわ。いえ、今更そんな関係ではないのだけれど、かといってあんまりすぐに、ってほどでもないし。落ち着いて……きちんと答えてあげないと。

 

「何言ってるの。子供の頃私を助けてくれたのはあなたでしょ?貴方がいなかったら、間違いなく今ここにはいないわよ。ま、新年あけたら、ちゃんと全員に改めて話なさい?」

 

本当は助けられてるのは私の方なんだけどね。でもこういう謙虚なところが彼のいいところよね。

 

……でも行き過ぎて、自信の無さになってるのは今後の改善ポイント。

 

そんな幸せな悩みに浸る私をよそに、修也はどこか遠いところを眺めてつぶやく。

 

 

「穂乃果、本当に俺なんかのこと。好きでいてくれたんだな」

 

 

……本当のところ。その一言で、私は一瞬でキレちゃってた。

 

いえ、その言葉だけじゃない……。

 

そう語る修也の表情は、彼女たちを裏切ってしまった後悔と、彼女たちの眩しさに嫉妬する気持ちと。何よりも、穂乃果さんたちへの深い繋がりを感じさせる、とても温かい笑みだった。たった1年間もないうちに、修也はこんなに……!

 

確かに、私にも笑顔はむけてくれる。恋人への、幼馴染への笑顔をしてくれる。

 

でもそのいろんな気持ちがごちゃ混ぜになった、不思議なくらい魅力的な笑顔は、私にはしてくれなかったもの。

 

それを、このデート中に、私の前で名前を呼んで……!!

 

思わず鞄を握る手に力が入る。自分の手のひらに爪が食い込んでいくのがわかる。

 

いけない、抑えるのよ……。

 

「…………その『俺なんか』って、私の前ではやめてよね。そのあなたを好きになった、私の立場がないじゃない」

 

怒りを抑えて、言葉を絞り出す。女心に鈍い彼は、この言葉で、自虐した自分を恥じているようだけど。

 

……やっぱり、彼の隣にいるべきなのは私しかいない。

 

修也は優しい人。だから、本当は今回のことで、物凄く悔やんでいるのがわかる。もしかしたら、μ'sにもっと早く悩みを打ち明けていれば、こんなことにはならなかったんじゃないかって。

 

自分がもっと強ければ、こんな事態にはなってないんじゃないかって、悩んでる。

 

μ'sと一緒にいるのが辛すぎて、でもμ'sが大好きで。もしかしたら相思相愛になれる世界もあったのかもしれない。……でも私という存在もいて、様々な想いが渦巻いているのね。

 

 

 

そんな必要はないことを教えてあげないと。

 

私が……私が救ってあげなきゃ。あの娘達の呪縛から。

 

 

決めたわ。貴方の隣には、これからはずっと私がいてあげる。

 

その今の貴方にある、私の知らない笑顔すらも……私のものにして見せる。

 

 

「わ、悪い。失礼だった」

 

「気にしないで、っていってるでしょ?私たちはもう一心同体なんだから」

 

 

なんてちょっと間抜けな声を出す彼が、やっぱり愛おしい。

 

でも、先ほどの笑顔を思い出して、やっぱりいい気分になれないわね。どうしてもイライラしちゃう。

 

 

 

————————……高坂、穂乃果さん。

 

貴方が彼を苦しめるの?

 

私のものになってくれた彼の心にまで、告白なんかして……居座り続けるつもり?

 

 

それなら……私も覚悟を決めるわ。

 

 

修也は、絶対に渡さない……。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

「さ、ここよ」

 

「次のデート場所って……ここ、家じゃん。民家」

 

「そう、私の家よ?」

 

 

ちょっと閑散とした住宅街のわかりにくい場所に、私の家がある。

 

ちょっぴり小洒落た、普通の家。

 

親はほとんど帰ってこないこと、セキュリティがしっかりしてることを伝えると、彼は安心したようだ。

 

とはいえ、殆ど一人だということと、デートで彼女の家に来たということを後から理解して、彼は赤面し始めた。

 

 

「や、やっぱりダメだ!うら若き乙女が男を部屋に連れ込むなんて!」

 

 

……私がこんなに覚悟を決めてるのに、ヘタレね。いまさら何を言い出してるの。

 

 

「何言ってるの……。中学生の頃は、よく一緒に部屋でゲームしてたじゃない」

 

 

「あれ?そういえばそうだが……いや、ダメだ!もうそんな齢じゃない!は、恥ずかしい……」

 

 

この期に及んで帰ろうとするなんて、乙女心が本当にわからないのね。(※乙女は普通、ここまで強引ではありません)

 

しょうがない。実力行使よ。

 

 

「つべこべ言わない!どりゃああ!」

 

「うぇッ!?」

 

 

女の子っぽくない掛け声で、私は彼を家の中に入れて、しっかりと内側のロックをかけた。

 

変装の服装を脱いで、薄着になって一緒にソファに腰かける。

 

彼は必死に気にしないふりをしているが、私の手足に視線を送ってしまっている。

 

なんだか健気で、彼女冥利に尽きるわね。

 

 

「ちょっと待ってて、今飲み物取ってくるから」

 

「いや、ツバサ。落ち着かない。女の子の部屋なんて。μ'sの皆の時でも緊張したのに。特に穂乃果の————」

 

 

その言葉に、笑顔を貼り付けたまま、私の中でまた何かが、音を立てて切れた。

 

……ここまで言ってあげても、やっぱりあなたの中にはまだ、μ'sの影が残ってるのね。

 

強い強い光で焼き付いた、貴方の瞳の奥に残り続ける影。

 

 

ちょっと迷ってたけど、ダメ。

 

やっぱり必要ね。最後の一押しが。

 

 

 

あんじゅがいつもの怪しいルートで手に入れた素材で、UTXの科学部と作った薬。

 

副作用とか人体への悪影響とか依存症とか、そういうのは無い自然素材って自信満々に言ってた。

 

少し前に、『彼』ともし恋人になれたら使えって押し付けられたもの。

 

 

……効果が本当でも、本当は使うつもりなんてなかった。

 

私は、私だけの力で彼を魅了して見せると。

 

でももう、恋人にはなれたもの。

 

だからこれは、ちょっと時計の針を先に進めるだけ。

 

 

 

私はそれを二つの飲み物に混ぜて、何食わぬ顔で隣に座る。

 

向かい側ではなく、隣に。

 

 

肌と彼の衣服が擦れて、彼もびくっとして、私も少しドキドキする。それを隠して、もっと。もっと近くに……

 

「何今更恥ずかしがってるのよ? ハイ、貴方のぶん」

 

「あ……ありがとう、ツバサ」

 

そんな何気ないお礼の言葉が、声が。

 

どうしようもなく私の心を安心させてくれる。

 

 

「ちょっと変わった香りの飲み物なんだな」

 

「ええ。あんじゅから貰ったの。私も詳しくないけど、外国の結構高いヤツらしいわ。せっかくだし美味しくいただきましょ?」

 

 

「そんな高いもの、飲んじゃっていいのかな。まあお酒じゃないならいいか……」

 

 

……その声には覇気がない。

 

やっぱり、心が疲れてるのね。

 

無理もないわ。

 

昨日からの短期間で、ずっと抱えた辛い思いを打ち明け続けた。

 

想いが重なって、すれ違って。

 

まさか本当に告白されて、断って……彼の苦しみがこれほどだなんて、予想を超えていた。

 

——————……だから私が癒さないと。

 

彼の傷を理解して、癒してあげられるのは私しかいない。それは私も同じ。彼でしか、私の傷は癒されない。でも、その辺の女では、例えμ'sでも、彼を癒しながら、夢を一緒にかなえることはできない。

 

彼を普通の男として満足させてあげたくない……。

 

一緒に歩むパートナーとして、一緒に本当の幸せを掴めるのは、それを理解してあげられるのは私だけ。

 

 

 

彼は何も疑うことなく頷いて、口に飲み物を含む。

 

「……? やっぱりおいしいけど、ちょっと変わった味だな」

 

それを確かめて、私は溢れだしそうになる笑みと。

 

 

これから起こる事と、未来への期待を必死で抑えながら、一気に飲み干した。

 

 

 

そこからはもう、流れに任せるまま。肩を掴んで、ソファの背に押し付けて、思いっきり不意打ちのキスをした。

 

 

「貴方の夢は私がかなえてあげる。貴方の夢がかなうまで守ってあげる」

 

「どんなに離れても、私たちは心で繋がってるの。お互いの存在を想って、頑張れる」

 

「だから、もう何にも悩まないで?」

 

 

 

そういって、返答を待たずにもう一度キスをして、今度は少し舌を入れてみて。またすぐに離れた。

 

彼の目はキスの快楽と、弱っているところへの耳元へのささやきで、うつろな状態だ。

 

こうしておけば、誠実で、傷ついた彼は。他の女になんて靡かない。

 

……あんじゅの薬はよく効いてるみたい。

 

彼の心から、貴方の姿を消してあげるわ。穂乃果さん。

 

 

「私の言うとおりにしていれば、なんとかなるわ」

 

「1年もない付き合いなんかじゃない。幼馴染の私の、彼女の言うことを聞いて?」

 

「あの娘達のことは気にしなくていいわ。貴方がいなくても大丈夫よ」

 

「でも私は、もうあなたがいないとダメなの。だから、一緒にいて。私だけと」

 

 

 

彼は虚ろな瞳のまま頷く。

 

 

私の言葉が、彼の心の底にしみこんでいく。

 

彼が私の、私だけの色に染まっていく。

 

ゾクゾクする。

 

彼が私だけのものになっていく……。

 

考えただけでも素敵なのに、こうして現実になるなんて。

 

本当にあんじゅには感謝ね……。

 

 

最終予選で負けたのも、悪いことばかりじゃなかったわね。

 

自分の限界や、英玲奈やあんじゅとの絆を確かめられたし。

 

何より貴方を、手に入れられた。

 

絶対に逃がさない。

 

貴方の隣は、私だけ。私の隣も、貴方だけよ。

 

そのためには、あと一押し。

 

ラストピースが必要。

 

 

彼の膝の上に座って、耳元で囁く。

 

「さあ、今晩は二人で、Shocking Partyと行きましょ♡」

 

 

 

そしてその夜。

 

お互い、離れていた時間を、ずっと離れていた半身を取り戻すように激しく。

 

私たちは、キスだけじゃなくて。

 

 

本当の意味で、深く結ばれた。

 




合法です。たぶん、絶対。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。