ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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修也が雪穂と話しているのと、ほぼ同じ時間の話。




第10話 対峙するふたり【高坂穂乃果】

私、高坂穂乃果。音ノ木坂の高校2年生……。

 

 

その私が、しゅー君にフられた。

 

それだけなら泣いて思い出にできたかもしれない。でも、マネージャーをやめるなんて言われちゃった。

 

μ'sが人気になっていくことが、一番近くにいてくれた彼のことを傷つけていたなんて……いったいどうしたらよかったんだろう。考えても考えても、わからないよ……。

 

それからは何をしようとしても手につかなくて、いくら冬休みだからってずっと部屋に引き籠っちゃってた。雪穂もお父さんもお母さんも、μ'sのみんなも心配してくれてるけど。結局みんなに強引に連れ出されて、今日は初詣に来てる。

 

もしかしたら、しゅー君に会えるんじゃないかっていう、淡い希望を抱いていたけど……。

 

みんなで晴れ着を着てきたけど、私の気持ちは晴れないまま。

 

「穂乃果、安直な言葉ですが、元気を出してください……」

 

「穂乃果ちゃん、大丈夫。しゅー君はきっと初詣に来てくれるから」

 

海未ちゃんもことりちゃんも、慰めてくれるμ'sの皆もそう言ってくれるけど……メッセージに返信も既読もないよね。

 

 

このまま、会えないなんて。

 

こんな喧嘩別れみたいなの、嫌だよ……。

 

学校が始まっちゃったら、どうしたらいいんだろう。どんな顔して、会えばいいんだろう……。

 

でも、また泣きそうな顔になりながら、そう考えていた時。

 

「あら?貴方たち……」

 

そこにいたのは、この数日間、しゅー君のことを思い浮かべるたびに、ずっと頭の中をチラついていた女性。

 

A-RISEのリーダー、綺羅ツバサさん……。

 

 

『この人が、しゅー君を』

 

そう、誰かの声が聞こえた気がしたけど……誰が言ったのかもわからなかった。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

そこからはラブライブについて、一通り激励された。でも、私は話半分。ついこの間まではあんなに尊敬して、近くにいるだけでも舞い上がってたのに。私はこの人を見て、スクールアイドルを始めたのに。

 

……今はこんなにも、この人の声だって聴きたくない。

 

「ねぇ、優勝しなさいよ?ラブライブ」

 

「「「「「はい……!」」」」」

 

そうやって、返事をするみんなの表情は少し陰がさしてる気がする。

 

しゅー君がツバサさんと付き合っていること、あの時みんな聞いてるはずだから。

 

やっぱり、自分の好きな人と付き合うことになった女性とは、話しづらいんだと思う。それともしかしたら、私の今の気持ちにも気が付いていて、遠慮してくれているのかもしれない。

 

みんなに気を遣わせているんだ、とまた少しうつむいていると、ツバサさんは私に近づいて、声をかけてきた。

 

「話があるの」

 

真っ直ぐに私の目を見て、力強く言うから、否が応でも向き合ってしまう。

 

しゅー君が今、付き合っているっていう女性。

 

その顔を近くではっきり見た瞬間、私の中に何かドロドロしたものが溢れてきた。

 

 

 

……詳しく話を、聞かなきゃいけない。

 

多分それはこの人も同じで、しゅー君について何か私と話したいことがあるんだ。

 

どんどん昏い感情がドロドロと溢れてきて、同時に誰かが囁いてる気がする。

 

『……彼と付き合えてるから、そんなに自信があるのかな』

 

『どうして、この人なんだろう』

 

『どうして、しゅー君の隣にいるのが私じゃないんだろう?』

 

『私だってずっと、ずっとあの人と頑張ってきたのに』

 

何処かから聞こえてくるその声……。

 

その声が誰のものかはわからない。でもずっと響き続けて、私の中にだんだん染みこんでいく気がする。何の抵抗もなく、私を真っ黒に染め上げていく。

 

何処かで聞いた気がする、その声……。

 

さっきも聞こえたし、μ'sの誰かなのかな……?

 

私はそんな溢れ出そうな気持ちを押し込めて、にっこりと、笑顔で返事をした。

 

 

「……はい、私も、話したいことがあります。綺羅ツバサさん」

 

でもその声色は、自分でもゾッとするくらい低い声で。

 

私たちを見送る周りのみんなは、動けないまま……とても恐ろしいものを見るような目をしてた。

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

「ごめんなさいね。でもどうしても『リーダー同士』、話したいことがあって」

 

そう言って、μ'sの皆や神田明神とは少し離れたところのベンチに座る。

 

でも、私たちの座る距離はどこか遠い。普通は3、4人用のベンチでこれほど離れて座ることはないんだけど、今回は別。

 

「いえ、海未ちゃんもことりちゃんも『わかってる』と思いますから」

 

……そう、きっとみんな、何の用で私たちが誰にも邪魔されないところで話しているか、わかってるはず。だから、2人きりにしてくれた。

 

「ラブライブ本選も近いわね……『練習頑張ってる?』」

 

「はい!本選で『も』『A-RISEのみなさんに恥ずかしくない』くらいのライブをしなきゃ、って頑張ってます」

 

「……そう。そうじゃなくちゃ困るわ」

 

……お互いに、ギスギスした、しらじらしい態度。

 

聞いてくるツバサさんの声にも、答える私の声にも、どこか棘がある。自分でも別に優しい女の子って思ってたわけじゃないけど……誰かにこんな態度がとれるなんて思ってもみなかった。

 

『私らしくない』って思うけど、また『あの声』が聞こえてきて……それに逆らえない私がいる。

 

『その女が私からしゅー君を奪ったんだ』

 

『絶対に許せない……』

 

『今もしゅー君を自分のものにしながら、私のことを嘲笑ってるんだ』

 

……って。

 

 

「……修也のことが、聞きたいんでしょ?」

 

———————……ふーん。

 

しゅー君のこと、呼び捨てできるんだ。

 

「……はい。聞かせてください」

 

「私と彼は幼馴染なの。昔いじめられっ子だった私を彼が助けてくれたのが出会いでね」

 

……しゅー君、昔から優しかったんだね。

 

でも、この人が幼馴染だったなんて。前にA-RISEの人たちと会った時には一緒にいなかったし、しゅー君もあまり話さなかったから初めて知った。

 

私たちが出会う前の、しゅー君を知ってる人……。

 

なんだろう。

 

……とっても不愉快。

 

「その時一緒に夢を誓い合ったの。私はトップアイドルに。彼は彼の夢を、ね。……でも、彼はちょっと事故でケガをしてね。私も詳しくは聞いてないんだけど、1年くらい学校にも通えなくて。リハビリとかは十分したらしいんだけど。それで夢を諦めそうになってたの」

 

しゅー君も言ってた、夢。

 

それがどんな夢なのかは、ツバサさんは口にしなかった。

 

話したくないのか、自分でしゅー君から聞けって言うことなんだと思う。

 

「つい数日前よ。私の悩みを彼が受け入れて、彼の悩みを私が受け止めて。私たちはとうとう結ばれたの。別に昨日今日の関係じゃないってことは、わかってほしいわね」

 

本当はそんなこと、聞きたくなかった。でも聞かなきゃいけなかったこと。

 

聞いておかなきゃ……しゅー君と『仲直り』するのに困るからだって、自分に言い聞かせて。

 

「ここからは私が聞きたい話。彼がテスト生として音ノ木坂に行くことになってからは、貴方の方が詳しいと思うんだけど……?」

 

「……なんで貴方が仕切ってるのかはわからないですけど。最初にしゅー君がテスト生で音ノ木坂に来たときは、貴方やしゅー君の言うことが本当なら、リハビリが終わったころです。なんだかとっても、寂しそうでした。それで放っておけなくて……声をかけて。お昼は毎日、お弁当を一緒で食べる仲になって。そこからだんだん、一緒にいるようになったんです」

 

ツバサさんは黙っている。続けろということなんだろう。

 

「ちょうど同じころに、『学校が廃校になる』っていう知らせがあって。私がスクールアイドルをやろう、って言い出した時に、真っ先に応援してくれて、マネージャーにもなってくれて。何にもわからない私たちに、色々教えてくれたんです」

 

「……そう。彼は優しいものね。困ってるあなたたちが、自分と同じように大きな目標に躓いているのを見て、我慢できなかったんでしょう。私のことがあるから、スクールアイドルにはある程度知識はあったはずだし」

 

———————お互い、表面上は普通の会話をしてる。

 

でも言葉の節々で、私たちはぶつかり合っている。内心なら、鋭い言葉の刃で切りつけあっているようなもの。しゅー君を、奪い合っている。

 

……でも、いま彼はこの人のところにいる。

 

もっと。もっとしゅー君のことを聞き出さなきゃ。

 

そうしないと———————……

 

 

「……ところで、私が本当に今日話したかったのは、そんな優しい彼に……修也に『これ以上近づかないで』って言うことよ」

 

 

—————————————————————え?

 

一瞬、何を言っているのかわからなかった。

 

私が、しゅー君に、近づかない……?

 

「修也はね、貴方たちと一緒にスクールアイドルをする中で、『ずっと』つらい想いをしてきたの」

 

この人は何を言っているのだろう。

 

そんな権利なんて貴方にあるのだろうか。

 

「……まあ、貴方たちには気を遣って言ってなかったかもしれないけどね」

 

貴方にそんなことを決められたくない。

 

私はしゅー君に会いたい。

 

もう一度会って、ちゃんと謝らなくちゃいけない。

 

なのに……

 

「貴方も知ってるだろうけど、修也は優しすぎるの。だからμ'sのことも、貴方のことも否定しきれないでいる。むしろ認めているからこそ、貴方たちに負けない男になろうとしているのよ」

 

「それはわかってます!でもっ……!!」

 

「『貴方にそれを決められたくない』……かしら?でもね、私にはわかるのよ。最初に告白したのが私ではなくて。μ'sの誰かだったのなら。多分彼はその娘とつきあっていたでしょう」

 

 

……一瞬、声を荒げた私だったが、思わず息をのんでしまった。

 

それは、この人の言っていることが、痛いほどよくわかったから。

 

私だってずっとしゅー君と頑張ってきた。

 

だからわかる。

 

彼は……

 

彼は大切な人からの好意を断れるような人じゃない。

 

それは優しさだけじゃなく……

 

何か高いところにある目標を求める、あの瞳を覚えてるから。

 

 

「……気づいたかしら?彼は大切な人からの好意を断れるような『立場』じゃないの。誰かの好意を受け入れずに済むほど、幸せな人生じゃなかったわ。私も彼も、夢そのものが目的じゃない。あくまでも『幸せになるため』に、夢を追ったのだから」

 

それが幸せになりたいっていう想いからなら。

 

「だから、目の前に現れた幸せにはあらがえない。そんな彼が、それを捨ててまで、夢をかなえようと、夢をかなえた貴方たちに追いつこうとしているのよ」

 

夢をかなえたい、幸せになりたいっていう思いのジレンマに悩んでいたからだったなら。

 

「そんな彼の決意を無にしたくないのなら、おとなしく諦めなさい」

 

私が、私たちが。ずっと彼の隣で、夢をかなえていく姿は、彼には。

 

「彼の夢は私が一緒にかなえてあげる。貴方たちは彼の目標でいてくれればいいわ」

 

そんな私に告白された、しゅー君のキモチは……。

 

『ずっと』、『ずっと』しゅー君は……

 

「大丈夫。貴方たちの実力なら修也なしでも勝てるわよ、ラブライブ♪」

 

しゅー君の気持ちに気づいて、思わず無言になる私に対して、ツバサさんはゾクリとするような綺麗な笑顔を浮かべて。

 

海外でのライブもね、と付け加えてから、また真剣な表情に戻って。

 

トドメの言葉をかけられた。 

 

 

「貴方たちの眩しすぎる輝きで、これ以上、修也の心を傷つけないで」

 

 

もしかしたら、しゅー君にフられてしまった時よりも、大きく。

 

その言葉はあまりにも深く、私の心を貫いていた。

 

 




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