ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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Saint Snowのお二人の前に……今日は月ちゃん!

最初PVで見た時は一体どうシナリオに絡んでくるのかとドキドキしてましたが、実際見てみると最高の役回りでいいキャラしてましたよね。

今回は短編の中ではややエロティック&ダークかも。って思いましたけど、割といつもそんなもんでしたね。重ねますが、R-18は書けません。



ボクだけを見てよ【渡辺月】

 

「君が、曜ちゃんの友達……?」

 

 

……最初出会った時は、中学1年生くらいだったっけ? 幼馴染っていうには、ちょっと遅かったね。

 

この時はまだお互いに、『曜ちゃんの友達』っていうだけだったよね。

 

イタリアから帰ってきたばかりのボクには、まだ友達が少なかった。だから、曜ちゃんが一人でも多く仲良くなれるようにって、彼のことを紹介してくれたんだ。

 

「えっと……ボク、曜ちゃんのいとこの月っていうんだ!よろしくねっ!」

 

 

って言っても、緊張したのは最初だけ。すぐ意気投合して、3人でつるんで沼津に行ったね。『日本語おかしくなってないかなあ』なんて、悩んでたのが懐かしいよ。

 

それで……実は意外と家が近いってわかってからは、曜ちゃんとは関係なく2人で遊ぶことが増えていった。

 

ほら、ただでさえボクってボーイッシュな方だからさ。年頃なのに相手が男の子だとか、気にしなくって……

 

 

……何よりも大きかったのは、キミの事が好きになっていったから、なんだけど。

 

ボクは2人だけで会う方が楽しみになっていってたんだ。

 

ホントは、曜ちゃんもキミの事が好きだったのは、分かってた……。

 

 

でも、それでも……たとえ大切な従姉妹でも、恋だけは譲れない。それってきっと、本能的な事だから。好きな男の子を、自分のものだけにしたい。自分だけ見てほしいっていうの。

 

それは曜ちゃんもそうだったはず。だからいつか、ボクたちは少女漫画みたいに、彼を巡って争うことになってたかもしれない。

 

 

 

「ごめん、月……俺は千歌っていう彼女が出来たんだ。もう今まで通りには、会わない方がいいのかもしれない……」

 

 

 

でも、そうはならなかった。ボク達はお互いに遠慮して、今ひとつ踏み切れないまま、時間だけが過ぎていって……こうなっちゃったんだね。

 

 

——————『千歌ちゃん』。

 

曜ちゃんからも、キミからも……『いつも』聞いてた名前。

 

 

『どんな娘なんだろう』『会ってみたいな』

 

純粋に、そう思ってたよ?

 

Aqoursっていうスクールアイドルグループができて、キミがその名前を呼ぶことに『特別な意味』が篭り始めるまでは……ね。

 

 

それは、曜ちゃんも感じてたはず。キミとその『千歌ちゃん』が急接近し始めてたってこと。

 

彼女のことを語る、だらしない笑みを見るたびに、ボクは彼女に対する嫉妬と殺意を抑えるのに必死だった。顔に無理やり笑顔を貼り付けて、心の奥底からとめどなく溢れだそうとする嫉妬を隠してた。

 

ずっと無理してたんだよ? キミのために……。スクールアイドル活動の邪魔はしちゃいけないって、いつかボクのキモチにも気づいてくれるって思って、我慢してたのに。

 

 

……それなのに。

 

それなのに、その娘がもうキミの『彼女』だなんて。

 

 

初めて会った時は、平静を装う自信はなかったけど……案外、笑顔を貼り付けられて、自分でも驚いたよ。人間って、怒りが一線を通り越しちゃうと、普段よりずっと簡単に笑うことができるんだね……?

 

「君が千歌ちゃんだね?『曜ちゃんから』いつも聞いてるよ!」

 

 

笑顔は案外、簡単にできた。

 

だから騙せると思ってたんだけど、意外と手強かったね。さすが、曜ちゃんのアタックにも負けずに彼をモノにしただけはあるよ。

 

 

「曜ちゃんのいとこ? ……うーん、『いなかった』と思うんだけどなぁ。あ、ごめんね?私、バカチカっていわれるくらいだから『知らなくって』!」

 

 

————……どうやら、向こうもボクのことを知ってたみたい。

 

そして、ボクと『同じ』だった。

 

彼女も、ボクや曜ちゃんの事を『邪魔だ』って思ってたんだ。『彼から離れろ』……って、目線でぶつかりあった。可愛い声で結構、怖いところがあるんだね?

 

隣にいた曜ちゃんもビクッとしてたし……とりあえず、この場に彼がいなくて良かったかな。好きな人には、本当は怖い、とか誤解されたくなかったし。

 

 

 

『千歌』ちゃん……。

 

ボクからも曜ちゃんからも、彼を奪った女の子。

 

 

夢を叶えた?ラブライブの優勝? それなら、ボクにとっては……彼との幸せな未来がささやかな夢だったんだよ?

 

せめて、相手が曜ちゃんだったら納得できたかもしれない。祝福はできなくても、彼の近くにはいられたはずだから。

 

でも、千歌ちゃん……キミだけは許せない。ボクらから彼を奪っていくのなら……絶対に奪い返してやる。

 

そう思いながら窓の外を見れば、Aqoursの皆の姿が見えた。

 

 

「よーし、今日も練習終わったー! お腹ペコペコだよ〜」

 

「千歌ちゃん待って、まだ整理運動が終わってないよ?」

 

「うう、お姉ちゃんがいたら『練習後はちゃんと身体をケアしないとぶっぶーですわ!』って言われてるところだったよぅ……」

 

 

彼女たちは今、この『分校』の校舎で新しいライブの練習をしている。卒業していく3年生を見送るための……大切な人に贈るための新しいAqoursのライブを。ボクたちは、その想いのお手伝い。

 

 

「3年生を送り出して、6人で新しいスタートを切るためのライブずら。無理してケガしちゃ意味ないよ?」

 

「えへへ、そうだよね。よーし!気合い入れて整理運動するぞーっ!」

 

「クックック……万全の体調を整え、大いなる虹を我らが闇で覆い尽くそうぞ!」

 

「ただでさえ曲名も輝きなのに、闇で覆い尽くしちゃダメだと思うんだけど……」

 

勝ち誇ったような笑みを時々こちらに向けながら、同じ狂ってしまいそうなくらい強い愛を宿した瞳で睨んでくるのに、みんなの前じゃ今まで通りに呑気に振舞っている。

 

その狡猾さで彼もうまく騙したんでしょ? そして何もかも手に入れた……やっぱり怖い人だね、千歌ちゃん。

 

でもね。ボクだってただ監視のためにここにいるだけじゃないんだ。ひとつだけ切り札がある。

 

今はボク達もこの校舎に自由に入れる。キミたちスクールアイドル部を手伝う……って名目でね。これをちょっと上手く活かしてあげるだけで、ボクは簡単に勝てるんだよ。

 

ステージの手伝いの最中、ボクはそっと曜ちゃんに声をかけた。

 

 

「月ちゃん? どうしたの、いきなり校舎裏なんかに呼び出して」

 

「曜ちゃん……実は、話があるんだ。彼のことと千歌ちゃんのことで。そして曜ちゃん自身の気持ちについて……」

 

「ッ、あの人と千歌ちゃんと……私の……?」

 

 

そう、これだけで……ね。

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

数日後、スクールアイドル新生Aqoursのライブは、大盛況のうちに終わった。前に説明会で失敗した時とは違う……これが新しい、6人のAqours。

 

Saint Snowもそうだったけど、スクールアイドルの輝きって本当に凄いよね、妬けちゃうくらいに。この輝きに惹かれて……彼も千歌ちゃんに盗られたくらいなんだから。

 

私もスクールアイドルだったら彼を射止められたのかな、なんて思うけど、曜ちゃんでも無理だったからどうだろうね。

 

ただ、何にしても……

 

……その輝きが汚れちゃいそうになったら、どうするんだろうね♪

 

 

「月? 夜中に突然話があるって何だよ?」

 

「うん、それはね。……『千歌ちゃん』と曜ちゃんのことなんだけどさ」

 

「! ……そ、その2人がどうかしたのかよ。月のことは好きだけどさ……前も言った通り、今は千歌が俺の彼女だから。あまり他の女の子の家に行って誤解を招くようなことは……」

 

ふーん。目をそらして、必死の抵抗かあ……。

 

ちょっと寂しいかな。前までのボクたちならこんなこともなかったはずなのに。まあでも、今日のボクなら気にしないよ。

 

あんまり下手な誤魔化し方だから、笑いを抑えられなくなってきちゃったくらいだし。とっくにボクの掌の上なのに、可愛いんだから。

 

「……誤解、誤解かぁ」

 

 

ボクは知ってるんだよ。……今、一瞬反応したのもそれだよね? 頑張ってあの教室にカメラも仕掛けて……曜ちゃんにお膳立てもしたんだから、知ってて当然なんだけど。

 

「そういえばさ、今日のライブ……Aqoursのみんな、すっごく輝いてたよね!特に曜ちゃんなんてモヤモヤとか悩みとか全部スッキリして、ホントに気持ち良さそうだったよね~……♪」

 

「な、なんだよ急に……俺もそう思うけど、たまたま調子良かっただけじゃないか? 曜だって頑張ってるんだし、わざわざ呼んだのは、そんな事を言いたくて……」

 

「……うんうん。曜ちゃんさ、人生でいっちばん嬉しそうに、楽しそうに踊ってたよね! 今日も動画撮ってたからさ、一緒に確かめてみようよ♪」

 

 

そう言ってボクは、取り出した小さなカードを再生機器にかける。

 

ライブの映像にしては様子が変だとは思ってただろうけど、流石にこれは予想外じゃないかな……?

 

だってそこには、曜ちゃんときみの『行為』が記録されてたんだから。

 

 

『曜ッ……ダメだ、こんな……!』

 

『ダメなのは貴方と千歌ちゃんだよ!いつもいつも私の前でイチャイチャイチャイチャさぁ……もう我慢の限界なの、私だって!私だって貴方が好きだったのに!ずっとずっと好きだったのにぃ……!!』

 

『あっ……、うぅっ……』

 

『はぁ……はぁ……。ごめんね、強くシすぎちゃったよね……。でも貴方が悪いんだよ……? 私のこと無視するから……私は近くにいたのに、ずっと見てたのに!千歌ちゃんだけ見てるから……!!』

 

あーあ。真っ青になっちゃって、言葉も出てこないね……。

 

だいたい、裏の裏まで察しがついたってところかな? まぁ、嫌でもわかっちゃうよね。

 

 

「……そう、ボクが曜ちゃんを焚きつけたんだ」

 

 

思惑通り、ボクが用意した教室で、ボクが準備した通りに動いてくれた。この分校はボロボロの木造建築だから、色々やりやすかった。最近のビデオカメラは十分すぎるほど性能いいし。

 

曜ちゃんには、騙すような形になって悪いけど……こんなに心の底から嬉しそうな顔は久々に見れたのは、ボクも従姉妹として素直に嬉しいよ。だからこそ、今日も全力のパフォーマンスが出来たんだろうね。妬けちゃうよ。

 

そして、キミは……それくらい大切に想ってたボク達二人をを蔑ろにして、あの千歌ちゃんに走ったんだ。ボク達が一番、キミを愛してたっていうのにさぁ……。

 

……だからこうなった。そう、キミがそうさせたんだよ。

 

これまでのことも、これからのことも。

 

 

「この動画が流出しちゃったら……いくら『スクールアイドル』って言っても、人気の低下は避けられないよね〜……」

 

「つ、月……一体なんでこんな事を……! Aqoursや浦の星の生徒を応援してくれるはずじゃ」

 

「ここまでしてもまだ気づいてないんだ。……そうだね、強いて目的って言うのなら……ボクの事も抱いて欲しいんだよ。曜ちゃんと同じくらい、情熱的にね……♡」

 

 

服の胸元を開いて、勝負下着をチラ見せする。

 

ふふっ……今、チラッと見たよね? 知ってるよ? 千歌ちゃんの大きさには負けるかもしれないけど、キミが胸が好きな事も。ボクがどんな仕草をした時に視線が動いてるかも、全部。

 

ずっと長い間、キミを見てたんだから。Aqoursのメンバーなんかよりも、ずっと。千歌ちゃんより、ずっと……!!

 

キミが昔ボクの撮る写真やビデオが好きって言ってくれたから、今だって楽しんで続けられてる。部活に頑張る女の子に憧れるって言ってたから、今だって頑張れてる。

 

ボーイッシュなイメージを変えてみたくて、前に髪の毛を伸ばすことも考えたけど、ほどほどの髪の長さがいいって言ってたから、今くらいにした。

 

今のボクなら……みんなキミの好みのはずだよね?

 

 

「だ、抱くなんてそんな……」

 

「別に損することなんてないじゃない。ただ……ボクの全てをキミのものにしてくれていいだけなんだから……♡」

 

本当はもっとゆっくり堕としてあげるつもりだったけど、曜ちゃんがあんまり悦んでたからボクも刺激されちゃったのかな?キミのことが欲しくて欲しくてたまらなくて……開いたままの胸を強引に押し付ける。

 

あっ……今、反応したね。嬉しいなぁ……♪

 

「な、流されないぞ。Aqoursを……千歌を、人質に取るようなこと……!」

 

「まったく、人聞きが悪いなぁ……ボクだって鬼じゃないんだ。キミがボクを愛してくれたら、この動画は流さないであげるって言ってるんだよ?」

 

「ほ……本当に? で、でもそんなの変だ……月のメリットって」

 

「ここまで言っても、まだ気がついてくれないんだ? ……ボクの気持ちもさ、曜ちゃんと同じ。キミのことが好きなんだよ、心の底からね」

 

まぁ……その代わりってわけじゃないけど、今この瞬間もこの動画は撮ってるんだけどね。それは自分だけで楽しもうと思ったけど……気が変わっちゃった。

 

千歌ちゃんにも見せてあげなくちゃ、勿体無いよね♪

 

約束は『さっきの動画』だけだもん♪

 

 

……そう、これはちょっとした罰だよ。

 

ボクを抱けることへの悦びだけじゃなくて、Aqoursや千歌ちゃんが無事で済むことも喜んだでしょ、今。

 

 

 

——————そんなこと許さない。

 

まさか……執念深いボクが、たった一回で認めてあげるわけないよね……?

 

 

だから、これが終わったら……今度はソレでズルズルの関係を強要してあげるよ。千歌ちゃんに見せるか、ボクを愛し続けるかの2つに1つを選んでもらおうじゃないか。

 

そうなった時……キミはどんな表情をしてくれるのかな……?

 

絶望する? それとも、諦めちゃう?

 

どっちにしても……キミはボクに溺れていくしかなくなっていく運命なんだ。どんなに邪魔するヤツがいても……最後にはボクだけを見るようにさせてあげる。今みたいに。

 

レッツヨーソロー……って、言うのは曜ちゃんのセリフだけど、ね♪

 

 

「安心してよ? たった1回だけなんだ……。ただでさえもう曜ちゃんとはシちゃったんだから、もう千歌ちゃんなんて気にすることないよ」

 

「う、浮気だって。そんなの駄目だって……」

 

「ううん、なんならお試しでもいいんだ。ボクの身体、試しに味わってみればいいじゃないか。ずっとキミのことを想い続けて……高校生になって、大人になったボクの身体をさ♡」

 

 

……そうじゃなきゃ、ボクは何をしでかすかわからない。

 

それでもボクを選んでくれないなら……千歌ちゃんはもちろん、きっと曜ちゃんやAqoursまでも壊そうとしてしまう。それこそ、どんな手を使ってでも。

 

それをさせないでおけるのは、キミだけなんだ……。キミがボクだけを見ててくれれば、それだけで済むんだ。本当はそんなことをしたくない自分がいる。素直に、スクールアイドルの輝きに憧れてるボクもいるんだ。

 

脅してるのはボクのはずなのに、縋るような想いで強く抱きつく。

 

キミの手がボクの身体に触れた温かさを確かめて、今晩はそれ以上悩むのをやめた。

 

どうか、Aqoursを壊してしまわないように……その手でボクだけを押さえつけていてね……?

 

 

 

 

 






225000UA、ありがとうございます。最近書いてたら6000字近くまで行くことが多いので、久々に4000字前後で終わりました。(加筆修正で結局4800字に……)

構想段階では曜ちゃんvs月ちゃんになる予定でしたが、がじゃまるさんのリクエストにより千歌っちに嫉妬する展開になりました。ありがとうございました。

5thに月ちゃん欲しかったけど、あの大人気声優さんのスケジュール押さえるのは相当大変でしょうね。改めて、劇場版はすべての要素がシナリオ&ドラマと密接に絡んでいて、よく練られているなと感嘆します。Blu-ray待ってます!

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