ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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怒りの1日中の3話連続投稿します。

切りどころがなくて長めになりました。


第15話 私が守ってあげるから

μ'sのメンバーたちは、それぞれ別れてタクシーに乗る。

 

よくハリウッドの映画で見る、恒例のあの黄色いタクシーだ。当然だが、生で見るのは初めて。本当にニューヨークに来たんだと実感した。特別乗ってみたいと思ってたわけじゃないけど、いざ乗るとなるとなんだか緊張してしまう。

 

だが、タクシーにばかり緊張しているわけじゃない。周りを見渡せば外国の人ばっかりで、一挙一動変じゃないか気を遣ってたりするんだ。

 

……ああいや、向こうからしたら俺たちが外国の人なのだろうが。それにニューヨークの人なら東洋人くらい見慣れてるよな……。

 

などと自分に自分で無用の心配だとアドバイスしていると、誰が俺と同じタクシーに乗るかで揉め始めているμ'sの面々に気づいた。

 

「じゃあ、誰が修也とのタクシーに乗るか勝負ね!ここは勿論、生徒会長である私よね」

 

「いくら絵里ちでも、それは譲れんなぁ~……。ていうか、生徒会長も関係ないんやないかな?」

 

「修也くんとはぜーーーったい!凛が一緒に乗るのーーー!」

 

「ちょっと、しゅー君の隣は穂乃果だよ! むむむ……こうなったらじゃんけんだね!?」

 

流石に邪魔になると思ったのか、乗り場から離れたところでやっているのは良心と言うべきなのだろうか?でも、穂乃果はまだしもなんでみんなそんなに一緒に乗りたがるんだろう……?

 

一つだけ思いつく理由があるとすれば……みんな、俺と穂乃果の間にあんなことがあってから、すぐに出発で腰を落ち着けて話す機会はなかった。もしかしたら、タクシーで2人か3人の空間になることで、俺とじっくりと話す機会を求めているのかもしれない。

 

それは俺も同じ気持ちがあるのだけど、問題は穂乃果だ。また『あの状態』になれば、いよいよ止めることはできない。ツバサだけじゃなく、μ'sの間でそんな争いの種になりかねないことは防ぎたい。

 

……と思っていたのだが。今はあの狂気はすっかり鳴りを潜めている。どうやら、μ'sの面々といる範囲では、あの日見せた人格は出てこないらしい。

 

つい先ほどベタベタされておいてなんだが、ツバサの話題を出さなければ今のところ、大丈夫なようだ。

 

 

 

ツバサ……。

 

 

出発前。

 

ニューヨークに行くことは当然、彼女には伝えた。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「ごめん……俺、みんなとニューヨークに行くことになった」

 

頭を下げるしかことしかできない自分が嫌になる。

 

……その下げた頭で、ここで自分のことを気にすること自体が、既に逃げているんだと自戒するしかない。

 

彼女になって数日しか経っていないツバサに、意図せずやってしまった裏切り。そこで傷つくのは俺でも穂乃果でもなく……彼女なんだから。

 

『意図せず』というのは言い訳にすぎないけど、それでも俺はそうするしかなかった。

 

過程や結果はどうあれ、俺は穂乃果を自分の意志で抱いてしまったのは事実だ。

 

……どれだけ罵倒されてもいい。

 

そう考えて、穂乃果の束縛を抜け出して出発までの間に時間を作って、謝りに来た。

 

 

でも、ツバサの答えは意外なものだった。

 

「……何も言わないで。いいのよ、本当に。行ってきて」

 

……そう答えるツバサの目は、何かを見抜いているかのような目だった。

 

まだ話してはいなかったが、まるで俺と穂乃果の間に何があったのか知っているかのような態度だ。

 

ツバサは、少なくとも穂乃果が俺のことを好きだということは知っている。何かがあったのは察しているはずなのに、こういう言葉をかけてくれるというのは、相当に辛いことのはずなのに……。

 

 

「穂乃果さん達に、しっかりとケジメをつけてきなさい。例え何があっても、最後に私のもとに来てくれればいいわ」

 

実際に、態度は平静を装っていても、その声色は悔しさが滲んでいたのはわかった。

 

 

「私は我慢するから、せめて悔いのないようにね?」

 

 

俺はそんなツバサにまた何度も謝って、どちらともなく別れて帰る。途中、何度も振り返って目があったけど、彼女の優しさに感謝しながら気まずさを誤魔化すように走りだした。

 

 

「……盗聴器の性能が良すぎるのも考えものね」

 

「高坂、穂乃果さん……あんなに忠告してあげたのに、まだわからないみたいね」

 

「それどころか、私の修也を脅して寝取ろうだなんて。どこまで私の夢に立ちはだかる気なのかしら」

 

「貴方が『彼女』ですって?」

 

 

「……帰ってきたら、見ていなさい。どっちが修也の彼女なのか、思い知らせてあげるわ」

 

 

だから、別れた後のツバサが小声でつぶやいてた内容も、何も知らないままだった。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「フフッ……当然だけど、この私の勝ちみたいね? さ、行くわよ修也」

 

「負けちゃったぁ……真姫ちゃん、おめでとう」

 

「かよちん、まだまだチャンスはあるにゃ。次頑張ろう?」

 

勝ち誇る真姫とは対照的に、負けて悲しそうな花陽を凛が慰めている。チャンスって、もしかしてこれから食事の席の隣とかも全部じゃんけんなんだろうか。嫌なわけじゃないし、花陽なら大歓迎だけど……。

 

結局、俺を入れてグーとパーを繰り返してランダム別れたところ、タクシーに一緒に乗るのは真姫になった。

 

最後は、穂乃果と真姫の一騎打ち。だから結果が決まった瞬間、思わず穂乃果を見たが、『真姫ちゃんのことお願いね?』と、また心臓に悪いことに耳元でささやかれて、それっきりだ。

 

どういう意味かはよく分からないが……やはり穂乃果は俺とμ'sのメンバーが二人きりになったり、一緒にいる分には構わないのだと思われる。そこには何か意図があるのかもしれないが、これ以上は考えても仕方ない。

 

他のメンバーは別のタクシー待ちの列に並び、俺と真姫は二人で荷物を預けて、前のタクシーに乗り込む。

 

真姫は流暢というほどではないが、十分な英語と事前のメモを駆使して行き先を伝えている。俺も英語はそこまで苦手ではないし、出発に合わせて慌てて勉強してきたが、不安なのでここは任せよう。

 

「さ、これで大丈夫よ。行き先は伝えたから……渋滞に掴まらなければ、ここからは30分くらいね」

 

「下調べ通りの時間だな、ありがとう真姫。助かったよ」

 

運転手の『カップルで観光かい?』という英語に苦笑いしたり(真姫が即座に『YES』と答えたのは止める間もなかった)、なんでもない世間話をしていると、タクシーはいつの間にか目的地についていた。

 

———————————タクシーから降りて、目の前に飛び込んできた風景は、圧巻だった。

 

 

膨大かつ、圧倒的に高いビル。

 

溢れんばかりの人口、人種。たくさんの言語。文化。

 

沢山の車、広い道路。

 

 

ここが……ニューヨーク。

 

アメリカの中でも最高級にデカい街。世界のエンターテインメントの中心地だ。こんな凄い街が、世界にあるなんて。

 

……信じられない。

 

東京に幼い頃、初めて行った時ですら、『ここだけがテレビで見る日本だったんだ』と感じてしまったくらいだったのに。凄いビルや圧倒的な人の数に、心底感動したのに。

 

ここには、それを優に超える規模の街がある。それだけのエンターテインメントがあふれている。そのたくさんの人の期待と需要に応え、絶え間なく供給するだけの力が備わっている。

 

あんなにツバサと一緒に憧れた、東京すら超える場所……。

 

ここ以上の場所はない。

 

最高の場所に、今俺はいる。

 

俺は確かに、ここに来たんだ……!

 

 

「その様子だと、ニューヨークは気に入ったかしら?」

 

 

真姫に声をかけられてハッとしてしまう。

 

ちょっと外の景色に夢中になりすぎていたようだ。

 

「少しだけ驚いたわ。貴方があんなに目を輝かせて、子供みたいにウキウキしてるなんて……そういう一面もあったのね?」

 

字面だけだとからかっているようだが、真姫の表情と声色は、むしろ安堵したようなものだった。少し微笑みながら真姫は続ける。

 

「心配してたのよ?この前のこともあったし、ニューヨークに一緒に来てくれるって決まってからも、あんまり元気なかったから。穂乃果と色々と何かあったのは察しがつくし……」

 

……どうやら、一本取られたようだ。

 

この場所はきっとホテルの近くの眺めの凄い場所なのだろう。風景に気を取られていたが、よく周りを見ると、写真を撮る人や、他の観光客の姿もある。ここはそういうスポットのようだ。

 

真姫は事前に調べていて、ここに連れてくることで少しでも俺の気を和らげてくれようとしたに違いない。

 

「やっぱり、迷惑かけてたよな。……ありがとう、心配してくれて。少し気が楽になったよ。ところで、ホテルはどっちなんだ?」

 

映画で見てただけの物凄い街に感動したり、真姫の心遣いに感謝するのもつかの間、俺たちはみんなと合流する必要がある。

 

この展望台のような場所も、きっとホテルの近くなのだろう。そう思って辺りを見渡して、慣れない言語の案内板を探していると、真姫は少し気恥しそうに、髪をクルクルしながら答えた。

 

「ああ、ホテルなら反対方向よ?ここは有名な展望スポットってだけね」

 

……え?

 

「みんなには『運転手が道を間違えた』ってメッセージを送ってあるわ。さ、心配しないで二人で気晴らしにちょっとデートでもしましょう♡」

 

 

………………………………………で、デート!?

 

真姫と!?この展望台みたいな場所で!?

 

 

「なによ、『彼女できた』とか公言しちゃってくれてたのに、今さらデートくらいで恥ずかしがってるの?……それとも、私のことも、恋愛対象として見てくれてる?それも悪くないわね……」

 

「い、いやしかしだな! その、なんだ。うれしいんだけど色々とさ、ほら!」

 

真姫と二人でデートするなどという唐突な事態に、思わず慌ててしまう。

 

心遣いは本当にうれしいのだが、そこまでしてもらう必要が……じゃなくて!あのツンツン真姫が……でもなくて!お前はこれ以上俺に女性関係の悩みを拗れさせようというのか!?気が付かないうちに一本どころか、十本くらいとられていた。

 

……だが、うまく断る理由が思いつかない。

 

頭脳を恋愛関係にフル回転させるなんて初めての事態に、俺の脳がオーバーヒートしそうになっていたが、真姫からは思わぬ言葉が出てきた。

 

 

「……日本でもない。誰も聞いてない二人きりなら、話せるでしょ。貴方の夢と、左腕のこと」

 

 

————————————その一言に、心臓が、跳ねた。

 

俺をテスト生として受け入れてくれた理事長含め、一部の先生しか知らないこと。学校にも半ば秘密にしてたことだった。体育の時間でも、男子一人だからと上手くだましだましやっていたのに……。

 

 

「真姫……知ってるのか?」

 

「……ごめんなさい、どうしても貴方の助けになりたくて、パパの力を借りたの。今もリハビリしてるのよね?」

 

「いや……話してなかっただけで、隠してたわけじゃないから。いいんだけど……」

 

「自分一人で悩んでても答えなんて出ない……貴方から教わったことよ?誰かに話せば、少しは楽になるはずよ。相談に乗るわ」

 

 

……確かに、俺は誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。

 

自分の悩みを。過去を。苦しみを。

 

ツバサみたいに全部わかっている相棒とは別に、新しくこの1年間でできた大切な仲間に。

 

この状況をなんとかするきっかけになるんじゃないかっていう想いで、首を縦に振った。

 

 

「……皆は待たせられないから、30分だけなら」

 

「十分よ。さ、行きましょう?」

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「夜景が綺麗ね……」

 

「ああ。前、一緒に星空を眺めた時みたいだ」

 

星空といっても、凛とは関係ない。展望台から、暗くなり始めたニューヨークの街並みを眺めている。

 

以前にも一度、真姫の家の三階で天体観測をしたことがあったけど、今この風景はそれにも負けない『星空』だ。

 

地上に、ビルに光る一つ一つの光が、人々の放つ『輝き』なんじゃないかとすら思えてくる。

 

「ところでその左手、もう大丈夫なの?」

 

「…………やっぱり、その話だよな」

 

話さないと、ダメだよな……。

 

複雑な気持ちを顔に出していたのを否定と捉えたのか、真姫は少し気が引けてしまったみたいだ。

 

「ごめんなさい、やっぱり、プライバシーの侵害よね。こんなの……」

 

「……さっきも言ったけど、隠してたわけじゃないさ。穂乃果が告白してくれたときのあの会話を聞いてたなら、気になるのはわかる」

 

そうだ、あの時あんなことを口走っておいて、気にしないでくれって言うのは無理があるだろう。

 

仲間だから何でも話せ、とは言わないけど、いつまでも隠したままっていうのは不義理にすぎる。

 

「貴方は、以前に静岡で事故にあった。危険な運転をしてた観光客の車から、女の子をかばって……」

 

「かばったなんて……そんな大した話じゃないよ。俺が車に気づくのが遅れて、轢かれたってだけさ」

 

「ごまかさないで。貴方のおかげで、女の子は無傷だったわ。でも貴方は左腕ケガをして……後遺症が残った」

 

「……ごめん。真姫の話していることは全部正しいよ。その通りだ」

 

 

—————————それは本当のことだ。

 

俺は、以前静岡に行っていた時に事故にあった。

 

車の運転手が飲酒して危険な運転をしていた。

 

その車が、偶然道を一人で歩いていた女の子に迫っているのが見えた。もしかしたら、衝突しないかもしれない。ブレーキがかかるかもしれない。俺も彼女も死んでしまうかもしれない。

 

でも、体が動いていた。……迷いはなかった。その結果が、この左腕だ。

 

 

「貴方は今と変わらない、優しすぎるのよ……」

 

「そんなことはないさ。この前のことで、俺は僻み根性丸出しの、情けないヤツだってわかったろ?俺が優しかったら、穂乃果やみんなを傷つけることなんて、なかったんだ……」

 

「いいえ、優しかったから……。優しかったからずっと自分の気持ちを抑えて、痛みに耐えて、溢れちゃっただけよ。そうやって、今も悩んでくれている。大丈夫。私たちの1年間の信頼は、それで崩れるようなものじゃないわ」

 

 

俺なんかより、よっぽど真姫の方が優しいじゃないか……。

 

普段はツンツンしているが、仲間への想いやμ'sにかける情熱は、誰よりも強いものを秘めている。

 

そんな真姫だからこそ、今も俺の相談に乗ってくれているし、信頼している、と言われたときの安心感があるんだ。

 

「———————それに、むしろ私はあんなことがあってよかったって、ちょっと思ってるの。怒られちゃいそうだけどね」

 

「え?よかった、って……。」

 

「だって……いっつも貴方は私たちのために無理してたでしょ?弱音も吐かずに頑張ってくれて。ずっと一緒に応援してくれたり、演出や曲を考えてくれたり、練習もしてきた。そんなあなたが、本気を宿した誓い……っていうのかしら? 誰にも言わなかったそれを、少しだけでも言ってくれたんですもの。それがちょっと嬉しくて」

 

俺って、そんな風に思われてたんだ。

 

真姫に、心配かけて……。

 

「それこそ、そんな立派なものじゃないよ。俺は……」

 

「無口すぎて誤解しちゃってたのよ、みんな。何か言ってくれればよかったのにって……今ではみんな思ってる。心の中で理解者を求めてるあなたの声を聴けなかったのは私達の落ち度。貴方にモヤモヤしたまま終わってもらうより、よっぽどいいわ。でもいいのよ。これからは違うんでしょう?」

 

彼女の無償の友情が、嬉しい。こんな風に、俺のことを考えててくれたんだ。俺が一人でいじけている間に、そんなに……。

 

俺はいつもみんなに、仲間に相談してくれ、とか言ってたくせに……自分はコンプレックスの塊で黙っていたんだ。そう思うと、申し訳ない気持ちと同時に少し光明が見えてきたような感覚だった。

 

みんなに、仲間に……ただ、相談すれば、よかっただけだったのかもしれない。

 

そんな簡単なことにも気づかなかったなんて、俺はやっぱりバカだったんだ。

 

「だから、私たちに……特に私に、遠慮なんて要らないわ。何でも話してくれていいのよ。いつでも私の相談に乗ってくれたように、今度は私があなたの相談に乗ってあげる」

 

そうそう、相談に……

 

「これからもつらい時があったら、私を頼ってね?パパにお願いすれば、お金とか住むところとか、仕事とかもなんとかなると思うし」

 

 

……あれ、なんだか、雲行きが怪しいような。

 

止めなきゃいけない気がする。なんだか嫌な流れになってきているのを肌で感じる。どこか以前の穂乃果と同じ、有無を言わせないムードを感じて、思わず隣にいる真姫を見る。

 

「いや、そこまではお世話になれな……」

 

でも、そこで俺は動きを止めてしまった。

 

 

「大丈夫よ。何があっても、誰が邪魔しても、私だけは貴方の味方よ?」

 

「パパの人脈なら、貴方の左腕もきっと完治させられると思うわ。飲酒運転の運転手が刑務所を出てから、復讐もしてあげられる」

 

「貴方を苦しめるヤツがいたら、私が守ってあげる……」

 

 

真姫の瞳は、光を映さず、俺だけを映す昏い色を放っていたから。

 

そう、あの時の穂乃果と、同じ——————

 

 

「愛してるわ、修也。貴方のことを……」

 

 

 

ここにきて俺は、このニューヨークの旅が。

 

今回のライブが、単なるライブで終わらないと……。

 

穂乃果とツバサと、俺のことにだけ悩んでいればいいわけではないのだと、悟った。

 

 

 

 




ちゃんとハッピーエンドにします(念押し)
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