ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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正直こんなにご支持をいただいていいものか自分で悩んでしまいますが、これからも宜しくお願いします。


第16話 変わり始めた未来

「大丈夫よ。何があっても、誰が邪魔しても、私だけは貴方の味方よ?」

 

「パパの人脈なら、貴方の左腕もきっと完治させられると思うわ。飲酒運転の運転手が刑務所を出てから、復讐もしてあげられる」

 

「貴方を苦しめるヤツがいたら、私が守ってあげる」

 

「愛してるわ、修也。貴方のことを……」

 

 

—————————————真姫から、告白された。

 

 

本来ならば、このニューヨークの夜景を背後に、最高のムードで、エンドロールが流れ始めて、ハッピーエバーアフターという場面なのだが、実際には事情は異なる。

 

俺を見つめる真姫の目は光を映していないし、先ほどから袖が凄い力で掴まれていて動けない。……有無を言わさない、とはまさにこの状態を言うのだろう。

 

俺の聞き間違いや、実はこれが夢だった、とかでなければ、恋愛経験すらなかった俺は、約1週間で3人から愛の告白を受けたことになる。

 

……いや、むしろ恋愛経験のなかったことが、この事態を招いてしまったのだろうか?

 

なんにせよ、これは夢でも書き間違いでもなく、現実だ。それは、宙ぶらりんになっていたお互いのもう片方の手と手を真姫が重ねてきたことで、内に秘めた情熱が伝わってきたことでもわかる。他にもカップルが沢山いるからあまり視線は感じなかったが、見られるのはマズイ状況。

 

でも、目の前の真姫から視線を逸らすことはできないし、するわけにはいかない。色々な意味での驚きのあまり何も言えないで、どうしていいかわからず口を金魚のようにパクパクさせていると、真姫が続けてくれた。

 

「……返事は、今はいいわ。ただ、知っておいてほしかったの。私が真剣に貴方のことが、好きだっていうこと。困ったときは、私がいつでもそばにいてあげるっていうことを。穂乃果のことも綺羅ツバサのことも関係ないわ。これは、私自身の気持ちよ」

 

……意外にも、真姫の言葉は穏やかだった。

 

その瞳にも、いつもの光が戻っている。

 

その穏やかさが、彼女自身の性格によるものなのか、周囲に人が多数いる場所だからなのか。それとも、俺の状況を知っていて、気を遣ってくれているからなのかはわからないけど、今はその優しさが何より有難く感じた。

 

「……あ、ありがとう真姫。真姫の好意と優しさは、その。凄くうれしい。本当に」

 

「それが聞けただけでも満足ね。平気なフリをしてないで、そうやって素直に口に出せばいいのよ。特に、こうして誰も見てないときはね……人にはツンツンしてるとか言っておいて、自分のことは黙ってるんだから」

 

真姫の好意が嬉しいのは本当だ。

 

……いや、俺みたいな弱い人間は、多分ツバサでもμ'sの誰でも、最初に告白してくれた人を断ることなんてできないのかもしれない。そのくらい、好意を求めていた。誰かに認めて欲しかった。

 

今思うと、ツバサはそのことに気づいていて、先手を打って告白してくれたのかもしれない。問題は、それが穂乃果と最悪なタイミングで重なってしまったことだ。

 

タイミングだけのせいにはできない。俺の弱さが。恋愛に対する覚悟の無さが。なんとなく誰かに好いてほしいという甘えが、今みんなを傷つけかねない事態を招いているんだから。

 

……真姫には本音で仲間に話せとか相談すればいいとか言ってる自分が、自分の気持ちを恥ずかしがって、仲間に嫉妬して、話せないでいた。

 

ちゃんと話していれば、何もかも変わっていたかもしれない。そのことに気づかせてくれた真姫には、本当に感謝するしかない。

 

「……そろそろ、30分ね。もう少しだけ、こうしていてもいい?」

 

そう言って、真姫はベンチの上で身体をそっと摺り寄せてくる。

 

傍から見れば真姫が俺に甘えているのだろうが、実際は逆だ。俺が真姫に甘えている。あの日の星空の下のデートの時のような、落ち着く距離感と、安心感……。

 

ここのところ自分も周りも荒れていたからだろうか?なんだか久しぶりに誰かの優しさに触れた気がして、ずっとこうして甘えていたい気分だった。

 

今だけ、今晩だけは。ちっぽけな自分を捨てて、真姫に甘えよう。

 

「綺麗、ね……」

 

「ああ。ニューヨーク……凄いところだと思うよ」

 

真姫のいう通りだ。なにせこの町は、秋葉原以上の、世界中のエンタメの聖地。

 

あらゆる国、人種、言語、出自、背景を持つ人間が楽しめる、根源的っていうか、人間の根本の部分に楽しみを訴えかけるだけのエンターテインメントを提供する場所。

 

スクールアイドルが、μ'sが、日本のエンターテインメントが試される機会でもある。別に日本代表を気取るわけじゃないし、実際に輝くのは俺じゃなく、μ'sだ。

 

それでも不安はある。俺の演出は、ここで通じるのだろうか?異国の地で、サポートしきれるだろうか?またみんなのライブを、楽しんで見ることができるのだろうか?

 

……悩みの種は尽きないままだ。

 

でも、隣に寄り添ってくれる真姫の身体の温かさが、仲間が相談に乗ってくれるという事実が。辺りを行きかうたくさんの人々の、知らない言葉の数々が。一人一人意志を持った、飲み込まれそうになるような人の波が。

 

まるでメロディーのように聞こえてきて、なんだか不思議な力が湧いてくるように想わせてくれた。

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「今戻ったわ。現地のタクシーっていっても、日本の観光地と同じでピンキリね。観光客だと思ってグルグル時間をかけて……」

 

「あ、ああ……。ごめんみんな、待たせちゃったよな」

 

 

真姫の大嘘で誤魔化しつつ、ようやくホテルに到着して皆と合流する。思ってたよりもずっと大きなホテルだ。

 

相場がわからないのだが、もしかしてニューヨークのホテルってみんなこんなにデカいんだろうか?さすがに真姫はお金持ちだけあってか、あまり動じていない。

 

東京みたいな郊外のおんぼろ宿とか、お化け屋敷みたいなのとか無いのかなぁ……?東京ですら当初ビビりまくりだった田舎出身の俺としては、落ち着かないのだが……。

 

部屋のドアを開けると、隣や奥からわらわらとみんなが集まってくる。

 

「修也くんと真姫ちゃんだにゃ! 二人ともおっそいにゃー!」

 

「無事で何より、だね! もうすぐ1階で晩御飯だよ?」

 

「二人とも、大丈夫だったのですね!? よかった……。命はないものかと思っていました!この異国の地で、貴方たちの身に何かあったらと思うと……!」

 

……なんだか、一人だけ様子がおかしい。

 

こういう時はとりあえず希に聞くのが一番だ。

 

「……なぁ希、あいつはなんでこんなに取り乱してるんだ?」

 

「あぁ~……海未ちゃんやろ? 実はなぁ、タクシーに伝えるホテルの場所、間違っちゃったみたいで」

 

「それでこれか……」

 

「笑い事ではありません!海外なのですよ!? 私たちしかいないのですよ!!」

 

……半泣きですごまれても、あまり怖いとは思わないのだが。ここは海未の顔を立ててなだめておく。

 

 

そうしながら、チラリと穂乃果と真姫の様子を見るが、特におかしいところはないし、みんなの様子も変化はない。

 

出発するときの意味深な言葉も気になっているし、この二人に告白されて何かアクションが起こるのかとも思ったが。みんなもいたってごく普通なままだ。相変わらず考えても答えは出ないし、今はとにかく食事をとって、力をつけることにした。

 

「よし、みんな準備して飯行こうぜ!明日からはもう向こうの人と会うんだからな」

 

そう言って、なんだか足が軽くなった気がして、階段を一人、一気に駆け下りた。誰かに話すこと、誰かが隣にいてくれることがこんなにも俺の肩の荷を下ろさせてくれた。

 

今は、この地では。

 

俺は、μ'sのみんなのために頑張るんだと———————————

 

 

 

その俺の背中を見つめる18の瞳には、気づかなかったのだが。

 

「……修くん、なんだかすこし元気になった?」

 

「ええ……。真姫、どうやら()()()()()()ようですね」

 

()()()()()()()()()()()()()おかげよ。さぁ、お腹もすいたし……私たちも行きましょう?」

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

しばらくして、みんな席について、食事を始めたのだが。……正直、舐めていた。ニューヨークの料理を。すぐにお腹いっぱいになってしまった。

 

でもみんな女子だし。希や花陽は結構食べてくれたけど、基本は食細いし。余った分も全部食べて、かなり腹がキツイ……。理事長、ホントにいいホテルとってくれてたんですね、今はその優しさがなんだか重たい……。

 

だから部屋に戻っても、俺は呻いていたのだが、ここでも同室になった真姫が気を遣ってくれた。

 

「情けないわねぇ……ハイ、()()よ」

 

「今日何度目かもわからないけど、ありがとう、真姫……。これでちょっとは楽になるはず……」

 

真姫から貰った()()を飲んで、ベッドに横になる。

 

……ちなみに、ニューヨークにいる間は同室者は日替わりになると、みんなに勝手に決められていた。今日は真姫だ。

 

一応ベッドは二つある部屋だが、だからこそ余計に気恥ずかしい……。

 

それをあっさりと了承する穂乃果のことも気になるけど、今はただ、この苦しさと薬に任せて、体を休める。

 

だから、夜にこっそりと部屋を抜け出す真姫にも、気づかずに眠っていた。

 

 

俺も変わり始めていたが、周りも変わり始めていた……。

 

 

 




おや ? みんなの ようす が… ?
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