ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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実は4th当たってるんで、仕事休めたらドームに行きます。



第17話 異国の夜の一室で【西木野真姫】

 

 

修也と同じホテルの、穂乃果達の部屋。

 

ここには今、μ'sメンバー全員が集まっている。彼だけを除いた……。

 

「……これが、今日修也と話した内容よ。事故とか左腕のコトとかは、裏がとれた形になるわね」

 

私がしているのは、今日起きたことの説明。あれ以来、μ'sはこうして彼についての情報を共有している。かなり細かいところまで、徹底的に。

 

修也を()()()()()、帰ってきてもらうために……。

 

「だから修くん、ちょっと元に戻ってくれたんやね。真姫ちゃん、ナイスやん!」

 

「やっぱり私たちのことを信頼してくれてるんですね、修也も……。ああ、よかった……!」

 

希と海未が感激している。

 

ま、私と修也の絆の深さを考えれば、今回の結果はむしろ当然よね?みんなもすごいと思うけど、私も負ける気はしないわ。

 

「修也くんは起きてこないかにゃ?」

 

「大丈夫よ、かなり疲れてる様子だったし、グッスリだったわ。穂乃果もほどほどにしなさいよね?」

 

「むむっ!?今日は全然我慢してる方だと思うよ!?」

 

「で、でも……()()薬だなんて、大丈夫なんでしょうか……?」

 

「なによ花陽?医者の娘を信じなさい。睡眠導入剤って言っても、ごく普通の市販のヤツだから何の問題ないわ。それに修也は疲れてるんだし、今回の旅の初日くらい、むしろ休んでもらわないとね」

 

さっき彼に渡した薬は胃薬なんかじゃない。

 

何処にでも売っている睡眠導入剤。ましてや市販のものは、根本的にはただの抗アレルギー剤に過ぎない。健康被害はないでしょう。

 

騙してしまうようでちょっと気が引けたけど……私と貴方の関係なら、笑って許してくれるわよね?

 

「……じゃあ、明日は花陽ちゃんの番だね。大丈夫、きっとしゅー君なら受け入れてくれるよ」

 

「は、はいっ!頑張りますね!」

 

私たちが今回のことを思いついたのは、数日前に遡る————————

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「マッキー、今の、どういうこと……?」

 

「言ったままの意味よ。私も、修也に告白することにしたわ」

 

にこちゃんが信じられないものを見る目をしているし、他の皆もそう。

 

……当然、だとは思う。三角関係に巻き込まれている男性に、更に告白するなんて正気じゃない。

 

この日、私たちは全員で一度集まっていた。穂乃果の呼びかけで。

 

私はその昨日にも穂乃果と会って打合せ済みなのだけれど、すぐにそのことは話すつもり。

 

「穂乃果!あんたはそれでいいの!?」

 

みんな、穂乃果と綺羅ツバサと修也の間に、普通じゃない何かがあったことは感づいている。……ただ、詳細を知らないだけ。

 

視線が集まっても、穂乃果は全く動じることなく話し続けた。

 

「……真姫ちゃんが今言ったこと? 穂乃果なら、本当に気にしてないよ?」

 

「でも、いいの? だって、貴方と修也は……」

 

心配する絵里にも、真実を告げる。

 

 

「私、しゅー君と一夜を共にしたの」

 

「ッ!? ……どういうこと!?だって、彼にはA-RISEが……。」

 

 

 

「しゅー君、私よりも先に、あの綺羅ツバサさんと、一緒に寝たらしいんだよねぇ~……」

 

 

「—————————————え?」

 

 

それは、誰の息をのむ音だったろうか。

 

一人だけだったかもしれないし、私と穂乃果以外、全員だったのかもしれない。

 

でも確実に、空気が一変した。

 

突きつけられた言葉に。

 

……今時、みんなその意味が分からない歳じゃない。言っている言葉を本当はわかっていても、理解したくない気持ち。

 

男女が付き合うんだから、当然いつかはたどり着いたことだと、みんな想像できたはずなのに、怖くてできなかった想像。

 

大好きな、大切なあの人が、他の女性と……。

 

それもあんな形で別れそうだったのに。

 

μ'sの皆の目の中に、穂乃果と同じ感情が湧き上がっているのがわかる。ううん、目を見なくっても、雰囲気だけでもね。

 

「……真姫ちゃんと出発の前の日、ちょっとお話したんだ。その時、しゅー君はあの人に会いに行ってたみたいだけど……!!」

 

「どうしても修也が戻ってきた理由と、二人の態度に納得できなかっただけ。……これ、修也の出発前の健康診断のデータよ。副作用とか薬物とか、そういう危ないものじゃないけど。一種の興奮剤っていうか、媚薬っていうか……そういうのの成分が検出されたの」

 

「真姫ちゃんは、最初はそれで私がしゅー君に迫ったと思ったみたい」

 

……あの様子のあなたたちを見たら、嫌でもそう思うわよ。

 

「確かに私はちょっと狡い手を使ってしゅー君と『そういうコト』をしたけど、薬になんて頼ってない。確かに、しゅー君の意志でしてもらったことだよ。でも、あの人の方は彼の意志を捻じ曲げてまで……!」

 

あの勝ち誇った態度は、そういうことだったんだ。と穂乃果がつぶやく。

 

そこから少しの間は、穂乃果と修也の身にあったことが、本人の口から語られたわ。血液検査や採尿データは早めに出してもらえて、パパにこっそりそのことについて聞かれてしまった。その時は当然、何のことか全然、イミわかんなかったけど。穂乃果と話して全部つながった。

 

でも……。

 

「……ハッキリとした証拠はないわ。それに事実だとしても、穂乃果も綺羅ツバサも『男性とそういう交遊をした』って公開すれば、一番困るのは彼でしょ。……だからお互い、手出しできないっていうワケ。今はね……」

 

そうだ、それだけは避けなければいけない。

 

そして、それは向こうも同じこと……。

 

「では、初詣の時に穂乃果を呼び出したのは、宣戦布告や勝利宣言のつもりだったということですか……?」

 

「……そのことを修也に伝えて、別れさせられないかしら?」

 

海未も絵里も怖いこと言うのね。私や穂乃果と同じような状態になり始めてる。他の皆もそうだけどね。彼のことを守らなきゃ。いつまでも儚さや脆さを隠してばかりいる、大切で、弱い彼のことを。

 

あの女には絶対に負けられない。私は本気で行くわ。今が勝負……もう、後戻りなんてできないし、するつもりもない。でも、彼のことだから……。

 

「……修也は、あの人のことも信じてるわ。これも決定的な証拠じゃないし、穂乃果がやった、って言われたら否定する根拠もないの」

 

それに……。

 

「それに、今の状態で、彼にこれ以上自責の念や後悔を背負わせたくない……ですか?」

 

海未が被せるように言う。

 

その通りよ。やっぱりみんな同じ気持ちよね。

 

彼は綺羅ツバサに迫られているのに、それに加えて自分のことと、穂乃果の強引な手段とが合わさって、今とても疲れている。

だからマネージャーを辞める、なんて心にもないことを言ってしまっただけ。

 

今更穂乃果を責める気はさらさらない。大事なのはこれから。今は、癒してあげないといけない。私たちの絆を、思い出してもらわないといけない。

 

そして、この気持ちも……。

 

「だから、真姫ちゃんとその時話し合ったの、伝えるのが遅れてごめんね?」

 

「みんなでさ、想いをぶつけちゃえばいいんだよ!しゅー君に」

 

「みんなで、しゅー君を捕まえちゃうんだよ。あの人に奪われないように……ね」

 

「私たちが本気で話し合えば、しゅー君もわかってくれるよ」

 

「ちょっとすれ違っちゃっただけだもん。オープンキャンパスの時と同じ……。また、みんなで絶対、一緒になれる」

 

「最初の告白も、みんなに譲ってもらったんだし。全力で穂乃果も応援するね!」

 

 

 

———————————————その、穂乃果の誘いを、断るメンバーは誰もいなかった。

 

私を含めて。

 

……そう、みんなでなら。

 

誰も不幸になんてならないはず。

 

 

「じゃあ、修也のことはみんなで情報共有する。ニューヨークではタイミングを見て会議か、メッセージのグループで会話ね。どうせ途中で修也も私たちがある程度、示し合わせていることくらい気づくでしょうけど、今のところはそれで行きましょう」

 

そうして、その日の会議は終わったの。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

……それが、数日前のこと。そして、今回の会議の目的。情報は交換し終わって、私は今、部屋に戻ってきて隣の修也の寝顔を見ている。もちろん写真に撮って残しておくのも忘れないわ。

 

—————————本当に、無防備にぐっすり眠っているのね。

 

 

このニューヨークで、私は貴方への挑戦者になる……貴方の心を、つかんで見せる。

 

でも、スケジュールも、外国のTV局が絡むのだから厳しいものになるし、何より今の彼に無理はさせられない。だからこそ、今回みたいな短い時間内での攻め方になってしまった。多少不満は残るけど、あれなら上出来でしょ。

 

……でも、多分みんなそうだけど。

 

本音を言えば、貴方のカノジョになりたいだけじゃなくて、自分だけか、自分が一番……って言うのが最高なんだけどね。

 

それでも、μ'sの仲間となら、複数人でも全然、我慢できるわ。だから、恐れずにもう一度、受け入れて、私を。私たちのことを。貴方がマネージャーを辞めるって言いだしてから、戻ってくるまで、本当につらい日々だったのよ?

 

 

今こっそりと作っている、μ'sのみんなで歌いたい曲……。

 

この歌を、貴方に聞いてもらえないなんて堪えられないの。明日もμ'sに貴方がいてくれる。

 

それだけで、今回のニューヨークも頑張って見せるから———————————

 

 

「このくらいのご褒美は、許してくれるわよね?」

 

 

—————————そう言って私は彼にキスをして、寝顔の写真を待ち受けにして。

 

同じベッドの中に潜り込んでいくのだった。

 

 

 




あ、ギルキス札幌も行きます。

ちなみに、海外に薬品を持ち込める例は決して多くないので、これはフィクションだと思ってください。

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