ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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「そんなの決まってるじゃないですか。私も、修也さんのことが大好きで大好きで、たまらないからですよ♪」



そう答える花陽は、己の頬に両手を当て、恍惚とした表情で舌で唇の周りの唾液を舐めながら、行為の余韻に浸っていた……。



第19話 貴方への鼓動は熱く

「—————————もう質問は終わりですか? じゃあ、続き、しませんか?」

 

 

そう言って覆いかぶさってくる花陽を今度こそ両手で抑えて、椅子に座らせる。いつまでもやられっぱなしというわけにはいかない。兎に角、まずは話のできる状態に持っていかないと……。

 

「ま、待ってくれ花陽。続きがやりたかったらまた今度やってやるから、今は話をしないか?」

 

……ここで抑えるためには、下手に刺激しないほうがいい。穂乃果の前例があるから、迂闊なことは言えない。だからこういう言い訳をしたのであって、俺は本当にみんなのことは好きだが、ツバサ一筋であることに変わりはない。

 

情けないな……自分で自分に言い訳をしている。

 

だが、先ほどまでの行為である程度満足してくれていたのか、花陽は大人しく座ってくれた。

 

「いいですよ。……でも、話がしたいのは私の方です。ごめんなさい、さっきはつい我慢できなかったんですけど、本当はそのために来たんですから」

 

 

……確かに、俺はとりあえず待ってもらうためにそう言ったのであって、何か話したいことを花陽が用意しているのなら、それは聞くべきだ。

 

了承して、俺も腰を落ち着けてもう一度椅子に座る。程なくして、花陽から切り出してくれた。

 

「修也さん。……修也さんは、μ'sがここまで来られたこと、どう思ってくれていますか?」

 

「どう思う?……って。それはもちろん、あんな風に嫉妬したくらいには、凄いことだと思うけど」

 

「それが出来たのは、『私たちだけの力』だと思いますか?」

 

……勿論。μ'sの皆の頑張りがあってこそのことだと思う。と答えると、花陽は少しため息を漏らして、悲しそうな顔で答えた。

 

「それは違います。それだけじゃありません。そんな私たちをずっと傍で支えてくれたのは、修也さんやヒデコさん達や、応援してくれる皆さん全員じゃないですか」

 

「それはそう、だけど……。」

 

「『だけど』も『でも』もラッキョウもありません!なんでそうやって、自分をなかったことにするんですか!?少なくとも私は、ずっと修也さんがいたから頑張れたのに!」

 

「こんなに好きになるくらい……。たくさん、たくさんお世話になったのに……。一緒に頑張ってきたのに……!なんで自分を、私が好きになったあなたを、大事にしてくれないんですか……!?」

 

花陽が、悲しそうに、涙をにじませながら叫ぶ。それは、あの時穂乃果にも言われたことに近い。その時よりは、真姫のおかげもあってずっと冷静になった俺だけど……。

 

でも、答えは……

 

「前に言った通りだよ。輝いてるのはみんなだ。俺じゃない。……俺もそうだとしても、みんなほどの輝きじゃないんだ。だから俺は、みんなに負けないくらいの夢を、成果を……」

 

「もう出してますよ!確かに、修也さんの夢とは違うかもしれません。……でも、貴方が演出してくれた光が。一緒に考えた歌詞が。誘ってくれた、励ましてくれた言葉が!応援してくれた声が!その一つ一つも含めて、μ'sなんです!!修也さんとたどり着いたのが、A-RISEの先にある、このニューヨークなんです!!」

 

「それは買い被りすぎだよ。俺なんていなくても、穂乃果達だってほっとかなかった。凛や真姫もいてくれた。きっとみんななら、いつかは……」

 

「『いつか』じゃありません!あの日、凛ちゃんと修也さんに言われたから!だからあの時に始められたんです!だからみんなと出会えて、ここまで来られたんです!もしもなんてありませんし、時間は巻き戻ったりしません!修也さんが、修也さんがいてくれたから…!」

 

その花陽の言葉は、慟哭だった。

 

いつまでも、殻にこもっている俺に対する……。

 

 

—————————全部、花陽の言うとおりだ。

 

 

穂乃果やことり、海未達と一緒に、スクールアイドルを始めた。真姫に作曲を頼みこんだ。1年生の3人を、誘った。色々と悩んだ。にこと一時はぶつかりあった。絵里ともぶつかった。

 

……でも、みんな最後には揃って、最高のライブにこぎつけた。その後も苦難の連続だったけど、みんなで乗り越えられた。

 

 

「9人だから一人分、ペアの柔軟が足りないときも、修也さんがいてくれた。練習だって、修也さんがテンポを取ってくれたから、同時に練習する効率も上がりました!」

 

「それに、お水や栄養補給だって気を遣ってくれましたし、花陽はスクールアイドルになってから3㎏もやせたんです!でも体力はすっごくつきましたし、いろんなステップもできるようになりました。発声の仕方や体力のつけ方も教えてくれましたし、一緒に勉強もしたじゃないですか!」

 

 

それらは全部、確かに俺もやったことだ。ここまで歩んだ道のりを、俺一人なら無理やり、否定していたかもしれない。

 

でも今は違う……俺の目の前で真剣に、俺のことを考えて語り掛けてくれる花陽の想いが、伝わってくる。

 

「不安なのはわかります。辛いのもわかります。私だってそうです……。まだラブライブは終わってない中で、いろんなスクールアイドルや、あのA-RISEさえ飛び越えて、ニューヨークでライブだなんて……。でも、貴方がいてくれるから、昨日も今日も、きっと明日も頑張れるんです!」

 

瞳は昏い愛情を秘めたままだったが、もう恐怖は感じなかった。

 

きっと、他の8人も同じ気持ち。

 

……なら、最後まで付き合おう。みんなの想いに、応えてみせよう。穂乃果の脅しはもう関係ない。マネージャーは、辞めない。

 

それに……

 

「修也さんは、凛ちゃんと一緒に、私に一歩を踏み出す勇気をくれたんです。貴方との出会いが、私を変えてくれたんです!胸の中で終わるはずだった、『なりたい私』に。なのに……!」

 

……これ以上、花陽の悲しむ顔は見たくない。だから俺はそっと花陽の肩を抱いて、言葉を遮った。

 

本音を言うと、褒められるのが恥ずかしかったのもあったんだけど。

 

「……本当に、俺は花陽の何かを、変えられてたのかな」

 

その問いかけに、にっこりと笑顔になってくれた。

 

花陽の言葉は、俺の心にハッキリと届いた。俺の勝手な言葉が、花陽に届いていたように。

 

「はい。思いっきり変えられちゃいました。……だから、その責任を取ってください」

 

その責任が、どこまでの責任を表しているのか。

 

この時の俺は、『μ'sの最後のライブまでしっかりとついていく』って事だと思っていたんだけど、花陽の方はもっと深い意味だったらしく、また一悶着起きることになるとは知る由もなかったのだが。

 

「わかった……。俺はこのニューヨークで、みんなに最高のライブをさせてみせる。もう迷わない。マネージャーもやめたりなんてしない」

 

「どこまでやれるかもわからない。すぐに告白の返事も、どうこうは言えない…。でも、俺もμ'sの一員として、全力を尽くそうと思う」

 

「花陽にこれ以上そんな悲しい顔はさせられない。辛い思いをさせたことを許してくれるなら……もう一度、俺に何かを変えさせてくれないか?」

 

そう答える俺にも、迷いがないというわけじゃない。

 

まだまだ不安なこともたくさんある。

 

それでも、今決意したことは本心だっていう顔をしてると思う。

 

その証拠に、目の前の花陽は、まさに花が咲いたかのような笑顔だ。

 

……ツバサには『μ'sとしっかり別れて来い』みたいにいわれてたけど、そこに関してはまた明日、電話で謝り倒すしかない。

 

やっぱり俺は、『負けたまま』じゃ終われない男なんだ。もしかしたら、これなら……やれるかもしれないんだ。こんなにも俺のことを想ってくれる仲間がいてくれれば。

 

別に演出を作り上げる側のショーじゃない。

 

それでも、この最高の機材と、最高の舞台と、最高のプロの人たちの集いで、俺だけにやれることがあるはずだ。

 

 

ツバサ……俺にμ'sのみんなとやり直すチャンスをくれないか。

 

きっとこの場所で、μ'sにもツバサにも、追いついて見せる。理事長の後からの連絡によると、この番組は日本でも一部、放送されるらしい。スクールアイドルの人気の高まりの影響だろう。

 

ますます手は抜けない。見ててくれ、花陽。ツバサ……。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

その日の撮影と取材は一通り終わり、俺たちはホテルに帰ってきた。

 

俺と花陽が同じ部屋に戻るのをみんなニヤニヤしながら眺めていたし、やっぱりみんな打ち合わせてたんだな、と確信する。色んな事情については隠してるわけじゃないし、みんなで情報共有するのは構わない。今は練習が最優先なだけで、帰るころには全員にきちんと話すつもりだったし。

 

なにより、俺を励まそうとしてくれる言葉も、告白をしてくれた気持ちも、どこにもウソはないんだから。

 

……こんなに素晴らしい仲間に、俺は心配をかけてしまったんだな。

 

改めて、ベッドで隣に座る花陽を眺める。

 

——————————温かくて、安心する。

 

傍に仲間がいてくれれば、

 

きっとそれは、お互いに同じ気持ち。

 

「ニューヨーク……。遠いところまで、きちゃったんですね」

 

ふと、花陽が窓から外を眺めて言う。

 

「ああ。花陽が羽ばたけたからだよ。……日本から離れて、寂しい?」 

 

「いえ……μ'sのみんなが。凛ちゃんが、修也さんが。傍にいてくれますから……」

 

そう言って、どちらからともなく、肩を寄せ合う。

 

まだあと一歩。何かが足りずに、演出は完成していないままだ。

 

一応、期限まではまだ日数がある。でも俺は、みんなの想いに耐えうるほどのものを。みんなからもらった分に応えられるだけのものを、その日までに仕上げられるのだろうか?

 

流石に気疲れしたのだろう、俺の肩ですやすやと寝息を立て始める花陽が風邪をひかないか心配しながら、俺はそのことを考えていた。

 

それでも、つい数時間前までと違って、不安だけじゃない。

 

 

きっと、一緒なら———————————————————

 

 

 

 




UAが累計50000を突破しました。いつもたくさんの感想に加え、多大な評価・お気に入り登録をいただき、本当にありがとうございます。

21話目に入り話も長くなり、かつ私もあまり説明描写をしないスタイルのため、もしかしたら誤解があるかもと思い、今後はたまに解説をさせていただきます。

この作品内において、(オリジナルの主人公はまだしも、原作キャラの中に)特定の悪役は誰もいません。

主人公は確かにただでさえツバサもμ'sも大好きだったのに、拗れに拗れて難しい立場に置かれ、その生い立ちもあって相当追い込まれていますが、迂闊な発言を多々してしまい、若さと、恋愛経験もなかったことから、色々と間違ってしまっています。

ツバサは彼のことを好きですが、彼のことを思うあまり「彼のことをμ'sから守らなきゃ…」と一部嘘をついたり、宣戦布告したり薬を用いていますし、盗聴も怠っていません。

μ'sは同じく彼のことが好きでしたが、主人公の迂闊な言葉とツバサの嘘と手段を知ったことで、「あんな嘘で彼を騙して私たちと別れさせようとするなんて…!早く元に戻してあげないと…」と、愛のために暴走気味になっています。

すべてはタイミングの悪さとすれ違いと巡り合わせです。事故です。

これからもよろしくお願いいたします。
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