ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

144 / 198
そろそろ素直にタイトルを「勇気で光を追いかけて」にした方がいい気がしてきました。今のタイトルにしたのは短編を多数連載する予定だったからなのですが、本編の完結にまだまだかかりそうですし、どうしましょう?


第23話 誰のために?

「……はぐれたのか?」

 

 

 

ここはアメリカ合衆国。その中でも最大級の都市……ニューヨーク。

 

の、どこか……

 

 

……のはずだ。

 

 

昨日、凛と一緒に夜遅くまで作業に没頭してたのがよくなかったのかもしれない。携帯の充電を忘れていた。オマケに、盗難被害を恐れていたのと、後述の理由で、今財布にはほとんど入っていない。

 

スタッフの皆と歩いてたし、絵里と二人きり自体予想外ではあったが、まさかこんなことになるとは思ってなかった……。

 

絵里がみんなと合流した、俺も確実に連中を撒いた、という連絡をしあったのが電池の最後だったのは、せめてもの救いだ。迷っているのは俺だけ、ということになる。

 

 

……状況をもう1度整理しよう。

 

絵里が言ってみたい場所というのは、オシャレなアクセサリー屋さんだった。いくつか回ってみたい店をリスト化していたようで、歩きで十分に行ける範囲内。俺もみんなの衣装づくりのアイデアの助けになれるヒントがあるかもしれない、と色々と興味をもって見ていた。

 

その中で絵里が熱心に見つめていた、ちょっと高めの銀色のネックレス……。それをコッソリと買って、ついさっき店を出たばかりの絵里にプレゼントしようと下心を出したのが災いした。

 

チンピラ風の男に声を掛けられ、絡まれそうになっていた絵里。考えるより体が動いていた。次の瞬間には、その手を引いて駆けだしていた。その中で絵里を物陰に隠して、一人で走って振り切ったことで、完全に迷ってしまったのだ。

 

幸いネックレスは落としていないが、そういうワケで金も携帯の電源もないまま、俺はニューヨークのどこかに取り残されてしまったのである。

 

異国の地で重圧の中でセンターを引き受けてくれた御礼として考えてたんだが、流石に一連の行動はカッコつけすぎた……。みんなにここのところ褒められて、浮かれてたのかもしれない。ここは外国だっていうのに、我ながら迂闊すぎる。

 

とにかく戻るための道を探すとしよう。所詮はいくらか走った程度の距離なので、そんなに離れているわけがないとは思うんだが。しかし下手に彷徨うと、それこそ余計に迷うかもしれない。ないとは思うが、さっきのチンピラ紛いの奴にも見つかるかもしれないし。

 

……かといって、悩み続けても時間が経つだけだ。特にこの、夜になりつつある空はまずい。

 

どこかのお店で携帯の充電器を借りるのがベストか?と考えていた俺の耳に、聞き覚えのある歌が聞こえてきた。何故か気になって、自然とその方向に足を向けると、オレンジ色の髪をしたお姉さんが路上で歌っていた。

 

いつの間にかその声に聞き入ってしまって、自分の置かれている状況も忘れて、拍手をする観客の一人になってしまっていた。

 

凄い歌声だけど、いったいどんな立場の人なんだろう?アマチュアっぽいけど、プロに負けない実力を感じる。もしかしてこの人も今回のイベントで歌うのだろうか?

 

なんにせよ、ニューヨークの路上にはこんなアーティストもゴロゴロいるのか。やはり日本とは一味違うな……。

 

周りの人がはけていくの中で、俺はその場で感動のあまり立ち尽くしてしまっていたら、声をかけられてしまった。

 

「あら?貴方は……」

 

……。

 

今、日本語だったよな?

 

周りを見渡す。それらしき人はいない。

 

気がつくと、先ほどの女性シンガーが訝しげな眼でこちらを見ていた。

 

 

 

……あれ?今の、目の前の女性から?

 

もしかしてアナタ、同じ日本人……?

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「まあ、たま~にいるよ?あなたみたいに迷子になっちゃう人はね」

 

「大変面目ない……。申し開きの言葉もございません」

 

「フフッ、そんな言葉、どこで覚えたの?でもまさか、ホテルの名前も分からないとはねぇ……」

 

二人でテクテクと道を歩く。それにしても本当に助かった。世の中親切な人がいてくれるものだ。

 

流石に数日はいたから、多少は覚えている。そのホテルの周辺のいくつかの特徴を言ったらすぐにわかってくれた。あのでかいシャンデリアは確かに特徴的だが、そんなに有名だったのだろうか?

 

「それにしても、キミ若いのによくあの曲でピンと来たわね?」

 

「俺、映画結構好きなんですよ。『カサブランカ』に出てくる歌ですよね」

 

 

あの映画は、今も多くのクリエイターに影響を与え続ける名作の一つだ。うちにもDVDがあったから、何度も見た。

 

嫌いな親父が以前、語っていたところによると、この映画は第二次世界大戦中、かつ低予算の中で作られたのだとか。アメリカはビル街の中でこんな映画を撮る余裕があった。昔からアメリカがエンターテインメントの最先端だったんだ、と幼いころから考えさせられたエピソードだ。

 

2年生3人と練習ができない雨の日に、一度だけのんびりと鑑賞会をしたときは、穂乃果は普通、海未は恥ずかしそう、ことりは興味津々という感じで見ていたのを思い出す。

 

「よく知ってるのね?私もあの映画結構好きなんだぁ。子供の時はそうでもなかったんだけど、大人になると色々と味が出てきてね」

 

どうやらこの人も結構映画が好きみたいだ。

 

異国の地で困っているときに会えた日本人がこんなにすごいアーティストで、趣味も会うなんて、もう話は弾むしかない。

 

「じゃあさ、あの曲がどんな曲かもわかってるよね?」

 

「はい。『時がどれだけ経っても』って感じの曲名でしたよね?不幸な別れ方をした二人の男女が、また巡り合って惹かれあう……っていう映画で、最高の演出だったと思います」

 

「うんうん。君若いのにホントいい感性してるね~!愛に時間なんて関係ないもんね!」

 

「あなたも十分若いじゃないですか。う〜ん……なんだか初めて会った気がしないですね……」

 

……言ってて、別れのくだりはなんだか自分のことみたいだ。

 

違うのは、作品内では、二人の男の間を一人の女性が揺れ動いたけど、俺の場合は一人や二人ではない人数の女性の間を揺れ動いていること。映画のシナリオとしては面白くするのはまず無理だろう。俺も主人公っていうほどカッコよくはなれない。

 

話が弾むうちに俺は、まだ着くまでに時間が少しあるのをいいことに、お姉さんに人生相談をしてしまっていた。

 

 

「ふーん……恋愛とか将来とかで悩んでるんだ?」

 

「ええ。その……。みんなとどうつきあっていけばいいのかな、って。みんなの綺麗な姿を、嫉妬してた俺がまた楽しんでみられるのかな、とか……」

 

自分で話していても、相当変わった体験をしていると思うし、みっともないことも沢山ある。

 

だがお姉さんは、笑うことなく、しかし深刻になりすぎることはない、というような顔で応えてくれた。

 

「私もね、昔好きな人を奪いあってたんだ。それはもう血みどろのバトル!!ドロッドロでとても人には見せられなかったわ~……。刺したり刺されなかったりしたのが不思議なくらい」

 

「えぇ……それはその。大変だったんですね」

 

目の前にいる女性が……?

 

俄かには信じがたい、が。よく考えたら危ない独占欲を秘めている俺の周りの女の子も、別に普段の時に危ない感じというわけではない。そんなものなのだろうか。 

 

「うん。『彼』がねー、優柔不断って言っちゃうのは簡単なんだけど、本当は色々ワケありでね?しかも沢山の女性に同時に想いを寄せられててもう大変!大事故だよね」

 

「その人と!その人とは……今は、どうなってるんですか?」

 

俺は思わず声を大きくしてまで聞いてしまう。

 

まるで俺みたいな状況だ。

 

そんな奇特な男がこの世に何人もいるとは思えないが、その男性が何があったか。いったいどんな選択をしたのか。それを知ることができれば、もしかしたら……!

 

「知りたい?……大好きだよ。今この瞬間も、愛してる。でもそれは、その人を奪い合ってた相手とも同じね」

 

「……? それって、答えになってなくないですか?」

 

「今はそれでいーの!君にもきっとすぐわかるよ。……それにしても、みんなもいつまで彼の奥さんの座を狙ってるのかな。いい加減諦めてくれればいいのに。彼もそろそろ安定してきたんだから結婚を前提にしてくれても……。お父さんもお母さんも孫の顔を見たいって……」ブツブツ

 

 

……なんだか、上手くはぐらかされてしまった。と同時に、お姉さんから黒いオーラが噴出してブツブツと危ないことを口走っている。

 

思わず身体が反応してしまうが、幸いそれはすぐに収まってくれた。

 

俺が知らないだけで、誰かを愛する女性って、みんなこのくらい怖いのが普通なのだろうか……。だとしたら、おかしいのはもしかして俺だったのか?

 

「……で、つい嫉妬しちゃうって話だっけ?そんなの誰にでもあるよ。逆にその人たちのことが大好きだからこそ、そういう気持ちになっちゃうんでしょ?」

 

「それはそう、なんですけど」

 

「そーれーに!話を聞く限りだと、色々相談に乗ってもらったのもあって、もうだいぶ元気になってきてるじゃない。貴方なら大丈夫だって」 

 

お姉さんの言う通りだけど、こればかりはもう、本番で確かめるしかない。

 

俺がどう言葉を返そうか少し悩んでいると、ふいにお姉さんは足を止めた。

 

「ホラ、あそこであなたを待っていてくれる人なんでしょ?……あんないい仲間たちなんだから、君みたいないい男の子なら絶対大丈夫。あの娘が信じてくれる自分を信じなさい」

 

その視線の先には、見覚えのあるホテルの前のベンチに座って、白い息を吐く絵里の姿があった。

 

思わず駆けだしそうになるが、その前にお姉さんにお礼を言う。

 

「ありがとうございました、送っていただいた上に、相談にも乗ってもらっちゃって。おかげで、ちょっと気が楽になった気がします」

 

「うんうん、男の子はやっぱり、そういう笑顔じゃないとね!…色々悩むだろうけど、本当は簡単だよ! 私もとっても簡単だったし……」

 

 

「ただ、今まで自分たちが誰のために、何のためにやってきたのか。どうありたくて何が好きだったのか。……それを考えたら、答えはとても簡単だったよ」

 

 

またわかるようなわからない言葉ではぐらかされたが、俺にはなぜかその言葉がストン、と腑に落ちるような気がした。

 

何のために。どうありたかった?何をしたかった?

 

 

 

誰のための、ラブライブなんだ……?

 

 

 

お姉さんはそのまま微笑んでいる。深い意味は自分で考えろ、ということなのだろう。ありがとうございますとお礼を言って、俺は絵里のところに駆け出した。

俺が駆け寄ると、絵里も気づいて、目にうっすらと涙をため、抱き着いてくる。

 

コートの胸の部分が涙で濡れるが、絵里の涙なら構うことなんてない。相当に不安で、寂しかったのだろう。このくらいならお安い御用だ。

 

強く強く抱きしめあって、数分ほどしてから、俺の方から口を開いた。

 

「ずっと……待っててくれたのか?」

 

「うん……修也が守ってくれたから。でも、修也がひどい目にあってるんじゃないかって考えたら、部屋で待ってられなくて……!」

 

「ありがとう。こんなに手、冷たくなるまで……。手袋とかしてくればよかったのに」

 

絵里の手を握ると、冷たくなっている。この寒い中、数時間も俺のことを待っていてくれたのだろう。俺の頬にかかる吐息も白い。

 

「ううん、いいの。貴方が無事に帰ってきてくれれば、それで……。貴方さえ、貴方さえいてくれれば……」

 

その言葉に、感じ慣れた不穏さはあるが、今は絵里を部屋の中に連れて行こう。みんなに帰ったと報告もしたいし、何より絵里の体を温めたい。

 

「でも修也、どうやって帰ってきたの?さっき、携帯はまだつながらなかったけど……」

 

「ああ。それなら、途中であった女性に……」

 

——————————振り返ったが、もうそこにお姉さんはいなかった。

 

不思議な人だ。いつの間にかいなくなってしまったのだろうか?

 

「女性?……修也、もしかして浮気?この土地でまた新しい女性をひっかけたんじゃないでしょうね?」

 

……絵里の視線が怖い。人を女たらしみたいに言わないでほしい。

 

それに浮気って。みんなの気持ちは嬉しいけど、彼女はツバサだって……。まぁ、逆に俺がツバサと浮気している、ととれるのかもしれないけど……。

 

「貴方の後ろにはそれらしき人はいなかったし、修也の身体からも知らない女の匂いはしないけど?」

 

あと、さらっと俺の胸ですんすんと匂いを嗅がないでくれ。

 

流石に恥ずかしいし、っていうか他の女の匂いってなんだよ……!?

 

 

 

結局絵里は、ホテルの中に入ってみんなに謝る間も、俺にしがみついて離れることはなかった。

 

それどころか、シャワーもトイレも「貴方が何処かに行かないか不安だわ……」と言って一緒に入ろうとするし。

 

みんなも『今日が絵里の番』でなかったら、全員一緒の部屋で寝なきゃ許さない、という形相だった。

 

本当に心配をかけてしまったし、携帯の充電以外は理由が理由だから何とか許してもらえたけど、今度何を要求されることか……。

 

そんな絵里だって心配しすぎて気疲れしていたのか、割とすぐ寝てくれたし、眠りが深いタイプなのか翌朝も特に何かしらのアタックはなく、乗り切った……と安心する。

 

でも昨日の言動と言い、もしかして、絵里も1年生や穂乃果と同じで……。

 

だとしたら、俺は今回のことで、みんなのように絵里とじっくりと話し合う機会をふいにしてしまったのだろうか?……なんだかとんでもなく悪いことをしてしまったように感じる。このネックレスだって、渡す機会を失ってしまったわけだし。

 

 

——————————誰のための、ラブライブか。

 

 

隣で眠る絵里の安心した顔を見て、今日言われたことを考える。

 

「答えが見つからないよな、絵里……」

 

 

……それと、心配をかけた罰として、μ'sの皆で話し合った結果。

 

絵里と一緒に過ごすのが1日増えたと聞かされたのは、翌朝のことだった。

 

 




女性シンガー「『お姉さん』!?は、破壊力高っ……今度彼にも言ってもらおう……!」

握った手の中、愛が生まれる……。そろそろニューヨーク編も終わりが近いですね。

Plant Swamp様、新たに高評価していただき、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。