ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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病みを抱いて、光となる!


4th2日目、落ちました。


第24話 似た者同士の手と手

本番の前の、最後の日の練習を終えた。

 

「うん、いいダンスだと思うヨ!何度かこの大会を見てきたけど、十分目の肥えたニューヨークの観客にも通用すると思う!ワタシも実際生で見ないと分かんないけどね!」

 

「ありがとうございます。スタッフの皆さんには、ここまで完成させるのに本当にお世話になりました。色々とご迷惑をおかけしちゃって……」

 

みんなの仕上げの通し練習が、概ね完成したことを通訳のアビーさんと喜び合う。他のスタッフの人たちも心なしか、目を奪われているようだ。

 

俺自身も、みんなの実力に驚いている。

 

理事長にああいわれて、急な日程でニューヨークに来たはずなのに、ここまで完成した。いくら出発前からある程度作っておいたとはいえ、このスピードは流石としか言いようがない。実力だけじゃない、流れとか勢いとかいうものだろうか?

 

……それとも、ツバサが言うような才能、だろうか。

 

どちらにせよこれがA-RISEを……絶対王者だったツバサを破ったμ'sなんだと、改めて理解させられる。

 

「いやあ、迷惑だったのは昨日のキミくらいだね!ホントみんな焦って焦って、なだめてホテルに返すのが大変でさ!」

 

ううう……、面目ない。

 

不幸中の幸いで、『チンピラを撒いた』と連絡は伝わってたし、俺が数時間で帰ってきたから大事には至らなかったが、心配をかけたのは事実だ。

 

特にみんなには、一時的にとはいえ俺が行方不明になっていたことが余程堪えたらしい。

 

今日は1年生と穂乃果のみならず、全員が一日中ベタベタしてくる。休憩中だからといって、今もアビーさんと話す俺をじっと見ている。

 

……うん、怖い。

 

 

海未は「やっぱり修也は私が見ていないと……」なんて呟いてるし、ことりも「しゅーくんは今度ことりのおやつだね……♡」って言ってるし。希も瞬き一つしてないし、にこも目が血走っている気がする。特におやつって、俺は何をされるんだ……。

 

 

そんなみんなの中でも、特に絵里は自分のせいだと思っているのだろうか。今日は動きが鈍い。確かに『いつもどおり』のダンスはできている。歌声も完璧だ。

 

でも、『何か』無理している感じがする。精神面もそうだが、もしかして……?

 

 

……絵里は自分を責めるのだろうが、もとはと言えば俺が彼女を一人にしたせいだ。自分の撒いた不安の種は、自分で取り除かないとな。

 

「みんな、今日はお疲れ様。……絵里、今晩俺の部屋で話そう」

 

全員の視線が一斉にキツくなった。アビーさんも「鈍感ボーイがかっこイイセリフ!」って、それ誰から聞いたんすか……。

 

なんだよその目は。俺だって一応彼女持ちで、二回も『そういうコト』をしたんだ。いつまでもこういうセリフを言うのに恥ずかしがる男じゃないってば。

 

……お願いだからその黒いオーラを収めてくれませんかね?特にことりさん。おやつは勘弁して……。

 

 

「ウーン、やっぱり見たことあるキがするんだよネぇ……」

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「ごめんなさい、待たせたかしら?みんなとの話が長引いちゃって……」

 

 

静かにドアを開けて、静かに絵里が部屋に来た。帰ってきてからも、晩御飯とかで絵里と二人きりになるのに時間がかかってしまった。

 

多分、絵里は今の間に、みんなと色々俺について話をしていたんだろう。日替わりお悩み解決コーナーと化してまだ俺のことを気にかけてくれている。

 

……でも俺だって、みんなにいつまでも与えられっぱなしという訳にはいかない。

 

マネージャーの仕事という以上に、俺個人として皆にここまで想ってもらっているのに、何も返せないのはそれこそ俺の嫌った、みんなへの甘えだ。

 

「まだ8時だぜ?明日に備えて早めに寝なきゃいけないとはいえ、まだまだ大丈夫だろ」

 

申し訳なさそうにする絵里に笑いかける。

 

すると、絵里もゆっくりとベッドに座って、高校生らしからぬ俺のことを誘うような笑顔で問いかけてくる。

 

モデル顔負けとはこのことだろう。プロポーションやスタイルに関しては一般人離れしているその姿に、思わず目を奪われる。

 

「それで、話ってどんな内容かしら?ひょっとして、愛の告白?」

 

「ッ! そ、そうじゃないよ。明日のセンターのことだ」

 

……心臓に悪いぞ。

 

ここのところ、そのパターンで何度ドキリとさせられていることか。さっきは心の中で強がったが、女性に対する耐性は決してまだ強いわけではない。多少平気になったくらいだ。

 

「あらそう?貴方からだったら、本当にうれしいのだけれど……」

 

心底残念そうにしている。

 

もしかして、絵里も……という考えを振り払って、今は本題に入ろう。

 

「……ああ。今日の練習なんだけど、絵里。どこか無理してないか?その、身体のことでさ」

 

「身体のこと?……どこか変にみえたかしら?練習には集中してたつもりだけど」

 

……ここのところ、嫌でも緊張する場面が多かったからだろうか。一瞬の間は見逃せなくなっている。なんで隠すのかも、ちゃんと聞かないといけないな……。

 

「無理はしなくていいよ。さっきのドアを開けるときといい、ベッドに座るときの動作といい。もしかして、膝かどこかに違和感があるんじゃないのか……?」

 

下半身の中でアタリをつけたつもりだったが、どうやら正解だったらしい。絵里の綺麗なスカイブルーの瞳が驚きに染まっている。

 

「本当に、憎らしいくらいよく見てるのね……」

 

絵里は私の負けね、と降参のポーズをとった。

 

「……えぇ。今日の練習中から、少し痛めているわ。でも大丈夫、明日には治ってるし、一曲分くらいなら問題ないわよ」

 

……幼い頃からこういう事をしていた絵里なら、膝がどれだけ大事かわかっているはずだ。

 

にも関わらずこういう言い方をするということは、なぜ我慢していたのか、を聞かなければならないということだろう。

 

「なんで隠してたんだよ、言ってくれれば……!」

 

「本番前よ?貴方が私を信じてセンターに推してくれたのに、期待を裏切るなんてできるわけないじゃない……!」

 

「それは、……そうかもしれないけど」

 

……確かに、俺が絵里なら同じ判断をしていただろう。

 

とても愛おしい人のためなら、どんな無理でも通して見せる。それが大舞台なら尚更のことだ。誰かの期待に応えたい、結果を出したい。

 

穂乃果が夢をかなえていく姿に対して、恋心に近い憧れを抱いていた頃に、演出作りも雑用もいくらでも頑張れた時の俺のように。

 

「修也は私とよく似てるの。廃校を止めようと無理をしていた私と、私たちのために無理をしてくれる貴方。少しでも恩返しがしたかったのよ……だから、わかるでしょ?」

 

俺と、絵里が?

 

そう言われると、確かにニューヨークに行く前の俺は、廃校を止めようと焦っていた頃の絵里と同じような状態だったのかもしれない。

 

恩返しって言ってもらえるのは嬉しいけど……

 

「ありがたいけど……それでも俺は、自分のことより絵里の身体が心配なんだ。大舞台がどうこうとか、まだラブライブの本選が残ってるからとかじゃない。……ケガが長引いて、俺みたいになったら……」

 

「それこそ同じ気持ちよ。昨日、私をかくまった後すぐにいなくなっちゃって。助けてもらったのは嬉しかったけど、どれだけ心配したと思ってるの……!?」

 

それに貴方だって、悩んでたことをずっと黙ってたんだからおあいこよ、と続けられてしまう。

 

……どうしよう、反論の余地がない。

 

……μ'sの活動を認めてもらいたくて直談判してた頃もそうだったが、どうも口では絵里に勝てないみたいだ。ツバサもそうだが、こういう美人系の女性には、俺は尻に敷かれやすいタイプらしい。

 

「ごめん。あの時は、それしか思いつかなかったんだ。咄嗟に手を握って、気づいたら走りだしてた」

 

「いいのよ、むしろ嬉しかったし。それに、貴方にそうしてもらったのは初めてじゃないわ」

 

「前に、俺が絵里の手を握ったこと……?」

 

「……その顔だと覚えてないみたいね。私がμ'sに入れてもらった時のことよ。泣いていた私を無理やり引っ張って、みんなのところに連れて行ったじゃない」

 

「それって、絵里がμ'sに入った時の……あの時か!?」

 

あの時も無我夢中だったけど、確かにそんなことした気がする。

 

女の子の部屋に行くだけでも落ち着かない俺がそんな大胆なことをしていて、しかも忘れていたとは……。

 

「……思い出した?ちょうど、こんな風だったわよね?」

 

絵里は少し機嫌が良くなり、左手で俺の右手を、右手で俺の背中を掴んで椅子からベッドに押し倒した。

 

後ろからはベッドの柔らかさ、前からは絵里の柔らかさを感じて、否応にでもドキリとさせられる。何より、すぐ間近に絵里の顔があるのがそうさせた。

 

こんな事まではしてないって!と思わず振りほどこうとするが、手と手はいつのまにか恋人つなぎのように絡み合っており、絵里の瞳も俺しか映してはいない。

 

耳元に顔を寄せて囁かれるだけで、心が溶けていくのがわかる。

 

「フフッ、そんなに怯えちゃダメよ?貴方が呼んでくれたんじゃない。……貴方の手は私と違って固いけど、とても温かくて安心するわ……」

 

そして、耳にフッと吐息をかけられながら、追い討ちを受ける。

 

「……この温かさのまま、流されてみない?目を閉じればぜーんぶ、私がやってあげるわよ♡どうかしら……?」

 

誘いかける絵里は、明らかにスイッチが入ってしまっている。

 

……これまでの俺だったら、全てを委ねてしまっていたかもしれない。絵里のことを嫌っているわけなんてない。

 

でも俺にはツバサがいる。彼女をこれ以上、裏切るわけにはいかない。

 

だから俺は無言と、向けた瞳で拒否の意思を伝えたのだが、絵里はしばらくこの体勢で話を続けたいようだ。拘束が解かれる気配はない。

 

「絵里、お前は……」

 

「そんなに悲しそうな顔をしないで頂戴。して、くれないのね。……少し、自信がなくなるわ」

 

絵里が自信を失う必要なんてない。そして、絵里が今こうしてくれる理由もわかっているつもりだ。

 

恐らく世の男の大半は、同じ状況なら嬉々として手を出しているだろう。俺がこの期に及んで紳士ぶっているだけの、情けない二股野郎だってだけだ。

 

しかし、どう言葉をかけるべきかは、わからない……。

 

「……まぁ、そう簡単には靡いてはくれないわよね。そういう修也だからこそ、こういうことをしてるんだし」

 

「その意味って、やっぱり絵里も……」

 

「言わないで、今なら。ここまですれば、私から言える気がするのよ……。ずっと伝えたくても、伝えきれなかったこの言葉を」

 

 

 

「……修也、私は貴方のことを愛しているわ。あの日初めて会った時からずっと、狂おしいほどに……」

 

 

 

……やっぱり、とは絶対に言いたくなかった。

 

それじゃ、みんなの一人一人の想いを、雑に扱ってるみたいだから。

 

俺にとっては『5つのうち1つ』でも、みんなにとっては、『何より大切な1つ』だからこそ……。

 

 

 




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皆さんの応援のおかげです。

8月中までにニューヨーク編を終えると言いましたが、数日オーバーしてしまうかも…すいません。
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