ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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日本に帰ってもドロドロが待ってるんですけどね。


第25話 危険なゲーム

 

 

 

「……修也、私は貴方のことを愛しているわ。あの日初めて会った時からずっと、狂おしいほどに……」

 

 

 

————————————絵里の、告白。

 

そして、絵里が初対面の時から俺のことを気になっていたと聞かされた。

 

「μ'sを巡ってぶつかりあってた時も……本当はずっと心の中では、貴方と分かり合えるって信じてた」

 

「本当は今すぐにでも、お互いの心と心を一つにしたい……。貴方の何もかもを奪って、私だけのものにしたいのよ」

 

「そのくらい貴方が好き。本音では、μ'sの誰にも渡したくないくらいよ。……でも、μ'sのみんなのことも貴方と同じくらい大切。裏切るようなことはできないわ……」

 

独白を続ける絵里の声のトーンは少しづつ落ちていく。

 

本人の言葉を信じるのなら、自分だけの想いと、みんなの想いと、そして今俺にツバサがいる現状との葛藤に苛まれている。

 

自分の胸に、気持ちにブレーキをかけている。こうして見つめ合いながらも、おそらく花陽のように襲いかかりたいのだろうか。

 

……そこまで想ってくれるのは嬉しいし、あの絵里にそうしてもらえるというのなら、この世の男で断る奴はおそらくいない。

 

でも俺にはそれはできず、手を握っていることが精一杯だった。大切な女性の一人にここまで想われて、それに応えることの方が誠実なのか、それとも彼女に操を立てることの方が誠実なのか、迷いが生じ始める。

 

あるいは、『迷わせる』時点で、穂乃果の考えは既に成功しているのかもしれない。

 

「迷って、悩んで……結局、今の今まで告白できなかった私だから、わかることがあるの。修也、貴方の今の悩みよ」

 

「俺の悩み?」

 

「さっきも言ったわよね?私と貴方はよく似てる、って。あの時穂乃果に言ってた……『私たちのライブをまた最後まで見られないんじゃないか』ってことで、まだ悩んでるんじゃないの?」

 

……完全に当たっているけど。

 

「なんでそこまで……!?」

 

「簡単よ。貴方がさっき私の膝のことを分かってくれたように、私たちもまた、貴方のことをずっと、見てきたんだから……」

 

『あの時』はμ'sのライブを直視できなくなってすぐにああなったから、穂乃果の告白の瞬間までバレなかっただけで、俺自身は隠し事が得意な方でない。

 

ましてや、みんなは俺のことを本気で好きになってくれて、こんなにも親身になって相談に乗って、元気づけようとしてくれている。そんなみんなが、よく見ていないはずがない。

 

「練習中、ダンスも歌も完璧なのに、複雑そうな、不安そうな表情をしてるんですもの。すぐにピンと来たわ、あの時の言葉じゃないか、って」

 

「……絵里の言う通りだよ。俺はみんなの光が羨ましくて。みんなが夢を叶えるのを見るのが辛かった。自分だけ何もできてないのに、夢をあきらめてるのに、って」

 

聞いている絵里の方も、一緒に辛そうな表情をしている。

 

「みんなが綺麗になればなるほど、俺は自分が許せなくなった。才能の差なのかって思ったこともあった。……真姫や花陽、凛にああ言ってもらえたけど、不安なんだ。いざ本番になって、どうなるか」

 

俺は間近に迫っている絵里から目をそらす。

 

ニューヨークという最高の大舞台に、ついにたどり着いたμ's。そして、まだ控えているラブライブ本選。

 

凛にはああ言ったけど、本当に俺はまた、μ'sのライブを最高に楽しめるという証拠はない。実際に見てみるまでは。

 

「……ねえ修也?コンプレックスとか嫉妬すること、って。悪いことばっかりに言う人もいるけど、本当は相手の良いところを見つけることができる人、って意味もあると思うの」

 

絵里が優しい声で語りかけてくる。

 

それは、そうかもしれないけど……。 

 

「貴方は誰よりも夢を大事にしてる。でもそれを叶える機会は失われたのよね。そして、誰よりもμ'sを……私たちが夢を叶えていく姿を、間近で見ていた。誰よりも、私たちの良いところを見続けてくれたから、そんな貴方だからこそ、そう思ってしまった……。きっと、貴方が他の誰かなら、こんなことには、なってなかったんでしょうね」

 

俺が俺以外の、もっと立派な男だったのなら、確かに成功を収めていたんだと思う。あんな風にみんなとぶつかったり、今もこうしてウジウジと悩むことなく。

 

もしかしたら豪快に『全員と付き合う!』なんて選択ができて、ハーレムの一つでも築いていたのかもしれない。絵里の告白にも、カッコよく応えられていたのだろう。

 

……でも、俺にそれはできなかった。

 

「だから一度はすれ違ってしまったけど、絆は切れなかったわ。今、私たちがこうしているように……。あの穂乃果の告白の時の一件でだってそう」

 

「俺たちが、あれでさえ切れなかった……って?」

 

「そう、修也の悲しみも知れたからね。ことりが留学する、穂乃果がスクールアイドルを辞める、って言い出した時も……結局は貴方のおかげもあってもっと仲良くなれた。他の誰かじゃない、貴方だから私は好きになったのだもの。かっこいいところもかっこ悪いところも、成功も失敗も共有して、初めて最高のパートナーだと思うわ」

 

付け加えられた、あの女に邪魔されたのは要らなかったけど、という怖い台詞は今は聞かなかったことにしておこう。

 

少し会話が途切れたが、すぐに絵里がある提案をして来た。

 

「だから、修也。一つゲームをしましょう?」

 

「ゲームって……多分、ポーカーとかオセロじゃないよな」

 

「ええ。今回のライブで……μ'sがあなたを感動させられたら、私の勝ち。私たちのライブに貴方が感動してくれなかったら、貴方の勝ちシンプルなルールでしょ?」

 

受けるかしら?と俺の唇に人差し指を当てて、誘いかけてくる。

 

「感動って、つまり俺がみんなをまた最後まで見ることができたら……ってことか」

 

「そんなところね。私は押し付けてでも貴方をまた元の貴方に戻してあげたいの。……受けるかしら?」

 

絵里は俺に発破をかけたいのだろう。

 

ならこの勝負は乗るしかないが……

 

「その前に条件を聞いちゃダメなのか?」

 

そう、それが大事だ。

 

穂乃果の一件もあるし、こういう約束は注意してしすぎることはない。みんなの気持ちは嬉しいし、疑うようで心苦しいが、下手に泥沼には落ちたくない。(もう既に泥沼か?)

 

どんな要求が来るのかは……

 

 

「そうねぇ……せっかくだから、危険なルールで勝ってみたいわね」

 

そう言って、残酷な笑みを浮かべた絵里は、恐ろしい言葉の刃をつきつけてきた。

 

「私が勝ったら、綺羅ツバサ(あの女)とのつきあいを、考え直してくれない?」

 

 

……!?

 

「絵里……どういうこと言ってるか、わかってるのか?」 

 

「わかってるわ。私も普通の女性相手ならこんなことは言わないわよ」

 

「だったら!」

 

「だからこそ、なのよ。……貴方こそ、本当のことを知らない。真姫のお父さんの病院で受けた健康診断……あれで、『そういうコト』に使う成分が検出されたらしいわよ」

 

ウソだと思うのなら真姫に聞いてみなさい、と付け加える絵里。

 

「そういうコト?成分?何の話だよ?いくら俺でも怒るぞ、絵r———————」

 

「貴方に綺羅ツバサが薬を盛って!!無理矢理襲ったっていうことよ!貴方の『初めて』を!あの女が奪ったの!」

 

 

まさか、そんな事が……!

 

いや、でも……!!

 

 

「……何か思い当たる節でもあるのかしら?そうでしょうね。わざわざ穂乃果が『自分はそんなことはしていない』ウソをつくとは思えないし」

 

……穂乃果のことが何を指しているかはよくわからない。

 

だが、目の前にいる絵里はウソをついている態度じゃないのは確かだ。この「賭け」も……。

 

ツバサと行為に及んだ、あの夜。確かに俺は変な味のジュースを飲んだ。そして、その前後の記憶も、最中の記憶も凄く曖昧だった。

 

あの時のツバサの瞳も、今思えば、俺に執着するときの皆そっくりだったかもしれない。

 

 

————————————でもまさか、そんな薬だなんて。

 

信じたくない気持ちと、否定しきれない気持ちがせめぎあう。

 

だとしたらなぜツバサはそんなことをした?いや、絵里自身も嘘を信じ込んでいる可能性もある。それとも俺が嘘を見抜けていないのか……!?

 

「……貴方がどういう結論を出すかは自由よ。でも、この勝負は受けてもらうわ。貴方をそういうことをする女のところに置いてはおけないもの。私達が守ってあげないと……」

 

……本気だ、少なくとも彼女は本気で信じている。

 

俺が結論を出せずにいると、絵里が少し譲歩して来る。

 

「……別に別れろ、って言ってるわけじゃないわ。考えてくれればいいだけ。私達が勝ったら貴方の隣は私で釣り合うってことだもの。その『証明』で十分……」

 

「代わりに、私達が負けたら、私も貴方と綺羅ツバサのつきあいを少しは考えてあげてもいいわ」

 

……絵里は、この機会にハッキリと、ではないが、俺にツバサ以上の魅力と実力がある、と証明したいらしい。

 

そして、恩返しだと……

 

あの絵里がここまでいうんだ。なら……

 

「やけに自信ありげじゃないか?でもちょっとルールを変更してくれないか?」

 

「……どういう風に、かしら?」

 

「俺が最後まで見たらみんなの勝ちってことはいい。でも俺の演出で、みんなが最高のライブをできて……絵里自身が最高に楽しんでも、俺の勝ちってことにしないか?」

 

それがこのニューヨークで俺がみんなにもらったものの、恩返しでもある。今度こそ俺は観客の人たちと一緒にμ'sを楽しみたい。でも俺は、μ'sのみんなにも楽しんでほしくて、今回の演出を作り上げた。

 

ならば、俺にとっての勝利条件はソレだ。

 

「いいわ……その条件を呑みましょう。そんなに身構えないで?お互い『考える』だけでいいんだから」

 

……乗ってきた。これで最悪、引き分けもある。

 

そもそも、ツバサがそういう手を使ったのかどうかを俺に迷わせた時点で、絵里の目的は半分は達成できているのだろう。お互い口約束の『考える』に何の効力もない。

 

でも俺にも意地があるし、ツバサのことを裏切りたくない。

 

そして同時に、俺はこの舞台でニューヨークだけじゃない、μ'sのみんな自身さえも感動させて、μ'sの隣に立つ実力を証明したいんだ。

 

それはツバサ。お前の隣に立つ資格があるって、俺自身も思えることになる。

 

「修也。私たちの姿を見るのは、もしかしたら辛いことかもしれない。私だって、やりたいことを我慢してる時は、μ'sを見るのが辛かったわ。でもきっとその悲しみは、風邪をひくのと似たようなもの。みんなの心に触れて、貴方がどれだけ私たちにとってかけがえのない人だったか、わかってくれたはず」

 

ああ。このニューヨークでの絵里の告白も、みんなのソレも。本当に有難かったし、俺に自信を取り戻させてくれた。

 

「だから、今のあなたならきっと治ってるわ。お願い。私たちを信じて。貴方自身の心の強さを信じて。きっと、元通りになってるから……」

 

絵里の言う俺の心の強さを信じる。俺自身の実力を信じてみる。楽しんで作った演出を信じるし、みんながそばにいてくれたことも信じられる。

 

俺のみんなから貰った大切なものを詰め込んだ、この演出を信じる……。

 

ここで俺は、最高の舞台を作り上げて、最高の眼を持つ人たちに見てもらって、最高に楽しんでやる。

 

 

だからツバサ……絵里も、μ'sのみんなも見ててくれ。

 

俺が勝つところを。

 

俺が少しでも、輝けるところを。

 

明日が、きっと、運命の分かれ道だ。

 

 




またちょっと解説を入れると、

ツバサ「修也の夢は私が一緒にかなえてあげるわ!彼を傷つけないで!」
μ's「彼の隣にいるのは私たちよ!貴方こそ彼を都合よく!」
修也「俺はツバサにもμ'sにも、隣に立てるだけの男になりたい!」

って感じですね。すれ違ってます。修也もみんなに励まされて(特に星を数えての時)、色々新しい目標が見えてきてる感じです。

分かりづらくてすいません。完結したら色々分かりやすく書き直そうと思うのですが。

次回でニューヨークは最終回です。
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