ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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仕事が忙し過ぎて遅れました……お待たせしました、中編です。

『ん?中編?後編じゃなくて?』と思った方々、本当にごめんなさい。書いてたら長くなっちゃったんです……許してください。


傍にいさせて ②【鹿角理亞】

「もう私に関わらないで!アンタには……私よりAqoursの方がいいんでしょ!?」

 

思いっきり机を叩いて悔しさをぶつけた日のことを思い出してしまう。……その時のことにも、今思い出す事にも、何の意味もないのに。

 

だいたい、ぶつけたのは悔しさっていうよりも単なる嫉妬。好きな相手が、私以外を見ていたのが許せなかっただけ……。スクールアイドルとしての話が重なれば、尚更それは大きいものになってた。

 

「……私なんてほっといて。アンタとはもう、会いたくないッ……!」

 

私のちっぽけなプライドが姉様と、私と、アイツの夢を壊してしまった。それだけじゃない、芽生えかけた愛情も……これからの何もかもを……。姉様に涙を見られても、アイツにだけは涙を見られたくなかった。

 

だから、遠ざけた。告白する勇気もない私の、精一杯の抵抗。

 

しょせん、本当の気持ちを話して拒絶されるのが怖かっただけ。この期に及んでも、まだ私は自分のプライドに固執してた。ダメな女だって思われたくなかった……。

 

大切な夢を、ずっと目指してきたものを……たかが恋愛の嫉妬なんかで台無しにしてしまったなんて、言えるわけないじゃない……!

 

そんな私が、合わせる顔なんてない。それも自分だけ泣くだけ泣いて悲劇のヒロインになるなんて、最低だって自覚はある。だけど、メールも電話も何か返したくても、何も思いつかない。

 

嫌われたらどうしようって、もう私に価値なんかないんだってネガティブになって……でも今更会いに行って謝れないジレンマが私の心を蝕み続ける。アイツが心配で店に来てくれたって、出ていけない。出て行けるわけない……。

 

 

—————でも、案外早く。『意外な助け』が入って私達は再会できて、仲直りして……また一緒にラブライブを目指せることになる。

 

新しくできた『友達』。

 

黒澤ルビィのおかげで—————

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「ルビィちゃん、男の子相手でも勇気を出すずらぁ……!」

 

「う、うゅ……わ、私は黒澤ルビィって言います!!得意技はほ、ほうさいでしゅッ!?」

 

「ほうさいじゃなくて裁縫でしょ!? 思いっきり噛んでるし……」

 

私とルビィは『ちょっとしたきっかけ』から、大切な人……お互いの姉に贈るための曲を、ライブをすることになった。しかもその『お節介』のおかげで、なんだかんだ言って彼とも仲直りもできた。

 

その曲作りのために、Aqoursの一年生……国木田花丸と、あと堕天使とか言ってる津島善子はこうして私たちの家に残ってくれて、手伝ってくれることになったんだけど。

 

「Saint Snowのライバルとして名高いAqoursの皆さんの、それもあのリトルデーモン4号の黒澤ルビィさんに挨拶してもらえるなんて。これは夢なのかな……?」

 

「リトルデーモンの号数までちゃんとチェックしてるとは……アナタ、堅物安直歌詞女と違って、なかなか見込みがあるじゃないの? 今日のリトルデーモン第1号は特別にアナタに決定してあげるわ!」

 

だいたい堅物安直歌詞女って何!?仕方ないでしょ、歌も歌詞も姉様が作ってくれてたんだから、いきなり一人で思いつかないわよ!不摂生で体重増えてるのバラすわよ!?

 

「おお、善子ちゃんに友達ができそうずら。珍しいずら〜……」

 

「誰がぼっちよ!? てかファンだし!あとヨハネ」

 

「でも、ファンでも友達でも、マネージャーさんでも……手伝ってくれる人がいてくれると心強いね!」

 

問題がただ一つだけ……それは、アイツがなんだかんだあって、その『手伝い』に巻き込まれてること。

 

……ルビィは落ち込む私を励まして、新しい目標をくれた。無理をしてまで、一時的にでも仲間や機会もくれた。アイツとの仲直りのきっかけだってもらったのは間違いなかったんだけど、一緒に手伝い始めるなんて聞いてない……!

 

普段の私なら、まだ許せたかもしれない。でもあんな事があった直後に他の女の子と会話するのを見るのは、かなり嫌な気持ち。

 

私ではできなかったことが、ルビィ達にはできたように見えて……感謝はするけど、心のどこかで納得できてない自分がいる。

 

それに私たちはあくまでも関係が『戻った』だけ……。『進んだ』わけじゃないから、悩みが解決したワケじゃなかった。それは、きちんと告白しない限り、これからもずっと続くっていうこと。

 

……そりゃ、アイツがスクールアイドルに関して結構センスがいいのは認めるし、『Saint Snowみたいになりたい』とか言って最近色々頑張って、ちょっとだけカッコよくなったけど。だからこそ、不安は大きくなる。

 

—————でも、貴方はSaint Snowの、私達のファンじゃなかったわけ?

 

やっぱり、この前みたいにAqoursの方がいいっていうの? 誰かに盗られる? 誰を? アイツが?

 

一緒にやってきた私より、さっき会ったばかりのルビィ達の方が————

 

 

「…………何デレデレしてんのよ!」

 

無性にイライラして足を蹴ると、不満げな表情を返された。何よ、文句でもあるの……!?

 

私にはそんなにドキドキした顔なんて見せてくれたことないのに……私の気持ちには未だに気がついてくれないのに!

 

今だって……せっかく仲直りしたのに。私にはただのクラスメイトみたいな気安さのくせに、ルビィ達ばっかり見て……!

 

 

 

……じゃあ、私はもっとよそよそしくしてほしいの?

 

違う、そうじゃなくて……。

 

この前気づいたばかりでしょ? 私はコイツの事が好きになってるんだから……

 

 

「あ、俺は国語5だから作詞の方で!」

 

「じゃあマルたちは曲作りを頑張るずら!あ、ルビィちゃんは作詞お願いね♪」

考え事に気を取られていたのが、さらに状況を悪化させてしまってる。私とだけじゃなくて、私とルビィとコイツで歌詞作りをすることになっていく。その間、不機嫌な顔を誤魔化すのが大変だった。

 

でも、しょうがないでしょ? また一緒に居られるのは嬉しいけど、私の本当の気持ちは……

 

『彼』に、『わたしだけ』を見てほしい、っていう事なんだから……。

 

ずっと前から……アイツがSaint Snow以外を見るのが気に入らなかった。心の奥では、姉様すら見て欲しくない……。私を、鹿角理亞だけを見ていてほしい。

 

自分でも信じられない。私がそんなにもアイツの事を好きになっていたなんて……。恋愛なんて馬鹿馬鹿しいと思ってたのが、恋をしただけでこんなにも変わってる。人間って単純なものだって思うけど、好きな人のことを考える間の心地よさは、確かに人を変えるには十分すぎた。

 

アイツとかコイツとか言っちゃうのも、ただの照れ隠しだったんだ……。『貴方』を名前で呼びたくて、呼ばれたくて……うずうずしてるのが自分でもわかる。

 

 

それに気がつけたのは良いことだし……一歩前進、したんだと思う。

 

ただ……

 

「ここって、ルビィが歌った方がいいんじゃないかなぁ? ほら、声の感じとかさ。私の声って、理亞ちゃんのカッコいいのとは反対だし……」

 

「うん、僕もそう思う。でもそれだと少し歌詞のココを変えてみて……」

 

「それだといいかも。私たち、気があうねっ♪」

 

 

『貴方』の方は、いつ私の気持ちに気がついてくれるの……?

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

……結局、ライブ自体は最終的に大成功。でもそれが次の『間違い』の始まりだったって気づかされるまで、そんなに時間はかからなかった。

 

 

『それでねっ? 最近お姉ちゃんったらさぁ、ルビィがプリン食べようとするとねぇ……♪』

 

「あはは、流石にウソだろー? そんなん聖良さんでもしないって!」

 

……今日も、楽しそうにルビィと彼が通話する声が聞こえる。あのライブの日以来、ルビィは対人恐怖症を限定的に克服できたのか、特に彼と連絡を取りあうようになった。

 

私はあれ以来……何も上手くいってなんかいないのに。

 

姉様はもういない。ルビィ達だってライバルに戻っていく。全部私一人でやらなくちゃいけないのに。

 

集まった僅かな新しい仲間さえ……練習についていけなくて、バラバラになりそうになってる。そばに居てくれる唯一の相手だって、こうしてルビィにつきっきり。未だに面と向かって名前で呼ぶこともできない。

 

告白だって当然できないまま、時間だけが過ぎていく。私から、気持ちが離れていく……。

 

そして、姉様との卒業旅行についていくって言い出して……ルビィと再会して、3年生の抜けたAqoursの練習を見て。小原鞠莉の母とか名乗る女に連れられて、ドタバタしたすぐ後。

 

私は、ついに見てしまった。

 

 

どういうこと……?

 

どうして、ルビィとあの人が抱き合ってるの?

 

それも、あんなに仲睦まじそうに……!

 

ど、どこ触ってるのよ!? 私だって手を繋いだことしかないのに!!スキンシップにしては積極的すぎるし、何よりルビィの方からって……一体、どうなってるの!?

 

 

「うゅ……貴方の身体、あったかいな……♪」

 

「る、ルビィ。ダメだよ……こんなところで、誰か来たら……。」

 

「大丈夫。これは『練習』なんだから♡ もともと、こっちに来てくれたのもルビィとの約束を守ってくれたからでしょ? 本当に嬉しいっ……♡」

 

ルビィ、何を言ってるの……?

 

だって、彼は単に私たちについてきて……

 

そうじゃないなら、一体なんのために……ルビィに逢いに……!?

 

「私は男の子のことが知りたくて、貴方は女の子のことが知りたいんだもんね。……この前だって、理亞ちゃんの気持ちがわからなくって、怒らせちゃったんでしょ?」

 

「そうなんだ。僕がもっと理亞のことわかってあげてたら……あの北海道予選だって、調子が悪いことをもっと早く気づけてれば、って後悔するばっかりで……。ほら、ただでさえ理亞って口下手なタイプだからさ、力になりたいんだ。新しいメンバーのことでも悩んでるみたいだし……」

 

「うゅ……確かに、理亞ちゃんはただでさえちょっと気難しいもんね。でも、一番心を開いてるのは貴方のはずだから、あとちょっとだと思うよ?」

 

そんな……貴方は何も気に病まなくていいのに。わざわざ相談しについて来てたってこと?

 

ぜんぶ、ぜんぶ私が悪かったのに……!なんで貴方が悩まなくちゃいけないのよ……!?どこまでお人好しなの? どこまで……私を好きにさせれば気が済むのよ……!

 

それなら……それなら告白してくれてもいいじゃない!私の想いに気がついてくれてもいいじゃない……っ!

 

私がわかってほしい心はたったひとつだけ。勇気の出ないこんな私のためだっていうなら、それだけ。それだけを—————

 

 

 

「それでね? 貴方に一つだけお願いがあるの……。ルビィと、付き合ってみない?」

 

 

————……ル、ビィ?

 

 

「遠距離恋愛になっちゃう、よね。……でも、函館で貴方に会って、一緒に曲を作って、何度もお話して、時間も経ってから……わかったの。ルビィ、貴方のことが好き!」

 

「ごめんね? 呼び出したと思ったら、突然こんなこと言って……変な娘だって、分かってる。でも、この気持ちに嘘をつきたくないの!」

 

「私たちもお姉ちゃんたちが抜けちゃって、まず自分たちの事だけど……それでも、私も理亞ちゃんの力になれればって思うし……」

 

う……嘘でしょ。

 

2人の関係が進んでるのは分かってたけど、まさかここまでだなんて……。

 

彼に拒絶されるのが怖くて、ずっと間に割って入れなかったのが響いたんだ。悩みを言い出せなくて、姉様の夢を壊してしまった時と同じように……また、私は勇気を出せなくて……!

 

お願い。

 

お願いだから、断って—————!

 

 

 

「……うん、いいよ。僕たち付き合おうか」

 

 

「ほ、ほんと……? これで私たち、恋人同士なんだねっ♡」

 

「僕……ずっとSaint Snowに憧れてたし、函館も大好きだったんだ。同じクラスだった理亞が困ってるなら、助けたいって思って……でも、この前の事でよく分かったんだ。僕がいない方が、きっと理亞は上手くいくんだって……」

 

「そんな……貴方は頑張ってるよ!私や理亞ちゃんに負けないくらい……」

 

「そうであっても、結局あの予選の時……僕は理亞の重荷になったんだ。今だって理亞が思い通りにいかないのは、僕が邪魔になってるかもしれない。初めから、釣り合わなかったんだろうなって、今では……」

 

「それで函館で初めて会った時、あんなに悩んでたんだね……。偶然通りがかったのって、運命だったのかも」

 

「うん。理亞のことはずっと気になってんだけど……ルビィのおかげで、少しは吹っ切れた気がする。ありがとう、えっと……これからも、よろしく?」

 

 

 

—————そう。

 

……そういうことだったのね、ルビィ。

 

全てが分かったわ、全て……。

 

何もかも貴方が私から奪うのね。

 

 

姉様がいなくなった私にはもう誰も近くになんて居てくれないのに、ルビィにはまだまだ沢山の仲間が近くにいてくれる。

 

それどころか……たった一人、私を見てくれたかもしれないアイツすら、ルビィの所に行ってしまう。

 

ふ、ふふふふ……哀れね、鹿角理亞……。初めてできたかもしれないスクールアイドルの友達が、最大の障害だったんだから。

 

 

恋は奪い合い、スクールアイドルは実力の世界。でも……『アイツ』は、『あの人』だけは……

 

誰にも渡したくない。

 

誰にもワタサナイ……

 

 

——————この瞬間、私の中でナニカが壊れた気がした。

 

 

 




後編に続く。実は次回で本作は100話を迎えます。記念回というほどの事は無いのですが、ここまでやれたのも、仕事が忙しくてもモチベが保てるのも、読者のみなさんのおかげです。

念のため書きますが、これは2次創作であって、原作のルビィちゃんと理亞ちゃんは男を巡ってバトルした事実はありませんので、ご了承ください(謎注釈)


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