ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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「……修也。やっぱり、ニューヨークで何かあったのね……?」

それは予想ではなく、確信。

彼はきっとあそこで、μ'sの人たちに誑かされたに違いない。

そうじゃなきゃ、彼らが私を拒否するなんてありえない。

私は彼だけのモノで、彼は私だけのモノでしょう……!?

彼がいてくれない人生なんて、想像しただけでも震えてくる。

穂乃果さんの口ぶりでは、もしかしたら『薬』の事も……?

いや、証拠なんてあるはずがない。

どうやったって、分かるわけがないのに……。

単に、私と彼が『そう言うコト』をしたことからカマをかけただけだろうか。

なんにしても、油断できない相手という以上に、彼が私を突き放したことが苦しい。

私と一緒に夢を目指すんじゃなかったの?

ずっと私のそばにいてくれないの?

私たちって、最高のパートナーのはずよね……?


盗聴器を強く握りしめて、私は穂乃果さんの方を睨みつけながら、今は帰ることにした。

——————————修也は、必ず私のもとに帰ってきてくれる。

信じてるから。





第30話 続く来客

2人が出て行ってから、俺はしばらくベッドに寝転がって、パソコンを眺めていた。あくまでもテレビで放送されるものはテレビのために編集されたもの。

 

μ'sとして、スクールアイドルとして公開するものは、自分たちで作らないといけない。とはいえ、今回に限っては撮ってる映像が本物のプロ相手だから、クオリティでは流石に勝てないだろうが、それでもだ。

 

一応この映像は、PV作成に限って使用してもいい契約になっている、らしい。

 

でも……

 

 

「……やる気なんて起きないよな」

 

 

俺はさっき、2人を拒絶してしまった。

 

恋人ってものは本来よく喧嘩するものだと知識では知ってるから、これですぐ別れるだのなんだのの話にはならないし、俺もツバサも別にそんな気は無い。

 

それでも、絶対的だった関係になんだか溝ができてしまったようで、それはそのまま俺の心の痛みになっていた。

 

「かといって、多分いつかは起きたことだし……」

 

出発前にツバサと結ばれて、そして穂乃果が『あんなこと』をして。

 

こんな関係になってしまった以上、この二人がこうして俺の目の前でぶつかることは、覚悟しておくべきだったのかもしれない。

 

ライブやμ'sのみんなのことに気を取られていたのもあるが、無意識に考えたくないことを考えないようにしていたのだろう。

 

自分の甘さを悔やむが、悔やんでいてもそれこそ何も変わらない。

 

 

「……俺、どうすりゃいい?」

 

天井を見上げながら一人、呟く。

 

「とりあえず、飯でも買ってくるか」

 

 

 

 

腹が減っては戦はできぬ。

 

ベッドから起き上がって、近場のスーパーにやって来た。

 

年末から少し時間が経って、商戦の喧騒もなく、街は落ち着きを取り戻している。弁当半額という時間帯でもなく、客足は少ない。

 

にこもまだあのスーパーでバイトしているんだろうか、などと考えを巡らせていると、カップ麺のうどんがセールされているのが目に留まった。

 

……今晩はうどんでもいいかな。どうせあんまり食欲ないし。

 

そう思って手に取ろうとした時、背後から思いっきり大胸筋を鷲掴みにされた。

 

 

「ひぅっ!?」

 

 

アレな声出たぞ!?あっ、コラ。つまむな!どことは言わないけど筋肉を堪能するなって!手つきがいやらしい。ひょっとして危ない人に後でもつけられてたのか!?ヤバイって。変な気持ちになってくるからヤバイんだって!絶対これは触り慣れてる人の手つきだ。それもこんな人目につくところで……

 

 

「ほほぉ〜……なかなかいいものをお持ちですなぁ〜???女の子みたいな声も出しちゃって可愛いなぁ〜……」

 

 

……この声で犯人はわかった。

 

いいだろう。お前がそうくるなら、俺もこれで返す!

 

 

「いい加減に……しろぃ!」

 

「うひゃあ!?修也くんギブギブ〜〜〜〜!!」

 

 

 

腕をとって、脇固めで抑え込む。

 

で、抑え込まれた男の胸を触って喜んでる変質者は何を隠そう、我らがμ'sの一員。

 

 

「なかなか修也くんも手強いなぁ……堪忍してぇ……?」

 

 

上目遣いで顔を真っ赤にして、目元をうるうるとさせながらこちらを眺めてくるスピリチュアル系わしわしガール、東條希だった。

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

「希が変なことするからスーパーの人に怪しい目で見られたじゃないか」

 

「え?修也くんが変態チックなのは今に始まったことじゃ……ああ、やめてやめて!いたいけな乙女にあの技2回目はやめて!?」

 

「まったく……俺じゃなかったら通報されてたかもしれないんだぞ。それに、μ'sは今ただでさえ人気急上昇中なんだ。くれぐれも謹んでくれ。あのスーパー近くて便利なんだし」

 

「? 修也くん相手だから、安心してわしわしできるんやん?それに、使えんくなったらうちの部屋に引っ越せばいいよ♪」

 

 

冗談なのか本気なのかわからない。確かに俺も希も一人でいることは多いが。それはもう同棲だろう。

 

あのスーパーからだと、途中まで帰り道が同じだからだろうか。

 

俺たちは自然と、他愛ないことを会話しながら帰路についていた。

 

 

「でも、こうして帰り道を歩ける機会も少なくなってしまうかもなぁ。もうすぐ卒業やし……」

 

 

……その通りだ。3年生はもうすぐ卒業する。

 

その事実はどう足掻いても、どんな理想を持っていても、変えられはしない。

 

 

「3年生がいなくなって、修也くんはμ'sはどうなると思う?」

 

「それはみんなで決めないとダメだろ。スクールアイドルって言ったって、同じユニットの名前を使い続けたり、メンバーの変更が起きて残ることだって、珍しくは無い。まぁ、にこの受け売りだけど」

 

「……うん、それはそう、なんやけどね?」

 

 

希が言いたいことの意味は……本当はわかってる。だけど俺は今、あえてわからないふりをしていた。μ'sはこの9人でこそ、μ'sだ。誰一人欠けてはいけない。

 

だとしたら、3年生がいなくなっても、それでもμ'sと呼んでいいのだろうか?名前を変えてでも、みんなまだスクールアイドルをし続けるんだろうか?

 

μ's、か……。

 

 

「……そういえば、μ'sって名前も希がつけたんだったよな。どういう意味なんだっけ?」

 

「やっぱり覚えとらんよね……ギリシャ語で、音楽の女神様。石鹸じゃ無いからね?」

 

「? あ、ああ。石鹸についてはわかってるけど。音楽の神様、か」

 

 

女神様ときたか。

 

確かに、みんながライブを、スクールアイドルを本気で楽しんでいるところは。

 

それをたくさんのファンの皆が支えている姿は、音楽の神様がついているんじゃないかとすら思えてくる。

 

 

みんなが夢を叶える姿は、本当に奇跡のようなサクセスストーリーだった。怪我以来落ち込みがちだった俺が熱くなりすぎて、あんなに嫉妬してしまうくらいには。

 

そしてきっと、『おわりのとき』までそうなのだと思う。μ'sが解散するかどうかについて。μ'sの名前をどうするかについて……ラブライブ本選までには、本気で考えないといけないだろう。 

 

……しかし、『やっぱり』って。俺は希から由来について聞いたことあったかな?なんだろう、記憶の片隅にちょっと引っかかってるような……。

 

 

「ほら、お家ついたよ?」

 

気づけば、近くの俺の家まで到着していた。

 

考え事をしすぎて、少し上の空だったみたいだ。

 

 

「ああ。ありがとう希。それじゃあまた学校始まったら練習頑張ろうぜ」

 

 

「うん。まだラブライブ!もあるし。……どうかした?」

 

 

「……どうかしたって、希こそなんで突っ立ってるんだ」

 

 

不思議なことに、別れの挨拶をしたのに希は玄関の前にとどまっている。

 

まるで俺が鍵を開けるのを待っているかのように……。

 

「なんでって。ニューヨークの続き。穂乃果ちゃんから修也くんがまた悩んでるって聞いてたし、今晩はおうどんさんなんやろ?ウチも泊まっていくから♡」

 

な…に…!?

 

穂乃果の奴、別れた後メッセージを希に送ってやがったのか……!?油断してた。その可能性は考えてなかった……!

 

「ちょ、ちょっと待てよ!?確かにニューヨークの時はああしたけど、変なことなんてしてないって!」

 

「ん〜〜〜???何を想像しとるんかなぁ〜……?ウチは『そういう変なコト』だなんて、一言も言っとらんけどぉ〜?」

 

 

くそ、ハメられた……!

 

やっぱり口では俺は女性に勝てないのか!?

 

どう転んでも将来、女性の尻に敷かれる未来しか見えなくなってきたところで、トドメの一言。 

 

「もし断るんなら、ご近所さんに『この人にスーパーで暴行されました〜』って叫んでまわってもええんやで〜?」

 

「お、俺の完敗だ。だからそれだけは許してくれ……」

 

 

 

 

だけど、一度鍵を開けてみると、ドアが開かない。

 

それはつまり……開いてた?

 

希の頭にも?マークが浮かんでいる。

 

 

「あれっ、お家の鍵開いとるやん?」

 

「……もしかして、また穂乃果か?アイツ母さんから鍵預かってるみたいだし……」

 

 

穂乃果も一件もあり、さっき出る時は念入りに鍵を確認してるから、かけ忘れたってことはあり得ない。それに穂乃果が戻ってくるとしたら、多分さっきの時点で戻ってきてるはずだ。

 

 

「もしかしたら、空き巣とか不審者かもしれない。一応そこで待っててくれ。俺が先に入るから」

 

「うん。危なかったら、すぐに戻ってきてね?」

 

 

玄関を恐る恐る開けると、よく磨かれた真っ黒い靴が見えた。

 

綺麗に揃えて、此方につま先をつけてある。

 

 

 

今日はいろいろと驚かされているが、一番いやな気分になった。

 

……俺はこの靴をよく知ってる。

 

我が家に入る人間で、この靴を履いているのは一人しかいない。

 

 

一瞬躊躇ったが、覚悟を決めて俺はリビングに入る。

 

 

「……親父、帰ってたのか」

 

そこには、晩飯の準備を進める……俺の大嫌いな親父が帰ってきていた。

 

向こうは無言で、そのまま目と目が合う。

 

 

……今日はつくづく、たくさん家にお客さんが来る日だと、改めて思った。

 

 

 




……彼は確かに私の思惑通り、ツバサさんと距離ができた。

でも、『彼女』である私まで遠ざけようとするのはどうしてなの……!?

ニューヨークで私たちの絆はまた強くなったよね?

みんなもどんどん告白して、むしろ結びつきは喧嘩する前から強くなってるはずだよね……!?

それとも、まだツバサさんに気があるって言うのかな……。

だったら悲しいけど……まだまだ頑張らないとね。

しゅー君が『元に戻ってくれる』まで。

あんな人よりも、私たちの方がずっとしゅー君の事を想っているんだってわかってくれるまで……。

あの人をにらみ返して、私も今日は家に戻る。

とりあえず、希ちゃんに助けてもらおうかな?

『みんな』でしゅー君を愛したいもんね……♡

ああ、楽しみだなぁ……♪
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