ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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「お願いします神様仏様東條希様……!」

「……亜里沙?その呪文なに?」

「このお願いの仕方をすればきっと上手くいく!って修也さんが言ってたの!」

「それ絶対冗談だと思うけど……112、113……118!?あった!合格だー!」

「私もあった!合格だよ雪穂!これで私達μ'sだね!」

「うん。……μ's、かぁ」



第34話 迷いはどこから

 

「しゅー君聞いた?雪穂が音ノ木坂受かったんだって!」

 

「うちの亜里沙もよ!」

 

「ああ。さっき俺にもメッセージが来たよ。穂乃果は来年から同じ学校だな」

 

突然だが、嬉しいニュースが入った。

 

雪穂と亜里沙の仲良し妹コンビが、音ノ木坂を受験して合格した。まるで自分のことのように喜ぶ二人に、俺も自然と笑顔になってしまう。

 

……っていうか。絵里に至っては違う学年なのに教室まで押しかけてきたのか。まぁ、それほど嬉しかったということなのだろう。

 

 

「それでねそれでね!今日なんだけど、μ'sの練習見に来たいって!」

 

 

———————……なにぃ!?

 

 

 

 

 

「わぁ……本物のμ'sの練習風景だぁ~!!」

 

「亜里沙、私とは毎日会ってるでしょ? それに今はランニングなのに、大げさなんだから……」

 

「μ'sのみなさんがいて、ホントの練習してるところは違うんだもーん!あっ海未さん!握手してくれませんかー!?」

 

「わ、私がですか!?今汗かいてますしちょっと……」

 

 

……そんなこんなで、いつの間にか雪穂と亜里沙は音ノ木坂に来ていた。

 

今日の練習はグラウンドでランニングから始まっている。

 

2月となれば、風の通るこの場所はかなり肌寒い。こういう寒い中で体を動かすのは抵抗力をつけることにもつながる。

 

とはいえ走っていれば身体は温まってしまう。こういう時は、寒暖差で汗が冷えて風邪をひかないように注意しなければならない。

 

 

「ごめんなさい修也さん、大事な時期なのにお邪魔してしまって。亜里沙がどうしても、って聞かなくて……」

 

「いいさ。合格祝いにしては安すぎるくらいだ。俺じゃなくて、実際に練習するみんながOKしたんだし、ゆっくり見てってくれよ」

 

 

実際、大したものを買ってやれる経済力もないのは内緒だけど……。

 

亜里沙ははしゃぎまくってテンションが振り切れているが、雪穂は相変わらず落ち着きがある。とはいえ、目が輝いているのはバレバレだ。練習を見に来たのに、練習を中断させていいのかというツッコミはしないでおこう。

 

自分が大ファンなアイドルグループの練習風景に出会えるとなれば実際、このくらいで普通なのかもしれないな。

 

……あれ、そうなると。μ'sの皆をこんなに間近で見て、告白されて、ツバサが彼女っていう俺って、とんでもなく罪深い男なんじゃ。

 

ツバサに刺されるより先にファンに刺されそうだな……。

 

 

「ねえねえ修也さん!せっかく合格したんだし、ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」

 

「? 何だ」

 

唐突に亜里沙がこっちに来て、なんだか期待に満ちた目で見てくる。

 

なんだろう、出来ることならなんでもしてやれるけど……。

 

 

「私もμ'sに入れますか!?」

 

「μ'sに……?」

 

 

μ'sに、新メンバー?亜里沙が?

 

 

……少し考えたが、確かに普通のスクールアイドルならよくあることだ。

 

亜里沙に不満があるなんてことは、勿論ない。

 

むしろ、彼女ならきっと、今のμ'sメンバーに負けないスクールアイドルになれるっていう確信はある。

 

それでも。

 

なんなんだろう、言葉にした時の。この胸の違和感は……。

 

 

 

「修也さん?私何か、変なこと聞いちゃいました?」

 

 

考え込んでしまった俺を心配してか、亜里沙は不思議そうに俺の顔を見つめてきた。

 

 

「ああいや、何でもないよ。ちょっとポジションとか、色々考えてただけさ」

 

 

咄嗟に言い訳をして、その場を取り繕う。

 

幸い、亜里沙もなーんだ、と納得してくれた。

 

結局2人は1時間ほど練習を見学して、ホクホク顔で帰っていった。

 

 

 

 

 

練習は再開している。

 

女子高にしては結構整備されてるグラウンドを走っていると、後ろから花陽たち1年生の会話が聞こえてくる。

 

 

「卒業、するのよね……」

 

「亜里沙ちゃんはμ'sに入りたいって言ってるんだよね?」

 

「うん、ずっと前から。雪穂ちゃんも興味あるみたいだし……」

 

「どうしよう、ちゃんと答えてあげないといけないよね」

 

 

逆に、前を走る2年生の会話も聞こえてくる。

 

 

「雪穂にさっき聞かれちゃったんだ。3年生の人たちが卒業したらメンバーはどうするの?って」

 

「それは……穂乃果はどう思うんですか?」

 

「スクールアイドルは続けたいよ。歌うのも、踊るのも大好きだし。でも、修也くんもどうなるかわからないし、何より……」

 

「μ'sのままでいいのか、って話だよね?」

 

 

……やっぱりみんな、気にしてるよな。さっきのことも。

 

 

 

「……絵里と希は、どう思う?」

 

 

近くを走る絵里と希にも聞く。

 

当の卒業する3年生の意志も、もちろん大事なはずだ。

 

だけど、帰ってきたのは明確な答えではなかった。

 

 

「うーん……それは、ウチらが意見していいものなんかなぁ?」

 

「私も希と同じ。……それを決めるのは、穂乃果達だと思うの」

 

 

思わず前にいた2年生たちも走りながら振り返る。

 

 

「私達3年生はどうやっても卒業する。μ'sに残ることはできない……。だから決定権なんてない。私たちで答えを出すべきじゃない……。決めるのは、残ったみんなだと思うの」

 

 

確かに、絵里と希が言うことはわかる。実際、残る6人からも特に異論は出てこない。

 

『私たちで決めなければならない』……。そんな決意と責任から、少し気が重くなっているようだ。

 

これが普段ならいいけど、今は練習中だし、ランニングだって気を抜けばあっさり怪我をする。

 

一度集中の糸が切れてしまった以上は、どうするか……。

 

 

 

「続けなさいよ。遠慮なんてしないで」

 

 

……考えていると、俺の隣から全員に聞こえるように声が聞こえた。

 

今、俺の隣を走るのはにこだ。

 

誰が隣を走るかは事前にじゃんけんで決めてたらしい。……俺から声をかけようとしてタイミングを掴めなかったから、結果オーライというところか。

 

おそらく、俺と同じ事を考えていたのだろう。それだけで少し引き締まって、みんな走るペースがまた元に戻り始めたのがわかる。

 

自己中心的に見えて、こういう部長らしいフォローもできるのは、にこの良いところだ。

 

もしかしたら、にこ自身もこうしてランニングをしながらの方が話しやすいのかもしれない。彼女にとってもデリケートな話題だろう。

 

しかし、遠慮か。確かにそう見えるけど…

 

「みんなは別に遠慮っていうか、たぶん喪失感に悩んでるんだよ。3年生の存在が大きかったってことさ。勿論にこのことも」

 

 

μ'sは、一人だって欠けて良いメンバーなんていない。俺は厳密にはμ'sじゃないけど。それでも俺がマネージャーを辞めようとした時。みんなは大切な仲間が欠けるものとして悲しんだり、怒ってくれた。穂乃果が部活を辞めるといいだし、ことりが留学をしそうになった時もそうだった。

 

決して過ごした時間は長くはないかもしれないけど……それだけの強い絆で繋がっている。

 

……みんなには『仲間』以上の感情を持ってもらってたわけだけど。

 

さっき亜里沙の言葉に感じた違和感の正体も、μ'sのメンバーのイメージがこの9人で固まっていたせいだと、今更気がつく。

 

 

「おだてても何も出ないわよ?メンバーが『卒業』しても、仕方なく『脱退』しても、名前は変えずに受け継いでいく。それがアイドルグループだって、前にも言ったじゃない」

 

「そういうスクールアイドル達が、別に仲間を大切にしてないって言うわけじゃないけど。むしろ大切な仲間だからこそ、悩んでるっていうか……」

 

「それが遠慮なのよ。……そうやって名前を残してもらえれば、むしろ私たちも安心して卒業できるってもんよ。あなたも含めれば、7人も残るんだし。……わかった?」

 

 

スクールアイドル自体、決して歴史が長いわけではない。伝統らしい伝統もあまりなく、学校やグループごとに違うスタイルや運営がなされている。事実、グループ名を大事にしたり、メンバーが卒業とともに入れ替わるところも多いとは、他ならぬにこから習ったことだ。

 

 

それにしても、『安心して卒業』、か。結局彼女が何に悩んでいるのかは分からないし、むしろ疑問は深まっていく。

 

……にこは何を、誰のことを心配してるんだ?

 

 

「にこは……みんなでμ'sを続けられるなら、やりたいか?」

 

「当たり前でしょ!……μ'sとみんなはと、そして貴方は……私にとって、家族と同じくらい大切な仲間だもの。μ'sの思い出があれば、私はまだまだ、これからも頑張れるわ」

 

「……それを聞いて安心したよ。よし、体も温まってきたし、ペース上げるぜ!」

 

「あ!?待ちなさいよ!足の長さが違うんだから~!」

 

 

湿っぽい話は切り上げるために、考えをまとめるために、練習にもう一度集中するために、今は走る。

 

 

……でもさ、にこ。俺は前に、ツバサから聞いたことがあるんだ。

 

『大学に行っても、プロにならなくても、スクールアイドルグループとして在学生と一緒にやるところもある』って。

 

……それを、彼女が知らないはずはない。俺よりずっとスクールアイドルに詳しいし、一人でも部活をやってきてたんだ。

 

花陽も詳しいから知ってるかもしれないけど、今はそのことを考える余裕がなくて、気づいていないのかもしれない。

 

ならやっぱり、俺が聞かないといけないよな。

 

 

どうしてそのことを隠すのか。どうしてμ'sを続けてほしいと思ってるのか。それをはっきり聞き出したい。

 

しかし、さっきみたいにみんながいる場所ではきっと話しづらいだろう。

 

だったら、絵里の膝のことを聞き出したのと同じ手を使うか。

 

 

 

「にこ、練習終わったら時間あるか?」

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

「確かに、場所は何処でもいいって言ったけど……」

 

「なによ?お言葉に甘えさせてもらっただけよ。……文句あるの?」

 

 

……話がしたいと言って連れてこられたのは、にこの自宅。前にも一度来たことのある、あの場所だ。

 

にこがドアを開けると、必然的にあの元気な声が聞こえてくる。

 

 

「お帰りなさいお姉さま!……あれ!?まさか、今日は修也さんもご一緒なのですか?」

 

「あ、ああ。こころ久しぶり。空港以来だな」

 

 

丁寧にこころが出迎えに来てくれる。続いて奥からここあと虎太郎も出てきた。

 

 

「あっマネージャーさん!遊びに来たの?」

 

「……まねーじゃー?しゅーや?」

 

 

おお、虎太郎が俺の名前を憶えてくれてる。見ないうちに大きくなったんだな。お兄さんちょっと感激だ。

 

とまぁ、それは置いといて。ちゃんと事情を説明しないとな。ママさんにもあいさつしたいし。

 

 

……って、にこに場所を指定されたのだから、上手く説明できないな。それとママさんは?

 

 

「今日親はいないわよ。私と妹たちだけ」

 

 

えっ?

 

 

「アンタ、穂乃果やあの女や希からも手料理食べさせてもらったらしいじゃない。私のも食べなさいよ。……日頃の感謝だから。その後でゆっくり話しましょ」

 

 

どうしてみんなこんなに俺に食わせようとするんだろう。

 

そんなに食い意地張ってるように見えるのかな……。

 

 

本当は、以前に部室で何気なく俺が『女の子の手料理っていいよな』とつぶやいたことをみんな覚えていたというのがあるのだが、俺がそのことを知ったのはラブライブが終わった後のことだった。

 

 




にこの家族もA-RISEに並んで書いてて結構楽しいです。

ヤンデレはまず胃袋から攻める。この展開は2期4話の「手料理を食べさせる相手」というセリフを受けてたり。

にこ編は、せっかく主人公がいるのですし、本編とは少しだけ違った未来を用意したいと思いながら書いてます。大筋は変わらないですけども。


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