ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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4th両日参加決定しました。友人には感謝しかありません。

というか、なんとか4thまでには完結させたかったのですが、無理っぽいですね…


第38話 終わりは新しい始まり

「にこちゃん!」

 

 

「真姫……!?」

 

 

 

真姫だけじゃない。みんなも来ていた。

 

 

「ごめん、しゅーくん。みんな我慢できなくて、追いかけてきちゃた……」

 

「事情は絵里と希から聞きました。ごめんなさい、にこ。私たちは貴方の悩みを知らないで、ああ言ってしまって……」

 

 

絵里と希も申し訳なさそうにしている。いくらなんでも隠し切れなかったのだろう。

 

それでみんないてもたってもいられなくなって、追いかけてきたんだ。

 

 

「なんで……なんでみんなが謝るのよ!悪いのは私じゃない!一人で悩んで、身勝手に押し付けて!最後はこうして、一人で逃げだして……!」

 

「……独りじゃないよ。俺もいる。こうしてみんなも来てくれただろ?俺だって一度は逃げたんだし。みんな、同じことを繰り返したくないんだ。にこには、こんなに想ってくれる仲間がいるじゃないか」

 

 

それに、またその先で新しい仲間と出会って、アイドルグループになるかもしれないし。

 

ちょっと寂しいけど、時間は止まらない。俺もにこもμ'sのみんなも、先に進んでいかなくちゃいけない。

 

 

「にこちゃん、私……スクールアイドルを続ける。μ'sじゃないけど、むしろμ'sよりすごいグループになってみせる。だからにこちゃんももっとすごいアイドルになってよ!それが本当に私たちの力にもなってくれるわ!」

 

「お互いに縛りあうじゃなくて、高めあうのが大事なのだと思うの。μ'sの名前がなくたって、私たちの仲なら、困ったときはいつでも助けに行くわ!」

 

「にこちゃんなら絶対すごいアイドルになれます!だから自信を持ってください!」

 

 

その背中を押すのも、すぐ傍でなくてもずっとついていてくれるのも、今ここにいるみんなだ。

 

にこの瞳から、少しの間止まっていた涙がまた、溢れだす。

 

 

「……本当に、終わっちゃうんだね」

 

「ううっ……泣かない約束なのに……!でも、もう……!」

 

 

それはみんなも同じだ。μ'sが、終わる。

 

楽しかった時が、パーティのような夢の時間が本当に終わってしまう。

 

でもそれは、楽しい時間で繋がった関係が消え去るということじゃない。その大切な時間を宝箱に入れるということでもあるはずだ。

 

誰にも穢されない、自分たちだけの……どこまでも伸びてゆく誇らしさのままで。

 

 

「よーしみんな!にこ部長の引退とプロデビュー記念に、胴上げしよう!」

 

 

俺も実はちょっと泣いてたけど、それを誤魔化すのも兼ねて大声を出した。

 

みんなも一瞬驚いたけど、すぐに意図を理解して、にこをわちゃわちゃと担ぎ上げる。

 

 

「ちょ、ちょっと!?何するのよ~!?」

 

「何って、胴上げに決まってるでしょ?」

 

「みんな落とさないでね!行くよ!せ~のっ!」

 

 

夕陽の沈みかけたその時間に、にこは何度も宙を舞っていた。

 

体重軽かったし、本当によく飛んだ。

 

降ろされたにこは肩で息をしている。多分怖かったんだろうな……。

 

 

——————————でも、涙の意味が変わり始めているのは、にこの自然と上がる口角で気づいている。

 

 

 

「にこちゃん!本当におめでとう!」

 

「部長として本当に誇らしく思います」

 

「絶対に応援するね!絶対トップアイドルになってね!」

 

 

「そんなの……そんなのわかってるわよ!修也に言われなくたって!!アンタたちも……、本当に、余計な、お世話で……!!」

 

 

涙はうれしい時にも流れて、痛みを消してくれるんだ。

 

みんなの心からの励ましの言葉に、感動しているのが伝わってくる。

 

 

「いいわ、見てなさい!みんなをバックダンサーにするくらいの勢いで、トップアイドルへの階段を駆け上る矢澤にこのサクセスストーリーを!」

 

 

ちょっと前まで悩んでたことが今ではなんてことない、みたいに立ち上がる。

 

……俺の憧れた、彼女に戻ってくれた。

 

いや、戻ったんじゃない、もっと先に進んだ。……俺も負けてはいられないな。

 

 

「サクセスストーリー?その前に卒業できなくて、転落人生にならんようになぁ、にこっち~?」

 

「その自信は相変わらずどこから来るのかしら。……でも、元気になってくれてよかったわ」

 

「結構にこちゃんも単純だにゃ~!」

 

「アンタたち、こういう時くらい普通に励ませないの!?あっ、逃げるなー!待ちなさいよー!」

 

 

悲しいムードは終わって、笑い声に包まれている。

 

数日ぶりにこんなに元気なにこを見た。からかうメンバーを追いかけまわして、じゃれあっている。

 

この場面だけ切り取れば、μ'sが解散するなんて信じられないかもしれないな……。

 

そんな風に考えながらコンクリートの上に座っていると、喧騒を抜け出した穂乃果が近づいてきて、隣に座った。

 

 

「ありがとね、しゅー君。またみんなの大変な時、助けてもらっちゃった」

 

「みんなにはお世話になってるから、このくらい当たり前さ」

 

「そう言って助けてくれるしゅー君だから、私は好きになったんだよ?」

 

 

沈みかけの夕陽を眺めながら、久々に二人だけで語り合う。

 

やりきった感はあるし、リラックスもしているが、心のどこかで緊張を捨てきれない。

 

穂乃果の愛情はうれしいけど……俺はそれに応えることはできないからだ。

 

 

「私ね?しゅー君がいてくれて、ニューヨークでもあんな凄いライブをさせてもらったから。しゅー君の助けで、一つでも多くライブができたから、にこちゃんのプロにつながったと思うんだ」

 

「買いかぶりすぎだよ。にこの実力なら、いつか俺なんていなくてもなれたさ」

 

「でも、高校卒業と同時だったかはわからないでしょ?μ'sも解散しちゃうんだし。……本当に、ありがとう」

 

 

……俺は、何かをいい方向に変えられたということだろうか?自分にそんな力はないと思ってるから、お世辞でもそう言われると嬉しい。

 

 

「にこちゃんに言ってたこと、私もわかるなぁ。私だってみんなの力を借りてても、やっぱり自分の魅力でしゅー君に振り向いてほしいもん。やっぱり私たち、気が合うよね♡」

 

 

ある程度は、聞かれてるよな……。

 

どうすれば、こうなってしまった穂乃果を『元に戻せる』んだろうか。

 

 

「しゅー君も、今はまだ迷ってるんだよね?……でもにこちゃんみたいに、最後には、元のしゅー君に『戻ってくれる』って、信じてるから……待ってるよ♪」

 

そう言って、また光のない瞳で俺を見つめてから。穂乃果はまた俺の手を引いて、みんなのじゃれあいに混ざっていく。

 

 

『元に戻す』、か……。

 

にこを遠めに眺めながら、自分の中で考える。

 

俺が元に戻らないように、にこが前に進みはじめたように。

 

本当にそうする必要があるのかな……?

 

穂乃果自身にも前に進んでほしい。時間は止まることはないんだから。

 

 

 

……またあのシンガーのお姉さんに会いたい。

 

そうすれば何かが解決するような気がしていた。

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

あの後、みんなで証明写真機に10人詰め込んで、無理やり記念写真を撮った。

 

あの内装が広いタイプじゃなかったら絶対全員は入らなかったって。いや、そもそもあれを全員入ったと形容していいのか……。

 

手元に残った写真のぎゅうぎゅう詰めっぷりに、我ながらちょっとヒく。

 

「そういえば、アイドルの先生として貴方に一つだけ、教えられたことがあったわ。……夕方に、『ラブライブは通過点』って言ってたわよね」

 

にこと一緒に暗くなった帰り路を歩いていると、ふとそんなことを聞かれる。

 

「夢をかなえるってことは、なった瞬間終わりじゃないのよね。なってから、最高の形で追えるまでが夢。……気づかせてくれて、ありがと」

 

「それって俺の場合、パイロットになれても……親父みたいにラストフライトまでしっかり飛び終える、って感じか。あんまり意識しないで言ったんだけど、俺も自分で自分に教えられたな」

 

「私もアイドルになったからには、今度は最高の終わり方を目指すわ。……μ'sみたいに、ね」

 

確かによく考えてなかったかもしれない、夢を「叶えた後」については。

……これからは俺も、夢をかなえるって言うときは、終わりの時まで意識することにしよう。

 

「あれっ……?じゃあ、にこはどう終わる気なんだ?その、アイドルについて」

 

となれば自然と気になるのがそのあたりだ。

 

「ああそれ?……貴方の意見も聞きたいのよね。ほら、やっぱり私も結婚したり子供が欲しいと思うこともあるし」

 

「俺の意見?うーん……参考にならないとは思うけど。どうなんだろうな、育児はまあ夫もアリだとして、アイドルの恋愛について、寛容な意見も最近増え始めてるし……。女優とか声優も含めて誘われたんだろ?そっちなら大丈夫だとは思うけど」

 

アイドルだと難しいかもしれないが、その2つなら問題ないだろう。にこ自身も最初は声優から誘われてる、って言ってたし。

 

……しかし、にこが結婚して、子供か。

 

妹や弟たちを見ていると、きっとにこが引退しているにしてもしてないにしても、素晴らしい家庭を築けることだろう。うちに当てはまるかはわからないけど、夫婦の仲の良さの秘訣は子供にもあるって聞いたことあるし。

 

「そう。修也はそういう考えなのね……。そういう面で引退するならやっぱ30代かもしれないわね。育児に専念したいし」

 

「やっぱ家族想いだなにこは。俺も家庭や子供を持ったら、うちの両親みたいなことにならないようにしなきゃな」

 

「そうね。お互い仕事で疲れて帰ってきて、なのに笑顔が待ってない家族なんて寂しすぎるもの」

 

 

……? なんか会話がかみ合ってない気がするけど。

 

でも俺の疑問が口から出るより前に、いつの間にか目的地についていた。

 

 

「って、着いたわね。さ、あがって?」

 

 

にこの家だ。

 

理由?この前の約束通り、今晩のラブライブ特番を見るために決まってるだろう。アビーさんからもわざわざ日本語で「絶対見るよーに!」とメールが来ていた。

 

 

何気なく玄関を開けると、ぱんぱーんとクラッカーの音が鳴り響く。

 

……うん、驚いた。なんか天井にはくす玉とか開いてるし、パーティ会場みたいな装飾がそこら中に取り付けられている。こころとここあと虎太郎が、姉に負けず劣らずのにっこり笑顔で出迎えてくれた。

 

とはいえ、まだ小さい妹たちだけで天井に手が届くとは思えない。これはつまり……

 

 

 

「あらあら修也くん!おかえりなさーい!そしておめでとう!!」

 

 

……やっぱりにこママだ。

 

なんだかやけに嬉しそうにしているのが気になる。

 

この人が出てくると、嫌な予感しかしないんだけど……。




せっかく主人公という異物があるのなら、何か本編より一つだけでも良い要素を入れたいという思いがあり、にこを卒業後すぐアイドルにしようと思いつきました。

おかげで尺を圧迫してしまいましたが、どうかお許しを……




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