ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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にこは割と好かれる側にとっては良心的なヤンデレ……?


第39話 またひとつ、夢が生まれる

「あらあら修也くん!おかえりなさーい!そしておめでとう!!」

 

 

……やっぱりにこママだ。

 

 

空港の時もそうだったけど、この人俺ちょっと苦手なんだよな。その……俺とにこをくっつけようとしてるし。いや俺も彼女のことはそりゃ憎からず思ってるけど、ツバサがいるし……。

 

でも、何がおめでとうなんだ?今晩のテレビ出演のことだろうか。

 

 

「ママ、ありがとう!お祝いしてくれて……!」

 

「いえいえ、義理の息子の誕生と、娘のテレビ&プロデビュー祝いだもの。このくらいはしないとね?」

 

「ちょ、ちょっとママ。それは気が早いわ。告白もまだなんだから……」

 

 

なんか、俺のいないところで話がついてるんだけど……。そしてなにより、感動話で忘れがちだったけど、もしかしてこのパターンは……。

 

にこに食卓まで連れていかれて、ケーキの目の前でストップする。明らかに2回りくらい大きくて、結婚式とかで見覚えのある高さになっている。少なくとも、この人数で食べるものとしてはデカい。

 

 

「修也……正直になるわね?私、貴方のこと凄く好きよ。男の人として愛しています。お互いに夢をかなえて、例え距離は離れ離れになっても……。ずっと、私の支えになってください」

 

 

……!?

 

にこの、け、けけけけけけけ敬語……!!!!!!

 

アイドルぶりっ子してないときのコレは、破壊力が高い。しかもいつになくそ、そんな表情されたら……!

 

や、やられた。いつものパターンだろうと失礼ながら油断してた。今確信した。にこは絶対将来女優でもやっていける。

 

……でも俺以外にこの表情見せたくないな、あんなテレビに出るイケメンに……。女優とかになったらキスシーンとかも……。彼女なら身長差とか映えるだろうし。

 

と、壊れかけた俺の思考は、妹たちがどこからかもってきたドンドンパフパフで引き戻された。

 

「お姉さま、修也さん、おめでとうございますー!これで新しい家族の誕生ですね!!」

 

「お姉ちゃんさすがー!マネージャーさんとついに結婚だね!」

 

「……きせーじじつ?」

 

「二人とも本当におめでとう!母親として本当にうれしいわ~!さぁ、ケーキに入刀!さあ早く!!早くしなさいにこ!!!ビデオ回してるから!!!!」

 

おい虎太郎、その言葉何処で習った!?今すぐ忘れなさい。できればこの出来事も。

 

ママさんも妹たちも何してくれてんの!?ママさんに至っては目が血走ってるし。

 

つーか初めからこれが狙いなのか?既成事実化なのか!?

 

驚きのあまりオロオロする俺に思いっきり飛びついて、首に手を回して抱きつく。そのまま啄むようにほっぺたにキスされて、耳元で囁かれた。

 

「ずっと傍にいてくれるんでしょ?……離さないでね?トップアイドルになっても、みんなに笑顔を届けても……矢澤にこっていう一人の女の子は、ずっとあなたのこと見てるから」

 

にことは間近で、真っ直ぐ見つめ合う形になる。

 

見慣れてきてしまった目だ。ドロリとした愛情に熔けた光のない瞳……。

 

俺の『傍にいる』がそんな風に解釈されてたなんて。自分の迂闊さで自分の首を絞めるのは俺の運命なのか。それとも、初めから惚れられていた時点で詰んでいたのか……。

 

 

「今晩はお赤飯にケーキに私限定でお酒!さぁみんなでお祝いよ~!」

 

 

にこママの元気そうな声が響いて、結局ママさん以外ノンアルの、パーティというより宴会が始まった。

 

にこママの酒を断る口実にいろいろ苦労したけど、保険の授業の『アルコールにNO!』って感じのアレ、意外と役に立つもんだな……。

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

それが終わってから少し経って、番組が放送される直前。俺とにこは別の部屋のテレビの前で二人で話していた。

 

この番組は二人だけで見たい、というにこの『お願い』を、家族のみんなが受け入れた形だ。

 

あの視線とか「孫はいつかしら?」なんてママさんの言葉を誤魔化すのとか、俺も苦労していたので有難いと思う部分もある。

 

「さっきはごめんなさい。本当のことを言うと……矢澤家伝統の恋愛術なの。ママも昔はライバルが多くて、ああいう強引な方法でパパをGETしたらしいわ」

 

それはいいんだけど……いや、よくないけど。告白以降、めちゃくちゃスキンシップが激しい。

 

身長差から、座っていても自然と俺の肩ににこが頭を乗せる形になる。

 

先ほどから手はさわさわと俺の身体をまさぐっていてくすぐったいし、落ち着きながらもにこの目は何か危ないスイッチが入ってるように見える。

 

 

花陽とかもそうだけど、料金とろうかな……なんて冗談も思いつくくらいには。でも嬉々としてお金を持ってこられたら困るのでやらない。真姫あたりに財力持ち出されたら勝てないから。

 

「でも信じて。私があなたのことを好きなのは本当のことよ。……貴方がパイロットになって、私がアイドルになれたら……なかなか会えなくなるのはわかってる。それでも、傍にいてほしいの。ずっと」

 

「別にその気持ちを疑ってるわけじゃないよ。でも、2人だからいうけど……その、俺がみんなに告白されてることも、彼女がいることも知ってるんだろ?」

 

そこはずっと俺の抱いていた疑問の一つだ。みんなは知っていて、何故そこまで俺と……

 

「えぇ。……それでもよ。みんな修也のことが本当に好き。だからこそ修也が綺羅ツバサと付き合ってるなんて言われたことと、マネージャーを辞める、って言い出したことが重なって、自分を抑えきれなくなったの」

 

私もだけどね、とちょっぴり自虐的に零す。

 

「誰かから聞いてる?あの女が貴方を薬まで使って私達から奪おうとしたって話」

 

「ああ。聞いてるけど……俺はまだ信じてないからな。自分の彼女を疑いたくない」

 

「その気持ちは当然ね。でも……私たちが修也の身体と心を大切に思うあまり、っていうのも理解して欲しいのよ」

 

……にこはこの辺、他のメンバーに比べてちょっとマトモみたいだ。だからつい俺もできなかった相談してしまう。

 

「こういうの聞くのは『甘えてる』かもしれないけどさ……にこは、俺がどうするべきだと思う?」

 

今の俺の状況は決して何もよくなってはいない。どれだけ自分の中の問題が解決しても、どれだけ決意を固めても、みんなの愛は小康状態というだけだ。ツバサと穂乃果との関係を、一体どう収めればいいのか……。

 

「……自分で告白しておいてなんだけど。貴方の立場の難しさもわかってるつもりよ。まさかこの世にμ'sとA-RISEのリーダーっていう、スクールアイドルの二大巨塔に愛される男がいるなんて、漫画みたいよね。世間に知られれば、あなたのことを刺しにくる人達は少なくないと思うわ」

 

怖いこと言うな。でも、確かに従姉妹や他人には絶対話せない。スクールアイドル的な意味だけじゃなく、倫理上の意味でもだけど。

 

「どうするかは自分で決めなさい、っていうのは簡単だけど。正直、そんなに気にしなくていいと思うわよ。多少暴走してても、みんな貴方のことが好きな気持ちに何の偽りもないの。自分の想いが抑えきれなくて告白した。だから貴方も、自分の気持ちに嘘はつかなくていいんじゃないかしら」

 

「自分の気持ちのままに……か。確かに、付き合うか付き合わないか、の2択しかないよな普通なら」

 

ハーレムなんて普通出来るわけない。さすがにそんなに収入はないし、世間だって……。

 

「……それがどんな形にせよ。貴方が真剣に考えて決めたことなら、みんな受け止めてくれる。自分たちでも、貴方が優しいからって全員で愛してつなぎとめようって、そういう考えは確かにあるわ。理想はもちろん、ツバサと別れてくれて自分を選んでくれることだけど。μ'sの誰かなら、少なくともみんな納得はすると思うわ」

 

……にこは、そうアドバイスしてくれた。

 

μ'sは例え暴走気味でも、恋のライバルでも。μ's同士で罵り合ったり、スクールアイドルやこれまでの道のりを否定するような言い方はしない。俺のこともμ'sのことも、どちらも同じくらい大切にしている、そういう仲間たちなんだと。

 

確かに、俺がみんなをもっと信じてやれなくちゃいけないな……。

 

「ありがとうにこ、参考になった。いや、なかなかみんなツバサの名前を出しただけで人を殺しそうな勢いだしこんな話題だから、なかなか相談できる相手もいなくて……」

 

「そう、『私だけ』よね?フフッ……そういう風にお礼を言ってもらえると、やっぱりうれしいわね。……あ、そろそろ始まるわよ」

 

話し込んでたら時間になったみたいだ。にこがホームシアター風にしたいと電気を消してる真っ暗だった部屋に、テレビの灯りがつく。

 

…………えーと。

 

 

この部屋、一面に俺の写真が張り付けてあるんだけど……。

 

 

「ああこれ?ことりからいろいろデータ貰ってね。我慢できなくてこうしちゃったの。貴方に包まれてるみたいで安心するのよね……」

 

……い、いやその。

 

俺も不本意ながら慣れてきたからこれはまだいいんだけど、この状態で俺はみんなのライブを見るのか。自分の写真に囲まれてスクールアイドルのライブを見るとか、どんな新しい拷問なんだよ。

 

ってかことり何してくれてんだ。明らかに俺が気付いてない写真沢山あるし。もしかして盗撮なのか……?

 

そういえば、あと『残っている』のは海未とことりの2人か。『何か』ないとは思いたいが、やっぱり不安になってきた……。

 

 

「……あれ、そういえばさ。なんで俺と一緒にこの番組見たいって言ってたんだ?」

 

考える中でふと思い出したのは、元々の疑問の一つ。

 

二つのお願いのうちの一つは、結局意図がわからないままだ。

 

この部屋を見せたかったのか、何故わざわざ二人きりなのか。

 

 

「夕方に、『一つの夢を終えたらまた新しい夢が見つかる』って言ってたでしょ?……その時風に言うなら、μ'sが終わった後の、私だけの『新しい夢』を聞いてほしかったの。まだ家族にも話してない、修也だけに、一番最初に伝えたい夢」

 

「……新しい、夢?」

 

「うん。……アイドルしてる最中でもいい。引退してからでもいい。私を選んでくれなくても……もう制服は着られないけど、なんでもないオシャレして一緒に、原宿デートしたいな」

 

「クレープを食べながらウィンドウショッピングしたり、カフェでおしゃべりしたり。ちょっぴり変装がばれそうになって、二人で逃げるのもいいかもしれないわね」

 

「それでね?おそろいのストラップをつけるの。バカップルみたいだけど。最後は『今日はとっても楽しかった』って言いあって……笑顔で別れる。そんなデートをしたいわ」

 

「……仰せのままに、お姫様」

 

 

この部屋の内装さえなんとかしくれれば言うことないんだけど。

 

それでもそんな何気ない『夢』を唄うように語るにこの横顔があれば、何も気にならなかった。

 

にこの夢が叶う中で俺が支えになるように、俺も自分の夢を叶える中で、にこやツバサ、みんなの存在が支えになってくれるのかもしれない。

 

みんながどこかで笑顔になってくれると思えば、きっとなんだって頑張れる。

 

 

 

結局番組は日本中で大反響。ママさんなんて感動して酒を飲みすぎて泣いてたし。俺はにこの女優さながらのさりげないボディタッチが危ないところに及ぶたびに必死にガードして少し疲れてしまったが。

 

従姉妹も興奮のあまり電話してきた。意外だったのは、母親だけじゃなく親父からも見たとメールが来たこと。

 

μ'sの皆の力が、世界中に届いている。……『できるか、できないか』なんて、やっぱやってみなきゃわからないよな。

 

俺もμ'sのみんなみたいに未来を変えたい。

 

自分の中に眠る力があるのかはわからない。でも、頑張るって決めた以上はやってみせる。

 

ツバサも、にこも、新しい夢をかなえていくμ'sのみんなも追い越していきたい。

 

ハタからみれば余計俺は追い詰められているのだけど、それでも。そんな幸せな気持ちになれる1日だったと、確信できた。

 

 

 

……ただ一つ、気になるのは。

 

ツバサからはなんの連絡もなかったこと。

 

プロになる準備もあるだろうし、何か忙しい事でもあったのだろうか?

 

それが何かの……とても、大きな出来事の予感がしてならなかった。

 

 

 

 

 

 




115000UA、ありがとうございます!

感想もいつでもお待ちしております~。

次回の39.5話でμ's解散編は終了します。その後の展開は結構まだ考えてるので、しばらくは短編を投稿するかもしれません。今後もよろしくお願いします。
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