ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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海未ちゃん回。ことうみに関しては個人回がもしかしたら一回で終わらないかもしれません。穂乃果とツバサ程ではないにしてもトリなので。


第41.5話 深海色の愛情【園田海未】

 

 

 

ようやく迎えた、卒業式の日。

 

桜が咲き始めるこの学校の門の前で、私は最愛の人と向かい合っています。色々なことがあった3年間でしたが……今日、私は彼に秘めた想いを告白するんです。

 

「好きです、修也。私はもう、貴方なしでは生きていけない身体になってしまったんです。責任、取ってくれますか……?」

 

……練習したセリフだったんですが、ちょっと愛が重かったでしょうか?でも、彼も満更でもなさそうな顔をしてくれています。

 

優しい瞳が私を見つめてくれる瞬間がたまらなく好きなんです。はしたないと言われるかもしれませんが、はにかんだ表情も愛おしくて……

 

 

「ごめん、海未……。俺、ツバサと付き合うことにしたんだ」

 

 

……えっ?

 

「そう言うこと。悪いわね?修也は私だけのモノで、私は修也だけのモノなの。貴方の入れる隙間なんてないのよ!」

 

いつのまにか、修也の隣にはあの女が。修也の貞操を奪い、ウソを吹き込んで、私たちから寝取った女が……!!

 

いますぐにでも引き離してやろうとしましたが、身体が動きません。何故……っ!?こんな時のために、日々鍛えているのではありませんか……!!

 

私が手をこまねいている間に、どんどん修也とあの女は離れていきます。二度と手の出せない、暗闇の奥へ……。

 

「待って……っ!!私を置いていかないでください!!修也!!」

 

叫んだ声も、暗闇の中に吸い込まれて行って、後には私独りだけが残されました。

 

穂乃果もことりも、みんなも……修也のいない闇の中に。

 

 

 

「修也……っ!!」

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 

……夢、ですか。

 

これで何度目でしょう、修也に捨てられる夢を見るのは。その度に、泣きながら目が覚めます。ドロドロした気持ちを抱えたまま……。

 

学校ではいつも平気なフリをしていますが、実はいつも朝はこんな調子です。

 

 

 

 

……私が修也のことを本格的に男性として意識したのは、会ってからしばらく後のことです。

 

大勢の前で踊ったり恥ずかしい格好をするのが苦手だったというだけで、男性に対して一切の免疫がないわけではありませんでしたから。最初は普通に穂乃果が声をかけた男子の転校生、として特に意識はしていませんでした。

 

それが恋に変わったのは、明確には言えないのですがおそらく……ことりの留学と、穂乃果の退部騒動の時でしょうか。

 

 

あの時、私は独りでした。

 

穂乃果のような勢いもなく、ことりのようなアイドルに相応しい可愛さもない私だったのに……幼馴染の中で、2年生の中でたった一人だけ部活に残されてしまったんです。

 

その頃にはもう、スクールアイドル活動のことをそれなりに好きになっていましたし、続けるみんなへの義理も生まれていましたので、やめると言う選択肢はなかったのですが……。

 

一番の理由は、修也の諦めない瞳を見たから、だったんです。

 

それまでは、私の修也に対する印象はどこか儚さを感じさせるものでした。今思えば、それは夢に対する挫折が影響していたのでしょう。

 

 

その日から、彼の瞳の中に熱い情熱を見たんです。そこからでしょうか、修也のスクールアイドルに対する取り組みが本格的に変わって行ったのは。

 

サボっていたわけではないですし、冷たかったと言うことはないですけど、練習にも今までにも増して熱意が篭もり始めて、私達の悩みへの相談もずっと気を遣ってくれるようになりました。

 

修也にこんな一面があったんだ……と、胸の中で鼓動が早くなったのを覚えています。優しい瞳を向けられた時も、平静を保ちづらくなっていました。

 

 

そして、その熱意のまま、2人を連れ戻してくれた……。

 

だからこそ、私は彼に依存していたのかもしれません。『彼なら何が起きても大丈夫だ』と勝手に信頼しきって、押し付けて……。結局、彼の悩みに気づくことができませんでした。私の愛情はしょせん、偽りのものだったんです。

 

あんなに昔のことや家族のことを話したがらなかった時点で、今度は私が相談に乗るべきだったのに。彼がそうしてくれたようにそうするべきだったのに、それをせずに甘えていたんです。その結果が、マネージャーを辞めようとした時の騒動でした。

 

彼は自分のせいだと言うでしょうが、私は私のせいだと言う思いを捨てきれません。

 

それは今も……。

 

 

 

……μ'sのせいでも、穂乃果のせいでもありません。私のせいなんです。私が気づくべきだったんです。μ'sのみんなのような魅力のない私が……たった一人、彼に何も恩返しできていない私が。

 

穂乃果は持ち前の明るさで、修也すらも引っ張っていました。

 

ことりは可愛らしい衣装で、修也に褒められていました。

 

真姫は作曲で、修也やたくさんの人を唸らせる音楽を次々と生み出しました。

 

花陽はアイドルについてファンの目線で、修也やファンの皆さんにいろんな気遣いをしてくれました。

 

凛はライブのたびにステージを盛り上げて、持ち前のダンスもあって修也を感心させていました。

 

にこはアイドルについてプロの目線から、演出や心構え、知識についていつも修也の支えになっていました。

 

絵里は生徒会長であることもあり、慣れない女子高で苦労する修也の学校生活の助けになっていたことも知っています。

 

希は占いはさておき、ちょっとした変化にも気づいてメンバーはもちろん、修也からも厚い信頼を寄せられています。

 

 

 

……ですが『私』はどうでしょうか?

 

時々、不安になるんです。私は確かに最初の3人の中で唯一、体力づくりについて知ってはいました。ですが、当初はスクールアイドルに積極的でなかった私です。一番に主導してくれたのは修也でした。

 

修也は自分が必要なかったといいます。……ですが私にとっては、修也がいてくれれば、私は要らなかったんじゃないかと思えてしまうときがあるんです。それはファンやみんなにとってではなく、修也にとって園田海未は必要なかったんじゃないか、という不安。

 

 

私だけ、私だけが何も返せていないんです。……こんな私を、修也が好きになってくれるわけがありません。

 

 

ニューヨークにいる間も、修也が戻ってきてくれた悦びを感じる胸の中で、その不安は静かに大きくなっていました。

 

みんなの気持ちや言葉を受け止めて、立ち直っていく修也。

 

そこにまた……私はいません。

 

ですが、いたところでなんだというのでしょう。

 

修也に嫌われているのではないか、修也に必要とされていないのではないかという不安に加えて、口下手な私には、例え『順番』が回ってきていたとしても、みんなのような言葉はかけてあげられなかったと思います。修也を励ますことに、想いを伝えることに誰もが意気込んでいた中、私一人だけが怯えていたんです。

 

……そう考え始めると、例えもっと早く悩みに気づいていても、相談に乗ってあげられても、私には何もできなかったんじゃないかという新しい胸の痛みに襲われました。

 

私は、最低です。同じく修也を愛する仲間にまで嫉妬して、一人で自己嫌悪に陥って……。

 

 

 

だからこそ、『順番』も最後の方になってしまった私でしたが、思わぬ機会が訪れました。

 

穂乃果はこの前、夜に綺羅ツバサと1対1で会って話したことを、包み隠さず『会議』で話してくれました。その時のメンバーの反応は、様々なものでした。

 

「今度も私たちが最高のライブをして勝てばいいだけですよね?」

 

「……どうせA-RISEより私たちの方が魅力的だって思わせなきゃ、修也は振り向いてくれないんでしょう?なら、やってやろうじゃない……!」

 

「……勝負は構わないけど、そもそも約束を守るの?守ったとして、あの優しすぎる修也があの女を見捨てるとは思えないけど……」

 

「でも穂乃果ちゃんの話が正しいなら、このままだと修也さんは私たちを選んでくれるかは……」

 

概ね、全員が勝負そのものは構わないと思っているのですが、一致しているのは、修也の気持ちを弄んで私たちを引き裂いた女性が提案した事なので、あまり信用出来ないと言うものでした。私も同意見です。

 

穂乃果と真姫から『修也の貞操が騙された上に薬で無理やり奪われた』と聞かされた時は、私の怒りは自身の身体が燃えあがるような感覚を覚えました。ニューヨークへの出発前でなければ、怒りのままにあの女を探し出して、何をしていたかわかりません。

 

 

私は真っ先にその勝負に賛成しました。

 

といっても、大した理由があったわけではありませんが。むしろ、小さくて私的なことです。単に、一種の期限があれば、否応にでも追い詰められれば……修也に告白する勇気が出ると思えただけのことです。あとは、あの女への対抗心もありましたけど。

 

……そうしなければ、ズルズルとラブライブの当日が終わっても、不安をぬぐい切れず、告白できないまま終わってしまいそうでしたから。しかし、いつかの歌詞が思い浮かばなかったときのように、都合よくそんな勇気が出てくるわけではありません。

 

最初のライブの前の時のように怯えていた私でしたが、その日の会議が終わった後、声をかけてくれたのがことりでした。

 

「海未ちゃん、辛いんだね……?しゅーくんやみんなには隠してても、私にはわかるよ?」

 

「ことり……」

 

「きっと私も同じ気持ちだから。私たち二人だけがまだ告白してないのもあるのかもしれないけど……、怖いの。しゅーくんに嫌われてないかって。みんなが憎からずっていう反応をもらってるからこそ、私達はそうじゃないんじゃないか……っていう不安で押しつぶされちゃいそうになるの」

 

……ずっと、ことりは私の悩みを知っていて気を遣って、私が告白した後の順番を選んだのでしょうと思っていましたが、そうではありませんでした。

 

ことりはことりで、苦しんでいました。Wonder Zoneの時も悩んでいたんですから、その胸の痛みは、私以上だったかもしれません。

 

「……辛いよね、しゅーくんと出会って、その優しさに触れて……。私達、しゅーくんなしではいられない身体になっちゃったのに。見つめられるだけで、身体中愛おしさが駆け抜けて、いっぱいいっぱいになっちゃうのに。告白できないでいるなんて……」

 

「ええ。修也を好きになったことは後悔なんてするわけはありませんが、こんな気持ちは……知りたくなかったというのが本音です」

 

「私もだよ海未ちゃん。……でも、結ばれるって信じて待ってるだけじゃ、きっとどうにもならない。私に考えがあるんだけど、手伝ってくれないかな?しゅーくんを取り戻すために……」

 

そう語ることりの表情は、同性の私から見ても女神のように妖艶でかつ、女帝のような威圧感がありました。

 

 

……しかし、私が感じたのは恐怖でも、服従でもありません。共感でした。

 

これで、彼の目を覚まさせてあげることができるのなら。

 

私たちが最初にスクールアイドルを始めた時のように、不安なく話せる関係に戻れるのなら。想いを、伝えることができるのなら……躊躇う理由なんてありません。

 

 

……修也。

 

私があなたにしてあげられることは。

 

そして、あなたに振り向いてもらうためには、これしかないんです……!

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

そして今、彼はことりの家の地下室で縛られています。

 

血流が悪くならないか、エコノミー症候群や床ずれなど起こさないかは、この数日で入念に調べ上げました。薬はことりが、ファッション関係の伝手で入手してくれた後遺症などないものです。その女性も、一人の男性を愛するのに用いたものだとか。なんにしても、万が一にも彼に無用の被害が及ばないように対策は取ってあります。

 

ことりが他の物を用意しに行っている間、少しだけ私と修也は二人きり……。

 

 

そっと顔を近づけて、寝息を聞いて……。普段だったらできないことも、今はできました。安らかなのは、私の夢だとよいのですが、それはさすがに望みすぎでしょう。

 

顔を少し下げて、逞しくて堅い胸に耳を当てます。

 

規則正しい心臓の音、練習につきあって、ボディシートで体を拭いただけの彼の匂い。これを嗅ぐだけで、おかしくなってしまいそうなくらい興奮します。違う自分を出すだけで、こんなにも変われるものだとは思いませんでした。これなら、もっと早くにこうしておけば良かった。

 

 

 

ああ、修也。今私の手元にいるんですね。

 

今だけは、この瞬間だけは私だけのモノでいてくれるんですね……♡

 

この後何が待ち受けていても、修也がいてくれれば。私はなんだってできます。どんな障害も排除して見せます。昨日までの私より、ずっと強く在れる気がするんです。

 

独り占めできないのは少し名残惜しいですが、邪魔者を排除して落ち着いたら、μ'sのみんなでしっかり教え込んであげましょう。

 

私たちがどれだけあなたを愛しているか。

 

想いを伝えた後でさえ、こうして閉じ込めた後でさえ。どれだけ我慢しているのか。

 

あなたと巡り合えた奇跡に、どれだけ感謝しているのかを……。

 

 

「ことりが戻ってきますね……。では修也、行ってきます」

 

 

余計な迷いを断ってあげます。大丈夫、すぐに終わって戻ってきますから。

 

帰ってきたら、続きをしましょうね……♡

 




「何故ヤンデレ作品なのにガンガン刃物で切りあったり監禁をしないんだい?」と疑問に思われていた方もいらっしゃるかもしれませんが、それらとなると仮にも犯罪で大事なので、こういうクライマックスに持ってくるしかなかったんです。そんな大事にしちゃうと、続きのドラマがそれより小さく作れないので……。

忙しいですが、完結させるため無理矢理更新していきます。
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