ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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膨大な押し付け残務と出張等が重なり、聖良と理亞が完成しなかったので怒りの書き溜め放出します。

以前書くと言っていた鞠莉ちゃん別パターンです。またまた長くなったので前後編に分けました。今回はイジメに関する描写があるので、苦手な方はご注意ください。





痺れるような恋の罠 ・前編【小原鞠莉】

学校に登校する道はなかなか憂鬱だ。

 

だって、今日も机の上には花瓶がある。

 

机の中から床に投げ捨てられた教科書の数々。拾ってみて調べてみると、折られたり落書きまではされてないようだけど、さすがに気分の良いものではない。

 

 

……これを読んでいる皆さんには想像がつき始めていると思うけど、どうも僕は『イジメ』を受けているらしい。

 

 

最近まで気づいていなかったのは我ながら相当な鈍感だと思う。単に机に誰かがカバンを当てたとか、たまたま足元に落し物をして手に持っていた花瓶を置いたとかだと思ってたんだけど。ここまで続くと流石に確信をもてるというもので。

 

決して多くはない友人も、ここのところ余所余所しさがあったけど……多分このイジメと関係してるんだろう。

 

しかし日が経つに連れて内容が少しずつエスカレートしているのも気になるけど、今考えるべきことはやはりひとつ……。

 

 

『きっかけは何だったのだろう』ということ。

 

 

まず原因を知らなければ、対策のしようもない。誤解だったらそれを解ければいいし、僕の失敗なら謝れば済むんだろうけど、あいにくと全く心当たりがない。誰かに恨みを買われるようなことをした覚えもないし……じゃあ嫉妬とかか?

 

いや、僕のような平凡な人間に嫉妬なんて……

 

 

 

……あ、もしかして。

 

(クラスで一番可愛くて人気のあの娘に、先週告白されたからじゃないか!?)

 

 

 

『子供の頃、あの日からずっと好きでした……。突然ごめんなさい。ずっと隠してきたけど、もうこの気持ちにウソはつけないの!』

 

思い出しても、情熱的な言葉だった……。

 

ただ、向こうは僕のことを見てたって言ってくれたけど、僕は彼女の事を何も知らなかった。一般的な高校生なら諸手を挙げて喜ぶシチュエーションだし、僕だって喜びはしたけど、いったんその場では保留してもらったんだ。

 

 

『うん……私、待ってるね? 答えはすぐじゃなくてもいいから……』

 

 

だがそれは彼女もその場で円満に納得してもらったはずだった。それなのに、彼女はこの一週間、ずっと学校を休んでいる。そして、もしそれが原因でイジメが起きているとするのなら……

 

 

……男子か女子か、はたまたその両方か。『生意気に彼女の告白を断った』『彼女をこっぴどくフって傷つけた』という形で噂が広まってしまったのかもしれない。いや、それで間違いないと思う。他に全く思いつかないし、決まりだろう。

 

 

うーん……今はまだ大した被害は無いけど。これから酷くなっていくとしたらなんとしてでも止めないと色々とまずい。でも、どうすれば良いんだ。

 

僕は彼女の家も、連絡先も知らない。女の子の友達もそんなに仲良く無いから、今回の件を情報収集するのも難しい。先生なんて頼りにならないし、個人情報保護の時代だから無駄だろう。かといって親に全て打ち明けて、あれこれと心配させるのも心苦しい。

 

と思い悩みながら、一人でトボトボと帰っていると、僕の横に内浦にはおおよそ不似合いな高級リムジンが停まった。

 

窓を開けて、土砂イニーな顔つきの僕とは対照的に、いつもシャイニーな笑顔の女の子が手を振って挨拶してくる。

 

 

「ハーイ♪ どうしたの、暗い顔して? そんなんじゃ幸せが逃げちゃうわよ!」

 

 

「鞠莉が元気すぎるだけだよ……ごめん、ちょっと体育で疲れててさ。ありがたいけど、心配はしないでいいよ」

 

 

この娘は小原鞠莉。愛称はマリー。

 

本人云はく、日課はシャワーとティータイム。

 

昔からの僕の幼馴染で、今は内浦のスクールアイドル『Aqours』の一員でもある。高校は女子校に通ってるから学校は違うけど、帰り道が同じなこともあって今でもたまにこうしてすれ違う関係だ。イタリア留学から(勝手に)帰ってきてからは、特にすれ違う頻度も増えた気がする。

 

彼女とAqoursの人気が高まるのは、僕としても誇らしい。

 

 

「そうなの? でも疲れてるだけじゃなくて……なんだか悲しそうよ。送っていくから、車の中で事情を聞かせてくれないかしら? きっと力になれると思うんだけど……」

 

うっ……相変わらずこういう所は鋭いんだな。それでも、申し出は嬉しくても鞠莉を心配させたくない。

 

(だって、彼女は僕とは住む世界が違う。家柄もさることながら、資産も生活も違いすぎるし……)

 

もしイジメのことを話してしまったら、鞠莉は力になろうとして、学校や他の生徒にかえって変な迷惑がかかってしまうかもしれない。実際それをする事ができる彼女だからこそ、僕を助けるか助けないかで余計に悩むことになってしまう。

 

原因に予測がついても、誰がイジメてるのかもわからないうちに心配させたり混乱させることはない……うん、ここは断るのが一番だ。

 

 

「ありがとう。でも体育で汗臭いしさ。シート汚しちゃ悪いし、今日はこのまま歩いて帰ろうと、思、う……!?」

 

と、かなりやんわりと断ったはずだったんだけど。……その言葉を発した途端に、鞠莉の表情が変わった。それも、とても悪い方向に。

 

 

————————まっすぐに僕を射抜く目。

 

とても綺麗で……怖い。その瞳には僕だけを反射していて、憤怒の炎が燃え盛っているようにも見えた。

 

鞠莉は昔からたびたびこうなることがあったけど、最近は何より恐ろしいとすら思ってしまう。

 

冷や汗が流れてきて唾を飲み込んでしまっているうちに、鞠莉はドアを開けて信じられないくらい強い力で僕の腕を握っていた。腕にアザをつけてでも、骨を握りつぶしてでも絶対に逃がさない、と言わんばかりに。

 

 

「……下手なウソね。汗臭くなんてないし、そもそも貴方のクラスは木曜日は体育はないはずよね……。そこまでしてマリーと一緒には帰りたくないってワケ……?」

 

 

この目だ……。

 

これが怖くて、僕は内心で鞠莉が女子校に行くと聞いた時や、留学に行ってた頃は寂しかったけど、少し気が休まった部分があったくらいだ。一度こうなってしまうと、どれだけ抵抗しても無駄に終わってしまう。痛みと恐怖で、心も身体も縛り付けられているようなプレッシャーの前に、逆らうことなんてできない。

 

 

「そ、それは……」

 

「……いいから早く来なさい!」

 

 

今だって、なんでうちのクラスの時間割まで把握してるのかと疑問に思う前に、車の中に入れられてしまった。腕は握られたまま隣の席に座らされて、身体も密着させられる。そうすると先程までの雰囲気は一変して、甘えたがりの喉を鳴らす猫のような態度になるのだから、その変化が余計に怖く感じる。

 

 

「まったく……どうせ私を心配させたくないとか思ってたんでしょ? マリーの事を大切にしてくれるのは嬉しいけど、それなら尚更相談してほしいの……。貴方が悩んでるのに力になれないなんて、私にとって何よりも辛い事なのよ?」

 

 

相談するのは僕の側のはずなのに、なぜか鞠莉の方が縋るような態度をとっている。

 

断れないのは恐怖だけじゃない、僕だって鞠莉のことは大切な幼馴染だと思ってる。彼女の告白を保留したのだって、もしかしたら鞠莉の事が気がかりだったのもあるかもしれないと思うくらいには。

 

鞠莉は僕のことを嫌ってるわけではない……むしろ好いてくれているんだと分かっているからこそ、一種の支配欲のようなものも垣間見得て怖くなることがある。だって僕たちはまだ高校生だし、なにより友達だ。こんな距離感は間違ってる、はずなのに……。

 

でも、どれだけ足掻こうとしても、この状況で僕に鞠莉に逆らうことなんてできなくて、全てを話してしまった。……イジメの犯人か、それとも鞠莉か。いったいどちらに怯えてるのか分からないままに。

 

話がすすんでいくたびに、鞠莉の表情にも冷たい怒りが篭っていくのがわかった。

 

 

「まさか、貴方ほどの優しい人がイジめられるなんて……ううん、優しいからかも。どちらにしても最低な学校ね。主犯が分からないって話だったけど……きっとその告白した女が、断られた腹いせに周りにウソをついたのよ!『自分がフられるわけないのに』なんて安っぽいプライドで……。貴方なんかに釣り合う訳ないのに逆恨みしてるに違いないわ……!!」

 

釣り合わないのは僕の方だし、彼女がそんな娘だったとは思えないんだけど……状況から考えれば確かに、似たようなことが起きた以外は考えられない。

 

でも、周りが勝手に暴走してる可能性だってあるし……。

 

 

「やっぱり、そうなのかな……。でもそれだと休んでる理由とは噛み合ってないし、何か気になるんだ。結論を急ぎすぎないほうが……」

 

「……そんな女の事なんて今はどうでも良いじゃない。問題は貴方よ! 悠長なことを言ってる場合じゃないわ、誰も助けてくれる人のいない状況で病んじゃったらどうするのよ!!いつイジメが酷くなるかも分からないのに……!」

 

「ご、ごめん。確かにそうかもしれないけど……」

 

 

こんな時まで他人の心配を先にしてしまう僕はやっぱりお人好しなのだろう。それにしても、そこまで彼女を悪く言わなくてもいいと思うんだけど。

 

「そういうところがお人よしすぎるのよ。それが貴方の良いところでもあって……悪いところ。でも、本当につらくなったら私に相談してね?」

 

 

この日は結局、それ以上鞠莉は深入りしてこなかった。運転手さんにお礼を言って、鞠莉も先ほどまでの雰囲気を感じさせないスマイルで出てきた母親に挨拶した。

 

 

……今思えば、気づくべきだったのかもしれない。

 

 

心配してくれるはずの鞠莉の声色が時折、不気味なほど機嫌の良いように聞こえたことに……。

 

 

 

 




タイトルはギルキスの某曲から。ヤンデレを求めて読んでいらっしゃるみなさんには、既に色々と感づかれていますよね……?

後編は完成しているので明日か来週中には投稿します。
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