ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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ことりちゃん回再びに続き、海未ちゃん回再び。タイトルは勇気のReasonから。

このSSのコンセプトとして、ヤンデレに救われ、ヤンデレを救うという目標があったので、やっとここまで書けたか、という気持ちです。


それではどうぞ。





第46話 勇気が呼ぶ夢【園田海未】

結論から言って———————……あの女の帰り道で待ち伏せていた私の覚悟は、空振りに終わりました。

 

ことりから来たメッセージでは、修也がどんな手を使ったか脱走したそうです。おそらく、脱走した先で修也から危機を伝えられたのではないか、と……。

 

……多分、その予測は正しいのでしょう。あれ程までに最善を尽くしても脱走したのは、修也ならではというところでしょうか。ことりは、責められません。それほどの人だからこそ、私は愛してしまったのですから。

 

きっと、私があの女を狙ったことも知られている。だとすれば、もう……修也には顔向けできませんね。じっくりと時間をかけて愛し合えば、わかってくれたかもしれませんが……許してくれないまでも、今後私を彼女にしてもらえるなどとは思えません。

 

これからどうするべきかと考えながら帰る私の携帯に、もう一つ新しい連絡が来ていました。

 

どうやら、穂乃果とあの女に何かあったようです。それも、『誰も知らない場所』で『決着をつける』かのような。

 

……おそらく、その場所とはあの廃工場でしょう。ことりと穂乃果は知っているでしょうが、私の方は忘れていると思われているかもしれません。ですが、覚えています。二人が私のいないとき、よくあそこで遊んでいたことを。

 

 

———————そして、きっと修也ならその場所を調べ当てて、止めに行こうとするはず。

 

何度も奇跡を起こしている修也。何度も私たちを助けてくれた修也なら、きっとそれができてしまう。私には、そんな確信がありました。私の夫になってくれる方と見定めたほどの男なのですから、出来るでしょう。

 

……だからこそ、私の次にとるべき行動は決まりました。いえ、そうせざるを得なかっただけかもしれません。

 

丘に行く道で待ち構えていると、修也が走ってきています。道はここにしかありませんから、必然的に私たちは向かい合いました。

 

タイミングもぴったりですね。やっぱり私たちは、運命で繋がっているんでしょうか……?

 

 

「海未、ごめん。後で話そう。……今は、行かなきゃいけない」

 

そう語りかけてくれる修也の優しさに絆されるのは簡単ですが、そうはいきません。私は、それを止めに来たのですから……。

 

背中の鞄から、携帯用の小型の弓矢を取り出し構えると、思わず修也の顔が緊張するのがわかります。

 

大きさこそ小ぶりですが、今のように隠して持ち運べるうえに、足を狙えば人の動きを止めるのには十分でしょう。ある程度の時間、引いたままでいられるのも脅しには有効です。

 

「させませんよ、修也。……どうしてもというのでしたら、私は躊躇いません」

 

「なんでだよ海未!なんでこんなことを……!?」

 

「わかりませんか?貴方に……修也に、私を見ていてほしいからです。あの二人よりも、誰よりも……私を」

 

勿論、本気で修也を射る気などありません。彼が傷つくなんて、私の最も望まない結果ですから。

 

 

……ですが、こうしている間は。

 

その間だけは……。

 

 

「そんなことして、俺が間に合わなかったら……、俺は海未を憎みもしないし怒りもしない。ただ無関心になるだけだぞ……!」

 

明らかに焦っている修也ですが、その手には乗りません。わかっていますよ。貴方は私を彼女にしないことはできても、一切許さないとまで……そこまで非情になれる男の人ではないのですから。

 

……それほどに優しすぎる、甘すぎるんです。

 

嘘をついているときは目でわかります。知っているんでしょう?自分でも『そんなこと』ができるのか不安に思っているのが。そこまで私に厳しくなれるのかどうか、わからないんでしょう?

 

人のそういう不安を見抜く目は、私にも自信があるんです。

 

ここしばらくの間、ずっと……。

 

貴方のことを想いながら、鏡で見てきたんです。自分の不安な顔で。

 

「あの二人のことは今は関係ないんです。いくら恨まれても構いません。もしもそれで憎まれたって傷つけられたとしても……その間、私を見ていてくれるなら十分です」

 

「なんでだ海未。なんでそこまで……」

 

「行かせてしまったら……貴方はもう、帰って来てくれない。二度と、私のことなど構わなくなってしまう。あの二人がいいのでしょう?私たちなんかよりも。今ここで貴方を行かせて、二度と触れ合えない場所に確実に行ってしまうのを止められるのなら、躊躇う理由がありますか?」

 

語りかけながらも、弓の狙いは外しません。

 

修也がウソをつくのは下手なままなのとは対照的に、私はポーカーフェイスに自信がつきました。トランプではいつも負けていた私ですが、ここ数カ月の出来事で……ずっと修也に気持ちを隠し続けてきたのですから。

 

私の脅しがブラフだという確証がない以上、迂闊には動けないはずです。それに修也は疲れている。薬の影響がまだ残っているのか、走り続けたのか……それなり以上に消耗しているのは、傍目からすぐにわかります。

 

その状態で武器を持った私を実力で抑え込もうというのは、リスクが高いと判断して当然です。そして、今言った言葉に嘘はありません。

 

……合理的な行動ではありません。それでも、どうせあの二人のところに行ってしまうのなら、いや。それでも穂乃果ならいいかもしれません。でももしあの女のところになんて。それに、どちらにせよ私を見てくれなくなるのなら、せめて今だけは私を————————

 

「約束する。今回のことが終わっても、海未と縁を切るとか、監禁のことを引きずったりとかはしない。ツバサを狙ったことも咎めたりはしない。今は時間が—————……」

 

 

「———————また、『あの女』の名前ですか」

 

 

 

ですが、彼の口から出たのはまたあの忌々しい名前。

 

私の中で、堪忍袋の緒が切れました。私との逢瀬で、まだあの女の名前を出すのですね。

 

修也の足元のアスファルトに、矢を当てます。

 

無論、私の放った矢です。もう少し距離が短ければ、私が次の矢を取るまでに近づけたかもしれませんが、今の疲れ切った修也と、この上り坂では厳しいのでしょう。実際、私はもう次の矢を引いています。

 

「……次は当てるかもしれませんよ。私もあなたを傷つけるのは本望ではありません。繰り返しますが……、修也。今だけは私を見ていてください」

 

「海未、話だけでも聞いてくれないのか……?」

 

「いえ、聞きますよ?貴方と話していられる時間は、私にとって至福の時ですから。むしろ、このままずっと話していませんか?」

 

ついさっき工場の方に入っていった穂乃果達。

 

急げばまだ間に合うかもしれませんが、そうはさせません。

 

修也。せめて最後に。ここで一緒に、熱い気持ちのままずっと見つめあっていましょう……♡

 

「……なら、話そう。海未と、俺のことについて」

 

「そうですね。1年……たった1年の付き合いなのに、私たちはこんなにも、深くお互いを想いあう関係になりましたね」

 

「本当にな。始めた時はどうなるかと思ったのに」

 

「最初はまた穂乃果が思いつきで変なことを始めたんだと思いましたが……、貴方もいてくれたおかげで、ラブライブまで行くことができました。そして、愛情という、知らなかった気持ちも教えられてしまいましたね……」

 

 

……男性に対する、これほどの恋慕。

 

夜空に瞬く星の数よりも、貴方の夢が見たいと思わせるほどの熱い気持ち。

 

同時に、その男性と結ばれないという胸騒ぎで泣き出してしまうほどの、執着。

 

他の女性に触れさせたくないというほどの、嫉妬。

 

μ’sでなくても、いつかきっと恋を知ったかもしれません。ですが、愛を知り、それを告白という形で伝えられるようになったのは、修也がいたからです。

 

『初恋はかなわない』……そう、本で読んだこともあります。事実なのかもしれません。今私はその愛しい人を独占したい気持ちで、自棄になってこうしているくらいなのですから。

 

「海未にまで好きになってもらえてたなんて、気づけなくて悪かった。……無理、させてたんだよな。多分。本当にごめん」

 

「謝らないでください。悪いのは私だったんです。私だけ。私だけが、μ’sの中で修也やみんなの役に立てませんでした。……そんな女だから、監禁した挙句、こうして凶器まで向けているんです。私には、修也に気づいてもらう資格なんてなかったんですよ……」

 

「他の女の子の名前出すけど……ことりもそんなこと言ってたけどさ。みんなして『資格』って、なんなんだよ。誰かを好きになるのに、告白したりするのにそんなものが必要なのか!?」

 

「ことりはストーカー行為に悦びつつも、罪悪感を抱いていましたが……それと違います。なんの罪悪感もなく、男性を監禁したり恋敵を狙おうとする私には……資格は、ないっ……でしょう……!!」

 

修也が苦虫を噛み潰したような顔をしています。おそらく私を説得しようとして、上手くいかないことを歯噛みしているのでしょうが……甘いですよ、修也。

 

私は今、貴方とこうして瞬きすら惜しいほどに見つめ合えている時間が、何より幸福なんです。ずっと……ずっと、その視線が欲しかったんです!!

 

 

なのに……

 

 

「さっきはあんな言い方してごめん。あれは嘘だ。海未がどう思ってても……やっぱり、俺はどんな海未でも好きだ」

 

 

……どうして、こんなに涙があふれてくるのでしょうか。

 

私の頬は涙がつたって、こみあげる感情は弓を引く手を震わせています。

 

その感情の正体は歓喜と、悲哀。

 

「だって海未は自分でわかってるんだろ?本当に罪悪感も何もないなら……そんなに泣くことはないじゃないか。そんな海未を悪く言う資格こそ、俺にはないよ」

 

どんな言葉よりも聞きたかったのに、どんな言葉よりも聞きたくなかった……修也が悲しそうに言った好きだというその一言が、どうしようもなく胸に刺さっていました。

 

ずっと貴方にそう言ってもらえるのが夢でした。

 

そのためになけなしの勇気を出して、こんな過ちまで犯して……!

 

でも、貴方はそう言ってくれるのですか?

 

「『何も返せてない』って……俺は海未がいたから、マネージャーをやっていけた。穂乃果もことりも女の子だったし、俺じゃ二人の体力作りに付き合ってやるのは限度があったから。何より、気心知れた3人組だからこそ、スクールアイドルを始められたんだろ?」

 

「そんなの……そんなの私じゃなくていいじゃないですか。私じゃない、もっと気の使える、優しくて笑顔も素敵な女の子なんていくらでも……っ!」

 

「海未くらい気立てのいい女性なんてそうそういるかよ!それに……穂乃果とことりがスクールアイドル辞めそうになった時、俺だって『もう男の俺がいるのも限界かな』とか『やっぱりスクールアイドルとかマネージャーだなんて、俺には無理だったのかもしれない』って……不安になったんだ。でも、そこから俺に前を向かせてくれたのは、海未なんだ」

 

私が、修也に……!?

 

 

「最初に4人集まった中で、あんなに恥ずかしがったり、躊躇ってた海未が。真剣に自分はやろうとしてくれた。二人を連れ戻そうとも尽力してくれた。……俺は、そんな海未の姿に、憧れた。『もう一度スクールアイドルをみんなでしてみよう』って……思えたんだ」

 

「恥ずかしがって言えなかったのは海未だけじゃない。俺の方も同じさ。……ずっと勇気をもらってたんだ。海未が勇気を出すたびに。人前で踊るような苦手なことを一歩一歩、克服していくたびに、俺は追いつこうとした。応えたかった」

 

「もう十分、返してもらってる。……いや、俺の方がもらいすぎたかもしれない。母親みたいって言ったら怒られそうだけど……いつも落ち着いて、みんなや俺を見守ってくれてることくらい知ってるよ。……資格なんて、十分ある。そんな海未を好きになったって気持ちじゃ……俺のことを好きになる資格として、不十分か?」

 

修也の言葉は、少しづつですが私を安心させてくれます。本当は私だって、修也に愛されたい!こんな手を使わず、厳しい目線ではなく……慈愛に満ちた目で、身体に触れてほしい。私を貴方だけのものにしてほしい!!そんな気持ちが今、涙を流させています。

 

修也の方から私のことを好きだと言ってくれるなら、まだ、彼女にしてくれるチャンスがあるのなら……

 

 

……いつの間にか、弓を持つ手は降ろしていました。ですが、ここを通すのとはまた別の問題です。

 

 

その『好き』は、どの『好き』なのでしょうか。

 

友人として?仲間として?

 

それとも、女の子としてですか?

 

それ次第では、私は……!

 

 

「……修也に好きと言ってもらえるのが、こんなにも嬉しいことだなんて思いませんでした。全てが満たされていく感覚と、もっと欲しいという感覚……これが、これこそが一つの夢が叶う瞬間。愛が結ばれる瞬間なんですね」

 

「海未の勇気が俺の勇気になったんだから、貰ったものを返しただけだよ。ならもう……」

 

「——————いえ、まだですよ。貴方を疑うのは気が引けますが……本当に私のことを愛してくれているという確証がありません。私の中にはまだ、信じ切れていない部分があるんです。貴方が、もし行っても私のところに帰ってきてくれるのかどうか。私のことを、捨てないでいてくれるのかが……」

 

伏し目がちにそう答える私に近づいた修也は、強引に私の腕を掴みました。もう片方の腕で、泣き顔を無理に向けさせられます。本来なら嫌悪感のある行為なのでしょうが……その、修也相手だと。どうしようもなく身体が疼いてくるのがわかってしまいます。

 

こんな時は、都合の良い自分の身体が嫌になって……でも、そのおかげで修也を感じられるのだと思うと、決して嫌なだけではありません。

 

そっと口を開いて、修也は———————————

 

 

「だったら海未。俺についてきてくれ。穂乃果にもツバサにも、伝えなきゃいけないことがある」

 

 

———————……あの。

 

こういうのはキスをして安心させてくれる流れではないのですか!?

 

なんでここまで私を熱くさせておいて、肝心なところでこうなんです!?

 

ちょっと顔赤いですし、まさか、ヘタれましたね……?

 

全然勇気、出せてないじゃないですか!話が違いますよ!

 

 

「……一緒に話を聞いてもらった方がいいと思うんだ。俺が決めたことを。満足はさせられないかもしれないけど、後悔はさせない。約束する。だから——————」

 

 

——————その続きは、聞きたくありません。

 

修也の言葉が嫌だったわけではなく、私へキスしてくれなかったのに、他の女性の話はし始めたのが、ちょとだけ気に入らなかったんです。

 

気づいたときには、ごく自然に私の唇は彼の唇に吸い付いていました。

 

言葉をふさぐように触れた後、すぐに離れましたが、修也の方は顔が赤いままです。

 

『耐性はついた』みたいなこと言っておいて、やっぱりこういうところはまだまだじゃないですか……。

 

私もそういうのは恥ずかしいですし、泣いていたのもあってきっと顔も真っ赤なのでしょうけど……おそろいみたいで、なんだか悪い気はしません。

 

「修也、二人はあの工場の中です。入っていったのは10分ほど前……今なら、まだ間に合うはずです」

 

気を取り直した修也が、また前に進もうとします。

 

ですが、穂乃果と修也がことりを空港で止めた時のように……もう、私は待ってはいません。

 

私も、あの時とは違います。もう貴方と一緒に行ける私なんです。

 

 

 

 

貴方への愛情が弱まったわけではありません。

 

今も抱き着いて押し倒して……貴方の体温を感じたい気持ちを必死に抑えています。

 

でも今それをしないのは、最愛の人である修也に聞いてほしい、と頼まれたから。好きだといってもらえたから……。

 

 

修也の答え……必ず、聞かせてくださいね?

 

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

「ことりちゃん!二人の場所がわかったって……本当!?」

 

「うん。しゅーくんも向かってる。ここに海未ちゃんがいないってことは……多分、先に行ってるんだと思う」

 

「急がないと手遅れになるかもしれないわ」

 

「ええ。いくらなんでも刃物まで持ち出してなんて……どっちに転んでも、修也が喜ぶわけない」

 

「二人ともキレちゃってるから……何とか止めないと!」

 

「ことりと海未に反対しなかった私たちも同罪よ……。ちょっと頭を冷やさないといけないわね」

 

「今度ばかりはカードを見てる暇もないなぁ……みんな、走れるよね?」

 

「任せてほしいにゃ!……あの工場なんだね?」

 

「そう。待ってるとは言ったけど……海未ちゃんもいるなら話は別。助けに行くよ、しゅーくん……」

 

 

 




間もなくヤンデレ同士のバトルそのものには一区切りですね。このラスト周辺、6500~7000字に増量して詰め込んでるので、体力が削られます。

バトルが収束しても、このお話はもう少しだけ続きます。SDSとか卒業式とかラブライブ本戦ありますし。


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