ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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「……なんなんですか?さっきの動画」

「私には、しゅー君が無理矢理襲われてるようにしか見えませんでしたけど。どうせまた薬でも使ったんですよね!?」

「私たちはしゅー君を都合よく利用しようとする貴方と違って、深い愛情で結ばれてるんです。……これ以上彼を傷つけないでください。今ならまだ……」

「……どうやら、こうして話し合っても答えは出ないみたいですね。もう、後は私たちが……」

「最後にしましょう。……しゅー君は巻き込まない形で」

「へぇ。負けるのが怖くないんですか?万が一ってこともあるかもしれませんよ?最終予選の時みたいに……」

「————はい。私も貴方を許せない。貴方も私を許せない。終わりにしてあげます」



「……位置情報は貴方の携帯に送っておきます。いい場所があるんです。誰も知らない場所が……」



第46.5話 譲れないふたり【高坂穂乃果】

「貴方とこういう形で決着をつける事になるとはね、高坂穂乃果さん」

 

……私、高坂穂乃果。高校2年生。

 

廃工場の真ん中で向き合っているのは、私の彼氏を奪おうとする女、綺羅ツバサさん。

 

お互いに絶対零度のような冷たい目と、相手の存在を燃やし尽くしたいほどの炎のような怒りを抱いて、向き合ってる。

 

「そんなに意外ですか?……そもそも、決着なんて最終予選の時についてたりしません?」

 

勿体ぶる態度が気に入らなくて挑発すると、みるみる向こうの表情から余裕が消えたのがわかった。……ラブライブ予選で負けたの、相当堪えてたんだね?

 

すぐにでも目の前の女を二度と立ち上がれないようにしてやりたい。もうしゅー君に近づこうだなんて、自分のためだけに利用しようだなんて考えられないほど、痛めつけてやりたい。

 

本当はこんな嫌味じゃ足りない。この世から消してやりたいけど……あまり追い詰めると、またしゅー君に悲しそうな顔で近づいて誘惑するから、ほどほどにしないとね。

 

 

「……前言撤回よ。私たちがこうなるのは必然だったようね。同じ男を愛してしまったもの同士……奪い合うしかない」

 

覚悟を決めたように啖呵を切られちゃったけど、それはこっちのセリフだよ。

 

私たちのものだったのに貴方が奪ったんだから、返してもらうだけ。だから奪い合うっていうのは違うと思うんだけど……まぁ、いいや。時間もないし。

 

「でも、そんな必然はそろそろ終わらせませんか?……あんまり時間をかけちゃうと、しゅー君は来ちゃいそうですから」

 

 

……そう。私の心配はそこだけ。

 

この状況を止めようとするのは、実際に止める力を持ってるのは、警察でも呼ばれない限りはしゅー君しかいない。

 

私たち二人は今、完全に怒りが頂点を突破してここにいる。たとえしゅー君でも邪魔はさせないもん。

 

あのしゅー君だから、ないとは思っていてもどんな奇跡を起こしちゃうかわからない。……だとしたら、早めに終わらせるに越したことはないよね。

 

 

「修也はそういう男だものね。どれだけ苦しい場所にいても、どんな辛い挫折を味わっても、本当に大事な事は掴みとってる。そして目指す場所に向かって飛んでいく……。恋人だけど、素直に羨ましいわ」

 

幼馴染だからって擦り寄って、分かったようなことを言うのは気に入らないけど……、その点に関しては私と彼女は同意見。

 

……なんとなくだけど、わかってた。しゅー君は多分、ことりちゃんと海未ちゃんを乗り越えて行っちゃうんじゃないか……って。μ'sは、私たちはみんなしゅー君のことを信じてる。愛してるんだよ?だから、彼の強さも勿論、誰よりも知ってるつもり。そして本当に、二人を飛び越えていった。

 

もしかしたら、二人も心の何処かではそういう予感がしてたから、監禁なんて過激な手段にも出られたのかも。

 

 

でも、それはいいの。

 

 

一つだけ許せないのは、私達相手にはそうなのに、この人のことは信じきって……何度も騙されてるところ。さっきもあんな動画を送りつけられて、携帯電話を壊しちゃうところだったもん。

 

私達を信じてくれるなら、大切に思ってくれてるなら……何であの人の事まで信じるの!?愛そうとするの!?それっておかしいよね……!?

 

悩む必要なんてないのに。私達を選んでくれればいいだけなのに……!!私たちの愛を受け入れてくれるだけで済んだのに……!!

 

 

……でも、その悩みももう終わらせてあげるね。

 

「最期にいくつか聞いておいてあげる。……私たち、もし修也がいなかったら、普通に友達になれたと思うかしら?」

 

何を聞いてくるかと思ったら、揺さぶりをかけてるの?

 

それとも、時間稼ぎが目的?怖くなっただけ?

 

いくら時間がないって言っても、もうすこしだけ付き合ってあげてもいいかな。多分、今日限りでその顔も見納めだろうし。

 

「……そうかもしれませんね。普通にスクールアイドルとしてライバルになってたかも」

 

実際、しゅー君との関係を聞く前に会った時は、普通に話せてたもんね。あの時は、にこちゃんがお花送ってたりしたこととかも衝撃だったけど、今思えばしゅー君のことを聞き出したかったのかもしれない。

 

でも、しゅー君がいなかったら、かぁ。……それって、どんな世界かな。

 

私たち、スクールアイドル始めてたのかな?

 

μ'sのみんなは集まってた?ラブライブに出られた?

 

ニューヨークにも行けた?最高のライブができた?にこちゃんはプロになれた?目の前の人とはどんな関係だった?

 

……良いことも悪いことも、想像なんてできない。

 

でも、一つだけ確かなことは……

 

「そんな世界……想像もできません。しゅー君がしゅー君でいる限り、私たちはしゅー君のことを好きになってた。そしてきっと最後にはこうなってたんだと思います」

 

 

しゅー君と出会う限り、私はしゅー君のことを好きになる。今ここにいる私に想像できるのは、それだけ。

 

でも『それだけ』が一番大事。

 

μ'sのみんなだけじゃない。彼のことを愛おしく思う気持ちが、私に力をくれた。今日まで一緒に、夢を叶えてくれた。卒業や夢のために離れ離れになっても、強い絆で私たちはつながってる。

 

好きだっていう気持ちと、そこに向かって進んでいくこと……それが大事なんだよね?しゅー君?

 

「私も修也のいない私なんて想像できないわ。もしあったとしても今は関係ない……私達が今こうしていることだけが、私達にとっての現実だものね。」

 

「ええ。……わかっているなら、なんでそんな事を聞いたんですか?」

 

「ちょっとした気まぐれ……ではないわ。私は幸せに生きてきた貴方と違って、スクールアイドルとして成功するまでは『恵まれた』人生じゃなかったから……こう見えて自信過剰な女ではないの。もしかしたら『負けて死ぬかもしれない』ってずっと思ってる」

 

 

……?

 

言葉だけ聞いたら弱音だけど、その顔は『そんな意味じゃない』って言ってる。

 

何が言いたいのかな……?

 

「これでも私、貴方のこと買ってるのよ。高坂穂乃果さん。才能に恵まれ、天性のカリスマを持つ貴方をね。もし私の方が死んだら、貴方が修也の恋人になってもいいと思ってる程度にはね」

 

「……私もですよ、綺羅ツバサさん。私は貴方に憧れてスクールアイドルを始めたんです。悔しいですけど……μ'sの次にしゅー君を理解してあげられるのは貴方ですし、私が死んだ時は譲ってあげます」

 

 

別に、ウソをついたわけじゃない。

 

私だって、この人に憧れてスクールアイドルを始めた。そのことには、素直に感謝してる。しゅー君だって、悔しいけどお世話にはなってたのは事実だし。私達でダメなら……何も知らない女に渡すくらいだったらっていう思いは、なくはない。

 

「話が逸れたわね。なんでかっていうと……聞きたかったのよ。最期に貴方の方からスクールアイドルとしての私をどう思ってるのかを。修也だけじゃない。私にとっても貴方は憧れだったわ。私みたいなギラついた我欲じゃなく、綺麗な目標で頂点に立てた高坂穂乃果さんが。……修也は覚えてないみたいだけど、あの夕陽の日からね」

 

 

……そうだったんだ。

 

その夕陽がなんのことだかは知らないけど……

 

「じゃあ、私たちはお互いに憧れてたんですね。私はスクールアイドルの頂点に立って……しゅー君の幼馴染や彼女っていう貴方に。貴方は、ラブライブやしゅー君の仲間という立場を手に入れた私に」

 

「そんなところみたいね。ま、お互いそう言う変な信頼関係があるからこそ、こうしてこの場所に1対1で来たのかもしれないわね」

 

それを聞くとあの人は少しだけ悲しそうに笑って、またすぐに殺意に満ちた目に戻った。

 

私も同じ。もしかしたら、仲良くなれる未来もあったかもしれないよね。でも、今ここにいる私たちはそうじゃない。

 

 

「……さて、貴方からそう言ってもらえて私も悔いはないわ。……なんせ、もう二度とその口は開かなくなるんだからね?」

 

「あはは。相変わらず冗談もお上手なんですね?私も、貴方とお友達になれたのなら殺さずに済んだんですけど……仕方ないですよね。しゅー君を騙す悪い人は私が……!」

 

それっきり、お互いに無言になる。鞄や布の中から刃物を抜いた。

 

しゅー君。

 

全部私が終わらせてあげるからね……!!

 

でも、そう言って駆けだそうとした私を止める声が聞こえた。

 

 

私はさっき、ことりちゃんと海未ちゃんも、『止めてもらえるっていう信頼』がどこかであったから、過激なこともできたんじゃって思ってたけど。

 

それは私もだったことには気づいてなかった。

 

だからあの人と同じように、その声に驚いて、動けなかった。

 

いや……声じゃないよね。きっと、その表情。

 

 

 

「もうやめろ、ツバサ、穂乃果!!」

 

 

廃工場の入り口にいたのは、海未ちゃんを連れたしゅー君。

 

私もツバサさんも、最も会いたくて……今、最も会いたくない、最愛の人。

 

悲しんだり、嬉しそうだったり、悔やんだり、疲れてたり、楽しんでたり、泣いたり、辛そうだったり……しゅー君のいろんな表情を見てきたけど、たった一つだけ見たことのない表情をしてる。

 

それは……怒った顔。

 

今、間違いなくしゅー君はキレていた。




145000UA、ありがとうございました!ブルーリトさん、新たに高評価ありがとうございます。

次回でこの事態は色々ひと段落します。半年以上かけたこの物語は着地に向け、ヤンデレ要素の描写そのものはマイルドになって行きます。濃厚なのは今後まだまだ更新予定の短編などで。

ヤンデレだけを求める方には「ヤンデレ要素が薄い」と思われ、普通の話を求める方には「ヤンデレ要素が邪魔」と思われそうなこの長編のスタイルを続けてきましたが、最後までこのまま駆け抜けます。

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