ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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ヤンデレイチャイチャ回。珍しく縦のドラマのない、ちょっと閑話みたいなムードですね。

Aqoursの皆さんの紅白歌合戦も本当に楽しみですね。長編のドロドロが終わりかけると、私の方がヤンデレを読みたくなってしまい、短編を書き始めるという重篤な不具合が発生しています。


第47.5話 一夜明けて、また一夜

……昨日のことから一晩明けて、俺はまた1人に戻る。

 

部屋の中で学校に行く準備を整えている。みんなからは『今晩こそはうちに泊まっていけ』と凄まれたけど、丁重にお断りして帰って来た。

 

いや本当に、あの時点で倒れなかったのが奇跡なくらいフラフラだったのに、あれ以上何かされたら身体が保たないって……。

 

そうでなくとも、ラブライブへの練習を見る時間以外は、転校の準備や受験の勉強と、少しでもトレーニングをしておきたい。幸い親父っていう先例がいてくれたから、何をやればいいのかはある程度わかってるつもりだ。……冬に川に入る訓練は流石に今は無理か。

 

カバンに荷物を詰め終わって、今日は朝練のない日だから楽だなとか購買でどのパンにするかとか考えながら玄関のドアノブを回すと、真姫が待っていた。

 

「相変わらず朝は早いのね。待ちくたびれたわよ?」

 

「真姫?なんでここに。俺んちなんだけど……」

 

「迎えに来たからに決まってるでしょ!?さ、行きましょ。たまには歩いて行くのも悪くないわ」

 

……多分、また話し合いとかじゃんけんとかで順番決めたんだろうな。でも俺も、今更やめろと言うほど無粋じゃない。何より話したいのはこっちもだし。

 

そのまま、他愛のない会話をしながら歩き出す。話題は本当に何でもない。最近学校生活の方はどうだとか、勉強はどんな調子とか。

 

その中でふと、頭をよぎったのは転校のこと。俺が転校して、三年生も卒業したら……こんな風に話をできないだけじゃなく、この道を歩くことすらないかもしれない。そう思うと、この一歩一歩もなんだか大切にしなきゃいけない気がしてくる。

 

そして、つい昨日にあんなことがあったのに、会話はいつまでも続いてはくれなかった。それが途切れたあたりで、どうしても大事な話になる。

 

「……なぁ、真姫。昨日俺の言ったことだけど……」

 

それは、告白の返事。

 

昨日の時点で終わっているという人もいるだろうけど、それでも一人一人にちゃんと断りを入れたかった。真姫もそれを察しているのか、取り乱すことはない。

 

「『誰とも付き合わない』のよね。少なくとも、しばらくの間は」

 

「ああ。……ごめん、力になってくれるって言ってくれたのに」

 

「気にしなくていいわよ。貴方が仮に他の誰かと付き合ってたとしても……医療面でのバックアップは純粋に仲間としてもしたかったし、お世話になった分色々とお返しはしたいもの」

 

まああなたが私たち以外と付き合うなんてことはないでしょうけど、髪をクルクルしながら答える。

 

特別上機嫌ではないが、不機嫌でもないようだ。つきあえなかったことそのものは残念そうだが、それでもどこか晴れやかな様子に見える。みんなにとっても、俺とツバサと穂乃果のことは数カ月間気がかりだったのだろう。

 

あのμ'sの解散でさえ、自分たちで決めることのできたみんなだ。その強さは俺が一番よく知ってる。……ちょっと、いやかなり俺の予想より強い女の子たちだけど。主に愛とか。あとは愛とか。それと愛情も。

 

 

「……今、何か変なこと考えてなかった?」

 

他の女の子のことを考えていると疑われてしまったのだろうか。真姫がまた淀んだジト目でこっちを見ている。

 

昨日のことでなんだかみんな憑き物が落ちたように感じたけど、それはあくまでも怒りとか恨みとかなのだろう。俺を捕まえて離さない、昏くて重くて、しかし甘美な愛情は今でも変わっていない。

 

「違うよ、真姫のことを考えてた。俺も真姫くらい強い女の子になりたいって」

 

「……それ、女の子はあんまりうれしくないんだけど?でもまあ、『貴方を守る』なんて言ったのは私だし。ありがと」

 

それでも、大分話しやすくもなった。俺の方も割と好意を自覚してるし、それをストレートに出せるようにもなってる。おかげで、こうして会話をしていてヒヤリとすることはない。

 

「そういえば一つだけ、聞かなきゃいけないことがあるの」

 

お互いに見つめ合いながら人目のない辺りにさしかかると、真姫が唐突に聞いてきた。

 

「貴方、2年生の3人や綺羅ツバサには『好きだ』って言ってたわよね?私たちにもどこが好きなのかちゃんと言葉にしてほしいのだけど?」

 

 

……う、そうきたか。

 

俺も吹っ切れる前だったから、確かにその4人以外にはハッキリと伝えてなかった。言葉にできるようになったとはいえ、まだ言うのは恥ずかしいんだけど、ここまで言わせておいて何も返さないのは流石に良くない。

 

言うしか、ないよな。

 

真姫もまた髪を指でクルクルしながらチラチラ見てるし。いやこの可愛い真姫をしばらく眺めていたい気持ちもあるけど。この動作結構好きなんだよな。真姫って髪の毛凄くきれいだし……」

 

「ちょ、ちょっと!そんな小声で褒めなくてもいいじゃない。もっと大きな声でお願い……」

 

こ、声に出てた!……まだ疲れが残ってて、どうも俺の方もガードが緩い。お互い顔が赤くなって気まずいけど、ここまで来たら後は流れしかない。

 

「え、えーと……まずとっても綺麗だ。ツリ目気味なのとよく手入れされた髪の毛が相性バッチリというか。お家は病院でお金持ちだし、医学知識もありながらピアノも弾けて作曲も完璧。μ'sの楽曲提供や演奏もこなせる。特に歌声が魅力的。ちょっと運動は苦手だけど、勉強も出来てテストは満点。サンタさんを信じていて……」

 

「なんかスペックや外見ばっかりじゃない!もっと中身に触れてよ!う、嬉しいけど」

 

 

「ツンツンしてるけど誰よりも仲間思いで面倒見がよくって……、μ'sの曲や1年生の加入でもお世話になったし。なにより、こんな俺にもニューヨークで最初に手を差し伸べてくれた真姫の優しさが……好きなところだよ」

 

……これを、登校の最中に言ったのがよくなかったのかもしれない。

 

完全にスイッチの入った真姫は、俺の腕を掴んだかと思うと、「今から婚姻届を出しに行きましょう。大丈夫よ、パパもママも喜んでくれるわ」と血走った目で引きずって来た。

 

何処に連れ込まれるかわからない俺はさながら豹に襲われる獲物であり、抵抗するので精いっぱいだった。

 

結局真姫はなかなか落ち着いてくれず、1限は二人揃って遅刻した。遅刻よりも、後からみんなに「変なことしてたんじゃないの」「次は私にもしてよ」という尋問の方がキツかったんだけど……。

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

昼休み。

 

突然俺のクラスに来た花陽に連れられて、人気のないところで一緒にお弁当を食べている。

 

食べ終わった後に「デザートが欲しいですっ!」なんて言うからなんの話かと思ったけど……

 

 

「ふぅ……ふぁ、ああ。んっ……♡」

 

 

目を輝かせて俺の指を舐めて、悩ましい声を上げている。

 

彼女はニューヨークの一件と、数日前の事件以来、事あるごとに危険な肉体的接触を求めてきていた。この指を舐める行為も、その一つ。

 

流石に人目につくところではできないし、みんなの前でやるのも羨望と嫉妬の視線が凄いからこうして物陰でやらざるを得ない。俺としてはまだキスまでで我慢してもらいたいんだけど、花陽の涙で結局押し切られてしまった。

 

理性が崩壊……とかするほどの度胸は俺にはないとはいえ、変な気持ちになってしまうのは否定できない。ただでさえ大人しくて献身的なイメージのある花陽にこういうことをされると、ギャップの魅力が胸に刺さってしまう。

 

……さっきの真姫といい、やっぱり俺もどこかおかしくなっちゃってるよなぁ。倫理観とか。でも、みんなと一緒ならそれも悪くないか……。

 

一心不乱に俺の指を味わってる花陽を見ながら考える。

 

大人し目に見えて、元々こういうところでは自分らしさを発揮する押しの強い花陽だ。今こうなってるのも必然なのかもしれない。それはニューヨークの時でもそうだった。俺のためにあそこまで献身的に、積極的に語ってくれた花陽の姿はそれを物語っている。

 

……しかし、花陽って改めて間近で見ると、やっぱり美人だよな。

 

まつ毛も綺麗だし、今忙しいぷっくりした可愛らしい唇も唾液に照らされて美味しs……

 

 

ええい!俺は何を考えてるんだ!自分でさっき『キスまで』とか言ったのに!!……でも目が離せない……。

 

 

「どうしたんですかぁ……?ちゅるっ……そんなに、私の方を見てぇ……♡」

 

 

……あ、バレてた。

 

男を誘うような目つきと笑みで、下から俺の顔を見上げてくる。

 

あんな風に誘惑してきたことりや最初に襲われた穂乃果もそうだけど、printempsのメンバーはなぜこうなってしまったんだろう?純粋宣言とかピュアガールズとか。

 

いや、むしろそういう女の子こそ、病んでしまった時にタガが外れてしまうものなのかもしれない。

 

「うん、花陽があんまり可愛かったから目が離せなくなってた」

 

「っ!?///」

 

一瞬ビクッとしたかと思うと、指を口から抜いて慌てる花陽。

 

「しゅ、しゅしゅしゅ、しゅーやしゃん!?そういうのはははははは反則ですぅ!!!」

 

あ、今ちょっと噛んだ。かわいい。

 

こんなプレイみたいのをしてる時点で、ちょっとした口説き文句くらい全然恥ずかしくない気もするんだけど、その辺は女の子の考えはよくわからない。まあ確かに前までの俺らしくないセリフではあるけど、みんなのことが好きなのは本当だし、色々と返していきたい。誤解を恐れずいえば、『釣った魚に餌をやらない』ハーレムものの主人公みたいになるのは嫌だし。

 

「そうなのかな。俺としては素直な感想を言ったつもりなんだけど……」

 

「もう……。それが一番、私達には嬉しいんですよ?それと、私達以外の女の子にそういうこと言ってないですよね……?」

 

「言ったらセクハラだよ今の世の中。心配しなくても俺が好きになるのもみんなくらいだし、俺を好きになるのもみんなくらいだろ?」

 

「鈍いのは相変わらずなんですから……修也さんを狙う女の子はきっとこれからもいっぱいいます!」

 

例の静岡の女の子と連絡とりあってるのは知ってますよ!と夫の浮気を疑う妻のような目線で睨みをきかせる花陽だけど、このくらいならもう怖くなく、どちらかというと可愛い。ほっぺをプクーと膨らませるあたりとか。

 

しかし、今回のことは2年生組とツバサが暴走した形だったけど、10人の中で一番病んだ愛の爆発力が強いのは花陽だ。ことりなんてわかりやすく私物を交換してきたり、男女の……アレを求めてくるけど、花陽の場合は『味わう』って名目でなにをしてくるかわからないところがある。

 

愛した人に自分を食べさせたいとか、愛した人をもっと物理的に食したいとかは流石に勘弁してほしい。白ごはんを愛する花陽なら、お米に混ぜてくることはないと思うけど……。

 

おにぎりの塩のついた右手と、花陽の唾液のついた左手を見つめて考える。さっきも花陽の握ってくれたおにぎり食べてたけど、大丈夫だよな……?

 

 

「うふふ……♡修也さんの中に私が……私の中に修也さんが……♡」

 

 

……血とか髪の毛ならわかりやすいけど、入れられるものなら、人体には他にもいくらでもあるよな。

 

 

やっぱり不安になってきた……。

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

花陽と別れて、今は放課後。

 

ラブライブ本選まで、もうそんなに時間はない。今日の練習も気合を入れていかないと間に合わないし、ケガもしかねない。

 

海未と一緒に組んだメニューはそれなりに上手くいってるとは思うけど、ツバサに知恵を借りるべきだろうか。

 

いや……ツバサとμ'sはまだ仲直りしたわけじゃない。ツバサも引き受けてくれるかわからないし、みんなにも誰が考えたのかと問い詰められた時が怖い。ラブライブとは関係なくても、この両者には仲直りして欲しいんだけど……。

 

かといって、いい案が浮かぶわけでもないんだが。女の子同士の喧嘩って、どう解決させればいいのかよくわからないし……。なかなか男みたいにそれっきり!っわけにはいかないとはよく聞く。μ'sのみんなはあんまりケンカとかしないし。どうしたものか。

 

そうやってまた考え込んでいると、もう部室の前についてしまっていた。悩んでいても仕方ないなとドアノブを回そうとすると、ふと、この部室に居られる時間も残りわずかなのだと気がついた。

 

卒業式は一ヶ月後。ラブライブは三週間後に迫った。男子である俺は、卒業後に女子校に来られることはほぼないと見ていいだろう。

 

……そう考えたとき、このドアノブを回す機会も数える程かも知れないと、寂しい気持ちがある。数十秒ほど躊躇っていると、後ろから声をかけられた。

 

「修也くん?どうしてドアの前で立ち止まってるにゃ?」

 

今日も元気いっぱいな1年生、星空凛だ。体を動かしたくて仕方ないのか、すでにジャージに着替えていて、いつでも練習できる態勢を整えている。

 

「ああ、俺がこのドアを開けるのもあと何回なんだろうなーって……」

 

「もうすぐ転校しちゃうからってこと?」

 

「こればかりはどうしようもないからさ。みんなと授業受けられるのも最後だし、μ's解散の後もスクールアイドルするって言ってたけど、それもできないし」

 

みんなはμ'sが終わっても、スクールアイドル部を続けていくと3年生に宣言した。μ'sは完全に終わらせます、と。

 

と同時に、俺も転校先で夢を叶えてみせると宣言してしまったし、それぞれの場所で頑張らないといけない。

 

……それでも、やっぱりさみしいものはさみしい。

 

「でも、転校した後もいつでも会ってくれるんだよね?一緒の学校に行けないのは寂しいけど……それなら凛は平気だよ」

 

あれ。みんなと同じように取り乱すかと思ってたけど、凛は落ち着いている。穂乃果なんて「穂乃果もしゅー君の学校に転校するもん!」なんて言い出して生徒会長なのにと止められてたくらいだったのに。

 

「凛は……寂しくはないか?俺は結構そうなんだけど」

 

1年間、μ'sのみんなと一緒に頑張ってきた。

 

まだラブライブもあるから少し気が早いけれど、最後の最後に痴情の縺れなんて笑えない事態も起きちゃったけど。これで凛に寂しくないと言われたらそれはそれで少しショックなんだが……

 

「ううん!今の修也君の笑顔、なんだかすごくスッキリしてるもん!」

 

帰ってきた答えは、俺のことだった。

 

「俺が?スッキリしてる?」

 

「凛はね?修也くんが満足して音ノ木坂から出られたら、凛はそれで十分嬉しいんだよ?この前あんな大声で好き!って叫んでから、修也くん笑顔だもん。だからきっと、来年も笑顔だよね?」

 

俺が笑顔でいられれば十分、か。

 

そうだよな。みんながこれからも笑っていられて、幸せなら問題ない。今どこにいるかより、次どこでどうしてるか。それがきっと一番大事なことなのかもしれない。μ'sがなくなっても、俺が二度とスクールアイドルに関わることがなくても、新しい夢を叶えればいいんだ。

 

「……ありがとう、凛の言う通りだ。俺もみんなも、笑顔ならそれでいいよな」

 

「修也くんは難しく考えすぎなんだにゃ。ニューヨークでも『楽しもう』って言ったでしょ?」

 

「ああ。もう残り時間は本当に少ないけど……その時間を大切にしよう。思いっきり楽しんでやろうぜ」

 

また凛の前で情けないところを見せてしまって、恥ずかしいかぎりだ。もう弱いところは見せないようにしよう。

 

ツバサには悪いけど、ラブライブの優勝は俺たちが……

 

 

ガシャン!

 

 

………………なんだ?今の音。

 

恐る恐る音の出た方向を確認すると、手錠が凛の腕と俺の腕で繋がっていた。

 

「それじゃあ、今日もこれでずっと一緒に楽しんで、最高の笑顔になるにゃー♡」

 

……全く悪気のない笑顔を見ると、何も言い返せなかった。この1年間磨かれ続けた、屈託なく、眩しすぎる凛の笑顔。

 

結局この1日はこのまま練習することになり、いろんな意味で疲れた。ダンスとか視線とか鍵穴とか汗とか帰りとか。

 

ごめん、前言撤回だ。

 

弱いところみせるから、ツバサちょっと助けにきて、また手錠を外してくれ……。

 

 

 

 




150000UAの大台に乗れました!いつも読んでいただいてありがとうございます。次回から本格的にSUNNY DAY SONGに入って話を完結させていきたいと思います。

この数ヶ月で修也くんもヤンデレじゃないと満足できない身体にされてしまったので割とさらっと流してますけど、普通にヤバイですよねこの男女関係。なんていうか、色々と羨ましいんですけど。

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