???「メリークリスマス、修也」
みたいな展開にはしませんのでご安心ください。
「みんな!もう来てたんだな」
この日、部室には、もう俺たち以外の面々は全員揃っていた。ラブライブを前に、練習したくてウズウズしてるって顔だ。……多分、俺も同じ顔をしてると思う。
「修也にしてはずいぶん遅かったですね?」
「しゅー君も私の寝坊がうつっちゃったかな?……えへへ。おそろいだね」
「ことりも、そろそろ練習したいなって思ってたんだ♪」
2年生が思い思いの言葉を述べる。
「私たちも、ラブライブが終わるまではまだスクールアイドルだから、ビシバシ行くわよ?」
「ま、私は別にどっちでもよかったんだけど!卒業してもアイドルだし?」
「にこっち〜ホントに素直やないなぁ。わしわしするで〜?」
3年生もやる気満々だ。最後だからこそなのだろうけど、その姿は最後だと感じさせない。むしろこれからだという感じだ。俺も負けていられない。
「面倒くさいわね、ずっと一緒にいると、何も言わなくても伝わるようになっちゃって」
「あと少しだけど……みんなでこうして、μ'sで居られる時間を大切にしたい。ね、凛ちゃん!」
「かよちんの言うとおりにゃ。最後まで頑張ろう!勿論修也くんもだよ!」
1年生のみんなもライブを本当に楽しみにしているのが伝わってくる。今日までの日々に後悔しないし、今日からの日々もきっと楽しめる。……この仲間たちが、同じ空の何処かにいてくれると思えれば。
「あのね、しゅー君……私たちね、もう一回だけ話し合ったの。でもやっぱり……」
「みんな、答えはきっと同じだったよ!」
「μ'sはスクールアイドルであればこそ……ですよね?」
「全員異議なし、全会一致よ」
μ'sは、ラブライブを最後に解散する。理事長には苦労をかけてしまうけど、俺たちで決めたことは、俺たちで貫き通す。
例え周りがどういおうと、俺たち自身で決めたことなんだから。
「では、修也も来たところで……今日はもう一度ダンスや立ち位置を再検討しましょう。昨日までの練習で思いついたことを皆さん、言ってみてくれませんか?」
部室のホワイトボードに描かれた図に、みんながあれやこれやと意見を出し合っている。
あと一回。
μ'sのライブはきっと……公式には、あと1回だけ。
最後にラブライブの会場で、すべてを終わる。
だからみんな最高のライブにしようと、こうして綿密に検討を重ねているわけだ。
「凛はこっちのステップの方がいいと思うにゃー!」
「穂乃果は今のままがいいな。その方が審査員の人にもよく見てもらえる気がする!」
「ちょっと!このスーパーアイドルにこにーの考えたフォーメーションを……!」
……いつもの調子が戻ってくると、それはそれでちょっと姦しい。年頃の女性が9人もいるわけだし、自然とヒートアップしたときの激論具合は男連中を超える。
このメンバーを、ツバサ達と和解させられるんだろうか?
実際に昨日ツバサに電話してみたし、こっそり穂乃果にも話してみたんだけど、答えはどちらも複雑なものだった。
『しゅー君がああいってくれたんだし、もう怒ってはないけど……謝りづらいな』
『例の勝負は実質無効でしょうし、恨みもないけど。あんまり顔は合わせたくないわね……』
お互い、どう接していいかわからないのだという。
……実は、俺もよくわからない。
でもこのままってわけにもいかない。妙なしこりが残ったままラブライブに臨みたくないし、みんなとこれからも一緒にいるのだから、仲が悪いという訳にはいかない。
……随分多くのことが片付いたけど、それとあともう一つだけ考えなくちゃいけないこと。μ'sの解散を伝えるタイミング。
さっき解散だということは改めて決めたけど、まだまだ世間のスクールアイドルとμ'sへの熱狂は収まりきってない。何かハッキリとした機会でもあれば、発表しやすいんだけど。大会本番ではそんな時間はないし、発表があまり遅くても皆さんに期待を持たせてしまう。解散を擁護してくれてる理事長のためにも、多少の時間はあった方がいい。
ラブライブまでが3週間だから、1週間前くらいがベストだろうか?
なんとかツバサと穂乃果の関係と、μ'sの解散を同時に解決する方法はないものか。
……そんな都合の良い話があるわけないのになぁ。
そもそもこんな凄いスクールアイドル達に順位なんてつけちゃっていいんだろうか?さらに理事長にμ'sを続けさせるような圧力だなんて。
逆恨みだとは分かっていても、新しい採点システムとやらも今回二人の争いにつながっちゃったし。
この二人だけじゃなく、他のスクールアイドル同士でもっと仲良くとか……。
「修也……修也?」
「え、ああ。ごめん。また考え事してた」
また考え込んでしまった……。海未が俺を呼ぶ声にも気づかなかった。親父にも時々注意されてたけど、こんなんで空飛んでたら死ぬぞって。
「修也の意見が欲しいんです。あそこで騒いでいる3人の収拾がつかないので……」
「1年一緒にやってきて、むしろバラバラになってるじゃない……。個性が強くなってるわ」
「みんな張り切ってるもんなぁ。でも真姫ちゃん、意見がいっぱいあるのはええことやと思うよ?むしろ、みんなが自分らしさをぶつけあえるくらい信用しあってるんやないかな」
みんなが同じ意見になるより、違う意見が納得しあって団結する方がより良いものになる。ただでさえμ'sみたいに個性の強いメンツなら、猶更だろう。
だからこそ、ツバサ達には和解して貰えたら最高なんだけど……どうするかなぁ。
「だーかーら!絶対ここはみんなで一緒にポーズ取った方がいいんだってば!」
————————その時、ふと穂乃果の言った言葉が耳に残った。
『みんなで』——————————?
「それは確かにいいと思うけど、現実的にできるの?この直前のヤツからこの体勢に移るのは難しいわよ?」
「一人一人違うポージングの方がいいと思うにゃ!」
「でもでも!そっちの方がこの曲のテーマにもあってるし、スクールアイドルらしさあるし!……あ!しゅー君はどう思うの!?」
ああ、そうだよな。
俺たちはスクールアイドルしてるんだもんな。
……最後の最後まで、俺は穂乃果に教わってばっかりか。
「…………………俺は穂乃果の言う通りだと思う。そうだよ、もっと早くに気づけばよかった」
「? しゅー君?」
「みんな、もう1回ライブできるか?2週間後くらいに!」
思いついたのなら、もう立ち止まってはいられない。
すぐに始めよう!
「「「「「「「「「……えっ?」」」」」」」」」
「穂乃果、お前ちょっとツバサと一緒に歌ってくれ!ダンスもだ!合同ライブをやればいいんだよ!!」
「「「「「「「「「ええーーーーーっ!?!?」」」」」」」」」
細かいことは俺が、ツバサ達A-RISEと交渉するから!
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「……と、いうわけで改めて自己紹介する。A-RISEの統堂英玲奈だ。今回はひとつ、よろしく頼む」
「知ってると思うけど、同じく優木あんじゅよ。衣装づくりなら手伝えるから、気軽に声をかけてね?」
「…………………数日ぶりね。A-RISEのリーダーをしている、綺羅ツバサよ。合同のグループ名も決まってない状態だけど、しっかり話し合いをしましょう」
……あまりのスピード展開に、みんな固まっている。無理もない。さっき俺が電話してから3時間と経っていなんだし。
ツバサもまだ面と向かって話せる気分ではないみたいだし、放っておくといつまでもこのままになりそうだから、呼び出した俺が話を進めよう。
「三人とも、今回は誘いを受けてくれてありがとう。特に英玲奈さんとあんじゅさんは久しぶりです」
「もう、敬語なんていいって言ったじゃない?私たちもライブがしたくてうずうずしてたんだし、気にしないで?」
「それを差し引いても、ラブライブの前に最大のライバルグループ同士が手を組んでライブとはな。全く、キミの発想も大したものだ。あ、UTXには今後プロのアイドルになるためのステップとして、許可は取り付けてあるから心配はしないでくれ」
二人と仲良さげに話す俺を見て、突然みんなが正気に戻って、俺の腕をつかんだと思うと部室の外に引きずり出した。痛い。
「修也、今のどういうこと!? 綺羅ツバサはまだしも、A-RISEの他のメンバーといつ知り合ってたのよ!?」
「それなら割と最近だ。ツバサに紹介してもらった」
「そうなの?後でサイン貰わないと……じゃなくて!!後でたっぷり聞かせてもらうからね……!!」
愛に病んでいても、ドルオタっぷりは相変わらずらしい。てか前にキミらだけで会ったっていうときにもらわなかったのか。……もらえないか。
スクールアイドルにかかわる前は、アイドルって男が好むイメージだったけど、今では女の子もまたアイドルが好きなんだと気づかされている。
……って、にこの場合は同じプロになる予定なのに、ライバルじゃないか一応。もっと敵視するくらいでちょうどいいんじゃ……。
「修也さん、やっぱり他の女の子とも仲良くしてるじゃないですか……!!やっぱり三食、私の料理で体の中から綺麗にしてあげないと……」
「しゅーくん、他の娘に手を出してたんだぁ……。あんまりそういうことしてると、おやつにしちゃうよ?」
うう、ぷらんたんの2人は特に怖い……。
ただ、みんなと別れてた間に仲良くなってたのは事実だから、何も言い返せない……。
みんなにわかってもらうまで謝罪と説明をして、13人で話し合いに入るまでは、結局また1時間もかかってしまった。時間ないのに……。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「それで、こうして3人を残した理由は?まあ、だいたい予想はつくけど……」
「今回のライブの事、だよね。しゅー君」
この日の簡単な自己紹介やライブの方向性とかの話し合いを終えて、俺とツバサと穂乃果だけが残った。
勿論、きちんと話し合うためだ。
「ああ。もう言ってるとおり……μ'sとA-RISEで合同のスクールアイドルグループを一時的に作って、ライブをしてほしいんだ。そこで、μ'sの解散も発表する。ラブライブ前で日程は厳しいけど、幸い余裕のあるスケジュールを組んでたし、何よりやる価値があると思ってるんだ」
「μ'sの解散を発表するライブというだけなら、私たちを呼ぶ理由はないものね?」
「察しが早くて助かるよ。結論から言うと……2人に仲直りしてもらいたいって言うのがある」
今更誤魔化しても仕方ないから率直に言う。するとやっぱり、まだ二人は複雑そうな表情で俺から目を逸らした。さっきからもチラチラ見ながらも、二人とも目を合わせてなかったくらいだしな。無理もないけど……。
「それは……すぐには無理だよ。私もツバサさんも、今の状態やしゅー君の告白は受け入れたけど……、明日から仲良くってわけにはちょっと……」
「電話で言った通り、私も同意見ね。一度殺しあおうとしたくらいには本気で憎みあった相手なのよ?大切な貴方の言うことでも、簡単には……」
「俺のことはいいよ。俺を賭けて勝負って言いだすところとか……2人とも、スクールアイドルで大切なことを忘れてる気がするんだ。俺としては、このままならラブライブに出すわけにはいかない」
俺がそういうと、二人ともちょっと焦り始める。でもまあ焦ってもらわないと困る。そのくらいは反省の色を見せてほしい。
「『誰のためのラブライブか』……って、ツバサには言ってなかったか。スクールアイドルなら、ライブについては一番にファンのことを考えてくれよ。大切な時間を、大好きな歌と踊りを、応援してくれるファンの皆と共有するために、楽しむためにライブをするんだろ?そういう勝負とか採点とか野暮なことは、スクールアイドルやラブライブの運営協会だったか何だったかに任せとけよ」
「私は最初、学校のために歌を始めた。みんなと出会い一緒にラブライブを目指し全力で走り続けて。絶対に届かないと思っていたものに手が届いた……」
「いじめられてる自分の人生を変えたくて。修也と一緒に夢の頂に立ちたくって……必死で努力してきたわ。その中で大切な仲間を得て、修也とも再会して、愛し合って……でも、ファンの人たちを蔑ろに思ってたわけじゃない」
裏方の俺と違って、一番ファンの近くで熱い想いを届けて、受け取っていた二人ならわかるはずだ。逆に俺はファンの目線だからこそ言えることもある。
それこそが『スクールアイドル』なんだと。それが『ラブライブ』の素晴らしさなんだってことを。
「……偶然そうなったんじゃなくて、一生懸命に、夢中になれたから。楽しかったから!」
「なるほどね、修也の言いたいこと、穂乃果さんのおかげで掴めてきたわ。スクールアイドルの元々の楽しさなら、二つのグループが一緒にライブをしてもきっと素晴らしいものになる……。そう言いたいのね?」
「そんなところだ。俺としてはあんまり順位とかつけるのも好きじゃないし、そういう運営の奴らにこういうのもあるんだぜ!……ってのを見せてやりたい気持ちもある。無理にμ'sを続けさせようとする大人たちにも見せてやりたい」
理事長みたいに俺たちのことを真剣に考えてくれる人もいるけど、大人や世間の人はμ'sがただ続くことを祈ってる。でも、スクールアイドルが注目され始めてる今だから、しっかり伝えるべきだと思うんだ。俺たちはそれぞれの道を行く。プロになる娘もいれば、別の道を進んでいく娘もたくさんいる。学生である間の短くて綺麗な輝き。それを伝えるのがスクールアイドルなんだって。
全力で俺たちが楽しんでることを、ファンの皆と、スタッフや裏方に回ってくれる人達と、一緒に作り上げていく姿を見せるんだ。
それはきっと、他のスクールアイドルのためにもなる。2人にも、反省の意を込めてその楽しさをラブライブの前にしっかり思い出してもらいたい。
「すぐにとは言わない。でもそれを通じて、2人にも仲直りしてほしいんだよ」
……いくつかある理由は説明したけど、本心ではもう一つだけ、理由があった。この二人なら、きっと最高のライブができるから。俺の出会った中で最高のスクールアイドルで……何よりも愛してるこの二人の、力を合わせた最高のライブが見てみたかったんだ。
μ'sとA-RISE……その二つのグループが一つになって、自分たちのために、みんなのために最高のライブをする姿を。
「……うん!しゅー君の気持ち、わかったよ。やろう!スクールアイドルがいかに素敵かをみんなに伝えるライブ!ツバサさんも、いいですか?」
「私たちスクールアイドルが心から楽しめると思えるライブをやれば、奇麗に終わる姿を見せられれば……たとえ私たちがいなくなっても次の世代に必ず繋がっていく。というわけね。『みんながハッピー』って言うのも、悪くないわね……。いいわよ穂乃果さん、面白そうじゃない。乗ったわ、その話」
やっと2人が目を合わせてくれた。
その目には、この前のような恨みつらみはない。
2人とも本心からこのライブを楽しみに考えてくれたことがわかる。
「……ただ一つだけ、しゅー君に提案があるの」
「奇遇ね、私も条件があるわ。……お先にどうぞ?」
なんだろう、急に改まって。
「ありがとうございます。……私ね、他のスクールアイドルも呼びたい!日本中からみーーーんな!すごいのは、A-LISEやμ’sだけじゃない……スクールアイドルみんなが歌ってそれを知ってもらうライブをするんだよ!」
「あら、この前も感じたけど、やっぱり私たちどこか似た者同士ね。同じような提案だけど……グループとしては名義は仮に私たちでも、みんなで一つの歌を歌いたいの」
……今の二人の提案をあわせると……。
日本中からスクールアイドルを呼んで、みんなで一つの歌を歌うライブをする、ってことか……?
「そこまでは考えてなかったけど、できるのかそんなの?交通事情とか、俺たちは無理が効いても他のグループは……」
「なんなら雪穂や亜里沙も呼んじゃおう!『みんなで作って楽しむ』のがラブライブやスクールアイドルって言ったの、しゅー君じゃない?」
「穂乃果さんの言う通りね。誰の歌でもないスクールアイドルみんなの歌!……私たちにぴったりだと思わない?A-RISEのプロ入りを発表する機会も探してたし、ちょうどいいわ」
二人とも、本気なんだな。
……じゃあ、俺が応えないわけにはいかないな。
なんてったって俺は、ツバサの幼馴染で、穂乃果達のマネージャーなんだから。
「ああ、やってやろう!ニューヨークの時以上に最高の……いや、もしかしたらラブライブの本選より最高のライブを、みんなで作るんだ!!」
こうして俺たちは、A-RISEまで巻き込んで前代未聞のライブをやることになった。
とにかく動いていく中で、少しづつ変わった未来。
その事実が、俺や二人に挑戦する意欲を生んでくれる。
ラブライブだけじゃ終わらない。おれたちはまだ挑戦できるって。最高の夢を、カタチにできる時なんだって。
そうだよな、シンガーのお姉さん。
……これでよかったんだ、きっと。誰のためのラブライブなのかは、答えは人それぞれなんだろうけど……これは間違いじゃないはず。スクールアイドルみんなのラブライブに賭ける夢の、究極であってくれる。
……この後、ツバサが無理してコーヒーに口をつけて舌を火傷しかかったのは笑い話だけど。
タイトルはFuture Styleから。
気づいたら30万文字突破してました。このssを書く中で、最初はアニメや劇場版のセリフを下敷きにするのですが、いつもほとんど違うシーンを書いてしまっている気がします。歴史的和解を成し遂げましたね。
クリスマス?正月?仕事で両方ぼっちですよ。聖なる日の祈りを聴きながら……