ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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SUNNY DAY SONG準備中のあのくだりが好きです。

ここのところの更新ではまた各人の個人回を下敷きに書いていますが、なんだか自分が懐かしいですね。


第48.5話 過ぎていく時間

企画が動き出して、早くも数日が経った。

 

既に真姫とツバサが新しい曲の準備を終えていて、歌詞も検討中だ。手当たり次第にスクールアイドルにお誘いのメールを送りまくったんだけど、既に予想をはるかに超える数の返答が返ってきている。

 

もちろん、答えは「YES」。中には、μ'sとA-RISEに憧れるあまり、『一緒に歌わせて欲しい』と逆オファーを出してきたスクールアイドルとその卵達もいたくらいだ。

 

しかし一方で、返答を渋っているスクールアイドルも多い。こんな企画過去に類を見ないから、迷う気持ちはわかる。

 

時間がないから、『そういうところには直接会いに行って勧誘すればいい』と俺は提案したんだが、「しゅー(修也)君(くん)(さん)はダメ!」と全会一致で拒否されてしまった。俺が他の女の子を見るのも嫌だし、他の女の子が俺を見るのも嫌とのこと。おかげで最近は、ほぼ必ずメンバー誰か一人の監視付きで行動している。

 

ちなみに交通費は真姫に援助してもらってるが、上手くレシートをもらってくればA-RISEのライブの宣伝費でもあるとして、UTXが経費で落としてくれそうだ。

 

会場は英玲奈さんの言った通り、UTXがA-RISEのプロデビューの宣伝の舞台にもなるってことで、しっかり秋葉原で抑えてくれた。路上だけど、広い道路だからかなりの人数のスクールアイドルも入るだろう。バルーン代とかバカにならないし、支援があるのはありがたい。

 

そこで、俺は勧誘に行ってないタイミングのメンバーと準備や練習をしているわけなんだが……いくらなんでもこんなにたくさん風船の作業をやるとは思っていなかった。まあ、ステージに上がらない俺の仕事だよな。

 

 

「しかし、流石に風船触ってばっかりってのも飽きてきたな。希はどうなんだ?」

 

「ううん、ウチは平気!夫婦で一緒に何かするのは楽しいもんね♪……あっ、家を買ったら庭付きにせえへん?家庭菜園とか色々してみたいなぁ……」

 

「……あ、ああ。そうだな……」

 

今の作業は希が手伝ってくれている。イントネーションにはもうツッコまない。希の中で俺と夫婦関係にあるのは揺るがない事実と化しているが、下手に刺激してまた監禁でもされたら困るし……。

 

なんだかんだ言って過激な行動に出ない希だから、それはないとは思うけど。

 

 

「そういえば最近お義父さんとはどうなん?お義母さんと仲直りとかしたの?」

 

「帰ってきてはないけど、電話で時々話す。母さんともそうしてるみたいだし、もしかしたら何年か後には俺の名字も元に戻るかもしれないな」

 

一緒にバルーンの仕分けや準備をしつつ雑談する中では、両親の話題も出た。

 

不仲になってきたあたりでもう片方の名字になっちゃったからさ。関係が戻ればまた……

 

「ああ!そういえば修也君名字変わってたもんね。ご両親の関係の問題だったんかぁ、それなら納得!」

 

「って、あれ?なんで希が俺の名字変わったこと知ってるんだ?話したことはないはずだし、音ノ木坂どころか、事故に遭うよりは前だったんだけど……」

基本的に、今のメンバーで俺の過去を知ってるのはツバサくらいの筈だ。まさか子供の頃の転校で会ってたりとかしない限りは、誰も知らないと思う。まあ過去って言っても、別に大層な話があるわけじゃないけど。

 

ただ、親父との会話や母親との電話で声には出してない自信はないから、もしかして希にも盗聴とかされてたんだろうかと一瞬、不安になった。いや、やましいことは無いし、みんながそうしたいならもう諦めるけど、するならするで一言欲しい。ちょっとはワードに気を遣えるし。

 

「大丈夫、盗聴とかはしとらんよ?ウチは日頃の行いがええから、スピリチュアルパワーでわかるんや!」

 

……さりげなく思考を読まれたけど、まぁ希がそう言うのなら信じよう。実際、スピリチュアルパワーでなんとかなってしまいそうだし。

 

カードの占いやニューヨークに行く前のお守りとか、色々と助けてもらったもんな。

 

あとは、μ'sの名前も……

 

 

「希、そういえばなんで『μ's』って名前にしたのか聞いてもいいかな」

 

「どうしたん?藪から棒に」

 

終わりを意識すると、なんだか始まりが思い出される。後で知った話だが、μ'sという名前をつけてくれたのは希だったらしい。

 

μ'sがμ's以外の名前であることなんて想像もつかないが、その由来はなんだったんだろうか。

 

「いや、前気になってちょっと調べたんだ。『μ』ってギリシャか何かの言葉だろ?スピリチュアル的になんかあったのかなって」

 

「…………ふふっ、そうやね?ギリシャの音楽の女神様の名前なんよ。いいネーミングセンスだと思った?」

 

なんだか希は妙に得意げだ。確かにいいセンスしてるけど。

 

……やっぱ深い意味あるのかな?この名前。占いに詳しい彼女のことだから、何か縁起が良かったりするのだろうか。

 

「詳しくはヒミツ!……結婚式のサプライズまでとっとくつもりだから、修也くんにだけは待ってて欲しいんよ。絶対聞いたらびっくりするから!」

 

 

俺にだけは秘密って、夫婦に隠し事は無しとか言ってたのになんだか釈然としないけど……。そこまで言うのなら、きっと凄いネタなんだろう。

 

しかし、『結婚式まで』か。……もしかして、海外に行ってまで10人分の結婚式を挙げる事になるのだろうか。いや俺が好きでも、寂しいけどその頃までみんな俺のことを好きでいてくれるかはわからないし……。

 

だいぶ作業もひと段落してきたところで、作業場にしてた生徒会室に絵里が入ってきた。

 

「修也、もうすぐ演出担当の人たちのミーティングの時間よ?」

 

どうやら話し込んでしまっていたらしい。俺は希に後を任せて、絵里について行かないと。

 

そう思って立ち上がろうとすると、希に袖を引っ張られる。

 

 

「まだ、行ってきますのチューしとらんやん?」

 

 

万感の期待と信頼を込めて目を瞑られた。

 

……背後から絵里の視線を感じるが、それは嫉妬ではない。

 

『早くしなさい』という督促と、『後で私にも』という期待の視線だった。

 

 

……結局俺は差し出された希の唇に自分から重なっていった。こうして既成事実が積み上げられて、ズブズブと逃げられなくなっていくんだろうか……。

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

ミーティングが終わって、みんな部屋を出て行く。

 

演出担当も複数人いる。μ'sからは今回は絵里が、A-RISEからはあんじゅと英玲奈が参加してくれてるし、他のスクールアイドルも10人ほど来ていた。俺の正体については、μ'sに男のマネージャーがいたなんて噂が変な方向に広まっても困るので、UTX関係のスタッフということで誤魔化してある。

 

バルーンの数を把握できていたのは良かった。この会議で具体的かつ有意義な提案ができたし、突発企画とはいえこの分なら間に合うかもしれない。

 

次の準備をしに行こうと教室を出ようとしたが、俺だけはA-RISEの二人に引き止められた。幸か不幸か、絵里は次の用事に早めに出て行っていたので、見咎められることはない。

 

……この二人と話すのは久しぶりだが、その表情は、口元は笑っているが目は笑っていなかった。

 

「おっと、待ってくれ。一緒にライブをやる前に君に聞いておくことがあったんだ。μ'sのメンバーがいたら怖くてなかなか近づくタイミングも難しくてな」

 

「うんうん。それで……うちのツバサをフッちゃったんですって〜?μ'sに乗り換えたってこと?だとしたらちょっと私達も『お話し』しなきゃいけないんだけど……」

 

それもそうだ。その内容というのは、ツバサの事だった。確かに、彼女らの立場からしてみれば俺は大切な友人を傷つけた最低な男だろう。

 

……ちゃんとこの二人には伝えておかないとな。ツバサの友達には。

 

「ツバサには……本当に悪いことしたと思ってる。俺の彼女になれたことをあんなに喜んでくれたのに。俺もそうだったのに……こんなことになっちゃって」

 

「「……」」

 

二人はあまり目を合わせてくれないが、それでも黙って聞いてくれている。俺にとってのμ'sのように、この二人にとってツバサは何よりも大切な仲間のはずだ。罵倒や張り手の1つでも覚悟している。……そう言うと、言い訳がましくなるから言わないけど。

 

「μ'sとも付き合ってるわけじゃない。一度関係を白紙に戻したんだけど……これは俺が勝手に決めたことだから、ないとは思うけどツバサを責めないで欲しい。全部悪いのは俺だ、だから……」

 

前にもツバサにこうして謝ったことがあった。

 

後にも先にも、俺ほどA-RISEにもμ'sにも迷惑をかけた男もいないだろう。

 

根本的には、この2人に謝ることはない。謝るべきはツバサだから。それでも……

 

 

パシャッ

 

 

……?

 

 

「ぷっ、あははは!!冗談よ冗談!私達もツバサからある程度事情は聞いてるから心配しないで〜」

 

「今の焦った顔、なかなか面白かったな。バッチリ写真撮れたぞ、ほら見ろコレ。……いやはや、目を合わせたら笑ってしまいそうでな。すまなかった。く、くくっ……!」

 

 

あー……流石はスクールアイドルの頂点に立ったA-RISEだ。

 

油断も隙もないとはこのことか。その類まれな演技力には完全にしてやれた。……まぁ、全部が全部嘘ではなく、俺に対して問い詰めたい気持ちは多少はあったんだろう。だから表情にも真実味があった。

 

それでも、この俺の情けない顔一つで許してくれるんだから、器の大きさを感じる。まぁそうでなきゃ、あのぶっ飛んだ性格のツバサの隣にはいられないよな。二人とも。

 

「完全に騙されたよ……A-RISEはいつかアイドルを引退しても女優としてやっていけるんじゃないか?」

 

「そう言ってもらえると光栄だな。たが、引退というのは気が早い。私たちはまだまだこれからなのだから、μ'sよりたっぷりと応援してくれていいぞ?キミがライブに来てくれればツバサも張り切るだろうし」

 

「英玲奈のいうとおりね。この前のラブライブ予選では負けちゃったしニューヨークのも本当に凄かったけど……この合同ライブとラブライブ本選では負けないから!」

 

「いや、そもそも本選で勝ってたとしてもあなた方はゲストだから大会には関係ないでしょう……」

 

 

例のリーダーによく似た負けず嫌いっぷりに思わずツッコミを入れてしまう。

 

……とはいえ、二人の言ったことは冗談混じりでも、俺は真剣に考えないと言えない。なんだかんだ言って、穂乃果ともツバサとも、あれからしっかりと話すタイミングが取れてないんだ。今回のライブについてのことや、仲直りの説得こそしたけど、もっとしっかりと話しあって、理解を得られればいいんだけど……。

 

「何だと〜?恥ずかしい写真を撮られてなお、生意気な口はこの口か〜?」

 

「あのツバサをフッた男の子だもんね〜?そのくらい余裕って方かしら。このこの〜女泣かせの色男~♪」

 

ノリノリで関節技をキメてくる。い、痛い!!そんなに感覚のないはずの左手が凄く痛みを感じてる!ツバサと穂乃果も実力行使してたけど、今時のアイドルはみんな格闘戦もこなせるのか、うぐぐ……!!

 

そんなじゃれ合いをしていた俺たちだったが、突然絶対零度の声が響いた。

 

 

「へぇ……修也。私達よりもA-RISEと遊ぶのがそーんなに楽しいんだぁ……?」

 

 

 

「え、絵里……!?」

 

 

いつの間にか後ろに立っていた絵里の悪鬼の如き形相を見て、思わず自分の態勢を確認する。

 

……うん。A-RISEとイチャついてるようにしか見えない。少なくともみんなの視点からなら。言い訳できない。裁判なしで死刑だなこれは……。

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

絵里が俺の手をグイグイ引いて先に進んでいく。行き先はわからないが、少なくとも人気のないところだろう。そこで何をされるかもだいたい予想がつくけど、俺にそれを止める力はなかった。

 

……絵里と手をつなぐ機会って、改めて多かったなと今では思う。

 

ただでさえスベスベの手なのに、俺みたいな男のガサガサした手と触れ合っていいんだろうか?

 

「ちょっと油断してたわね……まさかあの二人がなんて。これならことりに言って『あの計画』も早めてもらわないと……」ブツブツ

 

怒りのあまり独り言まで呟いている。何か恐ろしいことを考えていそうな言葉が聞こえて来ているが……。

 

誰も来ない校舎の角の角に行きついて、俺は壁に押し付けられた。……いわゆる壁ドンの姿勢だが、こういう場合は逆壁ドンって言うんだろうか?

 

「修也……私は貴方が『待っていてほしい』って言うから待ってるのよ?……なのに、こんなにも簡単に浮気し始めるわけ?それなら私たちにも考えがあるのだけれど……」

 

表情はまだ嫉妬が燃えているが、口調は優し目だ。怒りの中にもどこか艶やかさと余裕を感じる。現に今も、俺の胸に絵里の胸が押し付けられているし、必然的にお互いの唇の位置も近い。

 

絵里はあの日以来、花陽と同じベクトルで、どこか理性のタガが外れてしまい、挑発的になった。本人曰く『もう我慢しなくてもいいのね?』とのことだったが、事あるごとにこうして俺を拉致して誘惑して、関係を迫ってくる。

 

その時は決まって、俺の手と自分の手を絡めようとするし、今も右手で壁ドンしながらも左手はそうしているが、映画とかで過激なキスシーンとかで見る奴そのものだ。これをされるたびに思わず赤面するが、その顔を見るのも絵里の楽しみのようで、実際少し機嫌が直ったようにも見える。

 

「フフッ……こうしていると、私たち恋人みたいね?誰の邪魔も入らない、邪魔もさせない、二人きりよ……?」

 

「え、絵里……悪かったから、これ以上は……!」

 

絵里の身体は徐々に密着と言っても差し支えないレベルになってきていて、俺も目を背けてしまって言葉が出なくなってしまう。別に他の皆が劣ってるなんて言うわけじゃないけど、それでも絵里のプロポーションは別格だ。それで迫られると、俺も反応に非常に困る。

 

仮にもここは音ノ木坂。そこで(元)生徒会長になんて、ゲームのやりすぎとしか思えない光景だが、俺は必死に理性で耐える。

 

 

「……ごめんなさい、ちょっとからかいすぎたわね。さっきの希みたいに、貴方の優しさに甘えちゃった」

 

 

……そういって離れて微笑む絵里。そう、少しの間耐えれば、絵里は基本的に解放してくれる。

 

これは直接聞いたわけではない俺の憶測だけど、絵里は多分、俺を誘惑して俺がそれに悩む顔も、そしてそれに屈しない顔も一緒に楽しんでいるのだと思う。それに負けて手を出さない部分も含めて俺のことを好きになってくれているんだ。決して焦らして楽しんでいるとかではない……はず。

 

「でも覚えていてほしいの。貴方の目が夢に向かって、憧れに向かって遠くを見てる時や、さっきみたいに他の女と触れ合ってる時……私が、私達がどれだけ辛い思いをしているか」

 

「それは……ごめん。迂闊だった。みんながどれだけ傷つくか、わかってたはずなのに」

 

素直に謝罪したつもりだったけたど、それが絵里の独占欲を良い意味で刺激してしまったらしい。

 

また手を掴まれて、思いっきり首筋を吸われた。数十秒間の後には、首にくっきりとキスマークが残っている。だが絵里は構わず、いくつもそれを増やしていった。

 

「……罰として、今日はこのまま過ごしなさい。あと数時間だから平気でしょ?綺羅ツバサに見つかって問い詰められても、上手く誤魔化して、ね」

 

そっと痕を撫でながら、満足そうにまた額にキスされた。

 

……結果的に、しばらく後に俺の勝手な想像は裏切られることになる。絵里は単に、メインディッシュを最後まで取っておいただけなのだ。

 

 

 

 

今の関係を言い出したのは俺だけど、あと一週間。

 

 

みんなでライブをするまで俺は無事なんだろうか……。

 

 

 

 

 




絵里編でも描きましたけどちょっと手フェチ……?のんたんは相変わらず妄想系ガールで。

ここまで描くと、初めて劇場版を見たときのことを思い出してきますね……。
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