ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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お待たせしました、後編です。本当は6/30なので、Aqoursの記念回を用意したかったのですが、申し訳ないのですが仕事には勝てませんでした……。





痺れるような恋の罠 ・後編【小原鞠莉】

 

「……やっぱり、エスカレートしてる」

 

 

あれからまた1週間たったけど、机や持ち物に対する嫌がらせはひどくなっていくばかりで、何も改善していない。

 

特に鞠莉に相談させられて、忠告された日以降……それが予言だったかのように苛烈になっていった。

 

……やっているのはきっと多くない人数で、大半は面白がるか関わりを避けているだけだとは思うけど、このまま放置すると身体に危害を加えられるのも時間の問題かもしれない。だって、僕に告白した彼女はあれから2週間になるのに、まだ学校に来ていないんだから。

 

その根本的な原因が肉体的なものなのか精神的なものなのか、それすら誰もわからないようだけど、少なくとも『僕が告白にOKを出さなかったせい』なのは間違いないと思われているらしい。

 

自分では鈍感な方だから、イジメも大丈夫だ……なんて心の何処かで思ってたけど、こんなに辛いものだとは思わなかった。周りの視線は厳しいし、友達もみんな一緒にはいてくれなくなった。先生だって味方はしてくれない。

 

たまにTVのコメンテーターが『辛いなら逃げろ』と言ってるのをみかけることがあったけど、今ではその意味がよく分かる。

 

ここに居続けたら、本当に病んでしまうかもしれない。学校生活は卒業までまだまだ続くんだから……。

 

 

……まずいな、いよいよ追い詰まってしまった気がする。なんとか彼女に会って、せめて学校を休んでる理由を聞かないと何も始まらない。

 

 

 

 

 

———————そう思った僕は、意を決して相談してみた。

 

怖くっても、この状況で唯一頼れる相手である……鞠莉に。

 

 

「ふーん……。その娘に会って事情を聞くのに、小原家の力で連絡先を調べてくれないかってわけね?」

 

「そうなんだ。先生に聞くわけにはいかないし、ましてやクラスの人たちは誰も教えてくれないからさ。本人に会って、現状を話してみればなんとかなるかもって……」

 

 

この状況の原因が、もし本当に彼女の周囲が誤解しているのなら。その娘から何か説明があれば、きっと誤解は解ける。そのためには、まずは彼女がなぜ休んでいるのかを明らかにしなければならない。

 

もし仮に彼女自身が原因でも、きちんと話せばわかってくれるはずだ。

 

 

「…………でも、きっと無駄だと思うわよ? 貴方は優しいからまだ信じたがってるみたいだけど、会おうとしたところでマリーと違って、あんな女が貴方に応えてくれるわけがないわ。そんな不確実な方法より、転校とか考えたほうがいいと思うけど……」

 

 

いい案だと思ったのに、なんで鞠莉はここまで彼女を嫌うんだろう?

 

……でも、それを否定しきれない僕も居たのは確かだ。この辛い日々の中で、彼女を信じたがっていた僕の中にも疑念が生まれ始めていた。

 

 

『彼女が今回のことを仕組んだんじゃないか』

 

『僕はこんな目に遭ってるのに、どうして学校に来てくれないのか』

 

『鞠莉が思ってた通りなんじゃないか』って……。

 

 

それこそ逆恨みなんじゃないかって疑念が……。

 

 

(ダメだ、こんなことを考えてちゃ)

 

僕自身もやっぱりまいってしまってるんだろう。鞠莉に相談したあと、気分転換に普段と全然違う道を歩いてみる。子供の頃、引っ越す前に住んでいた隣町だ。

 

……違う道を通っているのは鞠莉に会わないためでもあった。もし彼女の連絡先がわかったら、何から話せばいいのかわからない。だから一人になって、いろんな悩みから距離を取りたかった。

 

いくら考えても、材料がなさすぎることはわかってる。鞠莉の情報頼りだって言うことも。

 

それでも何かを見落としたり、誤解してないだろうかと……。心のどこかで思ってた。彼女のせいなのか、彼女の笑顔は嘘だったのだろうかと、振り子のように心が揺れている。あの告白の時の笑顔……

 

 

 

…………待てよ? 彼女は告白の時、子供の頃の出来事を話してた。

 

あの時僕は、沼津駅から少し行ったこの辺りに住んでいたはずだ。そして、年齢相応にそこまで遠くには遊びに行ってないはず。

 

もしかして、彼女の家はこの辺りなのだろうかと思ったところで、ある一軒家が目に入った。

 

見覚えがある。そうだ、ここが……!

 

 

「……あった、ここだ。あの頃は小さな妹がいて、今はもう少し大きくなってるはず……!」

 

 

確か『あんこ』っていう小型犬も飼い始めた頃。その子も今は成犬だろうが、犬小屋のようなものも見えるし、間違いない。

 

……僕が覚えてなかっただけで、彼女はそのころから好きだったといってくれた。待つと確かに言ってくれたんだ。じゃあやっぱり、何か事情があったのか?

 

一縷の希望をかけてインターホンを押そうとしたけど……。

 

 

「引っ越してる……。ウソだろ!?」

 

 

通りがかった人に聞くと、なんでも2週間ほど前から様子がおかしくなり、つい昨日逃げるように引っ越してしまったらしい。

 

2週間……僕に告白してくれた日にピッタリと一致する。でも、姉妹の一人が告白を保留されただけでここまでのことがあるだろうか?

 

それだけで引っ越しなんて尋常じゃない。じゃあ、引越しのタイミングで告白した?でもそれだと、もう少しそのそぶりがあってもいいはずだ。だいたい学校やみんなに秘密にする理由も思い当たらないし、なぜここまで都合よく?

 

いくら何でも……

 

 

「……ど、どうして、ここに!?」

 

 

そこまで考えたところで、唐突に後ろに聞き覚えのある声が聞こえた。

 

振り返ると、そこには件の彼女が。2週間ぶりにみる姿は快活さはなりを潜め、疲れ切って何かに怯えるような弱々しさを感じた。

 

 

「……そ、それはこっちのセリフだよ! 一体どうしたの!? 学校もずっと休んで、引っ越しまでしちゃったなんて……」

 

「ご、ごめんなさい! 私、ちょっと忘れ物を取りに帰っただけで……す、すぐ行かなきゃいけないの。そうじゃないと、私……!!」

 

 

僕の姿を見て、明らかに普通じゃない様子でその場を離れようとする。

 

ダメだ、待ってくれと思わず手を掴んで引き留めた。自分のためもあるかもしれないけど、彼女のことが心配な気持ちで、体が反応していた。

 

 

「何があったのか聞かせてよ! ……どうしても、僕には言えないことなの?」

 

 

告白をOKしたわけじゃない。それでも、同じクラスで、同じ場所で遊んだことのある仲のはずなのに。どうして僕が怖がられているんだ。いや、僕に、じゃないのか……?

 

「だって、言ったら……!! で、でも、私を探してきてくれたんだよね。少しくらいは話さないといけないのかな。実は……私……」

 

 

『言ったら』……言えない事情というだけじゃなく、まるで何か制裁や報復があるかのような口ぶりだ。

 

親家族まで巻き込んで引っ越しをするくらいの彼女の言動。相当にプライベートなことか、重い事情があるのだろう。それが何なのか、僕なんかには確かめる権利はないかもしれない。

 

 

それでも、僕は—————……

 

 

 

 

「————へぇ。何を話すつもりなの?」

 

 

その瞬間、周囲の空気が凍った気がした。

 

あまりにも冷たい怒気を孕んだ言葉は、僕の良く知る女性から放たれたものだ。

 

そう、なぜか家や浦女とは全く違う方向の、僕たちのいる場所に来ている幼馴染……小原鞠莉によって。

 

 

「————ひっ! ち、違うんです、私……もう行きますっ!!」

 

「あっ、待っ……」

 

「待つのは貴方よ!……あんな女についていく必要はないわ」

 

 

駆けだした彼女の手をもう一度掴もうとした僕の手を、今度は鞠莉がつかんで自分の方に引き寄せる。

 

目の前に来たチャンスをなぜ止めるんだ!

 

 

「鞠莉!? 離してくれ、彼女を追いかけなくちゃ……」

 

「その必要はないと言ってるの。……調べていてわかったわ、あの女が貴方の受けていたイジメの原因なのよ。勝手なことをして悪いけど、貴方のご両親にも話して転校の了承は得てきたの。貴方がこれ以上傷つくところは見たくなくって……」

 

「連絡先以外にも調べたのか……? 証拠は、何か証拠があるのか、鞠莉!」

 

 

あくまで彼女が悪だという態度を崩さない様子に少し苛立ってしまったが、鞠莉の方は予想していたかのようにボイスレコーダーを出してきた。

 

再生ボタンが押されると、彼女が友人らしき知らない女性と、僕の今回の件を話している一部始終を聞くことができた。

 

『僕に報復して欲しい』という内容の、録音を……。

 

「貴方に聞かせたくは無かったんだけど……証拠はコレよ。ごめんなさい、辛かったわよね……」

 

やけに録音の声が震えているように聞こえるのは、それほど僕に告白を断られたのが嫌だったということなのだろうか。鞠莉は1週間前に相談した時から、僕が連絡先を依頼する前に彼女の周辺を調べ始めていたのだと言う。

 

……なんにしても、僕はこの録音で鞠莉の言うことを信じざるを得なくなった。

 

 

そんな僕を心配して、支え続けてくれたのは鞠莉だけだったのに……もっと早く気づいておくべきだったんだ。

 

僕には鞠莉がついていてくれた。鞠莉だけが……僕の味方をしてくれてたのに。それを心の何処かで遠ざけようとしていた。僕が間違っていたんだ……。

 

結局、僕はこの後鞠莉の告白を受け取って、相思相愛になった。両親も納得してくれたらしく、鞠莉の援助もあって結局僕は転校した。今度はきっと、同じ事が起きないように……鞠莉の想いに応え続けよう。

 

でも今度は、鞠莉を守れる事があればいいな……。

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

「……さて、これでまた一人。邪魔者は消えたわね」

 

 

 

泥棒猫は適当に脅して追い出したし、彼の学校もこっちに近くなった。わざわざ手の込んだ情報操作をしてまで、イジメを仕向けた甲斐もあったというものね。

 

まったく、あの女ときたら……マリーの恋人を奪おうとするなんて、命が惜しくないのかしら?

 

命をかけてでも彼のことが好きとまで言うのなら、逆にちょっとは考えてあげたけど……所詮貴方の愛なんて偽りなのよ。私は違う……何もかもを犠牲にしても、彼だけは守り抜く覚悟があるわ。

 

こっちの用意した相手との芝居の最中まであんなに震えちゃって。ホンット、最後まで使えないんだから。万が一にでも彼に疑問が残ってたら、脅しじゃなくて本当に『どうかしてやる』ところだったわよ?

 

…………まあ、いいわ。終わったことを考えても仕方ないもの。

 

今回の件で、彼も私がどれだけ必要なのかよくわかってくれたみたいだし、あの女も二度と彼に近づこうとは思わないでしょう。彼氏彼女にもなって、ご両親にもきちんと好感を持って貰えたから……もうゴールは近いわね♡

 

 

 

 

—————昔からずっと、こうしてきた。

 

彼に近づく女はそれとなく排除して、いつだって何気なく私が助けてあげる。怪しまれない程度に、でも確実に私なしではいられなくしていく……。でも、二人で幸せな家庭を築き上げる日まで、今回の事だって通過点に過ぎない。

 

他の女は要らないわ。だからAqoursとは関わらせない。ダイヤや果南もダメよ。私だけ……貴方には私だけいればそれで十分。

 

 

「これからもじっくりと、わからせていってあげるわ……。マリーと貴方は、結ばれるしかないんだってことを♡」

 

 

そうね……次はイタリアに一緒に留学する手を考えましょう。そこで本格的に仲を縮めるのもいいわね。結婚式が向こうっていうのもいいかも。お互いしか頼る相手のいない空間、二人暮らし……ああ、ステキ♡

 

 

「心配しなくても大丈夫、私がいればなんだってうまくいくのだから……♡」

 

 

 

 




鞠莉ちゃんは権力もお金もあるので、他のAqoursメンバーではやれないタイプの定番ヤンデレもやれて有難いです。

ちなみに短編、長編ともに鞠莉ちゃんが一番多いのは、鞠莉が俺の母親になってくれるかもしれない女だからです。

ラブライブ9周年おめでとうございます!!
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