ラブライブ!〜ヤンデレファンミーティング〜   作:べーた

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「ツバサってピアノも弾けるのか。俺は音楽はサッパリだからな……」

「適材適所ってものがあるでしょ?衣装とかは私たちに任せて、貴方はやるべきことをしてくればいいんだから。……ニューヨーク以上のやつじゃないと許さないからね」

「はいはい、お嬢様。」


〜〜〜ドアの向こう〜〜〜


「あ、ああああ……!!あんなに近くに……!?」

「修也……!やっぱりA-RISEの方がいいっていうの……!?」ギリギリ

「……真姫ちゃん、にこっち。二人ともドアに張り付いて何してるん……?」


第49話 これからの日常

「なんだか久々によく寝た気がする……」

 

 

ここのところは天気が良くて、今日も窓からも光が差し込んできていた。間もなく3月。小鳥の鳴き声も聞こえ始めるころだろう。ラブライブまで2週間、ライブまでは1週間。そして、卒業式までは1か月。

 

ここのところ準備のために無理してたからと昨日は早めに眠ったんだけど、今度は寝すぎたのか逆に身体の節々がモヤモヤしている。

 

参加を表明するスクールアイドルはまだまだ増えているし、曲も歌詞もほぼ完成している。衣装についてもとにかく数をそろえるのが大変だが、不可能な日程じゃない。でもこの歌が本当の意味で完成するのは、本番で集まったみんなで歌った瞬間なのだろう。

 

人出が増えたことで、余裕も生まれてる。あとは会場の準備を詰めて、天気予報の晴れに賭けるだけ……。

 

 

「ううん……しゅーくん、まだ寝かせてぇ?今晩はいろいろ大変なんだからぁ〜……」

 

「…………ことり、何処から入った?」

 

……その前に、まず俺のベッドで裸同然で眠るこの少女をなんとかしなければならない。南ことり。スクールアイドルグループμ'sのメンバーにして、主に衣装担当。あの日以降も絶賛、俺のストーカーを継続中である。最近は堂々と『新品のシャツ買ってきたから今日のと交換して♡』と要求してくるようになった。

 

「え?……あっ!おはようしゅーくん♪えへへ、お義母さんから穂乃果ちゃんが預かってた鍵、今日は私が借りたの!」

 

「……そういえばまだ預けたままだったか。ところでそれ、本当に同じ鍵だよな?まさか9人分合鍵作ったうちの一つってことはないよな?」

 

「ぴっ!?ソ、ソンナコトナイノヨシュークン。アンシンシテ?」

 

あからさまな反応だけど……まぁ、みんなが持ってる分には構わない。ただまぁ、親父がいるときには辞めてほしい。ただでさえ俺以上にカタブツなのに、万が一合鍵使って侵入して鉢合わせ、なんてことになったら卒倒してしまいかねない。そうなればお互いの親同士で……なんてこともあるかもだし。

 

……ことりの親といえば理事長。

 

昨日俺は理事長に呼び出されて、謝られていた。

 

 

 

「理事長、それじゃ俺はこれで完全に音ノ木坂から居なくなることが決定ですね。……1年間、ありがとうございました」

 

「本当にごめんなさい。私がもっとしっかりしていれば、貴方もまだ……」

 

 

内容は、俺の転校先が決まったということ。

 

基本的には俺がやったけど、母親も仕事先からいろいろと手続きについては準備してくれた。

 

家から通える範囲だけど、音ノ木坂とは反対方向の立地にある。

 

 

「理事長は俺を連れてきたのに……って気を遣ってらっしゃるんでしょうけど。俺からしたら理事長が連れてきてくれたおかげで、μ'sのみんなと大切な時間を過ごせました」

 

「そう言ってもらえると、少しは肩の荷が下りるわね。……μ'sの解散、発表時期はこの前聞いた日付から変わってないのよね?私が責任をもって、関係者を説得してみせます」

 

「凄く有難いんですけど、本当に無理はしないでください。理事長はまだまだ何年もいらっしゃるんですし」

 

俺はここで音ノ木坂を出ればそれっきり。μ'sも解散さえして仕舞えば後はなんとかなるだろう。ただ、理事長はずっと理事長をしないといけない。そこが大丈夫そうなら、安心して解散をみんなにも伝えられる。

 

卒業式や転校の手続を終えて帰ろうとしたら、呼び止められた。

 

「……私は貴方に、あともう一つ謝らなければならないことがあるの。ことりのことで」

 

「ことりの?俺が謝ることならあるかもしれませんけど……」

 

娘さんを奪ってしまって(奪われたのは俺だったが)ごめんなさいとか。

 

「ことりのカメラは私のお下がりだし、貴方が監禁された地下室は……私が以前使っていたものよ」

 

……やっぱり、理事長が少なからず関わっていたか。地下室なんてことりが一から用意できるのかはずっと疑問だったけど。

 

「ことりは本心から貴方のことを愛している。それこそ、私が夫に向けるのと同じくらいの愛情で……だから色々とアドバイスしてたんだけど、結果としては貴方に大変なご迷惑をかけてしまって……」

 

話を聞く限り、ことりの愛情の強さは遺伝だったらしい。会ったことはないけど、父さんは相当苦労してたんだろうな……。

 

そしてこの分だと、監禁の件は聞いているようだ。

 

「俺こそ、逃げずにことりやμ'sにもっときちんと向き合えればよかったんです。それが出来なかったから……」

 

『お前のせいじゃない』って言われようと、そこだけは譲るつもりはない。それが俺なりの責任の取り方。俺なんて所詮、始めから異物だっただけだ。天地がひっくり返っても、μ'sのみんなやツバサを悪者になんてしない。

 

「……本当、ことりが惚れるわけね。知ってる?あの子あんなに恋愛とか女の子らしいものとか大好きなのに、今まで男の子に告白したことも、初恋したこともなかったのよ?」

 

「そうなんですか?ガチガチの海未や能天気な穂乃果ならともかく、意外だなぁ……」

 

「何度告白されても断っててね。白馬の王子さまでも待ってるのかなとか、理想が高すぎて行き遅れないかなんて心配してたけど、修也くんのおかげでなんとかなりそう。何もかもお世話になりっぱなしね」

 

そんなに難攻不落だったのかことり。あの大声の告白にもそんな背景があったなんて。

 

そのことりを射止めたのが俺だなんてのは未だに信じられないが、今は素直に好意を喜ぼう。……彼女を苦しませる結末にならなくて心底、良かったと思う。

 

「それなら、理事長もお偉い人たちの説得、お願いしますよ?解散した後になって横槍が入っちゃたまりませんから」

 

「ええ、それが先生として私にしてあげられる唯一のことだもの。……修也くんは、なんでそこまでしてくれるの?もう、音ノ木坂やスクールアイドルに関わることはないかもしれないのに」

 

始めはまだしも、後のことなんてそんなに考える必要があるの?と不思議そうな顔で問われてしまった。

 

……そんなの簡単ですよ、理事長。ことりの恋人候補だからって理由だけじゃなく……

 

 

「俺は、μ'sのマネージャーだからです。今度の卒業式のその日まで」

 

 

……そう決意したはずだったんだけど、ことりの今のようなストーカーぶりを見ると少しだけ唸ってしまう。

 

きっと理事長の若い頃もこんな感じだったんだろうなぁ。あれ?逆にいうと、ちゃんと幸せにしてあげられれば、大人になる頃には今の理事長くらい落ち着いてくれるのか?なら希望はまだ……

 

「あっ、そうだしゅーくん!朝ごはん作るから食べさせあいっこしない? もちろん1つのお箸で!!!」

 

……こんな朝がもしかして、両親がマトモにこの家に揃うまでずっと続くのか。

 

親父、母さん。早急に仲直りしてくれ。でないと俺が恥ずかしさで死んでしまうかもしれない。

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

 

 

 

 

外に出ると、今日は海未が待っていた。ことりがやけに先に行くよう促してたからもしかしてと思ったけど、やはりそうだ。おそらく、『順番』で決まったんだろう。

 

……俺の家で『ことりが色々とするため』に計算してたということはない、はずだ。そう信じよう。うん。

 

「さぁ修也、行きましょう?」

 

歩き出す海未と一緒に、会場への道のりを行く。この間真姫と歩いた道だけど、既に春の足音が近づき始めているのか、分厚いコートも少し暑く感じてきた。

 

「そういえば海未、昨日やたら大きな筆を持ち込んでなかったか?あれ何に使うんだよ?」

 

「筆といえば文字を書くものでしょう?幸い、当日も含めてしばらく晴れのようですし、せっかくですから大きな筆文字を飾ってみないかと、私の父の知り合いの方が貸してくださったんです」

 

各スクールアイドルやお手伝いから次々といろんな出店やコーナーのアイデアは出ているが、海未からもまたとんでもないものが飛び出した。筆文字を飾るスクールアイドル……渋いな、なんか。

 

「そうやって、色々盛り上げるための案もくれて……最初の頃『スクールアイドルなんてやりません!』って言ってた頃が懐かしいなぁ」

 

「もう……それは言いっこなしですよ?今では本当に良かったと思っています。スクールアイドルを始めて。そして、修也と出会って……」

 

「それは俺もさ。みんなと出会えて……スクールアイドルなんて凄いものに関われて、後悔したことなんてないよ」

 

二人でこうして歩きながらでも、街角にμ'sやA-RISE、その他にもスクールアイドルやラブライブの広告が並んでいる。

 

そのうちの一枚を見ながら、海未がつぶやいた。

 

「不思議ですね……μ'sのライブは、みんな貴方と一緒に作ってきたのに。この写真の中に修也はいない。わかってはいても、ちょっと寂しくなります」

 

「アイドルは俺じゃないからな、しょうがないよ。ここに映るべきなのはみんなさ」

 

あんまり大きな声じゃ言えないけど、μ'sの解散と俺の転校はメリットもある。俺がこれ以上μ'sと関わってたら、今の関係も本格的に世間にばれてたかもしれないし……。

 

「盗られるかもしれませんから他のスクールアイドルの皆さんに紹介はしませんけど、会場の準備でもあまり親しげに話せないのは苦痛です……。変な噂が立たないようにだなんて。……むしろ噂になれば全肯定して安心して恋人になれるというのに」

 

『盗られる』って俺のことだよな……。でも、大げさだと笑うことはできなかった。そう俯いて呟く海未の目はどう見てもこの前みたいに殺しにかかってる目だし。

 

「……そんな怯えた目で見ないでください。ほんの冗談です」

 

「そうは見えなかったんだけど……頼むから、俺とか会話したとかの理由で会場で他のスクールアイドルを闇討ちするのはやめてくれよ」

 

「それは修也の努力次第でもありますね。絵里からも聞きましたけど、私たちだって耐えられなくなることくらいあります。それこそ目の前だったり、あんまり楽しそうにされると……」

 

「ぜ、善処します」

 

「善処じゃなく、実行しなさい!!!」

 

「は、はいっ!!」

 

ビクッとして思わず昔親父に倣った敬礼をしてしまった。

 

でもちょっと安心した。海未はいい意味で元の調子に戻ってくれたみたいだ。あの件以来ちょっと自信を失ってたように見えたから嬉しい。このくらいじゃないとやっぱり俺も張り合いがないし。

 

「……? 何故嬉しそうなんです?」

 

「海未が元気になってくれてるからかな。……もしかして、この前の廃工場の時のこと、まだ気にしてたのか?」

 

「! ……わかってしまいますよね。あの時私は綺羅ツバサを本気で傷つけようと思いました。少なくとも、二度とダンスができない程度には。そして、最愛のあなたにも私は……」

 

彼女はちょっと暴走してしまっただけで、本来は社会のルールやマナーに非常に理解のある娘だ。

 

愛情についての悩みが一つの決着を迎えて、多少冷静になった今では思うところもあるのだろう。無理もないとは思う。普通は薬物を使って拉致監禁とかおかしいし。

 

「もう俺もツバサも気にしてないって。……何より、さっき話したじゃないか。またみんながそうならないよう、今度は俺が気をつけるって。みんなの近くで他のスクールアイドルとはあんまり仲良くしない。約束するよ」

 

「……『スクールアイドル』だけじゃダメです。他の『女性』です!あと、近くだけじゃなく遠くでもです!!」

 

「完全には無理じゃないか? やっぱり『善処』でいいんじゃ……。」

 

「……いいでしょう、ただし!さっきも言った通り、ちゃんと私たちが我慢の限界に達する前に愛してくれること。あと10人から増やさないこと!それだけは絶対ですからね!」

 

 

なんか、前から思ってたけど。海未ってこの辺お母さんみたいだな。言ってる内容は母親とか倫理からはかけ離れてる気がするけど。

 

でも俺は、そんな海未と。そしてみんなとこれから一緒に生きていくと決めた。

 

必ず夢をかなえて、今度は俺の方からみんなに告白する。

 

その日まで、きっと……

 

 

 

 

「……それと修也、今晩時間はありますか?」

 

 

 

ん……?

 

 

 

 

 

 




155000UA、ありがとうございます。あと4話ほどでエピローグまで完結予定なので、ここから毎日更新して3日に終結、μ'sの物語は4日のAqoursの劇場版までになんとか完結させたいです。

どうしてもお話の都合上、ここのところヤンデレは薄いですが、完結後は短編や一風変わったラブライブのヤンデレも、サンシャイン含めてまだまだ投稿予定なのでお見逃しなく。今年も1年、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
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