そういえば、長編ベースでこういうの書くの初めてですね。ギャグ風味です。
「優木あんじゅさん……この結果はどういうことなのか、説明してもらおうじゃないの」
「うーん……そう言われても、私は出しただけだからねえ。とにかく詳細を聞かせてもらえないかしら~?」
「……そうね、いいわ。あれはつい昨日のことよ……」
珍しい組み合わせ。ご存知μ'sの誇る才女、西木野真姫と、A-RISEの優木あんじゅ。この会議の場所では、怪しい薬が立ち並んでいる。
これらの理由については、しばらく時を遡らなければならない————……
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Side 西木野真姫
音ノ木坂のある教室にて……私、西木野真姫は凛と花陽を集めて会議している。その内容は当然、修也に関することだけど。
わざわざ1年生だけを集めたのは、ある『作戦』のため。
「修也くんを『ヤンデレ』にする〜?」
私の言ったことに凛は頭上に?マークを浮かべて聞き返す。
「そうよ凛。いい考えだと思わない?」
「いいも何も。真姫ちゃん、そもそも『ヤンデレ』ってなんなの?」
あら、どうやら花陽も知らないみたいね、この言葉。まあ私も昨日ネットで知った言葉なんだけど……。
今日は修也が別の学校で3年生になり、私たちが2年生として引き続きスクールアイドルをする中で1ヶ月ほど経った頃。修也の完璧で約束された永遠のパートナーであり、天才的な頭脳を持つ私はとんでもない名案を思いついたのよ!それがこの『ヤンデレ』なるものというワケね。
「なんでも、大好きな相手を好きすぎて好きすぎて、病んじゃうことを言うらしいわ。ドラマで浮気する恋人を殺したり、恋敵を追い詰めて破滅させたりする……まぁよくあるパターンといえばパターンね」
昼ドラみたいな『ドロドロ』とか所謂『メンヘラ』って言うのとも違うらしいわ。私も調べる時間が短かったからよくわかってないけど、あくまでも目的が『愛』なのがヤンデレなんですって。
でも、たとえそれが目的でも、手段で愛する人を殺すなんて……そんなのは私達にとって『愛』とは言わないわ。だいたい怖いじゃないのそんなの。
「それってほんとに病気だよ……やっぱり、凛は好きな人とは幸せになるのが一番だと思うよ!修也くんとμ'sの今の関係は、まさに理想的だと思うにゃ〜♡」
「修也さんを味わいたいのは山々ですけど、私も殺人なんて絶対反対です!……浮気なんてしたら閉じ込めて、2度と出られないようにはしちゃいそうだけど……」
そう、2人も私と同意見みたいね。ヤンデレだなんて、そんな危ない女が修也に近づこうとしたら真っ先に潰さないといけないわ!
決して修也が盗られるとか、私たちの時間が減るとか言うことじゃないのよ。修也を守るため、そうよ……。私が、私たちだけが修也を守ってあげられるんだから……。
他の女なんて要らない……ましてや、彼を傷つけるようなら……!!
……って、話が逸れたわね。
「……本題はここからよ。問題は私達がそうだとか、他の女がどうこうじゃないの。つまりね、修也の方がその『ヤンデレ』気味になってくれれば、私たちも狂おしいくらい愛し合えるんじゃないか、ってこと!」
私の提案に、2人の目の色が変わるのがわかった。ふふふ、流石ね。一瞬で私の目的をわかってくれるなんて、やっぱり真っ先にこの2人に相談してよかったわ。
「あくまでも殺す殺さないとかはドラマとか追い詰められた時の極端な話であって……、普通に暮らす中で修也が『私たちと一緒にいないと耐えられないくらいになるくらい愛に飢えてる』分には問題ないでしょう?」
そう、改めて言えば今回の作戦っていうのは、修也にヤンデレになってもらうことなのよ!
「そ、それは確かにそうです!私が修也さんがいてくれないと夜も眠れないくらい、修也さんも私がいないと眠れなくなっちゃえば……う、うふふ、ふふふふ!昂ぶってきちゃいました……!!」
「凛はそっちの修也くんも見てみたいなぁ……♡ いつも凛たちからだから、たまには修也くんから縛られたり攻められたいんだよね!」
卒業式から一月も経つのに、修也と来たらまだまだ肝心なところでヘタレるものね。11Pまでして(※ 彼女達が襲いました)写真もあんなに撮った(※ 撮ったのは彼女達です)のに、今更何を恥ずかしがってるのかしら?
私たちの挑発やスキンシップにドキドキしてくれる姿もいいんだけど、たまには貴方からグイグイ来て欲しいのよ。女の子としては、ね……♪
「でも、問題は方法ですよね?修也さんの独占欲をかき立てるって言っても、私は他の男の人と話すなんて絶対嫌です……!」
「凛も修也くん以外とデートなんて絶対したくないにゃー!」
さっきとは別の意味で目の色を変える凛と花陽。私だって、修也が奥手な程度でそこらの男に靡くような女じゃないつもりだし、同じ気持ちよ。でもね……
「それは私もよ。だけどひとつだけ方法があるわ!A-RISEに頼るのは少々癪だったけど……あんじゅさんからこれを受け取って来たのよ」
そう言って私が机の上に置いたのは、一つの小瓶。予備を含めると三つ。
容量は一回一本。
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東京都内、某所で……
薄暗い部屋の中、私ともう一人の女性が向かい合って、『あるもの』を取引した。
「はい、この薬を使えば修也くんも『ヤンデレ』になってくれるわよ〜♪」
「ありがとう……突然悪かったわね。綺羅ツバサにあんな薬を用意できた貴方なら、そういうのも持ってるんじゃないかと思って、ダメ元で連絡してみたのだけれど」
ネットで見てから、凛達に話す前に今回の作戦を思いついた私。でもママとパパに聞いて見たのだけど『そんな薬はない』『薬はないけど、男の子のハートなんて女の子の方から奪うくらいで丁度いいんじゃない?』って返されちゃって途方に暮れてたわ。
この天才真姫ちゃんの頭脳でも、あの変に義理堅くて真面目な修也を正攻法でヤンデレにする方法は思いつかなかった。変に他の男に近づいても何かあるってすぐバレそうだし、そうそう都合良くは行かないわよね……。
でも、あの時綺羅ツバサの奸計に使われたあの薬は、簡単に飲み物に混ぜられた挙句、その修也の理性すら奪ったものだった。それならチャンスがあるかもしれないと一縷の望みに賭けたのだけど、これが大成功だったわけね。
「いえいえ、お安い御用よ。もう卒業した身とはいえ、UTX学園科学研究部が開発した、自慢の新薬の人体じkk……じゃなくて、腕の見せ所なのだからね」
「? 今何か言ったかしら?」
「な、なんでもないわ!なんでも!!頑張って来てね!!」
どことなくあんじゅが申し訳なさそうにしてたのが気がかりだけど、とにかくこれで準備は整ったわ。
でも、クールな真姫ちゃんはまだ勝利を確信したわけじゃないわ……。まだまだ、しっかりと準備しなきゃ行けない。
最大の問題としては、私一人じゃヤンデレと化した修也の愛を受け止められるかは未知数なところね。ここは仲間が必要かしら……。
……穂乃果と綺羅ツバサはダメだわ。あの辺は存在感が強すぎて修也がそっちに行っちゃうかもしれない。あくまで彼をヤンデレにすること、そして私達を愛してもらうことが目的。
修也の平等な愛を疑うわけじゃないけど、奪われたら元も子もない。用心に越したことは無いでしょう。
海未とことりはあっさりと攫って行っちゃいそうだからこれもダメね。薬の効果は永続的では無いけど、その間にゴールインされちゃ出遅れちゃうわ。あの事件の日だってすごい行動力だったし。『元』2年生は総合的に危険……というところね。
じゃあ『元』3年生、となると理性はありそうだけど、今はそれぞれの道に進んでいてすぐに招集はできない。特ににこちゃんはスケジュールとかわかんないし、現実的ではないわ。
と、なると……
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「それで私たち、だったんだね? 確かに一番協力しやすいかも」
「いざ修也くんが暴走したら持ってきてる道具で凛が抑えるにゃ!でも……えへへ、修也くんに襲ってもらえるなら……にゃあ〜♡」
……花陽はともかく、凛は失敗だったかしら?いえ、凛の手錠やスタンガンの使い方は、いざという時頼りになるはず。最近は縄もマスターしたみたいだし、次はムチに挑戦するとか言ってたし……。愛のためにはそういうのも勉強してみようかしら?
とにかく、善は急げとも言うし。今の回想の間に既に準備は整えておいた。
修也は新しい学校に行ってから放課後、プロテインをいつも郵便受けに入れて走りに行く。今日も入れて行ったのは確認済みよ。そこにこっそりと薬を混ぜるなんて、造作もないこと。後は効果が出た時に私たちが突撃すればいいだけ……。
「えへへへ、修也さんがぁ、修也さんが私とぉ……♡♡」
……やっぱり花陽も失敗だったかしら。頼んだのは私だけど、絶対薬以外にも他のなにかを仕込んでたわよね、この娘……。体液とか、体液とか。
ここは修也の彼女筆頭として、この真姫ちゃんがしっかりしないとダメね。修也の『一番』として、ね……♡
「いいなぁかよちん。……あっ!見て、修也くん戻ってきたにゃ!」
唐突な凛の一言で、危険な想像に入りかけていた私と花陽の意識が引き戻された。こうしてランニング帰りの修也を家の前で隠れて出待ちしてたわけだけど、いよいよ本番だわ。
「ふう、今日はちょっと飛ばしすぎたな。早めにシャワー浴びて勉強するか……」
茂みに隠れている私達に全く気づかない修也は、温かくなってきた季節だからかトレーニングで汗をかいている。こっちは風下だから役得。
……ああ、今日も最高にカッコいいわ修也……!!世の中にあとどれだけのイケメンがいようとも、ずっとお金持ちな男がいても、もっと優しい人がいても、私が愛するのはあなただけよ……♡
「ん?このプロテインこんな匂いだったかな? 暑くて悪くなってなきゃいいけど……まぁ大丈夫だろ。……うっ!?」
「おお、修也くんが飲んだにゃ!」
「み、見るからに何かの効果が出てるようですけど……!?」
「よし、今よ。偶然を装って接近するの!!」
凛と花陽を連れて、茂みの裏から回り込んで修也の前に行く。修也は膝をついて荒い息をしている。
これなら周りの人が見ても、私たちは介抱しようとしているようにしか見えないでしょう。やっぱり完璧な作戦ね……!
「修也、大丈夫?」
「修也さん、部屋に戻りましょう!」
「凛達が助けてあげるね!」
そう言ってフラつく修也を3人で玄関を開けて家に入れた私達だったけど、修也はすぐに持ち直した。
……あれ、『普段』と変わってないように見えるけど……?
と、とりあえず私たちも『いつも通り』に接して様子を見ましょう。
「3人とも、なんでこんなところに……?」
「あ、愛の力よ!修也の体調が悪いのなら、世界中何処へだって駆けつけるわ?」
「なんで疑問形なんだ? まぁいいけど……せっかくだしちょっと俺の家で遊ぶか?」
危なかったわ……!私も修也のことを言えないくらいには隠し事が苦手だから……!
自分から上がり込んでおいてなんだけど、急にそういう誘いを入れてくるものだから動揺しちゃったじゃない。3月のあの大騒動以来、修也もなかなかに私達との時間を作ってくれるようになったけど……でも私たちはその積極性がもっともっと欲しいのよ!!
「修也くんのお部屋、久しぶりだにゃ~!」
「ヤンデレはまだよくわからないですけど……一体どんなことをしてくれるんでしょうか?楽しみですっ……♪」
凛と花陽も楽しそうね。でも私の中にはまだ一つ懸念が残っている。効果がないんじゃないかという懸念がね……。
「さて、1週間も会えてなかったからな……携帯のチェックから始めるか。ほら」
部屋につくなり、そういって『いつも通り』携帯を差し出す修也。
『いつも通り』私たちもそれをチェックする。……うん、μ'sと綺羅ツバサ以外の他の女の形跡はないわね。ちょっと海未との連絡が多いのが気になるけど、まあ許容範囲内でしょう。
「じゃ、今度は凛たちの携帯だね。はい!隅々までチェックしてくれていいよ」
「私のもどうぞ♪ 最近隠し撮りした修也さんとご飯の写真が増えてきて恥ずかしいんだけどね……」
「ああ。真姫のは最後だな。……って花陽、その隠し撮りってことりから提供されたやつとは別なのか?いつの間に……今度みんなの写真もくれよな」
慣れた手つきで今度は私たちが携帯を渡して、チェックしてもらう。この習慣は今のところ週1ペースで全員がやること。
私たちだけが修也の浮気を疑うなんて、不公平だものね。そういうのは普通の愛し合う二人がやることじゃないわ。お互いにきちんと証明することが大事なの!だからこうやって不安を取り除く……ママも言ってたわ!!
「それにしても、修也さん……さっき飲み物飲んだ時苦しそうにしてましたけど、なんともなかったんですか?」
「うんうん……特に『普段』と変わらないにゃー」
「ん? ああ。一瞬変な気分になったけど、特に変わりはないな。みんなも普段通り可愛いし、身体も変なところはないよ。それよりスクールアイドルを続けてるみんなの方が心配だ。他の男とか寄ってきてないかとか……」
「もう……そういう不意打ちはずるいです……♡」
あ、くっついた。ずるいわよ花陽! ちょっと凛まで!!ああああ、修也も私を置いてイチャイチャし始めないでよ!私も混ざるわ!!!
……じゃ、なくて。
効果ナシ……ってこと!?
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「————……というわけだったのよ。貰っておいて悪く言うのはなんだけど、効果がないなら無いと言ってよね。やっぱり、ヤンデレだとかどうとか。そんな都合の良い薬できてるわけないんだから。……って、どうしたの?アイドルがしちゃいけない顔してるけど……」
「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど~……。それらって全部普通のことなの?お互いの携帯チェックとか、その後の4人での、その……こととか」
「あんまり他の人に話すことじゃないけど、まあそんな感じね。でも、とりあえずお礼を言っておくわ。薬で愛をどうこうなんて間違ってるんだってよくわかったから。それじゃあね」
私はお礼を言って、部屋を出たからこの後のあんじゅのつぶやきは聞こえていない。
ちょっと夢を見ちゃったけど、修也の愛は私が自分で大きく育ててあげないといけないのよね。
そうすれば一番の結婚相手はきっと私よね……♡
「……多分みなさん。あとツバサも含めて……とっくに全員『ヤンデレ』なだけだと思うんだけどね〜……?」
「それにしても、修也くんの方もヤンデレだったなんて……ま、あの人たちと平等に愛し合ってたらそうなるしかなかったんでしょうけど……」
「お互い幸せならいっか……。今度は英玲奈で試してみようかしら~?」
「練習つかれたぁ……。ん?部室に飲み物置いてあるよ」
「雪穂?それスポーツドリンクなの? ちょうど二本あるし、喉がカラカラだから飲んじゃおうよ~……」
「そうだね。誰かの差し入れかもしれないし、後でお金は払おうか。……結構おいしいね! あれ、今学校の前通りがかったのって、修也さん?」
「あれ、本当だ! 穂乃果さん達に用事でもあったのかな。あれ、なんだか気分が……?///」
ヤンデレ10人とマトモ(?)につきあってたら修也くんもヤンデレを内在させてしまってたお話でした。そして雪穂と亜里沙は……ご想像にお任せします。
たまには彼の方からアタックさせたくて書いたつもりでしたが、皆さん男のヤンデレを読みに来ているわけではないはずなのでマイルドにしました。
基本、「勇気で光を追いかけて」の後日談はギャグ&ほんわかヤンデレデート(当社比)で行く予定です。ギスギスする要素が残ってないので…(修也くんの胃が平和とは言ってない)。次は完成したら海未ちゃんのデート回かなぁ……。