お待たせいたしました。本話の流れにつきましては、穂乃果ちゃん推しさんのリクエストSSとなります。お相手は海未ちゃん。修也くんが別の学校に行って、μ'sも解散して3年生も卒業して。にこもツバサもプロに進んで……。試験に合格するまでのそんな1年間のデートです。好評なら他の娘もやるかも。
μ'sの解散と卒業式、恋愛絡みの大騒動、そして後々伝説と語り継がれたほどの、ラブライブ決勝戦……
それがもう、何年も前のことのように感じるのは俺だけだろうか?
転校して、学校生活も家族の雰囲気も変わったが、俺とみんなの関係はあのまま変わっていない。
「修也、待ってましたよ?」
目の前にいる、廃校を免れた音ノ木坂学園の女子生徒……園田海未ともそうだ。
お互い3年生になって、受験勉強や進路なんかも迫ってくる時期だが、それはそれとしてしっかりとデートの時間は確保しているあたりは、真面目で細やかな気配りのできる海未らしいと言える。
みんなに『待ってもらって』いるのはあくまでも俺のわがままだから、休日のデートくらいはは全力でつきあおうとしている。
俺からしたら10人分で大変だと思われるかもしれないが、彼女達一人一人にとっては俺1人しかいないんだし。それが大変であっても、労苦だなんて思ったことは全くない。
「ごめん、でもまだ1時間も前だぜ? こんなに早く来なくても……」
「しゅ、修也と会うのが楽しみだったからですよ!? いいじゃないですかそのくらい……」
……何故かちょっと怒られてしまった。可愛いからいいけどさ。
俺も海未が早く来てるんじゃないかと疑ってこの時間に来たんだけど、正解だったみたいだな。
こっちはさすがに何度目かだけど、海未にとっては完全に初デートなんだから。それが緊張によるものなのか、俺への気遣いなのかはわからないが、何時間も前に来るんじゃないかという不安があった。
春までもう少し。桜の開花もまだという季節。冬は終わったとはいえ、女性を待たせておくにはまだ少し肌寒い。そのままになんてしておけない。
女性の身体は冷えやすいって聞いたような気がするし、立ち話もこのあたりにしてそろそろ出発しようか。
「おかげで、まだ行こうとしてたお店が開くまでは時間あるし……喫茶店にでも入ろうぜ」
「……ええ、そうですね。ちょうどこの近くに、とてもいいお店を教えてもらったんです。もし宜しければ、そちらに行きませんか?」
……後ろで何やらゴソゴソとついてくる集団に気がつかずに。
「ねえ、今の修也くん、海未ちゃんの服装褒めるの忘れてるよね……!?明らかに残念そうにしてたよ」
「うう、ことりが頑張ってコーディネートしたのにぃ~……!鈍感なのは変わってないんだね」
「穂乃果ちゃんもことりちゃんも、本当にあの2人のこと心配なんやね? 大丈夫だと思うんやけどなぁ~……?」
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海未に連れられて行った先は、和風な喫茶店だった。俺は確かに缶コーヒーが好きだが、別にお茶や茶菓子が苦手なわけではない。とはいえ、なにも畳の上で煎茶が出るようなところではなく、店内はカジュアルな雰囲気でメニューにコーヒーもあったのだが。
「こういうお店は初めてだな……うちの家族ってあんまり和風じゃなかったから」
「そうなんですか?それなら、ゆっくり味わってみてください。日舞の知り合いの方がされているお店で、園田家ではよくお世話になっているんです」
言葉だけ聞くと個人経営のようだか、さっきも思ったとおり店内はカジュアルな雰囲気だし、細やかなところで全国チェーン店にも負けない内装だ。別に詳しいわけではないが、ところどころに使われている木もなんだか高そうに見える。
しばらくすると、注文したお茶と茶菓子が来た。流石にこの状況でコーヒーを頼むほど空気を読まないつもりはない。店員さんは次は後ろの方の席に飲み物を運んで行ったのをチラ見したが、なんだかやけに隠れるようにしてお茶をしている妙な女性3人がいた。
気にはなったが、あまり他の女性を見ていると思われると海未にどう思われるかわかったものではないので切り替える。もしかしたらμ'sのファンなのかな。μ'sとしては解散し、熱狂的な人気は下火に落ち着いたとはいえ、スクールアイドルを続けたりそれぞれの道を行く彼女たちの動向を知りたいファンは多いだろう。
音ノ木坂、かぁ……。
「最近、音ノ木坂はどうなんだ? 絵里達が居なくなっても、穂乃果は勉強とかちゃんとやってるのか……」
「まだ一月も経ってないんですよ? 流石に私が見ていますからまだ大丈夫です。……と言っても、私も四六時中一緒にいるわけでも、もう貴方が見ていてくれるわけでもないので、目を離すとボロが出てしまうかもしれませんけどね」
まあ確かに。穂乃果もいつまでも子供じゃないんだから、心配しすぎかな……?
ああいや、数カ月前には合鍵使って人の家に上がり込んで脅して襲わせたようなトンデモ行動力が穂乃果の持ち味だし。μ'sだって伝説にしてしまえたんだから、勉強なんてしなくても将来すごい女性になってるかもしれない。
……? なんだか、あのシンガーのお姉さんが一瞬だけ頭に浮かんだけど……ないな。
「アホの子穂乃果があんな風に頼りになるお姉さんみたいになるわけないよなぁ……」
「頼りになるお姉さん……? 誰のことです?」
「ちょっとしゅー君!!仮にも大切な彼女の穂乃果に『アホの子』って何!?」
突然聞こえてきた聞き覚えのある声に、俺も海未も思わず後ろを振り向くが、後ろには誰もいない。さっきの3人も含めて、遠くにまばらにお客さんがいるだけだ。空耳だったんだろうか?
俺も海未も聞くなんて珍しいこともあったものだが。3人組の女性は二人が一人の口を抑えてテーブルの下でドタバタしている。なんだか知らないが、仲良いんだろうな。
「おかしいですね、今穂乃果の声が聞こえたような気がしたのですが……」
「あ、ああ。俺もだ。でもあんこに飽きてる穂乃果が和菓子屋に来るとは考えにくいし、きっと幻聴なんだろう」
「そうでしょうね。……って、話が逸れるところでした!その『お姉さん』というのは誰のことなんですか!?」
ううっ!誤魔化しきれなかった。
海未達も知ってる女性なら名前を言ってるもんな。今、みんなは俺が知らない女性と会うことを非常に警戒している。俺も彼女たちに俺以外の男が……ってそれは置いといて。全く説明しないという訳にもいかないか。
「ニューヨークの時に日本人の人と会ったんだよ。ほら、あの絵里と一緒に追いかけられてはぐれた時。あそこで道を教えてくれたからみんなのいるホテルに俺は帰れたんだ」
……結局あのシンガーの人は誰だったのか。
いくら調べても答えは出ていない。
記憶が多少あいまいだけど、最後の方は夢の中で会った気すらしてる。
また俺が困ったら、フッと表れてアドバイスでも送ってくれるのだろうか?
「ツバサと穂乃果のことで悩んでいた俺にアドバイスもくれたりしてさ、今の俺がことりの家の地下室じゃなくて、こうして海未とデートできるのも、あの人のおかげかもしれないな」
「ううっ……それを言われるとなんだか申し訳ないですね。それに、お世話になった方のようで……疑ってごめんなさい」
「謝ることじゃないって。俺の方こそ海未をまた不安にさせちゃって……」
……ちょっと雰囲気が複雑になってしまった。
「ちょっと、また湿っぽい雰囲気になってるよあの2人! やっぱりまた穂乃果が出て行って……!!」
「ホノカチャン、彼女は私もだよ……♡ 他の女性のこと黙ってたしゅーくんと一緒におやつにしちゃおうかな……♪」
「修也くんも海未ちゃんもなかなかネガティブなところがあるからなぁ。っと、まあまあお二人さん、もうちょっと見といていいんじゃない?」
他の席から視線を感じる上に、よく聞き取れない会話をしているが……。ううん、どうしようこの空気。
せっかくのデートなのに、また海未を不安にさせてしまった。そもそもあの時の事件だって、彼女達を不安にしたことが原因だったのに。やはり1月やそこらで俺もすぐに成長!とはいかないのか。
「そういえば、今日もなんだかずっと他の女性の話ばかりしてしまっている気がしますよね……。ごめんなさい、私は嫉妬深い女です……」
「何言ってるんだよ。あの時だって言っただろ、俺は海未のことがちゃんと好きだって。それに、嫉妬されても弓矢でもナイフでも向けられても愛してるよ」
「本当ですか?聞く話では……貴方、私たちに『マネージャーをやめる』と宣言した翌日には綺羅ツバサとデートしていたそうではないですか。 私たちの気も知らないで……とは、言えませんね。貴方の気持ちを私たちは分かってなかったのですから」
ええい、埒があかない。
ああ言っても、海未はやっぱりまだ罪の意識に苛まれてたんだ。俺のことが好きで好きでいてくれて……でも、それで俺を傷つけて嫌われることを誰よりも恐れている。
だったら、こういう時は攻めの姿勢に限る。……って、デートの前にアドバイスをくれたのは希だったな。こうなることを予想してたんだろうか?とにかく、今日のデートはもう女性は海未のことだけ見る!海未のことだけ考える!!
「店員さんすいません!このカップル用特大抹茶アイスひとつお願いします!!!!!」
「しゅ、修也!?」
「俺がどれだけ海未のこと好きか教えてやる。もう腹括ったからな!絶対最後まで『あーん』で食べきってやるぞ。いいか、初めてだからな。あーんなんて初めてやるのは海未だけだからな!!」
海未の顔は途端に真っ赤になって、店員さんはクスクスと笑ってるが、関係ない。ていうか、監禁してた時はあんなことやこんなことしたり、全員で襲いかかってきた時まであったのに何を今更恥ずかしがってるんだよ。
……いや、ごめん、やっぱり海未と『あーん』なんてめちゃくちゃ恥ずかしい。俺も多分顔真っ赤になってる。
海未は湯気を出しながら俯いて「修也はずるいです……」なんてブツブツ言ってる。アイスは意外にも数分で来たが、メニューの写真より大きい。店員さんは意味深なニヤニヤ笑いでスプーンをひとつだけ置いていきやがった。ちくしょう、あの人も海未の性格知っててからかいにきてるな。周りの客も何やら騒いでいるのが聞こえるが、むしろ見せつけに行く。
海未に俺の気持ちを伝えるためだ。こうなりゃ徹底的にやってやる!
「よし、行くぞ海未……。『あ〜ん』……!」
「修也……! は、初めてのあーんだなんて、あなたという人は本当に私を……!?///」
「は、早くしてくれ。アイスが溶けちゃうからじゃなく、俺も恥ずかしいんだ。なんだったら俺が口をつけてから海未にあーんしてやる!だから……」
「しゅ、修也!? でしたら是非それで……お願いします!! 私はあなたを感じたくて……♡」
うう、じゃあやってやろうじゃないか。アイスを一口、あ、美味しい。じゃなくて。
そのスプーンでまたアイスを掬って、ゆっくりと海未の口元に運ぶ。お互いの視線が唇とスプーンで一直線上に結ばれている。ほ、本当に海未と……!?
「ダメーーー!!それ以上はダメだよーっ!!」
…………え?
穂乃果?
「あああ!穂乃果ちゃんダメだよ出て行ったら! 私だってやって欲しいのは山々だけど……!!」
「やっぱりこうなっちゃったかぁ……ごめんな修也くん。2人ともどうしても心配だっていうからついて来ちゃってたんよ」
穂乃果に、ことりに、希……?
じゃあもしかして今の今までの状況って、全部……
……しかし、俺のスプーンを持つ手が震えているのは、別に俺が怒っているからではない。
前の席にいる海未の怒りが頂点に達しそうになっているのだ。
「あなた達……やけに今回のデートにアドバイスをくれると思ってたら、恥ずかしがる私達を見てたのしんでいたのですかぁ!!??」
「ひぃっ!? お、鬼ー!!」
「ち、違うの海未ちゃん。心配なだけだったんだよ!?穂乃果ちゃんが妬いちゃってついぃ……」
鬼って。包丁振り回してた穂乃果の方がよっぽど鬼だったけど……。
あ、じゃあもしかして今日のデート衣装のコーデとかお店とか、この3人の入れ知恵もあったのか? どっちにしても、いつかの枕投げの時以上のオーラを纏っている今の海未から逃げる術は存在しない。
「あなた達……! そこに正座しなさい!! 人の恋路を邪魔する事がどれだけ邪道なことか、みっちり教え込んであげます!!」
「私たちの恋路でもあるのにぃ〜……」
「うう、なんでウチまで……」
店員さんに訳を話したら、笑って許してくれたのは良かったんだが。
結局お店を出たのは2時間後で、すっかり溶けたアイスを5人で食べたのだった。
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「はぁ……あの3人のおかげで、随分一緒にいられる時間が減ってしまいましたね。」
夜になって、海未を家の前まで送ったところ。
あれから色々と回ったが、無理もないことだが結局海未は常に後方を気にして楽しみきれていないようだった。このまま帰ってしまっては、ちょっと勿体ない。それに、ことりのコーデに関して言い忘れてたのを思い出したし。
……あーんよりも恥ずかしいけどしょうがない、俺もサービスするか。
「え、修也……?」
そっと肩を抱き寄せて、額の髪をかきあげてキスした。
……なんだよ、人ん家の前で唇はまだ恥ずかしいんだよ。
「……一回もキスしてなかったからな。あと、今日の服……すごく可愛いよ、海未」
そういってあげると、海未もスイッチが入ったのか、軽く涙を浮かべて恍惚としながら今度は俺の唇に吸い付いて来た。これってあの時と同じパターンじゃないかとも思ったが、今は海未のしたいようにさせてあげよう。彼女にため息をつかせるなんて、彼氏失格だもんな。
……解放されたのが10分後で完全に酸欠になった挙句。海未のお父さんが刀を持って追いかけて来た。
俺は女性と刃物に縁でもあるのか……
桜が咲く前にアップしようと思ってましたが出張で伸びてしまいました。私の住んでいる地域はまだ咲いていないのでセーフです。デートって言ってもヤンデレ要素皆無の話を投稿していいものか悩みます。
ところで、冒頭で「好評なら~」という書き方をしましたが、皆さんの感想とリクエストはモチベーションにもなりますし、評価はより多くの方に読んでいただけるので、いつもチェックして需要に応えられるよう頑張ってます。普段静かに読んでいただいているそこの貴方も、いつも感想をくれる方も、是非よろしくお願いします!