出会った娘は???とはしてますけど、まあわかりますよね(笑)
例によってμ'sとAqours間の時間は濁されてるので本SSでも曖昧にしています。ヤンデレ要素はあまりありませんが、たまにはこんな話も。
「しかし、なんでまた俺が常装着てまで、祭りの手伝いを……」
俺は鹿角修也。今は航空自衛官だが、ご立派なのは階級だけで中身はまだまだ新米だ。あ、常装ってのは制服のこと。紺色だから、普通に道を歩いてるとよく駅員や警官に間違えられる。道を聞かれても分からない。
……で、今日この時、静岡県内のある町に来ている。それは、このあたりのお祭りの一つに、浜松基地からボランティアやら人材募集やらで人を出すということで、研修に来ていたが偶然土日が重なった俺が呼ばれたというわけだ。
普通はこういうのは土日は重ならないし、研修に来た人間を出さないもんだけど、人がいないとか教育的効果とか諸々でこうなった。
だが、いざ仕事となるとそんなに量はなく、意外とあっさり終わってしまい、かといって送り迎えの人は地元の人に捕まったためにこうして1人、海を眺めている(そういうとこだぞ、我が社よ)。
「しかし、まさか仕事でまたここに来ることになるとは。観光名所はあまり変わってなかったな」
そう、このあたりは昔の交通事故で痛い思い出のある町だ。
まあ、それがきっかけで、ある少女(今は高3くらい?)に出会えたのは後悔してはいない。たまに連絡を取り合っているが、何も起きていなければ今はイタリアにいるはずだ。クォーターでお金持ちなあの娘が……
「…………まさかとは思うが、帰って来てたりはしないよな?」
別に会いたくないわけじゃないけど、バッタリ会ったら話が長そうだ。一応仕事で来てる身だし、あまり好き勝手は動けない。
なんにしても、その彼女からの誘い以外で、せっかくまたこの地を踏むことになったんだ。立派な観光地でもあるんだし、精一杯お祭りを楽しんでいくことにしよう。
そんなことを考えながら、この奇妙な空白の時間を海を眺めて過ごしていると、いつのまにか女の子が一人、俺のことを見ているのに気がついた。
「くんくん……こっちから制服の匂いが。って、なんだか随分カッコいい人がいる!?」
……先に断っておくが、面識はない。念のため。
俺はハーレム主人公とかじゃないんだから、誰彼構わずフラグを建てたりしない。ましてや少女相手に。というか、忙しくてそんな出会いはない。あとμ'sとツバサからの監視も。
しかし、みんなにも負けないくらいの美少女だなあ。アッシュな髪色にウェーブがかかった感じ、目つきも優しく、活発で健康的な印象を受ける。あと数年もすれば世間の男どもは放っておかないだろう。
うっ……どこからともなく寒気がする!?
多分ツバサあたりがピキーンと来て『今、修也が浮気してる気がする!』とか言ってるぞ絶対。
怖くなって携帯を開くと、案の定ツバサからメッセージが届いてた。エスパーもいい加減にしてほしい。今はもう本当にアイドルなんだから仕事にもうちょっと集中してくれていいんだぞ!?
って、ツバサ以外からはどうだ?朝からあんまり携帯触ってなかったから……うわ、案の定だ。
「うう、またみんなから着信が50件くらい来てる……」
「? お兄さん、ずいぶん思いつめた顔で携帯見てるけど、何かあったの?」
思わず唸っていると、さっき近づいてきていた少女が声をかけてきていた。初対面の俺にも声をかけてくるくらいだから、見立て通り、フランクで積極的な娘のようだ。
「え?ああ、大人は大変なんだ……。人間関係とか人間関係とか、人間関係とかさ」
別に話しかけられてイヤなわけではないし、ちょうどヒマもしてた。せっかくだし地元の人と交流を深めるか。このくらいなら、浮気には入らないだろう。
にしたって、女子相手に大人ぶる自分の姿はあんまりカッコ良くはないな。
「私とそこまで違うように見えないよ? お兄さんもおじさんっていうには早いと思うけどなぁ……」
「そりゃそうだけどさ、社会に出ると色々違うんだよ。キミだって将来、人間関係が大変な仕事に就くかもしれないだろ? どの仕事でもそこは大変ではあるけど」
「うーん……そう言われてみるとそうかも。私さ、お父さんと同じ定期船の船長さんとかなってみたいんだ。全速前進、ヨーソロー!とかねっ♪ ……やっぱお客さんとか船員さんのケアとか、気を使いそうだよね〜」
あれ、この娘も俺と同じで父親に憧れたクチか。俺の場合は痛い目見たけど、彼女はそうじゃないらしい。それに越したことはないが。
しっかし、初対面なのに本当に話しやすい娘だと思う。スラスラと雑談できてしまい、淀みがない。向こうもヒマだったのか、なんだかそのもま予想外にも、お互いの身の上話までしてしまった。
「つーわけで、誰か1人と遊ぶと他の人からの嫉妬が凄くてな……。でも俺の休み以上に忙しい『友達』は優先してあげたいしさ……」
「うーん……でも、私は気持ちわかるかなぁ。やっぱりさ、一番大切な友達が離れて行っちゃうと思うと……辛いよ。ま、私の場合はただの思い込みだったんだけどね!」
「そのくらい信じあえる友達がいれば幸せだろうなぁ……。言われるまでもないだろうけど、絶対大切にした方がいいぜ」
「もっちろん!いやー、なんだかお兄さんには何でも話しちゃうね。気があうのかな私たち?」
いや、誰が相手でもキミなら上手く話せると思うけどな。俺だって別段、おしゃべりな方じゃないし。
話を続けていくと、いつのまにか俺の愚痴みたいになっていってしまった。職場関係の知り合いなんかに相談したら何を噂されるかわかったもんじゃないから、見ず知らずの女の子が聞いてくれるのは助かる。
……うん、やっぱり大人ぶれるほど大人になれてないな、俺。
「彼女みたいな人が10人かぁ……。世間の人はそれだけ聞くと色々言ってくるかもしれないけど、事情が事情だもんね。大変だったん、ううん。大変なんだねえ……」
「そうなんだよ。なかなか相談できる相手もいなくてなぁ。本当なら今こうしてキミと話してる事が知られても、どう誤解を招くか……。まあ、そんな彼女達を俺も好きなんだけどね。何より今の関係にしてもらったのは俺の意思でもあったし、文句なんてないんだけど。それでも愚痴りたくなる時があるんだよ……」
「お兄さんもハーレム状態で贅沢だね! でも悩みは誰かに聞いて欲しい時もあるから仕方ないよ。私でよければいつでも聞くし、私だってそれで立ち直れたからさ」
むむ、若いのによくできた娘だなぁ。こういう意味で相談できる女の子が近くにいてくれたら、昔の俺達の問題ももう少し早く解決してたかもしれない。刃傷沙汰寸前ってのは、回避できてたかも。
とはいえ、ツバサといいμ'sのみんなといい、俺の知ってる『女子高生』はみんなすごい人たちばっかりだったし、割と最近の女子高生ってこんなもんなんだろうか?
今後後輩に女性が来ることだってあるだろうし……だとしたら俺も負けていられないな。
「あの時はひどかったなぁ。なんせかたや包丁、かたやナイフを振り回して本気で殺し合いになりそうだったからな。どっちから刺されてもしょうがないかって覚悟だったけど、今でも生きてるのが不思議だよ。長期休暇の時とかたまに監禁されるし。俺はこんな仕事だから絶対帰らないといけないのに困るんだ」
「時間とか厳しいんでしょ? カッコいい制服着られる仕事だもんね〜……。ねえ、私制服とか好きなんだけど、ちょっと触ってみていい?」
見ず知らずの男の制服を触りたいだなんて変わった女の子だけど、減るもんじゃないし別にいいか。
「ああ、そんなことならお安い御用だよ。ほらコレ……」
———……しかし、楽しい時間には限りがあるもの。
こんな時間も長くは続かず、終わりを告げる『美声』が波に混じって響き渡る。
「へぇ〜……修也。地元の女の子ひっかけて、随分楽しそうね。私にも触らせてくれる?」
………………
………………………………ツ、ツバサ!?
変装してるが間違いない、ツバサだ!まごうことなき俺の彼女にしてお茶の間のアイドル、綺羅ツバサだ!!
俺は壊れたロボットみたいに首を回して、恐る恐る彼女の目を見た。
……や、やばい。これはかなり怒ってる。
「ど、どうしてここに……!?」
「今回のお祭りでロケがあってね。航空自衛隊の人たちが手伝いに来てるって聞いて、休憩中にちょっと探してみたのだけれど……まさかこんなところで会えるとは、運命ね?」
おかげで修也の浮気も知ることができたし、と付け加えるツバサ。
やばい、『かなり』どころじゃなく、めちゃくちゃ怒ってる!笑顔なのに目が全く笑ってない……!!
こういうときは三十六計、逃げるに如かずとも言う。少なくとも、こんな情けない姿を、これ以上この娘に見せるわけにはいかない!!今の俺は制服を着ているんだ……!
「……ごめん。名も知らない女の子!これでさよならだ!!」
名前くらい聞いておけばよかったかと思いつつ、全力ダッシュで上司との合流地点に逃げる。あ、常装走りにくい。だがこちとら現役のパイロットなんだ。
そんな簡単に女性に負け……って、早!?怖!!
「修也ぁ! アイドルの足腰舐めるんじゃないわよーっ!!」
「ひい、あ、アイドルの表情じゃないだろそれ!捕まってたまるか!てか浮気じゃないって!!!」
「制服とかおさわりとか言っといて何の言い訳するのよ!!待ちなさい変態!こらぁぁ!!」
なんでよりによって、そんな誤解を招きやすい部分だけ聞いてるんだよ!タイミング悪すぎだろ!
久々に会えて……ちょっと嬉しいのとか、やっぱりタイミング最高だったかもとか、そう考えたのは内緒だけど。
……いや、ここんとこ仕事で気を張ってたから、こんな追いかけっこを少しとはいえ楽しむ余裕を無くしてたかもしれない。気を楽にしてくれたあの娘と、この出会いには感謝しなくちゃ、な……。
「———追いついたわよ、修也」
そう、殊勝な心がけをした隙をつかれたのか。俺の首はあっさりと掴まれ、この後のことは読者の皆様のご想像通りだった。
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「なんだか、慌ただしい人だったなぁ……」
さっきの女の人、テレビで見た気がしたけど……その人が例の10人の1人?
だとしたら、あの人もホントに苦労してるんだろうね。私もいつか、あんな感じで大好きな男の人ができるのかな?
ちょっと話をしただけだけど、あの女性があの人に惚れるのも、あの人があの女性に惚れるのも、なんとなく分かる気がする。
パイロットって言ってたけど、制服カッコよかったなぁ。あの人の青っぽい髪の色にもよく似あってたし。ああいう着こなし方が理想だよね。男の人と女の人では違うけど、やっぱり本物を見ると色々とインスピレーションが湧いてくるね……。
「いいなぁ、私もあんなにカッコイイ制服着てみたいなぁ……」
……そうだ、次はちょっと燕尾服の白……ううん、ウイングカラーを使って……ワイシャツ、ネクタイ風のやつに、海っぽさも加えて……
うん、とにかく男性チックな衣装にしてみようかな?
そんなことを考えていると、後ろから待ち合わせしてた果南ちゃんと千歌ちゃんがやって来た。早速さっきあの人に習った『本物の敬礼』をビシッと決めてみちゃおっと!
「あ、果南ちゃん、千歌ちゃん遅いよー!」
「ごめんごめん、しいたけがまた梨子ちゃんを追いかけて大変でさぁ〜」
「私まで捕まえるの手伝わされちゃってさ。……あれ?敬礼がなんだか速くなった?ぴしっとしてるって言うか……」
「あ、わかる?実はね、あそこで追いかけっこしてる人に教えてもらったんだ。これからは新生曜ちゃんのパワーアップした敬礼をよく見ててほしいであります♪」
そう言って私はだんだん遠くなる背中を指差してから、もう一度敬礼を決めた。
……うん、コレだね!本物は!!
今度お父さんたちにも見てもらおっと♪
「さぁ、今晩はお祭りだよ。今度のライブの練習で疲れてたし、思いっきり息抜きしよ♪」
「曜ちゃん今日も元気だなぁ〜……果南ちゃん? なんだか不思議そうな顔してるけど……」
「今の人、どこかで見たような気がするんだよね〜。昔、鞠莉と……いや、まさかね?」
Aqoursと絡むときは『外伝』、1〜2年以内のμ'sとのソレは『後日談』で分けています。
地味に5th両日行けそうで一安心。少なくとも2日目は芝生席で双眼鏡両手にしてます。ミルスケール入りの双眼鏡でAqoursとの彼我の距離を計測するのが結構好きなんです。